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2016年からの世界 人類の未来 未来の地球

サンゴと海藻が全滅に向かい続ける「地球の海」の近い未来

投稿日:2016年6月20日 更新日:

2016年6月18日のタイの報道より

Bangkok Post




 

冒頭の記事は、ベトナムのビーチリゾートとして人気の海域で、サンゴ礁の 30%から 40%が「白化」の影響を受けていることが判明したという記事でした。

「白化」というのは、厳密には「死」という言葉と同義ではないですが、現状では限りなく近いですので、言い換えれば、大規模な白化現象というのは「サンゴの大量死」と同じような意味だと思っていただいて構わないと思います。

この報道を見て、

「なんだか、もう全世界でサンゴが消えてしまうのでは?」

と思ったのですが、すでに太平洋では大規模なサンゴの白化が拡大しています。

サンゴ礁で有名なオーストラリアのグレートバリアリーフのサンゴ礁は、もはや「絶滅間近」という言葉が使われ始める状態となっています。

下はナショナルジオグラフィックの記事です。

「白化していた」という言葉を「死にかけていた」と置き換えて読んでいただければわかりやすいかと思います。

グレート・バリア・リーフの93%でサンゴ礁白化
ナショナルジオグラフィック 2016/04/25

<グレート・バリア・リーフは、2900の小規模なサンゴ礁から構成される。今回調査したのは911のサンゴ礁で、このうち実に93%に上る843のサンゴ礁が、何らかのかたちで白化していることが判明した。

さらに、主に北部にある手つかずの316のサンゴ礁において、そこに生息するサンゴの60~100%が白化していた。

サンゴ白化の拡大によって、副次的な影響が大きくなることは明らかだ。というのも、グレート・バリア・リーフには1500種を超える魚、世界のウミガメ7種のうち6種、30種のクジラやイルカが暮らしている。

今の海の状態が続けば、サンゴは消滅へ

現在の太平洋のサンゴの大量死の深刻な部分としては、いわゆる海の汚染とか、人的な要因とか、そういうこととはあまり関係がないと思われることです。

たとえば、先ほどのナショナルジオグラフィックの記事にも、アメリカ海洋大気庁(NOAA)のサンゴ監視に携わる人が、以下のように述べています。

「これほど広い範囲で、特に人間による影響が少ない北部で深刻な影響が出ていることは大きな問題です」

人間の生活圏から大きく離れたような場所でも、次々とサンゴが死んでいっているということで、最大の理由は「海水温の異常な上昇」ということになりそうですが、地球の海水温の異常な高さは、もう長く続いている上に、今すぐに解消していくという感じもしない問題ではあります。

そして、海水温度の高さは「ほとんど全世界の海域」に及んでいます。

昨年書きました記事、

海の巨大な変化とミニ氷河期の関係(1):大西洋で拡大する「異常に冷たい海域」と、海流システムの異変が招く地球の行方
 2015/10/15

では、その時点まで、海水温度が上昇し続けていることを書きました。

2014年7月までの世界の海水温度の推移

Climate Observations

 

このグラフは 2014年7月までのものですが、全世界の気温と共に海水温度もさらに上昇し続けていて、しかも、大西洋の一部を除いた地球上のほぼすべての海域でこのようなことになっているのです。

グレートバリアリーフのサンゴの大量死の原因のひとつが「海水温度の上昇」だとしますと、これは世界の他の海域にも当てはまるわけで、地球上のあらゆる海域のサンゴが白化していっても不思議ではないと思います。

そして、少なくとも太平洋に関しては、サンゴを滅ぼしているのは、海水温度だけではないのです。

もうひとつ大きな要因があります。

それは、「ヒトデ」なのです。

2015年11月16日の米国ワシントンポストより

Scientists say a plague of sea stars is devastating Pacific coral reefs

 

ヒトデの中の「オニヒトデ」というものなのですが、このオニヒトデの太平洋での数も増殖が続いていて、数千万匹という数のヒトデが日々、太平洋のサンゴを食べ続けています。

以前、地球ブログで翻訳しましたオーストラリアの報道から抜粋したいと思います。

オニヒトデが「まるで農作物に被害を与えるイナゴのように」大発生している

Brisbane Times 2015/12/11

グレートバリアリーフのサンゴを食べてしまうヒトデの発生が、これまでの記録を上回って過去最悪になる可能性があり、自然保護活動家たちを恐れさせている。

WWF のオーストラリア支局が委託したレポートによると、サンゴを食べるオニヒトデの数は 2020年までに 1200万匹から 6000万匹に上昇する可能性が述べられている。

オニヒトデのサンゴの被害についての著作がある専門家のグレン・ホルムズ( Glen Holmes )博士は、「これはまるで、イナゴによる壊滅的な被害のようなものといえるものなのです」と述べる。

ヒトデによる被害の規模は、すでに過去 30年間でサンゴ礁「6万ヘクタール」に及んだ範囲で生きたサンゴが壊滅していっていると考えられている。

このオニヒトデの拡大を止めるための手段は何もない。

この「ヒトデがサンゴを絶滅に追いやっている」という響きには、何かこう皮肉な部分がありまして、種類はオニヒトデとは全然違うものではありますが、太平洋では「ヒトデが絶滅していっている」という事実があるのです。

これは何度か記事にしたことがありましたが、たとえば、

米国オレゴン州のヒトデは「絶滅の方向」へ…
 2014/06/06

という記事の中でご紹介したオレゴン州立大学のニュースリリースには、

このほんの2週間ほどの間に、オレゴン州沿岸のヒトデの消耗性疾患は、歴史的な範囲に拡大しており、ヒトデの種類の中には、全滅するものもあると予測されるという事態となっている。

消耗性疾患の発生を監視してきたオレゴン州立大学の研究者によると、オレゴン州沿岸では、局所的に一部の種類のヒトデが絶滅するかもしれないという。

この消耗性疾患は、アメリカ西海岸で広く知られていたが、今回のオレゴン州のように、急速に広範囲に拡大するのは異常としか言えないと研究者たちは語る。

とあり、これが2年前ですから、今どうなっているのかは正確にはわからないですが、種類によっては「全滅」している可能性もありそうです。

このヒトデの死に方がまた記憶に残るものだったんですね。その死に方の名称こそ「消耗性疾患」というような難しい呼び方をされているのですが、一言でいえば、

「自分で自分をバラバラに崩壊させて死んで行く」

という「自死」に近いものでした。

下のように、「自分で」自分の腕を切り落としていって、ついには死んでしまうのです。

サンタクルーズ海洋科学研究所

 

いっぽうでは、太平洋でヒトデたちが「自死」を決行していて、その太平洋では、種類は違うヒトデとはいえ、ヒトデがサンゴを食べ尽くしているという構図は「何だかなあ」と思わせるものがあります。

そして、海藻も「海に生命が生きられる環境を作っている」わけですが、海藻も、地域的には確実に「絶滅」に向かっているのです。

2016年4月28日のロシア・トゥディより

RT

アメリカのフロリダ湾で大規模な海藻の大量死が起きていることを報じたものですが、原因は「はっきりとしない」のです。

これも、仮に原因が人為的なものではなく、海水温の変化や海流の変化など「自然」の原因だとすれば、この海藻の地域的な絶滅も、あらゆる場所で発生する可能性があるのかもしれません。

前回の記事、

異常な増加を見せる「人間に対しての動物の攻撃」は、今の地球の人類と他の生命との関係のどのような状態を現しているのか
 2016/06/19

の最後のほうで、

現在の地球は、「人間と他の生命との関係がうまくいっていない」

というようなことを書きましたが、海の中の生命に関しても同じことが言えるのかも知れません。

ちなみに、海から海藻やサンゴが次々と消えて言っている中、増えているのは、「藻」です。

2016年3月13日のカナダの報道より

vancouversun.com

過去記事の、

「大量死が著しく増加している原因」も「アルツハイマー病が著しく増加している原因」も、どちらも同じ理由が絡んでいるかもしれない — それは「世界中で増大する藻=シアノバクテリア」
 2016/02/21

では、アメリカ地質調査所(USGS)の科学者たちの調査で、アメリカ中で「藻」が増えていることを突き止め、そして、藻から作られる毒素(BMAA)が、認知症の発症の引き金になっている可能性を記しました。

発症した認知症を「悪化」させるのはストレスだということは、最近の研究でほぼ間違いなく、先日の NHK スペシャルの「キラーストレス」という番組では、ストレスが脳の海馬を破壊する仕組みが最近わかったことを説明していました。

また、悪化だけではなく、認知症の発症そのものにストレスが関係している可能性の研究について、「アルツハイマー病の最大の原因が「ストレス」である可能性がアイルランドの大学の研究により突き止められる」という記事に記したことがあります。

まあ、認知症の話はともかくとして、藻の毒素は、海や川の小さな生物から大きな生物、陸上の生物へと循環していくものですので、食物連鎖の最後のほうにいるものたちは、藻の毒素が凝縮された魚や肉を食べているのかもしれません。

いずれにしましても、今、海は激しく変化しようとしているのかもしれず、もし仮に今の傾向が止まらなかった場合、すでに各所に点在している生命が生きられない海域「デッドゾーン」の出現がさらに加速するのかもしれません。

今回、海水温度が高いと、なぜサンゴが死ぬのかという理由を書く時間がなかったのですが、このサンゴが生きている仕組みというものは、共生という意味でまったく素晴らしいもので、いずれ書きたいと思っています。

海の中の環境に関して人間ができることは少なく、できることの中で最も重要なのは「考える」ことだと思います。

そこから何が始まるかはわかりませんが、考えることだと思います。

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