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3月22日にメルマガ悪魔に乾杯を発行させていただきました。

2016年からの世界 未来の地球

国境が崩壊する時、ヨーロッパ社会は? その時に世界は?

投稿日:

2016年2月27日の英国報道より

eu-border-collapseDaily Star

 

自棄的「うつ」の副産物

理由はともかく、昨日、本当に久しぶりに「うつ」に陥ったのですね。

夜も、家族が眠った後も眠られずに、ボーッとお酒を飲みながら何をするでもなく座っていたのですが、深夜 12時過ぎでしたか、ふと「テレビでもつけてみようか」と、テレビをつけたのです。

この行動だけでも、昨日の私がかなり異常な精神状態だったことがわかります。

何しろ、私は「夜一人で起きている時にテレビをつける」ということはまずしないのです。

好きなテレビ番組は見ますけれど、何となくつけることはあまりなく、決めた番組の時だけつけます。日々見ている番組としては「今日の料理」と、NHK教育の「ハートネットTV」(これは日本で唯一意味のある番組だと思います)くらいですが、何となくテレビをつけるということはしないので、夜中に自主的にテレビをつけたのは、2001年の同時多発テロの日以来くらいでしょうか。

それはともかく、昨日の深夜にテレビをつけましたら、NHK で、ちょうど番組が始まるところでした。何かの再放送のようです。

それは、NHK スペシャル「難民大移動 危機と闘う日本人」というものでした。

ギリシャ、ヨルダンなどで、シリアなどから逃れてきた難民の保護と支援に向き合っている UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)に所属する4人の日本人職員の姿を追ったものでした。

職員たちはみな女性です。

私は、最初はボーッと見ていたのですが、実は、昨日の日中、いくかの難民関係の報道を目にして、そこからこのことがとても気になっていて、結局、半日ほどヨーロッパの難民関係の報道などを読んでいました。

うつキッカケで偶然見ることになった昨日の NHK スペシャルの再放送は、難民の方々の個人個人などの事情について、私たちには曖昧にしかわからないことをいくつか知らしめてくれた感もありました。

そして、日中考えていた「あること」をさらに強く思うのでした。

この UNHCR の日本人職員の方々の行動と仕事ぶりは、ただただ尊いもので、本当に素晴らしいとしか言えないものだと思います。

・・・しかし・・・その一方で、この職員の方々自身のお言葉なども含めて、あるいは、ここ最近、ヨーロッパ各国が「入国制限」を設け始めていたりしていることも含めて、いろいろな最近の現状を見ていると、

「限界が近づいている」

という感じがとてもしたのです。

そして、その「限界」は、本当の意味での限界のようにも思えます。

このヨーロッパの問題だけではなく、さまざまな面で、やはり私たちは、今の数千年の文明の中で最大の山場を迎えている気がしたのです。

あるいは、その「山場」は超えられない山場かもしれないと。

NHK の番組を見た後に、酔った頭でそう考えていました。

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現場に存在しない「善悪の存在」

2月29日に、ギリシャとマケドニアの国境で「国境フェンスが難民たちに破壊される」という事態が起きました。ギリシャ側の国境地帯には、難民の人々がテントで暮らしているのですが、現在、下のような状況となっています。

マケドニアは2月下旬からアフガニスタン人の入国を原則として認めない措置を導入。身分証明書を所持しているシリアやイラクからの難民らの越境についても1日あたり数百人に制限している。

このため、ギリシャ側の国境地帯の難民キャンプでは約7000人がテント暮らしをしながら越境許可が出るのを待っている。(毎日新聞 2016/03/01)

2月29日にマケドニアの国境フェンスを破壊したのは、上の記事にあるようなテント暮らしをしている難民の人たちで、いわゆる一般の人々です。基本的には過激派とかでは全然ないです(いろいろと含まれている可能性は常にありますが)。

それでも、どんな人たちであっても、受け入れる国の法として「入国させない」としたならば、何が何でも入国させないというのが「法」であり、今回のマケドニアのフェンス破壊に対しても、マケドニアの国境警備兵は躊躇なく催涙弾を難民に「水平射撃」で打ち込んでいます。

下は CNN の動画からですが、警備兵は数メートル前にいる人に対して水平で発砲している様子がわかります。

マケドニア国境で難民に催涙弾を群集に水平に撃ち込む警備兵

migrant-gm-01CNN

 

普通、催涙弾はやや上に向け、群集に着地するように撃つのですが、このマケドニアの場合は、群集との距離があまりに近いためと、おそらく恐怖心(警備兵より難民の数のほうが圧倒的に多い)も加わったのでしょうけれど、それでも、催涙弾の水平射撃は安全ではないです。機動隊 - Wikipediaには、催涙ガス弾の使用について、以下のようにあります。

ガス筒発射器は、暴動鎮圧の際に使用し、ガス筒(催涙ガス弾)を発射する。弾が群衆の中に上から飛び込むよう、打ち上げるのが正しい用法。

直接照準(水平撃ち)したものが人に当たると、箇所によっては内臓破裂、眼球破裂、頭蓋骨陥没など重大な傷害を与える可能性があるため、水平撃ちは禁止されている。

とあります。

実際、今回のマケドニアの群集の鎮圧の場合も、小さな女の子が、顔に被弾したのか催涙弾そのものの影響なのかわかりませんが、母親が泣き叫びながら女の子の顔を水で洗う場面が映されていました。

催涙弾で顔を負傷した小さな女の子に水をかける母親

migrant-gm-girl
誰が見ても、ちょっとした地獄なんですが、もちろん、この水平射撃したマケドニアの国境警備兵を責めるというのもちがう気はします。彼は任務でおこなっているわけで、職務上責められる部分はありません。

あるいは、フェンスを壊し、マケドニア国境へ入ろうとした難民の人たちも、心情的には責められるものではないように思います。

つまり・・・。

「この現場には責められるべき人がいない」

ようにしか見えないのです。

それなのに、暴力があり悲劇がある。

あるいは、このマケドニアの例だけではなく、どこで起きていることにしても、

「現場に責められるべき人が存在しない」

ように思うのです。

「責められるべき人」というのは変な表現ですが、しかし、仮にそういう「責められるべき人」のような人たちがいるとしても、その人たちは現場にはいない。どこかにいるのかもしれないですし(どこにもいないかもしれないですが)、少なくとも現場にはいない。

現場では任務と願望と生きるための衝動の光景が広がっているだけ。

そして、現実として、ヨーロッパ各地は「国境を閉ざしつつ」あります。

では、難民の人たちもそれに応じて、ヨーロッパを目指すのをやめるかというと、「それはない」わけです。

これから、どのくらいの数の人たちが「入ることのできないヨーロッパ」に向かってやって来るのか、よくわからないですが、昨日の AFP の記事には、以下のようにありまして、そこから想像はできます。

地中海を渡って欧州入りした移民数、今年だけで13万人超 国連

AFP 2016/03/01

国連は1日、今年に入ってからの2か月間で、13万1000人以上の移民や難民が地中海を渡って欧州に到着したと発表した。昨年前半の6か月間に同じく地中海を渡って欧州入りした人数をすでに上回っているという。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年に入って13万1724人が欧州の沿岸部に上陸し、うち12万2637人はギリシャに到着した。その大半がシリア内戦を逃れてきた人々だという。

とあり、この2か月間で、昨年前半6か月の人数をすでに上回っているということで、「むしろ加速している」ということになりそうですが、今のヨーロッパの入国制限の数から見ると、これから来る人たちも含めて「多くはヨーロッパに入れない」のではないかと思わざるを得ません。

では、どうなるのか?

というか、「どうにかする手はあるのか?」と。

それを語っているのが、冒頭の報道の「ヨーロッパの国境が崩壊するまで、あと9日」というタイトルの記事で、これは、欧州委員会の難民担当の首脳の言葉のようです。

冒頭のその記事を短くご紹介しておきます。

「あと9日」というのは、この記事が出されたのが 2月27日で、次の難民への対処に対しての欧州委員会の会合が 3月7日であり、そこで打開策が見出されないと、「崩壊する」という首脳は述べているという意味です。


'Nine days before Europe's borders collapse' warns EU chief
Daily Star 2016/02/27

「ヨーロッパの国境が崩壊するまで、あと9日」:EU首脳は警告する

国境に殺到する難民たちの数の増加に対して、ただちに打開策を見出さなければならないと、1人の欧州委員会の首脳が警告を発している。

移民問題のための欧州委員会首脳であるディミトリス・アヴラモポウロス(Dimitris Avramopoulos)氏は、「もし、行動が起こされなかった場合、システム全体が完全に崩壊する可能性がある」と述べた。

氏はブリュッセルでの会議で、「欧州連合の団結と多くの人命が危機に瀕しています。人道危機が大規模なスケールで発生する可能性が非常に現実的なものとなっているのです。そして、それはすぐそこにあるのです」と語った。

現在、EU 諸国は、国境を越えて入国していくる難民の数に制限を設ける主張をし始めたことで、難民危機はさらに悪化しつつある。そして、そのために、中東やアフリカから到着した多くの移民たちがギリシャに停滞する事態となっている。

ギリシャ政府は、現状を受けて、他の EU 加盟国が難民たちへの救済を行わないのなら、ギリシャは将来の EU との協力を拒むと主張している。

この問題に対しての新たな対処の試みについてを徹底的に議論するために、EU の首脳たちは、3月7日に会合を開くことになっている。

その一方、フランス北部のカレーでは、数千人の難民を立ち退かせるために、難民キャンプのテントが撤去されることが決められた。

これは、フランスの裁判所も認めたもので、数日後からキャンプのテントが撤去される見込みだ。フランス政府は、強制撤去の前に難民たちに自主的にこの場から移動することを勧告している。

また、フランス政府は、この措置は「あくまで人道的なオペレーションとなる」と主張し、武力による強制排除などを否定した。

しかし、援助機関は、その多くの移民たちが住む場所を失う状態となるだろうと考えており、特に「親と連れ添っていない子どもだけの移民たちへの影響は大きい」と懸念している。


 

ここまでです。

ちなみに、このフランス北部カレーの難民キャンプ排除は、その後、速やかに実施されて、下のような事態となりました。

仏北部カレーの難民キャンプ、強制撤去開始で激しい衝突

TBS Newsi 2016/03/01

フランス北部で、イギリスなどに渡ろうとする移民や難民が暮らす大規模なキャンプの一部について、2月29日、強制撤去が始まり、警官隊との間で激しい衝突が起きました。

フランス北部カレーには、中東・アフリカなどから主にイギリスに渡ろうとする移民や難民が滞在しているキャンプがあります。地元住民から「ジャングル」と呼ばれているこのキャンプには、およそ3700人が住んでいますが、市民生活に影響が出るとして、当局が撤去を計画。

中止を求めた支援団体らの訴えも裁判所に退けられて、29日、撤去が始まりました。しかし、撤去に反対する移民らがテントを燃やすなどして抗議。警官隊は、放水車と催涙弾を使って実力排除を行いました。

結局は、強制排除に近いような形だったようですが、それでも、ここにあるのも「善悪の価値判断」ではないです。

「人道」という言葉だけで、どちらかを擁護してどちらかを非難することは難しいですし、心情的な問題以上には、実は「現場」では、「どの方向性が正しいというものさえない」はずです。

何もないところで混乱と悲劇だけが拡大していく。

 

・・・つくづく思います。

「なんで、世界はこんなことになった?」

と。

皆さんは思われないですか?

どれだけ世界情勢的な理屈で説明されても、そういうことで理解納得できるものではなくなっている気がします。

あるいは、「こういう民族大移動は過去にもあった」というような話もあります。4世紀から6世紀には、ゲルマン大移動だか、ガルパン大移動だか、そういうものがあったと記憶しています。

でも、当時と今では人口がまるで違います。

世界の人口の推移

population-2016・内閣府

 

おそらく、移動した難民の数は、昨年だけでゲルマン民族の大移動などはるかに越えているはずで、しかも、ゲルマン民族の大移動の時より移動速度が速いはずです。つまり、混乱も早く進む。

もはや誰にも「ヨーロッパの国境の崩壊」という事態は避けられないところにまで来ているのかもしれません。

突き進めば、最近海外で目にするような「欧州社会の崩壊」というような事態の始まりにまで突き進む可能性がないとは誰にもいえないのかもしれませんし、そこまでいけば、それはもはや全世界の問題ともいえるはずです。





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Oka In Deep

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