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地球最期のニュースと資料

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WHOは「ジカ熱対策のために遺伝子操作した蚊をおおいに活用しなさい」というけれど……。感染症医学の中心に立ちはだかるパスツールの亡霊たち

   

g-e-marigobio.com

春の蚊を見て思う気温の状況

今日、ベランダで植物とかメダカとかいろいろ世話をしていましたら、「蚊」が植物用の台に止まっているのを見つけました。

 「暖かくなったものなあ。・・・つーか、キミら蚊は冬の間はどうしてるん?」
 「・・・」
 「ん?」
 「・・・」
 「ああそうか。キミら蚊は話せないんだっけ。ハハハ」

と、ささやかな狂気を漂わせながら部屋に戻り、調べてみますと、日本防疫殺虫剤協会というところのページに以下のようにありました。

蚊の一生は、季節によって異なりますが、孵化から成虫になるまでの期間は10日から15日です。アカイエカは4月頃から吸血活動を初め、10月頃まで続きますがその後休眠状態に入って洞穴等で雌成虫が越冬します。(略)

水面近くの側壁に産卵された卵は、乾燥に耐えて長く生きています。水が来て水面下に沈むようになると孵化して幼虫になりますが、一部の卵はそのまま残っていて、子孫を絶やさないようにしています。

ヒトスジシマカの場合は卵で越冬します。

「へえ」と私は唸りました。特に卵ですね。蚊の幼虫のボウフラは水のなかで生きるものなので、私は蚊は卵も水の中でだけ生きられるものだと思っていたのですが、

> 卵は、乾燥に耐えて長く生き

ということで、しかも、

> 水が来て水面下に沈むようになると孵化して幼虫に

ということで、乾燥したところでじっとし続けていて、「そこが水場になったら幼虫になり、運が良ければそのまま成虫の蚊に」という、想像以上に強い生物のようです。

上のサイトの説明では、蚊は、「空き缶、古タイヤ、空き瓶、植木鉢の水受け、墓の水受け」などでも発生すると書かれていまして、空き缶や古タイヤなどにずっと水が溜まっているわけではないでしょうから、親蚊は、そこに水がない時であっても、卵を産んだ後、雨が降ったりして「少しの間、水が溜まっている状態になれば」どこであろうと、卵は蚊の成虫にまでなるということのようです。

蚊は卵の孵化から成虫になるまで 10日〜 15日間くらいだそうですから、気温はそんなに高くなくとも、「とにかく水がいたるところにある環境」が蚊にとっては重要なようです。

それにしても、気温の高さは、もう異常なほどで、数日前の、

現在進行中の世界気温と水温の異常高温化からふと思った「高温化の本当の恐怖」…
 2016/03/14

という記事で、NOAA (アメリカ海洋大気庁)の、世界の平均気温の平年との差を載せましたけれど、もっとわかりやすい図がありまして、それが下のものです。

noaa-tem-average-feb-2016NOAA

特に、ちょっと異常といって問題ないような平年との気温の差を見せているのが、ロシア西部とアラスカあたりです。

Map-World-aa

差異が 5度だとかになると、さすがに生態系もおかしくなりそうな感じですね。

実際、アラスカではこの冬、かつてない規模の海鳥の大量死が発生して、科学者たちが原因を解明しようとしていたり、昨年の夏には、異常な数のクジラの死が確認されたという出来事もありました。

それぞれ下の地球ブログの過去記事にあります。

アラスカで「空前の規模の海鳥ウミガラスの大量死」が起きていることが発覚
 地球の記録 2016/01/14

アラスカ半島の沿岸で異常な数のクジラの大量死に対して、NOAA は「異常死亡事象( UME )」を宣言
 地球の記録 2016/08/23

 

whale_stranding_graphNOAA

 

クジラやウミドリも、それ事態が気温や海水温の高さに耐えられないということではなく、どちらも生きるために、主に魚の「エサ」が必要で、それが海水温の異常で消えていっている(あるいは、生息場所を変えている)というようなことはありそうです。

少し前の、

世界で再び始まった「鳥の大量死」の連続から思い至ったこと…
 2016/02/26

に、現在の動物の大量死の、個別の理由に加えて「大局的な理由」として、

  • 地球の磁場が減少し続けている
  • 海水温度の異常が続いている
  • 世界中で藻の毒素が水中に増加し続けている

を挙げましたが、もはやどれも満たしているのは事実ですしね。

大量死は今も加速していまして、大規模なものの速報的なものは地球ブログなどに、なるべく載せたいと思っていますが、先日は、南米チリで、2300万匹の養殖サーモンが死ぬという事態がおきたばかりです。

えーと・・・なんで気温と大量死の話になったんでしたっけ。

 

あ、「蚊」ですね。

 

蚊を見て、最近の気温のことを思ったんです。

まあ、今や蚊といえば、「ジカ」を連想させる筆頭ですが、最近の報道では、アメリカ本国でのジカウイルス感染者数が 100人を超えたというようなものもあり、今後、北半球で本格的に蚊のシーズンになっていくにあたり、いろいろ思うところもあります。

2016年3月19日の報道より
us-zika-100Business Standard

 

また、やはり蚊が媒介する黄熱病がアフリカのアンゴラで大規模な流行を見せていた、100人以上の犠牲者が出ています。

黄熱病がアンゴラで流行、146人死亡 WHO

CNN 2016.03.19

世界保健機関(WHO)は18日、アフリカ南部アンゴラで昨年12月以降、黄熱病の感染が広がり、少なくとも146人の犠牲者が出ていると報告した。
WHOの感染症流行の専門家によると、大半の被害は同国の首都ルアンダで発生。今回の事態については「大規模な流行」と位置付けている。

黄熱の媒介源は2種類の蚊とされ、このうちの1種は南米諸国を現在襲うジカウイルス感染症(ジカ熱)とも関係がある。黄熱は、蚊が感染したサルを吸血し、その後、人間を吸血することで広まるとされる。

とのことで、さらに、今日(3月20日)、外務省は海外安全情報サイトで、黄熱予防接種等についての安全情報を発出しました。

黄熱予防接種等について(2016年リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック開催中にブラジルへ渡航予定の方へ)

外務省 2016/03/20

2016年8月5日から同21日までリオデジャネイロにおいてオリンピックが、また、同年9月7日から同18日までパラリンピックが開催される予定です。

ブラジルの一部の地域では,黄熱の予防接種が推奨されるため、オリンピック・パラリンピックへの出場,観戦などで同国への渡航を予定している方は、渡航地域により、早めに黄熱の予防接種を受けることをお勧めします。

イグアスの滝、ブラジリア、ベロオリゾンテ、マナウスは、世界保健機関(WHO)による黄熱ワクチン推奨地域となっています。

黄熱病は、ジカ熱やデング熱とは違い、致死率が 30〜 50%ある文字通り致死的な感染症ですので、パラリンピックなどに行かれる予定のある方は、外務省のサイトをたまにチェックなさるのもいいかと思います。

ところで、先ほどの CNN の報道の見出しに「 WHO 」とありますが、この WHO が、奇妙(ではないかもしれませんが)な推奨勧告を出していました。

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遺伝子操作して「成虫になるまでに死ぬ蚊」をもっと拡散させよ、と WHO

先ほど、「奇妙な」と書きましたのは、前提として、少し前の記事、

ブラジルでの「遺伝子操作を施された蚊の放出」と、現在のジカウイルスの流行の関係を私が完全に無視することができない理由
 2016/03/17

に書きました内容と関連がありますというか、私感としての「遺伝子操作した蚊で感染症の拡大をコントロールしようとする試みの違和感(効果実績もよくわからないですし)」があるためですが、昨日、下のような報道記事がありました。

WHOが「遺伝子組み換え蚊」活用を推奨 成虫になれない遺伝子の放出実験求める

共同通信 2016/03/19

世界保健機関(WHO)は18日、ブラジルなど中南米を中心に広がるジカ熱対策で、ジカウイルスを媒介する蚊を抑制するため、遺伝子組み換えの蚊を活用することを推奨する声明を発表した。

生まれた蚊が成虫になる前に死ぬよう、オスの親の蚊を遺伝子操作し放出する実験事業を行うことを求めている。

またWHOは、ボルバキアという細菌の活用も推奨。蚊をボルバキアに感染させると、蚊の体内のジカウイルス増殖を抑えられるという。

WHOは声明で「ジカ熱対策には、ウイルスを媒介する蚊の抑制が最も効果的な方法だ」と強調した。

ジカ熱は妊婦の感染と新生児の小頭症との関連が強く疑われており、WHOは、妊婦に流行地域への渡航を自粛するよう勧告した。

先日の、遺伝子操作した蚊の記事を書いている時に思ったこととして、たとえば、16年前の本ですが、遺伝子操作を批判的に述べた『遺伝子を操作する―ばら色の約束が悪夢に変わるとき』という本がありますが、そこにある懸念などもあります。

その第三章に「新たな病原菌発生の可能性」が書かれていまして、Amazon のレビューにまとめられているものから抜粋しますと、下のような感じです。

「水平伝達」の危険性

遺伝子組み換えは、ウイルスその他の寄生性遺伝因子(ベクター)に遺伝子を組み込むことで行なわれる。ベクターを宿主細胞に取り込ませると、ベクターに乗せられた遺伝子によって宿主細胞の性質が遺伝的に変化する(形質転換)。

ベクターは細胞から細胞へ、生物から生物へと移動するので、ベクターに組み込まれた遺伝子が生物の種を越えて移動し、そこの細胞内にある遺伝子と「水平伝達」と呼ばれる組み替えを起こす。

これによって新たな病原菌が誕生したり、最近が抗生物質耐性を獲得したりするのである。

要するに、遺伝子操作によって、「予期せぬ病原菌」が発生したり、「予期せぬ耐性菌」が出現したりといった可能性もあり得るようなのです。

それと共に、そういう問題とは別として、仮に……ですよ。

仮に、

 > 生まれた蚊が成虫になる前に死ぬように

した蚊への遺伝子操作が、仮に蚊の発生の抑制に効果があったとして、あるいは、それによって、地域の蚊を「絶滅」に導くことに「成功」した場合ですが、その場合、非常に問いたいことは、

「蚊は地球の生態系に何の影響も及ぼしていないのですか?」

ということです。

私は、以前、

ウイルス、そして「蚊」の意味とは何か?…
 2016/01/05

という記事に書いたことがありますが、蚊というのは、「同種や異種間の動物から動物へ血(そこには細胞も遺伝子も含まれている)を伝える」という役目を持つ代表的な生物です。なので、サルから人間に感染症が伝播されもします。

他にも血液を伝える生物はいますけれど、蚊ほど全世界的に生息していて、また、小さくて移動も自由な生き物はいないはずです。

そのような、大型動物の血液を牛耳っている役割を持つ蚊が地球の生態系に果たしている役割は非常に大きいと私は思います。

今、地球が全体的におかしいのは、さまざまな種類の生き物が「急速」に減っているからであることは間違いないと思いますが、蚊のような影響力の大きなものが極端に減った場合の影響はかなりのもののように思います。

 

歴史で、とりあえず私たちは、細菌などを含めた生き物について、

  • 良いもの
  • 悪いもの

と、わけて考えてきたのが、近代の科学と医学の歴史でした。

それは一見すると、間違っていないように見えますけれど、たとえば、細菌などの微生物と人類の関わりについては、過去記事、

微生物、植物…。地球上のすべてが人類と共生関係であり表裏一体であるかもしれないことを確認させてくれる「人間と細菌たちの共存=マイクロバイオーム」の概念
 2016/01/26

に書きましたように、最先端の科学のキーワードは「共生」です。

もちろん、だからといって、ジカ熱やデング熱や黄熱病と「共生」しましょうなどということはできるわけはないかもしれません。できるわけはないかもしれないけれど、その対策の選択として、少なくとも世界の保健を代表する機関である WHO が、地域的なものではあっても、

「蚊という種の絶滅を推奨している」

というのは、倫理的な価値判断の是非ではなく、現実的な対処への考えとして合理的ではないように思えるのです。

 

話は違うかもしれないですが、最近は、「西洋医学・西洋保健概念は、あらゆる面で根本の考え方が違う歴史のまま来てしまった」かもしれないということをますます強く思えています。

対症療法や、薬のことについては何度か記したことがありますが、他の分野でもそうです。

以前少しふれたことがありましたが、形成外科医の夏井睦さんというお医者様は、「傷の治癒過程のメカニズムと本当の怪我治療」を記した本を何冊か出されているのですが、その中に『傷はぜったい消毒するな — 生態系としての皮膚の科学』という本があります。これは一般向けの上に、「傷の治療の誤った方向性の歴史」などにもふれられていて、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

この中に、「パスツールの亡霊が医学界をさまよう」という小セクションがありまして、偉大は偉大であったことには間違いないかもしれないパスツールについて記しているのですが、そこから少し抜粋します。

文中にある「彼自身の政治心情」とは、パスツールの偏狭な価値観のことで、パスツールは、労働者階級の人たちをまともな人間とは見ていなかったのだそうで、そのことです。

夏井睦 『傷はぜったい消毒するな』 第6章より

最初に発見された細菌は棒状の形態をしていたため、その発見者はギリシャ語の「棒」という意味の ” baktron ” の縮小形 “ bakterion ” (小さい棒)からバクテリアと名付けた。

しかしパスツールは彼自身の政治心情を元にして、その「小さい棒」に「病原菌」と振り仮名をふったのだ。パスツールはすべての病気は細菌が起こしていると固く信じていたからだ。

この信念はパスツールにとって、キリスト教信徒がイエスに捧げる信仰と同じくらい絶対的なものだったらしい。パスツールにとって細菌とは撲滅すべきものであり、細菌を絶滅させれば人類は病気から解放されると本気で信じていた。

そしてそれ以降、彼の弟子たちを通じて、「細菌=病原菌=人間の敵」という認識が広まってしまったのである。(略)

そして恐ろしいことに、このパスツールの思想は医学には無批判に受け継がれ、感染対策の根底に置かれてしまったのだ。その結果、「人類の敵である細菌」を殺すために、莫大な量の消毒薬が傷口に注ぎ込まれることになった。

 

上の文章から、

> パスツールにとって細菌とは撲滅すべきものであり、細菌を絶滅させれば人類は病気から解放されると本気で信じていた。

という部分は、「パスツールを WHO 」に、「細菌を蚊」に置き換えれば、現在の状況と同じようなものなのかもしれません。

考えれば、WHO のこれまでの方法論を見ていますと、WHO もまた間違いなくパスツールの末裔ではありますものね。

でも、現実には、パスツールの言っていた「細菌を絶滅させれば人類は病気から解放される」というのは間違いであるどころか、

「細菌を絶滅させれば人類も絶滅する」

ことが明らかになっているわけです(細菌が絶滅するなんてことはあり得ないでしょうけれど)。

細菌と人間は明らかに共生して、長い地球の歴史を生きてきています。

まあしかし、ジカ熱にしても、その他の蚊が媒介する病気の問題にしても、それぞれが複雑な問題を生み出していて、何とかしなければならいなということは確かだと思います。

でも、それでもやはり「遺伝子操作した蚊」を・・・たとえば、そんなものを世界中に大量に放出するような日が来た場合は・・・それこそ、聖書のアルマゲドンが近い時だという雰囲気があります。

すべては、夏までにジカ熱の流行がどのようになっているかでしょうかね。

場合によっては、さらに厄介なモンスター・バクテリアが登場してくるような感じもあります。