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「高い致死率・治療法は抗生物質だけ・ワクチンは存在しない」ペスト菌が抗生物質耐性菌となり、生物兵器として大々的に使用される日

   

2017年7月20日の米国ビジネスインサイダーの記事より

businessinsider.com

ペスト菌
・NY Times

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抗生物質神話の崩壊がまたひとつ進んでいる中で

今の世界が「耐性菌の爆発的増加の渦中にいる」ということは、わりと頻繁に取り上げることがありますが、昨年の、

今の時代の「性」が世に伝えているもの : 社会コミュニティを崩壊させるかもしれないスーパー淋病を生み出した日本に見られる「謎」のようなもの
 2016/09/16

という記事では、抗生物質が効かないスーパー淋病が「制御不能の拡大」を見せ始めているということについてご紹介したのですが、その中で、淋病云々だけではなく、将来的に「3秒に1人が耐性菌によって死んでいく時代になるかもしれない」と報告があることを報じたメディアなどもご紹介しました。

In 2050, superbugs may kill 1 person every 3 seconds

 

こういうような「抗生物質の乱用の時代の副作用」は、すでにかなり厳しく襲いかかってきていて、そのうち「制御が効かない状態になる」という可能性もとても高いです。

そんな中で、アメリカのメディアで「保健当局、アメリカ政府などが、耐性菌ペストが生物兵器として使用されることを非常に懸念している」という内容の記事を見ました。

今回はこれをご紹介したいと思います。

ペストについては、今もアメリカを含むいくつかの地域で散発的に感染者が発生していますが、

ロシアのアルタイ共和国で少年が「ペスト」を発症。大流行を懸念して該当地域の1万人以上に緊急ワクチンを接種
 地球の記録 2016/07/15

という記事に、以下のように書きました。

今、世界は「抗生物質の効かない状態」にどんどん突入しています。

もし、抗生物質の効かないペストが発生した場合、ペストが中世と同じ「黒死病」になる可能性は高いです。

なので、抗生物質が効いている今は、確かにペストはさほど恐い病気ではないかもしれないですが、そうではなくなるまで、それほど時間はかからない気もします。

と書いたことがありますが、このことはいつも気にかかることでもあります。

ちなみに、「ペストとはどんなものか」ということについては、一般的に曖昧な部分がありますが、

・致死率
・治療法
・ワクチンの有無

については、厚生労働省のサイトにある以下の記述で大体把握できるかと思います。

感染症についての情報 – ペスト

症状

最も多いのが、ノミに咬まれた場所に関係したリンパ節に感染が起こり、腫れと痛みをきたす症状です。その後、高熱や皮膚に出血をともなう発疹がみられ、治療しないと高率で死亡します。

肺への感染が起こると、発熱、咳、痰など肺炎の症状が出現します。人への感染力が強く、放置すると100%死亡します。

治療

できるだけ早く抗生物質を投与することで治療できます。

予防

現在使用可能なワクチンはありません。

ということで、ペストは現時点でも、

・(抗生物質がなければ)致死率が非常に高い

・治療法は基本的に抗生物質だけ

・ワクチンは存在しない

ということになります。

それだけに、こういうペストのような病気が抗生物質への耐性を獲得したり、あるいは、そのような耐性菌ペストが生物兵器として使用されるようなことがあれば、「対処の方法がない」のが現実のようです。

そして、それは「まったくあり得ないことではない」ということでもあります。

これから何十年も生きていれば、そういうことも見聞することもあるかもしれません。

というわけで、ここから記事です。


Bioterrorism experts are worried that drug-resistant plague could be used as a weapon
Business Insider 2017/07/20

生物テロの専門家たちは、薬物耐性ペストが生物兵器として使用される可能性があると懸念している

今年6月に米国ニューメキシコ州で2件のペストが発生した時、私たちは、依然として、かつて黒死病と呼ばれたペストがこの世にあることを認識させられた。

ペストは、今でも毎年数人のアメリカ人が感染し、世界では、毎年数百人から数千人の人々が感染している。

現在では、ペストのほとんどの症例は抗生物質で治療することが可能なので、最近はペスト感染症で死亡する例は少ない。

しかし、感染症の研究者たちや、生物兵器の専門家たち、そしてアメリカ政府は、このペストが致命的な生物兵器に変わる可能性があることを懸念している。

特に、テロを遂行する意図がある人たちが、抗生物質などの一般の薬物で治療できない薬物耐性ペスト株を発見したり、あるいはそれを「作り出す」ことに対して最も大きな懸念を持っている。

ペスト菌であるエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)は、他の細菌と同様に定期的に変異する。

自然界で、薬物耐性のペスト株は数回出現している。

その理由から今、生物テロの専門家たちは、薬物耐性ペストが生物兵器として使用される可能性があると懸念しているのだ。

アメリカには、薬物耐性のペスト株が出現した場合に、その系統を特定するための緊急態勢が常に存在する。

細菌を分析することにより、研究者たちは、細菌が抗生物質耐性遺伝子を獲得しているかどうかを確認し、その株が野生型であるか、または操作されている(人為的に作られている)ものかどうかを確認することができる。

現在、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ペストを生物兵器のひとつとして、最も懸念される病原体である炭疽菌、天然痘、およびエボラ出血熱およびマールブルクのようなウイルス性の熱病に分類している。

最も恐ろしいシナリオは、大きな都市の上、または人口密集地域の上に「雲のように放出」することのできるエアロゾル化したペスト菌の兵器が含まれる。

1970年に世界保健機関(WHO)の研究者たちは、ペスト菌が含まれたエアロゾル 50 kg を人口 500万人の都市の上で放出すると 15万人のペスト患者が発生する可能性があると推定した。

その場合、入院する人の数は 80,000 〜 100,000人、死亡者は 36,000人であると計算した。

しかし、これは「抗生物質が働いている」場合の推計で、現在までに流行した既知の抗生物質が効くペスト菌の場合だ。

これが抗生物質の効かない耐性菌の場合の推計は、いまだに出されたことはない。

ペストは一般的に、ペスト菌を保有するノミなどにより感染する。ペストは、腺ペスト、肺ペスト、敗血症と分類されており、いずれの場合も、治療をしない場合は高い致死率を持つ。

そのように、治療しない場合は人を深刻な容体に陥れるペストは、実際に、この世で最も古い生物兵器のひとつでもある。

まだ、細菌という概念を誰も知らない時代にも細菌は平気として使われた。

ベネチア人は、ペストに感染した人の腫れたリンパ節から、他の人を致死に陥れる液体を蒸溜することを計画した。

そして、これからも、テロのような動機と、感染症に対しての技術的な専門知識を持っている人々が、バクテリアを武器にしたいと思うのなら、彼らはペストを使う可能性がある。

ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生研究者たちが注目するように、1950年代と 1960年代には、アメリカとソ連の両国は、エアロゾル化した空中に散布できるペスト菌を開発している。

当時、あのような状態だったふたつの国が、そのような兵器を持っていたことも恐ろしいが、アメリカのジャーナリスト、ウェンディ・オレント(Wendy Orent)は、病気の歴史の中でさらに懸念すべき可能性を述べている。

オレントの著作『ペスト:この世で最も危険な病気の謎の過去と、そして恐るべき未来』によれば、ソ連のカザフ人亡命者であり、生物兵器プロジェクトの主導者であったケンアリベック博士は、彼のプログラムのもとで、少なくとも 10種の薬剤耐性のペスト菌兵器を生産することができていたことを示唆している。

それは、発展した現在の遺伝学よりずっと以前の時代にあったことでもある。

アメリカ疾病管理予防センターによれば、現在のところ、ペストのワクチンは存在しない。

そのため、私たちが祈るべきことは、そのような薬剤耐性のペスト株のようなものが決して出現しないことを祈るだけだ。

もし、薬物耐性ペストが兵器としてこの世に放出された場合、私たち人類は中世の恐ろしい歴史を繰り返す危険があるのだ。