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人類の未来 健康の真実 日本の未来

アルツハイマー病の発症を「最大17年間遅らせる」ことができる遺伝子がオーストラリアの大学の研究で発見される

投稿日:2015年12月2日 更新日:

2015年12月02日のオーストラリア国立大学ニュースより
delay-alzheimer-topANU




 

ほんのすぐ先の未来に広がる「この世の終わり」を示す推測値

最近、

アルツハイマー病の最大の原因が「ストレス」である可能性がアイルランドの大学の研究により突き止められる
 2015/10/23

という記事を書いたことがありますが、今回も認知症に関係した冒頭のオーストラリア国立大学のニュースリリースをご紹介したいと思います。

まあ、冒頭のニュースは、写真だけを見ていると、何だか楽しげで、「ビルと愉快な仲間たち」とでもいうような、下のように、モニターで「今日のレース結果」を見て色めき立っている陽気な遊び人3人組のようにも見えます。

yukaina-nakama

 

しかし、この方々は、そういう人たちではなく、大変に有意な発見を行った方で、真ん中の貫禄のある方はオーストラリア国立大学の遺伝子学者、アルコス - ブルゴス准教授という方で、立っているお二人も、それぞれ医学博士です。

それで、この方々が発見したものは、

「アルツハイマー病の発症を最大 17年間遅らせることができる遺伝子」

なのですね。

今回はそれをご紹介させていただきます。

まあ、なんといっても、認知症の問題はもはや「地球の問題」ともいえる話にもなっていて、我が国にしても、日本の認知症の推移の予測は下の通り(私自身は、もう少し加速すると考えていますが)。

厚生労働省の推計した日本の認知症の推移

japan-alzhemers-2030日本経済新聞

 

人口が減っていく日本では、2030年には、人口が今より 1100万人ほど減ると、厚生労働省の資料では推計されていますので、2030年には、

人口1億1000万人のうちの800万人が認知症

ということになり、大ざっぱに、「 10人に 1人が認知症」という時代もそれほど遠くはないということになっています。

2050年になると、厚生労働省の推計で、日本の人口は 8000万人くらいになっていて、そのうち、「 65歳以上の高齢者が 3500万人」となっていますから、予測での推移で認知症の人が増えた場合、大ざっぱですが、認知症患者の数は 1500万人を超える計算になりますので、

2050年の日本は、全人口の5人に1人が認知症。高齢者の2人に1人が認知症

という社会になっていることになります。

これはまあ・・・終わりですよね。

そして、認知症に関して、世界全体となると、もう「指数関数的」と言いたいほどの状態で、下のようになっています。

2013年から2050年までの世界での認知症の推移の予測(2013年)

dementia-world-2050The Global Impact of Dementia 2013–2050
(2013年から2050年までの認知症の世界的影響)

 

2040年くらいには、世界の認知症患者の数が1億人を突破する予測のグラフとなっていますが、上のグラフに、「オリジナル」という、下のほうのグラフの線がありますが、これは 2009年時点の予測です。

すべて、4年後に、1千万人くらいずつ予測を上方修正していることがわかります。

これはつまり、

「たった4年間で、予測を大幅に上回る認知症患者が発生した」

ということを意味しているのでしょうけれど、私自身は、上の上方修正したグラフをも、さらに上回って推移すると考えています。

ちなみに、国際アルツハイマー病協会によれば、現在、世界では「 3.2秒に 1人の新たな認知症患者があらわれている」のだとか。

全世界の認知症費用は2018年までに1兆ドル(120兆円)

2015年8月25日 国際アルツハイマー病協会

国際アルツハイマー病協会は、8月25日、「世界アルツハイマー病報告2015年版―認知症の全世界的影響:有病率、罹患率、費用および流れ」を公表し、現在、認知症の人は全世界で約4680万人で、2030年までに7470万人に、2050年までに1億3150万人に増加することを明らかにしました。また毎年全世界で新たに990万以上の事例があり、これは3.2秒に1事例となります。

報告書は、現在、年間の社会的経済的費用は8180億アメリカドル(約 98兆円)であり、3年以内に1兆ドルになると予測しています。この値は、2010年版報告書で推計した6040億ドル(約72兆円)より35%増えたことになります。

このことは、全世界の認知症ケアが一国で行われたとすると、世界で18番目の経済大国となり、アメリカのアップル(7420億ドル)やグーグル(3680億ドル)といった企業の市場価格を超えます。

というわけで、こちらも、たった数年で予測を大きく上回ったようで、しかし、認知症にかかる経済的負担が 98兆円というのはすごいですね。

ちなみに、この「 98兆円」というのは、国家予算ランキングの5位〜6位程度に相当する、結構途方もない数字です。

国家予算規模ランキング(歳入 / 2012年) 

1位 アメリカ 約209兆円
2位 日本   約172兆円
3位 中国   約156兆円
4位 ドイツ  約128兆円
5位 フランス 約113兆円
6位 イギリス 約84兆円
7位 イタリア 約81兆円

なんだか、この国名の連なりを眺めていますと、わけもなく「第二次世界大戦」というような言葉が浮かんできますが、それはともかく、世界の認知症への経済的費用は、そのうち、フランスやドイツの国家予算を超えてきそうです。

・・・というわけで、現実的に、世界はもう大変なわけですが、本当にどうなっていくのでしょうかね。

まさか、こんなところに「世界の終わり」の入り口が見えていたとはねえ・・・(しみじみと楽しかった人生を振り返ってみる)。

 

私たちの中に「アルツハイマー病の発病を減速させる遺伝子」がある

さて、そんな世界の絶望デイズに一筋の光が差し込むかどうか、といった今回のオーストラリア国立大学のニュースですが、ご紹介しますニュースリリースは、一般向けですので、やさしく書かれていますが、研究論文そのものは、ネイチャーの医学部門なのでしょうか、「モレキュラー・サカイアトゥリ」( Molecular Psychiatry / 分子精神学)というものに掲載され、下のように概要も載っていますが、恐ろしく難しいです。

Molecular-Psychiatry-apoenature Molecular Psychiatry

今回のオーストラリア国立大学のニュースリリースについて、興味を持ったのは、もちろん、日本を含めた様々な国で認知症がどうしようもないスピードで増加し続けているということもありますが、アルツハイマー病の発症を遅らせることができる、として見つけたものが、「遺伝子」だったからです。

つまり、

「私たちの中にもともとあるもの」

がアルツハイマー病の発症を、最大で 17年遅らせることができるのだそうで、さらにニュースリリースで興味深いと思ったのは、下の下りでした。

チームは、アルツハイマー病に関与する9つの遺伝子を単離することに成功した。9つのうちのいくつかの遺伝子は、病気の進行を早める一方、そのうちのいくつかは、アルツハイマー病の発症を最大 17年遅らせる

つまり、私たちの遺伝子の中には、

・アルツハイマー病の発症を加速させる遺伝子

・アルツハイマー病の発症を遅らせることのできる遺伝子

の両方があるということになるようです。

ニュースリリースにはその言葉は出てきませんが、上のネイチャーの見だしにある「アポE」というものが、関係しているようです。

この「アポ」というのは今回初めて知った言葉ですが、正式名はアポリポタンパク質というもので、体内にあるタンパク質なのですが、こけはアポAからアポEの5種類があり、その中の「アポE4」と呼ばれるタンパク質が「アルツハイマー病の危険因子」とされています。

下は大阪市立大学大学院医学研究科のページからです。

アポリポ蛋白 E - アルツハイマー病との関連についての知見 より

1991年、アルツハイマー病の剖検脳からその病理学的特徴である老人斑や神経原線維変化にアポEが免疫組織科学的に検出された。この結果から、 アポEがアルツハイマー病のの病態形成に際し何らかの役割を果たしている可能性が考えられた。

更に1993年、アポEの対立遺伝子ε4(表現型:アポE4)の頻度が家族性アルツハイマー病の患者で高いこと、またε4の遺伝子数が増加するほどアルツハイマー病の発症年齢が低下し、発症率が増加していることが報告された。

その後、家族性だけではなく、孤発性も含め広くアルツハイマー病の患者全般において高いことが明らかとなった。

というもののようです。

この前提の元、オーストラリア国立大学のニュースリリースをご紹介しておきたいと思います。




 

Scientists isolate genes that delay Alzheimer's Disease
ANU 2015/12/02

科学者たちは、アルツハイマー病の発症を遅らせる遺伝子を特定し単離した

オーストラリア国立大学( ANU )の科学者たちは、アルツハイマー病の発症に重要な役割を果たす9つの遺伝子ネットワークを同定した。

この発見は、アルツハイマー疾患の発症を遅延させるための新しい治療法の開発に役立つ可能性があると、オーストラリア国立大学のジョンカーティン医学研究校( JCSMR )のマウリシオ・アルコス - ブルゴス( Mauricio Arcos-Burgos )准教授は述べる。

コロンビアの 5,000人の家族を対象にした研究で、科学者たちは、アルツハイマー病の発症を遅らせる遺伝子と、発病を加速させる他の遺伝子を同定した。

遺伝子学者のアルコス - ブルゴス准教授は、「もし、アルツハイマー病の進行を減速させる方法を見出したとしたなら、それは重大な影響を持つものとなるでしょうと」と述べる。

「アルツハイマー病を完全に防ぐという方法を模索するよりも、むしろ、この発症を遅らせるという方法のほうが、病気への対処に関して、より成功へと近い道筋となるように思います」

「仮に、私たちが、発症を平均1年間遅らせることができたなら、それだけでも、2050年には、アルツハイマー病の人々が 900万人以上減るのです」

現在、全世界では、約 3500万人の人たちがアルツハイマー病といわれており、2050年までには、「 85人に 1人がアルツハイマー病」になると予測されている。

コロンビア西部のある山中に住む家族は、遺伝性アルツハイマー病に苦しめられている。彼らは、大家族であり、また、親密な家族であるため、病気との戦いも独特な方法をとっている。

アルツハイマーの治療法の開発に 1億 7000万ドル(約 200億円)をかけている、アメリカ国立衛生研究所( NIH )は、このコロンビアの家族に対して、試験をおこなっている。

アルコス・ブルゴス准教授と彼のチームは、アメリカ国立衛生研究所とは異なるアプローチを取った。

この家族の中での認知症の発症の変数年齢を研究し、高齢になってからアルツハイマー病を発症した後にその症状を治療しようとするのではなく、20歳より若い人々のそれぞれの脳の変化を観察したのだ。

家族の協力の中で研究が進められ、その中で、研究チームは、アルツハイマー病の発症に対しては環境要因は重要ではないことがわかった。

そして、アルツハイマー病の遺伝的素因の痕跡を辿っていったところ、遺伝子に突然変異が起きた祖先のひとりに行き着いたのだ。それは、500年ほど前にこの地にやってきていた。

そして、チームは、アルツハイマー病に関与する9つの遺伝子を単離することに成功した。

9つのうちのいくつかの遺伝子は、病気の進行を早める一方、そのうちのいくつかは、アルツハイマー病の発症を最大 17年遅らせることがわかった。


 

ここまでです。

しかし、それにしても、やっぱり、「どうして、最近になって、急速に世界中で認知症が増加し始めたのか」というのは、基本的には謎な部分が多いですが、過去記事、

人体を神と同等と見る西洋医学の理想的な未来。そして、抗コリン剤の氾濫でおそらく認知症が増え続ける今後のための「認知症と物忘れの治し方」
 2015/04/13

などで、風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やすことがアメリカの研究でわかったことや、あるいは、先ほどリンクしましたストレスが原因の可能性という記事、あるいは、

私たちを含む多くの人類の松果体はフッ素による石灰化により、すでに「永遠の機能停止」に陥っているかもしれない
 2015/02/03

では、「松果体が石灰化していると、アルツハイマー病になりやすい」ということなども記したことがあります。

最近のいくつかの研究では、アルツハイマー病や他の認知症において、松果体の石灰化の程度が非常に高いことを示した。

松果体の石灰化はまた、アルツハイマー病の病因に寄与し得る、結晶化阻害剤の非存在とも関連していることを示す。

Pineal gland - Calcification より

それで、アメリカでは、過去17年間で「 40パーセントの人たち」の松果体が石灰化したとされているようなんですね。

まあ、そんな感じの、いろいろな「外部要因」はありそうではあるのですが、しかし、とにもかくにも、アルツハイマー病は、

「この数年の急上昇ぶりがすごい」

ということはグラフで見ても確かな感じで、外部要因にすべてを求めるのは、難しい感じもします。

細かいひとつひとつの外部要因では括れない「何か」が進行しているのかもしれない、と思わざるを得ない部分もないではないです。

ガンもそうですけど、こうなってくると、「誰が認知症になっても不思議ではない」という社会にもなってきている感じで。

私自身も、若い時に抗不安剤など、たくさん薬を飲んだりしていたことなどもありますし、実際、物忘れも多いですから、とにかく、海馬を刺激するために、常に部屋ではエッセンシャルオイル(組み合わせは、ラベンダーをベースに、ローズマリーや、オレンジ、フランキンセンスなど)を噴霧させていますけれど、そんなことが果たして役に立つのかどうか。

これまで見たこともない社会が出現する 2030年は、わりとすぐ先です。

 
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