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香港で夏のインフルエンザの大流行により死者が300人を超え、SARSでの犠牲数を超える事態に。その致死率は季節性インフルエンザの数十倍から数百倍に。そこから思う「日常の病気の未来」

   

8月10日の香港の報道より

news.cnyes.com

香港で「季節性インフルエンザ」が大流行していることが報じられています。

報道の内容としては、現在、香港で夏のインフルエンザが流行しているのですけれど、その死者数が 300人を越えていまして、2003年にやはり香港で流行した SARS (重症急性呼吸器症候群)での死者数以上となったというものです。

当時の SARS の死者数は 299人でしたが、今回の香港のインフルエンザの死者数は、今週 327人を数えていて、現在も流行は継続していますが、いろいろと気になった点がありまして、少し書かせていただこうと思います。

病室に入りきれないインフルエンザの患者たち

zsbtv.com

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これは日本語でも報道されていまして、下は AFP での報道です。

少し前のものですので、死者数が現状より少し低いですが、日々、死者数は増えていますので、大体このくらいということになります。

香港で夏のインフルエンザが猛威 死亡者315人

AFP 2017/08/07

香港では、夏のインフルエンザの流行がピークを迎えている。香港衛生署が5日に発表した情報によると、今年5月5日から8月3日の間、インフルエンザ関連の深刻な事例が合計458件報告され、このうち少なくとも計315人が死亡した。

同署の統計よると、報告された458件のうち、成人が439件、未成年者が19件。死亡した315人中では、成人が312人、未成年者は3人だった。

最新のモニタリングデータによると、現地でインフルエンザの流行状況は最近1週間では下落しているものの、いぜんとして高レベルを維持しており、今後も同じ状態が続くと推測される。

というものです。

 

日常の病気である季節性インフルエンザが獲得した脅威の致死率

この流行の問題は、

・季節性インフルエンザとしては、通常の何百倍から何千倍もの高い致死率となっている

ことにあり、最近の通常の季節性インフルエンザとはその性質が明らかに違うものとなっている感じがあります。

現在のこの香港でのインフルエンザの致死率は、

2.1 %

となっていますが、これだけ見ると大したものではないと思われるかもしれないですけれど、この数値が季節性インフルエンザとしては、どれだけ脅威の致死率かを簡単にご説明します。

まず、一般的な季節性インフルエンザの致死率は、年によりバラツキがある上に、そもそも正確なデータがないのですが(季節性インフルエンザに感染した人の数をすべて把握することは不可能ですので)、およその公共的な数値として示されるのは下のようなものです。

・季節性インフルエンザの致死率は 0.05%(2000人に1人)朝日新聞

データとしては、他に「インフルエンザの致死率は 0.001%以下」というものもあり、私個人はこの 0.001%程度が正しいとは思いますけれど、仮に 0.05%が正しいとして、しかし、ここには現実として以下の問題があります。

・季節性インフルエンザの死者の約 90%は少なくともひとつの基礎疾患を持った高齢者WHO

ということがあります。これに関して、正確には、その国立感染研究所のページに掲載されている WHO の文書には以下のように記されています。

国立感染研究所ウェブサイトより

季節性インフルエンザの流行期のおおよそ90%の死亡者は少なくともひとつの基礎疾患を持った高齢者である。

インフルエンザは、基礎疾患の状態を悪化させ、しばしば死に至らしめるが、ほとんどの症例でインフルエンザウイルスの検査は行なわれておらず、死亡の原因は基礎疾患にあるとされている。

 

というように、世界的な基準では、インフルエンザで死亡した人の 90%ほどは、基礎疾患、つまり持病を持つ高齢者であり、その持病が原因で死亡したと考えるのが妥当だということです。

ですので、基礎疾患を持たない一般的な人に関しては、適当な数値ですけれど、

・季節性インフルエンザの致死率は 0.005%( 2万人に 1人)程度

だと考えられます。

実際には、季節性インフルエンザの致死率は(乳幼児と基礎疾患のない高齢者を除くと)「限りなくゼロに近い」という感想を私自身は持っていますが、ここでは上の公式なデータを使わせていただきます。

ここからですと、一般の季節性インフルエンザの致死率と、現在の香港のインフルエンザの致死率の違いは、

・一般 致死率 0.005%(罹患者 2万人に 1人が死亡)

・香港 致死率 2.1%(罹患者 50人に 1人が死亡)

ということで、タイトルに書きました「数十倍から数百倍の致死率」という比較はそれほど誇大でもないことがおわかりかと思います。

本当に書きたい部分を書けば、季節性インフルエンザの致死率は 0.001%ほどだと私自身は思っていて、その中で基礎疾患を持たない人の致死率は 0.0001%( 100万人に 1人)程度だと思う部分もあるのですが、しかし、いずれにしても、今回の香港のインフルエンザはそういう数値と非常に離れたものとなった驚異的なものです。

そして、この香港のインフルエンザは「重症化した場合の致死率が異常に高い」という点もあります。

8月2日までの統計で、インフルエンザと判断された人の数は 14713人なのですが、その中で、

・重症化した人の数 458件
・そのうちの死亡例 327例

ということで、重症化した場合の致死率は 70%に達しています。

そういうこともあるのか、中国の報道では「超強毒」というような単語が使われたものもありました。

・yuanchuang.caijing.com.cn

 

現在、香港では冒頭のように、

「死者数が SARS を超えたからといって、比較することはできるものではない。SARS ほどの脅威はないので、パニックにならないでほしい」

という内容の報道が多く出ています。

その 2003年の SARS は、

・感染者 1755人
・死者  299人

ということで、致死率だけでいえば 17%の高い致死率を持ったものでした。

この致死率の違いから、香港当局は今回のインフルエンザには「 SARS ほどの懸念はない」としているようなのですが、しかし、そもそも SARS と季節性インフルエンザは「感染力」が違います。

2003年の SARS と、現在流行しているインフルエンザの感染者数を比較しますと、

SARS (2003年) 1755人
・インフルエンザ(2017年) 15000人超

となっていまして、そして、現在のインフルエンザの流行はまだ収束はしていませんので、まだまだ感染者は増える可能性があるわけです。

 

「それにしても・・・」と、ふと思いましたのは、SARS とか、 あるいは、新型インフルエンザとかは一種「特殊な感染症」です。ところが、季節性インフルエンザは極めて一般的なもので、しかも「毎年、流行の季節がやってくる」ものです。

これまでは季節性インフルエンザとは、「基礎疾患を持つ高齢者でなければ」驚くほど低い致死率を持つ安全な感染症だったのですけれど、これが今回の香港のインフルエンザのように「強い毒性」を持つようなものに変化していったとしたら……ということは思いました。

たとえば、季節性インフルエンザに年間どのくらいの人が感染しているのかはよくわかっていませんが、推計では、日本国内だけで、年間数百万人から 1千数百万人が感染しているとされています。

大ざっぱには「毎年、国民の 10人に 1人が感染している」ともいえます。

この数値から見てみますと、こういう流行をする季節性インフルエンザが、現在の香港のインフルエンザと同じような「 2 %の致死率」などの毒性を得た場合、どうなるかといいますと、

「毎年、インフルエンザの流行のたびに、25万人ほどがインフルエンザで死亡する」

という未来の様相も計算もできなくはないわけです。

現状では香港のインフルエンザの感染者の数は 1万 5000人程度で、香港の人口 735万人から考えますと、人口の 1%も感染していないわけでして、通常のインフルエンザよりはるかに感染力が弱いもののようです。

しかし、何となく、「今後は季節性インフルエンザも少しずつこういう毒性を持つものに変化していってしまうのだろうか」という「未来のこと」をちをっと気にした次第でした。

もし仮に、季節性インフルエンザの強い毒性が一般化していくような未来があるとすれば、過去記事、

永遠の拒絶への確信 : インフルエンザワクチンの予防接種の「是非」について個人的な結論を見た日
 2017/01/30

で書きましたような「インフルエンザ・ワクチンを打つということは無駄な側面が強い」という状況も変わってくるのかもしれません。

つまり、上のこの記事での主要なテーマは、ワクチンに効果があるとかない、のほうではなく、

「そもそも季節性インフルエンザは死亡率が異常なほど低い安全な病気なのだから、ワクチンを打つ意味が見いだせない」

ということを記したものでした。しかし、季節性インフルエンザが強い毒性を獲得していった場合は、いろいろと、また予防医学的な動きは強くなるのかもしれないです。

 

それにしても、最近は、妙に高い致死率のインフルエンザがたまに出現することが気になっていました。

昨年、ブラジルでは「致死率 20%」にもなる豚インフルエンザが小さな流行を起こしていたことを、

ブラジルで蔓延する「致死率20%」の豚インフルエンザがパンデミックに拡大する可能性は?
 2016/07/24

という記事に書いたことがありましたけれど、その際のブラジルの豚インフルエンザは、

2016年6月11日までのブラジルでのインフルエンザの状況

・感染数 5214 人

・死亡数 1003 人

・致死率 19.2 %

となり、感染した人の5人に1人が亡くなるという強力な毒性を持つものでした。

幸いなことに大流行はしなかったようで、オリンピックでも影響は報道されていませんでしたので、それまでに終息したのだと思われます。

さりげなくインフルエンザの毒性が上がり続けているのではないか……という懸念はこの頃からありましたけれど、今の香港のものは「季節性」ということもあり、今後どのようになるのか注目しています。

 

「病気の時代」というキーワードで記事を書くことがありますけれど、最も厄介なのは、いわゆる特殊な病気が出現するということよりも、「日常的だったものが脅威に変化する」ということのように思います。

つまり、今回だと風邪や季節性インフルエンザのたぐいですし、もっと身近なところでいえば、もうじきやってくる「耐性菌の完全な蔓延」による「抗生物質がまったく効かない世界」もそうです。

ちょっとした怪我や炎症やデキモノでさえ大変なことになる可能性がある、そんな世界。

もちろん「特殊な病気」も壮絶な勢いで登場し続けています。

それは、過去記事の、

開き続けるパンドラの箱:アメリカ国立感染症研究所の感染症マップが示す、この30年間が「異常な病気の出現の時代」であったこと
 2016/02/15

そこに「 1984年に出現した新しい感染症がエイズひとつだけだった」のに対し、1984年以降は下のように「一気に新しい病気が噴出してきた」ことなどをご紹介しました。

・Washington Post

やっぱりこう、いろいろな側面から「大量死の時代」というものが絶え間なく進行し続けているのかもしれないなあとは思います。