In Deep

地球最期のニュースと資料

*

気流の崩壊は続く : 規則正しく続いてきた成層圏の気流のサイクル「準2年周期振動」の規則性が2015年に崩壊したことがアメリカ地球物理学連合の研究で明らかに

   

stratospheric-wind-anomalyMysterious anomaly interrupts stratospheric wind pattern

 

台風ライオンロックの無軌道な軌道にも現れる現状の気流のカオス

先日の台風 10号(アジア名:ライオンロック)は、北海道や岩手県などに大きな被害をもたらして去っていきましたが、日本を去る頃に温帯低気圧になった後も、ロシア、北朝鮮、中国と立て続けに被害を与えていきました。

それぞれの状況については、

東北を直撃した「ライオンロック/台風10号」がその後、ロシア沿岸州に到達。当局は非常事態を宣言 (地球の記録 2016/09/02)

北朝鮮北東部で「史上最悪の洪水」が発生。中国軍による住民の救出が続く (地球の記録 2016/09/04)

などの記事に書きました。

「ひとつ」の台風が、日本、ロシア、中国、北朝鮮と連続して大きな影響を与えるというのは、もう異常としかいいようがないですが、台風 10号の日本到達後の進路は以下のようなものでした。

台風10号の進路
lionrock-t10-russia気象庁

記録が残っている過去のすべての台風のルートの中には、これと似たようなものはないと思われます。

この台風 10号の日本に「上陸する前」の進行ルートのほうもカオスそのもので、日本到達前のルートのほうも、そんな台風は、記録に残っている中では過去にひとつもないはずです。

台風10号の8月19日から8月31日までの全ルート

t-10-routesウェザーニュース

この異常な進路については、ウェザーニュースさんが「台風10号追跡動画 迷走11日間を一気に1分で」という記事で、1分間の動画にまとめられています。

下は、それをさらに 10秒に短縮したものです。

台風10号の全ルート[動画]

進行しては躊躇したり、反転したりスピードアップしたりと、何かこう、台風10号が「意志」を持っているかのような動きにさえ見えます。

いずれにしても、過去にこのような動きを見せた台風はなかったわけですが、それだけに、被害の質も場所も過去とは違ったものとなったのかもしれません。

では、「今まではなかった」このような異常な動きですが、「今後」はどうなのでしょう。

今回の台風はあくまでイレギュラーなもので、今後はこういうことは起こりえないのか。

それとも、「今の地球は、何か根本的に大気の状態が過去とは違っている」ために、再び起きる可能性があるのか?

まあ、この答えとしては、

1. もう起きない
2. また起きるかもしれない

の2つしかないのですが、今回と同じようなことが起きるとか起きないということではなく、

「過去に見られたことのない大気の状態が今後も発生する可能性がある」

という意味では、「2」なのだと思います。

それが、冒頭でご紹介しました記事の内容とも関係のあることで、地球上で観測し続けられている「気流の変化のサイクル」のうちのひとつが「壊れた」可能性が出てきているのです。

今回は、地球物理学分野の世界最大の学会であるアメリカ地球物理学連合(AGU)が下のように発表した「地球の大気の異常」についてご紹介します。

アメリカ地球物理学連合「ジオフィジカル・リサーチ・レター」より

qbq-2015The anomalous change in the QBO in 2015–2016

もはや、地球の大気の状態は、少なくとも過去数十年とは完全に違ったものとなってきている可能性が高いのです。

Sponsored Link


 

地球の天候に影響するいくつかの大気のサイクル

地球の気温や天候に影響を及ぼすものとして知られているものでは、一般的には「エルニーニョ(南方振動)現象」などがありますが、実は、他にも非常にたくさんあります。

ずいぶん以前ですが、

気候を支配するものたち1 – 北大西洋振動 (NAO)
 2010/02/13

という記事に少し書いたことがありますが、気候変動に影響を与える現象として知られているものには、以下のようなものがあります。

あまり馴染みのない言葉かもしれないですので、すべてリンクを示しています。

北極振動
エルニーニョ・南方振動
マッデン・ジュリアン振動
北大西洋振動(NAO)
太平洋十年規模振動
成層圏準2年周期振動

などがあり、これらによって、世界各地の天候や気温などが変化していくとされています。あるいは、成層圏準2年周期振動は地球の大気中オゾン濃度の変化とも関係しています(この「オゾン層」については、いろいろと興味深いデータがあるのですが、いずれ記させていただこうかと思っています)。

今回、アメリカ地球物理学連合が発表したのは、「成層圏準2年周期振動」というものの異変で、この概念はやさしいものではないですが、Wikipedia から説明を抜粋しておきます。

成層圏準2年周期振動 – Wikipedia

成層圏準2年周期振動(QBO)とは赤道域の成層圏での風系が約2年周期で規則的に変動する現象のことである。

これに関しては、今回ご紹介する本文の方でもふれられていますが、どういう現象かというのはともかくとして、観測により確認されてから 60年以上、この「成層圏準2年周期振動」は、正しい期間的サイクルで変動を続けてきたのでした。

その数十年間観測され続けていた規則正しい動きが「 2015年から崩壊した」ことが、今回の発表の内容です。

まずは、そのことを取り上げた記事の翻訳をご紹介しておきます。

ここに出てくる言葉の中に、「対流圏」と「成層圏」というものがありますが、上空 10キロメートルくらいまでを対流圏、その上の 10キロから 50キロメートルくらいまでを成層圏と呼んでいます。

fig_01JAXA

現在「異常」が起きているのは、この中の成層圏での大気サイクル現象です。

それでは、ここから記事です。


Mysterious anomaly interrupts stratospheric wind pattern
THE WATCHERS 2016/09/02

不可解な異常が成層圏の大気の流れの規則性を遮断している

earth-systems-atmosphereLehigh University

科学者たちは現在、赤道成層圏においての東風と西風の典型的な交互の流れの規則の偏差を観察している。これは、これまでおこなわれたことがなかった観測だ。

私たちが地球上で経験する気象は、一般的に対流圏で発生する。対流圏は高層大気の最も下にあたる場所だ。

troposphere-a

しかし、地球の対流圏の上にある成層圏は、彼ら独自の風を生み出している。

今回の観測による新しい研究で、科学者たちは、信頼性の高い成層圏の風の規則に異常な妨害が起きていることを報告した。

この成層圏の風の規則は「準2年振動」として知られている。

これは、赤道上空の成層圏では赤道を中心とする南北対称な東風と西風が約1年交代で交互に現れる大気の規則で、強い西風で始まる準2年振動は、約1年かけて、これらの西風が徐々に弱まると、今度は西風と交代するように、東風が下部成層圏に高度に落としてくる。

このサイクルは、平均的に 28ヵ月周期で繰り返されるている。

1953年以来、科学者たちは、ラジオゾンデとして知られている機器によって赤道風を観察している。ラジオゾンデはゴム気球により上空に運ばれる。

(訳者注)ラジオゾンデ とは、地上から上空の高層気象観測の気象データ(気温、湿度、気圧)を随時観測するために、主にゴム気球で飛ばされる無線機付き気象観測機器のこと。写真は、気象庁のラジオゾンデ。

radiosondes

その観測の中で、準2年振動は、1960年代初頭に発見された。

準2年振動の各サイクルの時間的推移は、数か月程度の幅で変化することはあるが、全体としての規則性はこれまでの観測の中で、途切れることなくこのサイクルは推移していた。

ところが、今回の観測では、世界中のいくつかの赤道地点でラジオゾンデを用いたデータから科学者たちが発見したことは、今まで一度も途切れることなく続いていたこの準2年振動が、2015年に通常のパターンから逸脱し始めたことだった。

通常なら、西風の高度が下がり、それとシンクロするように風邪は弱くなり、東風が置き換わる必要があるが、2015年には、そのようにはならず、西風の高度が上に変化し、高高度の東風の下降を妨害しているような動きを見せたのだ。

これは、準2年振動の通常の動きとは違うものだった。

研究者たちは、この異常の原因を特定するために、風や温度のデータの分析を続行することを予定している。そして、これらの異常が、何らかの影響につながるかもしれない可能性についても検討する。

彼らのこの調査は 2015年から 2016年まで続いたエルニーニョ現象と、気候変動との関連についての調査も含まれる。


 

ここまでです。

ちなみに、「準2年振動」とか、あるいはエルニーニョも「南方振動」というような日本語名称となっていますが、この「振動」というのは、一般的な日本語の感覚での、ガタガタとかいう振動のイメージのものではなく、気象学でいえば、

「振動とは周期性をもって繰り返される現象のこと」

を言うそうです。

このような発生する「サイクル」を持っている大気現象が、地球にはいくつもあり、なぜ、そして、どういうメカニズムでそれらのサイクルが存在しているのかはいまだに「ひとつも」わかっていませんが、そういう中のサイクルのひとつが、「今、壊れた」ということになりそうです。

 

次々と崩壊していく地球の循環サイクル

今年6月に、

《特報》地球の気流が壊れた : ジェット気流が赤道を通過して北極から南極に進むという異常すぎる事態。このことにより、この先の気象と気温はこれまでに考えていた以上のカオスとなる可能性が極めて濃厚に
 2016/06/30

という記事を書いたことがありました。

これは、本来なら地球の北半球を東西方向に向けて流れ続けているジェット気流が「南北方向に流れている」という衝撃的な報告を取り上げたものでした。

jet-collapse-2016bPaul Beckwith

これに関しては、その後もいろいろな議論があり、このジェット気流の流れの異変そのものについて疑う意見などもあり、今でもどうもわからないままですが、このジェット気流の異常の際には、何人かの専門家や気候学者がそのように主張していたものの、公的な確認はついに「ない」ままでした。

しかし、今回は、アメリカ地球物理学連合という地球物理分野で最大の権威による発表であるということもあり、「異常が実際に起きている」ことについては疑う余地がないのです。

仮にですが、仮に、先ほどふれました「ジェット気流の異変」が(たまたまであっても)本当に起きていたということがあるのなら、私たちは、

・ジェット気流

・成層圏準2年周期振動

という2つの地球大気の循環サイクルの変化というのか「崩壊」というのか、そういうことに直面しているかもしれないのです。

そして、大事なことは、地球の現象のすべては「ひとつに収束する」というように考えられることです。

これは、たとえば、海にはいろいろな海流があって、名前のついたそれぞれの海流が存在しているように見えても、それらは結局、海水の大循環の中に組み込まれていくものですので、海流は最終的にはひとつであり、そして、おそらくは、海流は「小さな異変が、大きな異変へと結びついていく」ものだと私は考えています。

そして、大気の循環も、ある程度同じようなことが言えるのかもしれないと思っています。

その理由としては、「どうしてこれらの大気の大きなサイクルが存在するか」ということは科学的にはわかっていないわけですが、普通に考えれば、これほど大きな物理的な動きをコントロールする力となりますと、宇宙からの何らかの力か、あるいは地球内部からの何らかの力が関係していることは間違いないわけで(おそらくは宇宙)、ということは、

「宇宙からの何らかの力が変化したいるのなら、すべての変化につながる」

と考えても、それほど矛盾しない気がするからです。

とはいえ、これに関しては、そのメカニズムを推測しても仕方ないことではあります。

しかし、現実として In Deep を書きはじめてからのこの数年間は、気流の変化に起因すると思われる異常な気象や異常な大気の流れが少しずつ顕著になり続けていて、そして今では、その変化が実際に体感できる上に確認(異常気象や自然災害の増減の数値など)できる状況となってきています。

やはり変化しているのだと思います。それも、わりと急激に。

もし、大気の大きな循環のサイクルが崩壊してきているのだとすれば、今のような夏の台風シーズンだけなどではなく、秋も冬も、そして春も、私たちは何か今まで経験したことのないような気候の状態に直面する時が多くなるのかもしれません。