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不妊女性たちの半数から検出される「謎のウイルス」。そして、そこから見出されるかもしれない治療法

   

2016年7月8日の英国ザ・タイムズより

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加速度的に不妊が増加し続ける中で

今回ご紹介するのは、「新しく発見された不妊の原因となっている可能性」についてのものです。

確定したものではないとはいえ、治療法にも言及されていて、不妊等に悩んでいる女性の方などには、将来的にかなり希望のあるものなのではないかと思いまして、ご紹介させていただこうと思います。

確かに、今の世の中は、全体として「妊娠しにくい」ようになってきているようで、私の周囲にも不妊治療を受けている方が結構います。

私にしても、結婚した後に子どもができたのは3、4年後でしたし、その後も2人目ができないということになっていて、まあ、うちの場合は私が原因であることはほとんど確定的なんですが、7人兄弟とか8人兄弟とかの自分の父親を見ていましたから、子どもというのは、どんどんとできるものかと思っていましたけれど、そういう時代ではないようです。

それと共に、周囲で不妊治療を続けている方の中で「妊娠した」という話を聞くことが少ないのです。

そして、不妊治療を受ける方の数は、ものすごいペースで増えています。

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21世紀に入ってからだけでも4倍近くになっています。

上のグラフでは、2013年に不妊治療を受けた方の数は 40万人弱というように示されていますが、厚生労働省の発表では、2014年に 46万6900人という数となっています。いずれにしましても、急激に増えていることがわかります。

しかし、不妊治療の成功率の現実は、下のグラフが示すように、なかなか厳しいもののようで、出産に至るのは、二十代でも 20パーセントほど、30代後半にもなりますと、とても厳しい数字となっていることがわかります

treat-2009日本産科婦人科学会

そして、日本は、今、世界で最も多く不妊治療が行われている国となっていて、今や不妊大国ということになっています。

昨年、いくつかの記事で、子どもに関してのデータを見ているうちに、

「日本はどうしてこんなことになっちゃったんだろう」

と思わざるを得ない現実があって、進行あるいは加速していることを知りました。

それは、過去記事の、

日本の未来 : 子どもに関しての、そして、高齢者に関しての統計データから受けた衝撃
 2015/01/28

という記事や、

「そのうち日本から子どもが消えちゃうんじゃないか」と思わせる日本をめぐる統計グラフと、それと同じ曲線を描くいくつかの統計
 2015/01/30

などに記したことがありますが、生まれてきた子どもたち自身もいろいろ大変であるとはいえ、今の日本は、その前段階として、

「子どもが生まれてこない」

という状態になっていまして、まあ、こういうことを暗く考えても仕方ないのですけれど、それでも、やはり、「どうして、こうなっちゃったのかなあ」と。

昔の日本の、「子だくさん社会」は、もはやおとぎ話の世界のようです。

まあ、それはともかく、今回のイタリアの研究者たちがおこなったことは、規模は 60人程度と小さなものですが、不妊女性の約半数の子宮から、「あるウイルス」が検出され、子どものいる女性(出産経験があるということ)からは検出されなかったというものです。

つまり、そのウイルスが原因の不妊というものが存在している可能性が高いということになります。

内容的には、とてもシンプルなもので、難しいものでも長いものでもないですので、先にその記事をご紹介したいと思います。

なお、チームの筆頭研究者のロベルタ・リッツォ博士は女性です。

ロベルタ・リッツォ博士
rbrdocente.unife.it

では、そのリッツォ博士が率いる研究チームの発見についての記事です。

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Mysterious virus found in half of infertile women
The Times 2016/07/08

不妊女性たちの中の半数で見つかった謎めいたウイルス

原因不明の不妊の問題を持つ女性のほぼ半数が謎めいたウイルスに感染しているこことを最近の研究は示した。

今回のこの発見は、不妊で苦しんでいる数多くの女性たちを抗ウイルス薬によって治療することができる可能性を示唆するものでもあるかもしれない。

現在、44歳以下の女性の 70人に 1人が不妊の問題を抱えるが、その不妊女性の中の約4分の1に関しては、医師たちは、彼女たちが妊娠できない理由を見いだせないでいる。

不妊の女性のうちの4分の1の不妊の原因は今なお不明なままなのだ。

最近、イタリアでおこなわれた小規模な研究は、これら原因不明の不妊のかなりの数が、ヘルペスの仲間のウイルス(ヘルペスウイルス科)と関係があることを示した。

これらのウイルスが、子宮の中で、免疫効果に対しての化学変化の連鎖的反応を誘発している可能性があり、これにより、胚が成長することが困難になると考えられるのだ。

科学者たちは、彼らの発見が確認された場合は、この感染症は、開発した薬で一掃することができるかもしれないと述べる。

イタリアのフェラーラ大学が率いる研究チームは、30人の子どものいる女性と、30人の不妊症の女性の子宮組織のサンプルの調査をおこなった。

研究者たちは、不妊女性の中の 13人に HHV-6A ウイルス(ヒトヘルペスウイルス6)の DNA を発見した。しかし、このウイルスは、妊娠経験のある女性からは一人も見つからなかったのだ。

この HHV-6A ウイルスは 30年前に発見されたが、まだ十分に理解されていないウイルスだ。

ヘルペスの仲間の他のウイルスには、男性の不妊症と関係していることがわかっているものがある。

オンラインジャーナル PLOS One で科学者たちは、HHV-6A ウイルスは、子宮の免疫細胞の広範囲に感染するように出現しており、女性ホルモンであるエストラジオールの分泌のレベルが高いと、その感染が悪化するように見えると述べる。

エストラジオールは、女性の排卵を誘発し、胚が成長するように子宮に促す働きのあるホルモンだ。

研究者の代表であるロベルタ・リッツォ(Roberta Rizzo)博士は、この HHV-6A ウイルスが、不妊の問題を悪化させている可能性があると言う。

このウイルスは、性的に伝播する(性交渉で感染する)可能性がある。

初期の研究では、このウイルスと関与した不妊の女性の数は少なかったが、研究が進むにつれて、より広範囲に適合しているようになってきたように見えると、リッツォ博士は述べる。

現在、具体的に HHV-6A ウイルスを除菌するために特化して作られた薬は存在しないが、医師たちは、より広い範囲に適用できる抗ウイルス治療を使うことができる。

たとえば、バルガンシクロビル、ホスカルネット、あるいはシドフォビルなどだ(すべて、抗サイトメガロウイルス化学療法に使われる抗ウイルス薬)。

不妊の問題を持つ女性たちは、自然妊娠を試みる前に、これらの薬を服用することで、子宮に着床させる前に体内からウイルスを排除しておくことができる可能性に言及している。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の分子ウイルス学部の学部長であるウルスラ・ゴムペルズ博士は、今回の発見を知り、これは不妊の問題に新たな道を開いたと述べる。

「これはとても重要な結果が含まれている可能性のあるものです」と博士は言った。

「次の段階は、これが確実に不妊の原因ウイルスなのかどうかを決定することと、それが女性において、どのような免疫の変化を起こすかを確定することです」

ゴムペルズ博士は、以下の言葉を加えた。

「この HHV-6A ウイルスに対して効果的である薬は、現時点で、研究室では存在しています。しかし、その薬は、胎児に毒性を与える可能性があるので、より良い薬かワクチンの開発が必要とされることになるでしょう」


 

ここまでです。

補足いたしますと、ここに出てくる「ヒトヘルペスウイルス 6 」には、

・HHV-6A
・HHV-6B

の2種類があって、HHV-6B のほうは、とても一般的なもので、たとえば、赤ちゃんの時、ほとんどすべての子どもたちが経験する「突発性発疹」というものの原因ウイルスが HHV-6B です。

これは1度感染した後は体内に保持したままとなりますので、ほとんどの人はこの HHV-6B を体内に持ち続けて一生を生きていくということになっています。個人的な考えですが、この HHV-6B はおそらく、人間が生きていく上で基本的な免疫の何かと関与しているのだと思います。だから、赤ちゃんのほぼ全員が、このウイルスに感染して突発性発疹を起こすのだと思われます。

しかし、今回、不妊の原因のひとつである可能性が高いということがわかった HHV-6A は、よくわかっていないようです。

そのために「謎のウイルス」というようなタイトルになっているのかもしれません。

ウイルスの正体はよくわからないにしても、今回の研究では、

・不妊の女性の半数の子宮から HHV-6A が見つかった

・妊娠経験のある女性の子宮からは HHV-6A は見つからなかった

ということで、ほとんどすべての人たちが生涯持ち続ける HHV-6B と違い、HHV-6A は、「持つ人と持たない人がいる」ということになりそうです。

そして、それは生まれつきというより、今回の記事中に、

「性感染する可能性」

が書かれていましたので、性行為を通じて、人から人に伝染していくものでもあるのかもしれません。

まあしかし、そうなりますと、「不妊が伝染する」というような意味にもなってしまいますけれど・・・。

治療の可能性については、記事を読む限りは、ヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルス感染症に対しての抗ウイルス薬が有効ということですが、本当にこの治療法が有効であり、それが実用化されて、なおかつ効果的だった場合は、不妊治療に関しては嬉しい進展かもしれないです。

まあ、これは「薬治療」ということになりますが、抗ウイルス薬は、抗生物質のように体内の有益な細胞を殺すことは(基本的には)ないでしょうし、何より、それで妊娠できるなら、そんないいことはないです。

私は現在の過剰な薬使用の医療には、基本的には疑問を持っていますが、しかし、かつて、ペニシリンが何億人もの命を救い、かつては「死病」だった結核は、抗生物質ストレプトマイシンの登場で、人は結核であまり死ななくなりました。

作家の埴輪雄高さんは、戦前の若い時から結核でしたが、NHK の番組の中でのインタビューの中で、

「戦後にストレプトマイシンが登場しければ、僕は死んでいたわけですよ」

と語っていました。

いくつかの薬は、確かに億人単位の人の命を救ってきています。

今回の研究が確定したとして、不妊の一部が抗ウイルス剤で治療できる可能性があるのなら、それは、ペニシリンやストレプトマイシンのように多くの人たちを助けられるものとなるのかもしれません。

とはいっても、薬と西洋医学の世界は今、

「西洋医療の崩壊」は防げるか : 抗生物質の黙示録の時代に出現した「新しいスーパー抗生物質テイクソバクチン」と、スーパー耐性菌の未来の戦いの行方
 2016/05/30

という記事などに書きましたように、きわどいところに来ています。

そのこともあり、あまり時間はないのかもしれないですが、先ほどの不妊治療を受けている方の年次推移グラフの驚異的な伸びが少しでも減っていくような世の中になればなあとは思います。

どんなグラフを見ていても、日本はものすごい段階に突入しています。

もはや国家的サバイバルの渦中にあるといっていいかと思います。

戦後数十年で必死に作ってきた社会の結果がこれですから、誰がいいとか悪いとかではなく、この何十年はやはりあまり正しくはなかったということなのかもしれません。

それと、今回の記事を書いていて、お子様を持っている方は、その「子どもがいる」ということ自体がものすごく幸せなことだということを再認識してみるのも悪くないように思いました。

ひとりひとりの子どもたちがかつてないほど貴重な時代です。