・NOAA
昨日 12月2日、アメリカ海洋大気庁(NOAA)が、「 2001年の始めから 2015年の終わりまでのすべての地震」を図で示した動画をリリースしていました。下のリンクにあります。
21世紀に入ってから 2015年の終わりまでの 15年間に起きた全世界の地震を規模と震源の深さなどで色や大きさなどでわけて表示したものです。
全部で 3分50秒ほどあるその動画は、ただ漫然と見ていても何だかわからない感じではあるのですが、そこに表示された 2011年 3月11日の東日本大震災の地震、あるいは、22万人以上が亡くなった 2004年 12月26日のスマトラ沖地震の規模のすさまじさをあらためて突きつけられた感じがしました。
それを少しご紹介したいと思います。
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2011年の東北の地震の途方もない巨大さに今さらながら再確認する
NOAA のこの図にある円は、下のように震源の深さを色で、地震の規模を示すマグニチュードを円の大きさであらわしています。
そして、たとえば、下のような感じで、毎日世界で起きた地震の記録が表示されていきます。
普通は上のような感じの日が続くのですが、東日本大震災の日の同じ図は下のようになります。
2011年3月11日(東日本大震災当日)の世界の地震の分布
マグニチュードを示す円の大きさで日本はもちろん、周辺地域のすべてが覆い隠されてしまうような規模を示しています。
そして、こちらは、2004年のクリスマスの次の日。
2004年12月26日(スマトラ沖大地震)の世界の地震の分布
やはり、21世紀……といっても、まだ 16年しか経っていないですけれど、2011年の東北沖での地震と、2004年のスマトラ沖でのふたつの地震は、いろいろな意味で突出していることがわかります。
もちろん、死者数でいえば、この 16年の中には、
・四川大地震(2008年5月12日 / マグニチュード 7.9 / 推定死者数 9万人)
・ハイチ地震(2010年1月12日 / マグニチュード 7.0 / 推定死者数 21〜31万)
という、合わせれば 30万人以上の人が亡くなっている地震も起きていますが、ここでは、人的被害や経済的被害ではなく、「地震の規模」に焦点を当てれば、2011年の東北沖の地震と、2004年のスマトラ沖の地震が、まさに、「とんでもない地震」だったことがあらためてわかるのです。
なお、ハイチで 20万人から 30万人亡くなった地震(いまだにハイチ地震での正確な死者数は不明のままです)の規模は「マグニチュード7」です。
そして、2011年に東北で起きた震災の規模は「マグニチュード9」です。
この差がどれほどのものかおわかりでしょうか。
数字でいえば「2」しか違わないのですが、このマグニチュードの数字が示すエネルギーの差は、そういうものではありません。
たとえば、Wikipedia には、下の記述があります。下線はこちらでつけたものです。
マグニチュード - Wikipedia より
マグニチュードは地震のエネルギーを1000の平方根を底とした対数で表した数値で、マグニチュードが 1 増えると地震のエネルギーは約31.6倍になり、マグニチュードが 2 増えると地震のエネルギーは1000倍になる。
というように「マグニチュードが 2 増えると地震のエネルギーは 1000倍」になるということで、
「マグニチュード9(東北の地震)は、マグニチュード7の地震の 1000倍のエネルギーが放出された事象」
といえるのです。
もちろん、いろいろな条件があり、一概にそう言えるということではないですが、少なくとも、2011年の東北のマグニチュード9という地震は、たまに起きることのあるマグニチュード7の地震と規模を比べることすら難しいほどの、本当に凄まじいエネルギーの放出がおこなわれた事象だといえるのだと思います。普通のことではないのです。
そのことを NOAA の動画であらためて認識した次第です。
21世紀の異常
このような「マグニチュード9」というような地震は、それほどのエネルギーのものだけに、起きるのも希で、記録の残る 20世紀以降の 115年間で、マグニチュード9以上が確定している地震は、
・カムチャツカ地震(マグニチュード 9.0 1952年)
・チリ地震(マグニチュード 9.2 - 9.5 1960年)
・アラスカ地震(マグニチュード 9.1 1964年)
・スマトラ島沖地震(マグニチュード 9.1 - 9.3 2004年)
・東北地方太平洋沖地震(マグニチュード 9.0 2011年)
の5回だけで、このうち(津波を含めて)、巨大文明圏を直撃した地震となると、2004年のスマトラ島沖地震と 2011年の東日本大震災のふたつだけといってもいいのではないでしょうか。
そして、上の羅列の「アラスカ地震とスマトラ島沖地震」の間ですが、
・アラスカ地震(1964年)
↓( 40年間の間隔)
↓
・スマトラ島沖地震(2004年)
となっています。
希な現象なのですが、今のところ、21世紀では数年単位で続いています。
では、21世紀は、そういう規模の地震の起きる可能性が高くなっているのかどうかというと、可能性についてはわかりようがありませんが、たとえば、今回の NOAA のグラフによりますと、21世紀に入ってからのマグニチュード8以上の地震は、
2001年06月23日 M 8.4 ペルー南部沖
2003年09月25日 M 8.3 北海道
2004年12月23日 M 8.1 ニュージーランド南部
2004年12月26日 M 9.1 スマトラ島
2005年03月28日 M 8.6 スマトラ島
2006年05月03日 M 8.0 トンガ
2006年11月15日 M 8.3 千島列島
2007年01月13日 M 8.1 千島列島
2007年04月01日 M 8.1 ソロモン諸島
2007年08月15日 M 8.0 ペルー沖
2007年09月12日 M 8.4 南スマトラ
2009年09月29日 M 8.1 サモア諸島
2010年02月27日 M 8.8 チリ沖
2011年03月11日 M 9.1 日本の東北沖
2012年04月11日 M 8.6 スマトラ沖
2012年04月11日 M 8.2 スマトラ島北部
2013年02月06日 M 8.0 ソロモン諸島
2013年05月24日 M 8.3 オホーツク海
2014年04月01日 M 8.2 チリ北部
2015年09月16日 M 8.3 チリ中部
と、全部で 20となっています。
これは 2001年から 2015年のもので、しかもマグニチュード8以上の巨大地震だけですので事例も少なく、これだけでは、その期間に増えているとも減っているとも何ともいえないですが、さらに過去 100年ほどの流れをみてみると、マグニチュード6から8までの規模の大きな地震(被害を伴うもの)が世界で増えているのかどうかという問いに対しての答えはわりとはっきりしています。
1901年から2011年までの破壊的被害をもたらしたM6-8の地震の発生数(USGS)
このようになっていて、特に 21世紀になってからは、規模の大きな地震による「被害」が、かなりの増加傾向にあります。
このあたりは、
・M6以上の地震が毎日起きている世界を迎えた中、シュタイナー学派の「21世紀前半から悪魔的存在が活動を開始した」とする見解を思い出してみる
2016/04/17
という記事に記したことがあります。
上のグラフを見ますと、昔は、マグニチュード6以上の地震や、それによる被害というものは、どちらかというとレアな現象だったようですが、今では、それが当たり前のことになってきているということがわかります。
さきほどリンクした記事には、2016年4月の熊本地震の前後の世界の M6 以上の地震について記していますが、その頃は以下のような状態でした。
2016年4月10日からの1週間の世界
4月10日 M6.6 アフガニスタン
4月13日 M6.9 ミャンマー
4月14日 M6.5 バヌアツ
4月14日 M6.5 熊本
4月15日 M6.4 熊本
4月16日 M7.3 熊本
4月16日 M6.0 熊本
4月17日 M7.8 エクアドル
おそらく、こんなにマグニチュード6以上の地震が連日起きたことは、記録に残る歴史上でもほとんどなかったと思われます(もしかすると初めてかも)。
こういうことも、冷静に過去と比べてみますと「実は私たちは何だかすごい時代に住んでいる」ということも言えそうです。
まあ・・・そしてですね。縁起でもないような発想かもしれないですけど、たとえば、上の 4月の地震は、
4月10日 M6.6
4月13日 M6.9
4月14日 M6.5
4月14日 M6.5
4月15日 M6.4
4月16日 M7.3
4月16日 M6.0
4月17日 M7.8
というようにあります。
これがいつの日かですね、1.0くらいずつランクアップして、
○月10日 M7.6
○月13日 M7.9
○月14日 M7.5
○月14日 M7.5
○月15日 M7.4
○月16日 M8.3
○月16日 M7.0
○月17日 M8.8
というような連続の時が、絶対に来ないといえるのかどうか・・・は、わからない部分があるような気さえするのです。
そんなことは想像もつかないことだと思います。
しかし、おそらく、ほんの 20年前にはどんな専門家も「今のようになること」は想像もしていなかったと思います。つまり、先ほどのような大規模な地震の発生数のグラフになるとは誰も想像していなかったということです。
そういう意味では、「誰も想像していないことだから起こらない」ということにはならない気もするのです。
期間がやや違いますが、別の形の同じグラフをもう一度提示いたします。
1901年から2011年までの破壊的被害をもたらしたM6-8の地震の発生数
このグラフは、21世紀というのが「それまでとは違う世紀」であることを何となく感じさせてくれるものではないでしょうか。
そういえば、「マグニチュード9」といえば、昨日、ロシアのメディアで、いわゆる南海トラフ地震のことだと思われますが、そのことについての報道記事のようなものがアップされていました。
2016年12月2日のロシアのメディアより
内容は、日本でしばしば報じられることがロシア語になっているだけですので、特に内容を記すことはいたしませんが、その記事には、この海域での最大マグニチュード9クラスの超巨大地震の発生可能性について、何人かの日本の地震学者たちが、
・今後 20年間で 50%
・今後 30年間で 40%
・今後 50年間で 90%
の確率で発生すると予測していると書かれてありました。
今後 50年というと、今お若い方なら、これからの人生の中に入る年月でもあります。
まあしかし、全世界のどこにしても、学者の方々のこういう予想が当たったことはあまりないですので、この年数の数字そのものを気にする必要はないと思うのですが、それよりも、むしろ、先ほどの USGS のグラフが示している、
「 21世紀は先の世紀とは違う」
というような感覚的な示唆が存在していること自体の方が、地震を含むそういう自然災害が起きても不思議ではないという思いに私たちを連れて行ってくれるものであるような気もします。
過去 100年で5回程度しか起きていないマグニチュード9ほどの地震が次にいつおきるのかは誰にわかりませんが、しかし起きることは起きるだろうとしか言いようがないことも事実です。
そういえば、今年、地震が多発しているニュージーランドですが、地震の後はあまり報道に上がることはないのですけれど、今、ニュージーランド周辺では異変が起き続けていて、どのようなことが起きているのか集めています(毎日のように何か起きています)。
日本とは環太平洋火山帯に属するという点で共通するニュージーランドで今起きていることを見ていると、その地質活動が、もしかすると異常な局面に入っているかもしれないことが想像できたりします。
そのうちまとめてご紹介できればとは思っています。