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壊れ続けていたアメリカの海洋生態系は「完全崩壊」に向かうのだろうか?:アメリカ史上最悪の環境災害「カリフォルニアのメタンガスの大量漏出」の先行き

   

表立って報道されてこなかったアメリカ史上最悪といわれる環境災害

昨年の10月、アメリカのカリフォルニアで「米国史上最悪の環境災害になるかもしれない」と言われた「メタンガスの漏出」が発生したのですね。自然での漏出ではなく、ガス施設のパイプからのガス漏れでした。

それから3か月が過ぎましたが、現在までの放出量と規模は下のようになっていまして、どうやら当初に予測された「米国史上最悪の環境災害」という規模に達するのは間違いない感じとなってきています。

カリフォルニアで起きているメタンガスの流出での過去3ヶ月間のCO2の排出量と同等の排出量の比較

How-much-co2

 

2月1日までのガス流出の量をロサンゼルスの街と比べたもの

How-much-methaneHere’s How Enormous The Methane Blowout Is In California

 

このことが昨年起きた際には、アメリカで一部のメディアでは大きく報道されていましたが、理由はわからないですが、メジャーメディアで報道されたのは、アメリカでもかなり後になってからでした。日本ではメジャーメディアは今でもほとんど報道していないのではないでしょうか。

calfornia-methane-leakCalifornia methane leak one of the worst environmental disasters in US

 

その際、記事にしようかどうか迷っていたのですが、流出の規模も、修復の先行きなどもどうなるかわからない状態でしたので、様子見しているうちに、どんどんと事態は深刻になってきました。

2016年の年明けには、カリフォルニア州知事が非常事態宣言を発令するに至ります。

米ロス郊外の大規模ガス漏れ、州知事が非常事態宣言

AFP 2016/01/07

米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外の天然ガス貯蔵施設で大規模なガス漏出が昨年10月から続いている問題で、ジェリー・ブラウン州知事は1月6日、数千人の住民が避難しているポーターランチ地区に非常事態を宣言した。

ポーターランチ地区はロサンゼルス中心街から北西に約48キロ離れたところにある住宅地。多数の住民が頭痛や吐き気、鼻血などの症状を訴え、現在は地元ガス会社が提供した仮設住宅で避難生活を送っている。

ブラウン知事は非常事態宣言の声明で、1月4日にポーターランチ地区の住民と面会したことを公表。州政府の全機関を総動員してガス漏れを止め、住民の健康を守り、地域社会を支援すると言明した。

 

日本では(あるいはアメリカでも)一般メディアはどちらかというと黙殺気味でしたが、環境被害の大きさとしては、2010年のメキシコ湾での原油流出が小さく見えるほどの壊滅的影響が懸念されると述べる科学者たちもいるような災害ではあるようです。

流出の状況に関しては、環境防衛基金(EDF)という団体が赤外線による監視をおこなっていて、ウェブサイト上で、リアルタイムで数値を公表し続けています。

2月3日現在は、以下のようになっています。

10月からの総量です。

methan-real-time

 

この数字だけを見ても、それがどの程度の量なのかは感覚的にわからないですが、その CO2 などの総量を他のものと比較したのが、冒頭に載せました図でして、それは、160万台の車の1年分の排出量だったり、40億トン分の石炭の燃焼分だったりということで、いわゆる「地球温暖化」というような概念で言われている「温室効果」というものと関係するのではないかということの意味での「環境への影響」と言われています。

世が寒冷化に向かっているなら、多少の温暖化はむしろいいことなのではないか……ということではないようですね。

下の動画は環境防衛基金が赤外線で撮影して公開している映像の部分です。メタンは、赤外線を通してしか見えないのだそう。

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海洋環境崩壊への「とどめ」

このメタンの放出量の「他のものとの比較」に関しては、今年1月のギズモードの記事「危険度は車700万台の排気ガス相当! LA北でメタンガスが大量ダダ漏れ中」で、さきほどの「環境防衛基金」の記述を抜粋していまして、そこには以下のようにあります。

環境防衛基金の記したものの訳より

天然ガスの主成分メタンは、短期の環境への害が大きく、霧散後 20年の温暖化パワーは二酸化炭素の 80倍もある。

アリソン・キャニオン(現在ガス漏れが起きている場所)でのガス漏れ現場では、1日 6200万立方フィート(1,755,644,488リットル)にのぼるメタンが漏れており、その長期の温室効果は車 700万台分の排気ガスに相当する。

 

もちろん、会社側は修理を進めているようなのですけれど、何しろ、「ガス」を扱っているものですから、作業でおかしなことになると「人も施設も何もかもぶっ飛ぶ」という可能性のある作業であると同時に、ガス田というのは、下の図のように「 2.5キロメートルなどの地下」にあるもので、そこを修復するのですから、そう簡単に終わるものではないのかもしれません。

ガス流出修復計画の説明書より

160101-gasSoCalGas

 

会社によりますと、流出箇所は特定できていて、地下 1.17キロメートルのところにあるパイプに 17cm の穴があることが判明しているのだそう。そして、これを修復するということらしいです。

いずれにしましても、現時点ですでに冒頭のロサンゼルスの街と比較した図にあるような膨大なガスが漏出しているということで、これが先にどんな影響を与えるのかは具体的なことは何ともわからないようです。

そういえば、冒頭の2番目の「ロサンゼルスの街とガス漏れの規模の比較」の図を見ていて、ふと、一昨年の「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星とロサンゼルスの街を比較した合成写真」を思い出しました。

その時の写真に、さらに今回のガス流出の比較を添えてみます。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星とガス漏出の規模とロサンゼルスの街の比較

Churyumov-Gerasimenko過去記事「アイスランドの火山の状況のその後と、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星…」より。

 

比較してどうするという感じもしますが、しかし、仮にあと数ヶ月、ガスの漏出が止まらなかった場合、このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星ほどの総量に達していくのかもしれないです。それは「ロサンゼルス全体を包み込む」といったような、ちょっとした異常事態でもあります。

そうすれば、さすがにかなりの影響は出そうですが、その影響がどんなものなのかは、やはりわからないです。

ちなみに、ここでは「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」という名前をスラスラとタイピングできていますが、実はもはやこの名を覚えるのは諦めておりまして、パソコンに単語登録をして、「ちゅ」とキーボードを打つと「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」と出るようになっています。

文明って便利ですね(その便利の中で頭は呆けていく)。

 

ちなみに、アメリカの専門家たちは「海洋生物の生態系などに影響が出る恐れがある」としているのですが・・・このアメリカの海岸は、すでに海の生態系がムチャクチャなことになって久しいのですよね。

アメリカの海洋に関しての大量死についての、この2年ほどの過去記事の見出しを見るだけでも、下のようなものがあり、しかも、どれも前例のないような途方もない大量死ばかりでした。

[ウミドリ他] 陸地では数千万羽のニワトリが死に、海では「デッドゾーン」の中であらゆる海洋生物が死に続けるアメリカで ( 2015/05/20 )

[ヒトデ] 「星が消えて海が壊れる」:アメリカ周辺のヒトデの大量死の状態は「分解して溶けて消えていく」という未知の奇妙なものだった (2013年12月05日 )

[ウミガメ] アメリカのウミガメたちの異常な座礁数から思う「6度目の大量絶滅」に向かう現在の世界 ( 2014年12月18日 )

 

こういうことがすでに起きていたり、あるいは、今回のガス流出が起きる以前から、「カリフォルニア沖では自然によるメタン流出が起きていた」ということもあります。

これは、2014年の、

「リュウグウノツカイ」と「サンアンドレアス断層」と「カリフォルニア沖でのメタンの噴出」が一本のライン上につながった時に一体何が起きるのだろう
2014/04/11

という記事で、アメリカの以下の報道をご紹介したことがあります。

サンタモニカの悪臭の原因は海底から噴出しているメタンが原因の可能性

KTLA 2013.03.04

ロサンゼルス当局は、サンタモニカに漂う悪臭の原因は、海からのメタンの大量放出によって引き起こされたと推定している。

サンタモニカの火災防護チームがサンビセンテ近くの沖で測定した結果、海中に大量のメタンを発見した。当局は、最近の水温の変化は、海面の下でメタンが放出されたことによってプランクトンや藻類の大量発生が引き起こされたものによるかもしれないと語った。

メタンガスは地殻プレートが移動したことによる地質現象によって噴出されている可能性も考えられるという。

原因はともかく、すでにカリフォルニアでは、メタンの流出が自然現象として海底で起きていると考えられる中で、今度は地上でのメタンの大量放出です。

これが、ただでさえ「何となく壊れかけているように見える」現在のアメリカの海洋環境への「とどめ」となるのか、あるいは、軽微な影響で終わることができるのかは今はわかりません。

そして、実は世界全体の「海」も、海流にしても海洋生態系にしても、何だか壊れつつあるような気もしているのですが、何がどうあっても、「海はひとつ」ですので、どこかが壊滅的な壊れ方をすれば、全体に影響が及ぶのは仕方のないところです。

そして、それは遠いことではないか、やはりもう始まって久しいような気もいたします。

カリフォルニアのガス流出の最新の状況について、アメリカの報道からご紹介いたします。


Here’s How Enormous The Methane Blowout Is In California
HUFF POST 2016/02/02

カリフォルニアのメタンの噴出がいかに巨大かを示そう

裕福な都市ロサンゼルスの郊外の裏手から噴出している天然ガスによる「見えない津波」は、当地で病気を引き起こしており、企業に損失を与えている。そして、住民たちの避難という事態もすでに起き続けている。

地域の住民たちは、自分たちの生活が突然以前とは変わってしまってから3か月の日々を過ごしており、ガス会社がすべての流出を止めることをひたすらに待ち続けている。

腐ったような臭気が漂っているロサンゼルスのポーターランチでは、ガス田が永久的に閉鎖された際には大気の清浄を始める予定となっている。

ガス流出の発祥地であるアリソ・キャニオンの貯蔵施設を運営している南カリフォルニアガス会社( Southern California Gas Company )は、今月(2016年2月)にはガス流出が停止する見込みだと述べている。

しかし、天然ガスの主な成分であるメタンは、ガス田の操作を停止した後でも大気中からは単純には消滅しなかった。

環境防衛基金( EDF )によると、このガス田は、これまで大気中に 91,000トン以上のメタンガスを放出したと見られている。しかし、正確な放出量はいまだに明らかになっていない。

メタンガスは特殊な赤外線カメラで、その漏出の状況を見ることができるために、それにより、このカリフォルニアの見えない大惨事の一部の状況はわかる。

しかし、赤外線カメラ以外では流出したガスは見えはしないので、ロサンゼルスの雲の状態が普通であっても、野生動物たちが塵に覆われているようなことがなくても、間違いなく大気中には日々、膨大な量のメタンガスが放出されているのだ。

そして、このメタンガスの流出が地球温暖化に与える影響は甚大だ。

メタンは強力な温室効果ガスで、それは二酸化炭素よりもさらに強力だ。

当紙では、過去 20年間の災害をもとにして、国家資源防衛評議会の上級地質学者であるブリアナ・モーディック( Briana Mordick )の助言を得て、今回のガス流出の排出量を描いた(訳者注:冒頭の2つの図です)

methane-toll-02

車 160万台分と同等というのは、どのような意味かおわかりだろうか。これは、フィラデルフィアに住む人たちすべての1年間の車の通行の際の排出量と等しい。

もし、メタンの雲が実際に見えたとしたなら、そのメタン雲の高さは、世界で2番目に高い中国の上海タワーと同じ高さにそびえ立っている光景が見えることだろう。

今回のガス流出が、2010年にメキシコ湾で起きた BP の原油流出や、1989年に起きたアラスカのエクソンバルディーズ号原油流出事故の被害と比較されることがあるが、専門家たちは、今回のガス流出はそれよりさらに甚大な環境への影響を与えると述べる。

スタンフォード大学の環境科学の専門家ロブ・ジャクソン( Rob Jackson )教授は、「温室効果ガスの大気への影響が海の生態系に悲劇をもたらす可能性があります」と語る。

2010年のメキシコ湾の原油流出は大きな経済的大惨事として記憶され続けるだろうが、カリフォルニアのガス流出は、気候変動により環境にさらに大きな影響を与えることになるかもしれない。

ジャクソン教授は、こう述べた。

「これはもうまったく非常に大規模な漏出といえるものなのです」