2016年6月17日のイースト・アジア・トリビューンの報道より
今日(6月17日)のお昼頃、冒頭のようなニュースが報じられました。
報道の内容は「北朝鮮の金正恩委員長が、平壌で起きた爆発によって死亡したことを北朝鮮中央放送が報じた」ことを伝えるもので、その爆発は明らかに自爆テロであり、実行犯は女性だったというものでした。
そして、直後に、韓国の国防部とメディアが反応し、「その事実はないと思われる」とする記事が韓国から出されました。
直後の韓国メディアの報道
報道というものの本質
北朝鮮中央テレビは、他の国の多くの人たちもチェックし続けているはすですので、北朝鮮中央テレビが報じたというのなら、すぐに伝わるはずで、「なんだろうな、この交錯は」とは思いました。
「イースト・アジア・トリビューンの何かの間違いなのかな」と考えて気づくのは、「ところで、イースト・アジア・トリビューンって何だ?」ということでした。
イースト・アジア・トリビューンなんてメディアは聞いたことがなかったですので、どのようなニュースをメインに扱っているのかを見ようと、そのトップニュース一覧を見てみてわかりました。
これは、「フェイク(作り話)ニュースサイト」、あるいは、「ジョーク・ニュースサイト」です。
おそらく最近できたサイトなのでしょうが、明らかなフェイク・ニュースばかりです。
ただ、それぞれのニュースのタイトルはわりと秀逸で、「そういうニュースを望んでいる人たちが多そう」なフェイク・ニュースが多いのです。
たとえば、イースト・アジア・トリビューンはツイッターにアカウントを持っていますが、そこにある過去のフェイク・ニュースから少しピックアップしますと、下のような、「そのことを望んでいる人が結構いそう」だったり、「何だか実際にありそうな気がする」ようなものが並びます。
イースト・アジア・トリビューンの過去報道より
よくできたフェイクニュースのタイトルだと思います。
中国は、一人っ子政策のために、男子重視の傾向が長く続き、現在の中国は「男性が 3300万人多い」という、いびつな人口比になっていまして、女性が貴重であることは事実ですので、「中国人女性が外国人と結婚することを禁止」というのは、実際そのような政策を出しても不思議ではない気がします。
記事の中には、「日本とベトナムが双方の成長のための新たな投資を計画」という、実際にあってもまったくおかしくないようなものも混じっています。
今回の、「金正恩委員長、暗殺」というニュースも、実際にあっても不思議ではないというタイプのニュースのひとつではあり、明らかなフェイクにも関わらず、韓国政府が談話を発表したという流れとなったのは、そのせいかもしれません。
このニュースのせいかどうかはわからないですが、このフェイク・ニュースが流れた途端、韓国の株価は急落しました。
2016年6月17日の韓国総合株価指数
どうして、これらの一連のことをご紹介したかったかというと、
「フェイクであろうとデマであろうと、どんな報道からも、常に、社会は動揺させられる可能性を持っている」
ということで、日々起きるさまざまな大きな出来事も、「実際に起きていることかどうか」は実はわからないわけで、まして海外の出来事に関しては、「報道されていることが事実だと信じるしかない」部分があります。
今回のようなあからさまなフェイク記事でも、私などは調べなければフェイクとわからなかったのですから、日々のニュースも、実は現実のことではなかったということは、結構あるのかもしれません。
テレビなどの報道では、内容がフェイクということではなくとも、どのメディアも一方向に進むことはよくあって、最近では、まあ私自身はほとんど見ていませんが、東京都知事のニュースなどを延々とやっていたようで、そのせいで、パナマ文書の報道も、オリンピックの招致問題も、公的年金の運用公表先送りなども大きく報道されないままでした。
公的年金の運用は株などで行われていますが、最近は損失が激しく、証券アナリストの試算によれば、2015年の7-9月期だけで8兆円近くが消え、今年はさらに株価が頻繁に暴落していますので、結構大変なことになっている可能性はあります。
そういうようなことが、都知事が数万円をどうかしたとか、いい大人が不倫してどうだとか、メジャーリーグで何がどうしたなどの報道でどんどん裏に消えていくというのも、まあひとつの「フェイク事象」ではあるかもしれません。存在しないものを存在するように試みる結果がフェイクですが、その逆、つまり「存在するものを存在しなかったことにする」事象もフェイクといえそうな気がします。
まあしかし、もともとテレビというのはそのため(民衆の注意を別に向けるため)に生まれた部分もあるのかもしれないですし、これが正常なあり方なのかもしれません。
今回と似たような「アジアのフェイク」として、昨年の夏に下のようなものもありました。
2015年8月23日の大紀元の報道より
これは、
・何が起こっているのかわからない : 「江沢民逮捕」報道やら、関東では「原子炉の500メートル先で大火災」。そして、市場はパニック一歩手前
2015/08/24
という記事に載せたものですが、上の報道記事は今でも消されることなく、大紀元に残っているのですよね。
まったく1年経っても何が何だかわからないままです。
余談:東京都知事が言葉の世界に残した偉大な功績
さきほど都知事の話題がちょっと出ましたけれど、実は都知事は最後に大変な偉業を残して去ろうとしています。
それは、「ある日本語」の英語化に貢献したのです。
アメリカのメジャーメディアで、日本の地方自治体の長が大きく取り上げられることはほとんどないと思われますが、6月15日、東京都知事が、ニューヨーク・タイムズに大々的に取り上げられました。
6月15日のニューヨークタイムズより
このタイトルの内容はどうでもいいのです。
大事なのは、記者が重点を置いたとみられる記事のこちらです。
何とニューヨーク・タイムズのこの記者は、神林茂さんという議員の言葉である「せこい。あまりにもせこ過ぎる」の「せこい」を「 sekoi 」と英単語で表現したのです。そして「せこ過ぎる」を「 too sekoi 」として、さらに、この言葉に対しての解説までしてくれたのでした。
おそらく、英語表現の中に「 sekoi 」という文字が出現したのは、これが初めてのことではないでしょうか。
ジス・イズ・セコイ。トゥー・セコイ
何だか韻を踏んでいる感じもあり、流れるような律を持つ素敵な語感です。
そして、ニューヨーク・タイムズは、
「今回の一連の出来事を言い表すのに最も頻繁に使われた言葉はおそらく『せこい』だろう」
と指摘しました。
英語化した日本語は数多くあり、昔からあるサムライやスキヤキなどから、最近では、カワイイなど数多くありますが、英語として標準化された日本語に「セコイ」が登場した輝かしい瞬間とも言えます。
私も今後、そういう人がいた場合、「ジス・イズ・セコイ。トゥー・セコイ」と述べようかと思っています。
そんなわけで、昨年の夏場は社会も金融市場も混沌としていましたが、今年の夏はさらに社会も市場も混沌とする予兆はすでにあふれています。
そして「これまで聞いたことのないようなニュース」も数多く出てくるであろうと確信しています。
虚実ごちゃまぜでいろいろな報道が流れると思いますが、真実であってもフェイクであっても、ニュースを楽しんでいきたいと思っています。
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