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アメリカの憂鬱 日本の未来

2015年から加速しているアメリカの「ヘロイン / オピオイド地獄」が人ごとではないと思うのは、私たち日本人もまたあまりにも無知にさせられているから

投稿日:2017年6月13日 更新日:

2017年5月24日の米国オハイオ州の地方メディアより


cleveland.com




 

ふたつのグラフを最初に提示しておきますが、本文に関係あるというより、その前に少し書いてしまった余談と関係します。

アメリカのヘロインでの死亡者数の推移(過去5年で6倍以上に)

NIH / アメリカ国立衛生研究所

アメリカの自閉症の子ども数の推移(1975年〜2009年)


Autism Prevalence Increasing

今回は、冒頭の「オハイオ州のある郡での 2016年の統計で、薬物の過剰摂取で死亡した人の数が、殺人や暴力事件、自殺、あるいは交通事故死の数を上回り、死因の第1位となった」ということを報じるニュースです。

今年3月の記事、

《地獄の夏》という名のパラダイムシフトが2017年にやって来るのなら… : アメリカの年金地獄やヘロイン地獄に見る「門」のようなもの
 2017/03/17

でも、アメリカのヘロイン流行の急拡大について少し書いたことがありますが、関係するようなことです。

そして、今のアメリカの蔓延の急増ぶりを見ていると、ヘロイン地獄が「あるいは他の国の話でなくなる可能性」だってあるのかもしれないと思うこともあります。

今の日本人の多くは「薬と無縁で生きてきた人たち」ですが、それだけに、メディアやニュースなどが流す「違法な薬は全部同じよにう悪い」というように考える人が多い気がしますが、それが実は一番危険な気がします。

日本で芸能人絡みで報道されるようなものには出てこない「本当に悪いものは何か」ということを日本人は知らなければいけないし、少なくとも子どもたちにそういうことを教えられなければいけないような気がします。アヘン戦争なんて言葉がありますが、そういうものを避けられてきた日本なのですから、これからも避けなければならないと思います。

ヘロインこそ地獄の薬物です。

そんなわけで、冒頭の報道をご紹介しようと思いますが、このことを書いていて、ふと最近見て、いろいろな意味で呆然とさせてくれたドキュメンタリーのことを思い出しましたので、余談ですが、少しだけ書かせていただきます。

 

必ず人を破滅に導くものは

1990年代のアメリカの…まあ、おそらくセールス的なことも含めて当時の世界一のロックバンドになったといえるのかもしれないニルヴァーナというバンドがありました。

そのバンドのギター兼ボーカルであり、多くの歌を作ったカート・コバーンという人がいます。1994年に猟銃で自分の頭を撃ち抜いて自死されています。

やや前のことになりますが、このカート・コバーンの公式ドキュメンタリーである『モンタージュ・オブ・ヘック』という映画を偶然見ました。

うちには Amazon スティックという、まあ要するにテレビに接続しておくと、いろいろな音楽や番組や映画が見られるというものがあり、無料のものも多いのですが、その中に、『モンタージュ・オブ・ヘック』があったのです(今も無料かどうかはわかりません。わりと有料/無料はコロコロ変わります)。

「カート・コバーンねえ…」とか言いながらも、正直なことを書けば、二十数年前、ニルヴァーナのファーストアルバムを偶然、外で聴いた時に私は何年ぶりかのような言いようのしれない衝撃を受けたことも事実で、その時、そのカート・コバーンの声は「これこそが天使の声だ」というように私には聞こえたのでした。

それはともかく、この『モンタージュ・オブ・ヘック』のカート・コバーンの映画は、お酒を飲みながら、奧さんと話しながら見ていたのですが、見ているうちに次第に私は言葉を失い、最終的には涙が止まらないものとなっていました。ショックも大きかった。

どこにショックを受けたかというと、

「生まれてから死ぬまで愛されることを知らないで生きて、そのまま死んだ」

という点です。

幼い頃から、おそらく死ぬまで、ずっと思っていたことは、「誰か、俺を愛してくれ」だけだったと。

正確には、愛情をいくつかの人たちからは受けてはいたのかもしれないですが、何より本人がそれに対応できていませんでした。

そういうことは映画では一切言葉としてふれられていませんが、見てわかるのは、カート・コバーンは幼少時に強烈な ADHD(注意欠陥・多動性障害)であり、稀に見るほどの対人コミュニケーション障害を持っていたことがはっきりとわかります(私も場合によってはそうだったから、わかります)。

幼少時の ADHD の激しさは、「親も子どもへの愛情を放棄するほど」だったことが描かれています。カート・コバーンのせいではないのかもしれないですが、仲の良かった両親も離婚し、しかも、カート・コバーンがたまに会いに行っても、まるで愛情を元の親からは受けられない。

何か「おぞましいもの」として、自分の子どもと対峙している。親だって、そうしたくないのに、我が子(カート・コバーン)と会うとそうなってしまう。

映画ではカート・コバーンの両親や妹もインタビューを受けていますが、カート・コバーンのことを話す時に、誰の顔にも笑顔がまったく出ないのが印象的でした。

普通は、もう亡くなって 10年も 20年も経った身内のことを語る時には、「あの時は大変だったけれど、でも……」というように愛想でも笑顔を作ったりするものですが、それが一切なく、笑おうとして表情がひきつったりしている。そこからは「家族の記憶が重々しい」ことだけが伝わってくるのです。

カート・コバーンは孤独のまま、中学、高校と進んでも、友人は「ただのひとりも」できず、結局、学校にも行けず、帰る家もなく。

映画『モンタージュ・オブ・ヘック』より

・カート・コバーンの若い時代の描写はアニメなどで表現されています。

 

バンドが異常なほどの大ヒットを飛ばしてからは、カート・コバーンは、世界中の何千万人(下手すれば何億人)という人々から「愛され」たのかもしれないですが、どう見ても、そこに「精神的な満足や安寧」は最後まで片鱗も伺えないのです。

「楽しく生きている人たちはたくさんいるのに、なぜカート・コバーンの人生はこんなに苦しいのだろう」

という単純な考えが浮かぶほど、とにかくひたすら彼は苦しいのです。

ぶっちゃけ、音楽での成功や名声はほとんどカートの幸福には寄与していないようでした。

そして、その苦しいカート・コバーンを滅ぼしたのは「ヘロイン」でした。

結婚をして、女の子も生まれて、しかもまだ2歳とかだったのに、親が勝手に一人で自殺するような大人になってしまった原因を作った原因はヘロインです。
それ以外にはないです。

ちなみに、この映画は、Amazon のレビューでは星5つの満点の状態が続いていますが、ドキュメンタリーとして良いとか悪いとかはわからないですが、いわゆる「成功者のドキュメンタリー」とは程遠い苦しくて苦しくて苦しくて……という世界と対峙させられるものではあります。

話が逸れましたが、カート・コバーンの、

・幼少期の手のつけられない多動

・恒常的な「愛情感覚」の欠如

・人生の最期はヘロイン

というのは、思えば、今のアメリカを象徴している概念なのかもしれません。そして、ADHD と自閉症の数が、歯止めの効かない率で増加し続けているのもアメリカです。もちろん、これはアメリカに限ったことではないですが。

冒頭のグラフは自閉症のお子さんの率の推移のグラフになっていますが、ADHD には正確な統計がないため、「共に同じような率で増えている」とされているものを例とさせていただいています。

なお、今回ご紹介するオハイオ州の郡での「ヘロインでの過剰摂取での死亡数」は下のような推移となっています。

オハイオ州カイアホガ郡での2013年から2016年の薬物の過剰摂取での死亡者数

Heroin and fentanyl killed more people

2015年から「突如」として増えていることがわかります。

そして、2016年は「 666 人」が薬物の過剰摂取で死亡したと。

この象徴的な数字は、今後の「悪魔的飛躍」を現していると、つい思ってしまいます。彼らが目指すのは「普遍的な地獄化」というアンチ・パラダイスかもしれません。

 

というわけで、無駄話をたくさん書いてしまいましたが、現地の報道をご紹介しようと思います。

なお、文中に出てくる「フェンタニル」というものは Wikiepdia からの以下の説明を抜粋しておきます。

フェンタニル - Wikipedia

フェンタニルとは、主に麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイドである。

フェンタニルの効果はモルヒネの100–200倍と言われ、モルヒネをはじめとするその他のオピオイド性鎮痛薬と同様、循環器系にあまり影響はないが、呼吸抑制は強く、臨床使用量でも多くの場合、呼吸補助を必要とする。

では、ここから記事です。

 


Heroin and fentanyl killed more people heroin_and_fentanyl_killed_mor.html
cleveland.com 2017/05/24

2016年のオハイオ州カイアホガ郡では、ヘロインとフェンタニルが、殺人や自殺、自動車事故よりも多くの人々の命を奪った

ヘロイン、およびフェンタニルの蔓延と関連した症例数の増加により、カヤホガ郡の医学審査官室は 2016年に悲惨な結果をもたらされたことが確認された。

オピオイドは 2016年に同郡の歴史のどの年よりも多くの人々を殺したのだ。

カヤホガ郡では、何千人もの命を奪っているヘロインとフェンタニルの流行が記録的な水準に達しており、2016年には 666件の薬物過剰摂取(オーバードーズ)での死亡が報告されている。

強力なオピオイド鎮痛剤であるフェンタニルは、2016年に報告された 666件の過量摂取による死亡のうちの 399件の要因でとなっている。これらの薬物は、過去3年間で、薬物の過剰摂取による死亡数がほぼ倍増している。

カヤホガ郡の医学博士たちは、2017年が、2016年よりさらに悪化していることを指摘し、「これは実質的に重大な公衆衛生の危機である」と声明を出した。

ヘロインとフェンタニルは、2016年の同郡で、殺人や自殺、あるいは自動車事故よりも多くの死者を出している。

同郡の 2016年の暴力での死者は 475人だった。殺人は 184件。自殺が 172件。対照的に、ヘロインとフェンタニルでは 506人が死亡した。

2014年には、暴力での死者が 371名で、ヘロイン/フェンタニルでの死者数は 214名だった。2015年は、暴力での死者が 423名で、ヘロイン/フェンタニルでの死者数は 228名だった。

つまり、2016年になって、暴力や殺人での死者数を、薬物の過剰摂取での死者の数が上回ったのだ。

政府関係者は2017年にはさらに死者が増加すると予測

薬物流行の終息の兆しは見えず、今年 2017年には、さらに薬物過剰摂取による死者数は増加すると政府関係者は見ている。

同郡の医学者は声明で「アメリカは今、薬物の過量摂取による死亡の流行が見られており、大きな問題だと認識している」と述べた。

 

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