地球の最期のときに

発想自体が狂気の「500%関税」の検討が始まったことで見えてくる真のアメリカ帝国の終焉



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狂気の「500%関税法案」が真剣に検討され始めた

関税騒動からずいぶんと経ちますが、トランプ氏は今もなお、異常に高率な関税で多くの国を翻弄しています。

しかし、以前と違うのは、

「大統領が何を言っても、株式市場は大した反応もしないし、明らかに関税に関する報道が減った」

ということですね。

慣れたというよりは、「どうせチキンで終わるよ」という TACO 観念がすっかり定着したようで、どんな派手なことを言っても市場は大した動じなくなりました (今後はわからないですが)。

それでも、7月12日にトランプ氏は「メキシコや EU に 30%の関税、ブラジルには 50%の関税を課し、8月1日から適用する」という非常識な数値を発表しています。

しかし、春以来、最も注目されていたのが、

ロシアから石油を輸入している国に 500%の関税を課す」

というものでした。

これは、トランプ氏自身から出たものではなく、共和党のリンジー・グラハム上院議員という人が 3月に提出したもので、その頃は、アメリカはロシアとの関係修復を目指していた頃だったこともあり、先送りされていたのですが、数日前、

「トランプ氏がこの法案を支持した」

ことが以下のように報じられていました。

トランプ大統領、ロシア産原油への500%関税を検討、世界的な禁輸措置も検討

ニューヨーク・タイムズ紙が 7月11日に報じたところに よると、ドナルド・トランプ米大統領は、ロシア産原油への世界的な 500%の関税を含む、ロシアの石油輸出を対象とした制裁の大幅な拡大を真剣に検討している。

報道によると、トランプ大統領は現在、ロシアだけでなく、ロシアのエネルギー資源を購入し続けている中国、インド、トルコなどの国も対象とし、ロシアの原油輸入に 500%の関税を導入する法案を「綿密に検討している」という

トランプ大統領は以前、この法案は「強力すぎる」と述べていたが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が和平交渉を拒否し、ウクライナの民間インフラへの攻撃を続けていることに不満を抱いていると報じられ、再検討に至った。

外交政策研究所の研究員、マクシミリアン・ヘス氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し、提案されている 500%の関税は、ロシア産原油に対する世界的な禁輸措置に相当すると述べた。

ヘス氏は、世界的なエネルギー価格の急騰リスクを指摘し、トランプ大統領がそこまで踏み切るとは考えにくいと指摘した。

united24media.com 2025/07/11

こういう 500%、というような狂気じみた数値が出てくること自体が、狂気的な政治の状況だなあと思いますが、この法案について、共和党のランド・ポール上院議員が、少し前に書いた文章があり、それを読むと、この法案の目的の破綻ぶりがよくわかります。

ランド・ポール上院議員

「この法案は単純にアメリカを滅ぼす」ということをランド・ポール議員は述べています。

その文章をご紹介します。




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ロシアと貿易する国に500%の関税を課すことは逆効果になる

リンジー・グラハム議員の法案が可決されれば、我が国でかつてない規模の経済災害を引き起こすことになるだろう

Imposing 500% tariffs on nations that trade with Russia will backfirecale never before seen in our country
Senator Rand Paul 2025/05/21


対ロシア制裁法を提出したリンジー・グラハム上院議員。

関税は戦争の可能性を高める一方、禁輸措置は戦争の回避を困難にする。

リンジー・グラハム上院議員の対ロシア制裁法案は、数十カ国に 500%の関税を課すことを要求しており、これは実質的には(ロシア産原油の)禁輸措置に等しい。

この法案が可決されれば、我が国でかつて経験したことのない規模の経済災害を引き起こすことになるだろう

外交政策当局は、ロシアを米国の永遠の敵とみなす立場を固持し、ロシアがウクライナとの和平交渉を拒否した場合、より厳しい制裁措置を課すことを推し進めている。対ロシア制裁法は、ロシアとの様々な金融取引の禁止と一連の追加制裁を課すことを目指している。

しかし、この法案の最も重大かつ全く無謀な条項は、ロシアと貿易を行う国に最低 500%の二次関税を課すことを目指している。

この法案はロシアを罰することを目的としているものの、米国の同盟国、さらには米国自身も罰せられることになる。ワシントンの世界警察は、ロシアとウクライナの間に和平を強制できないことにあまりにも懐疑的であり、干渉が米国の利益になるという見せかけさえも正式に放棄した。

具体的には、この法案は大統領に対し、「ロシア連邦産の石油、ウラン、天然ガス、石油製品、または石油化学製品を故意に販売、供給、譲渡、または購入する国」から米国に輸入されるすべての物品およびサービスに 500%の関税を課すよう指示している。

この関税は 90日ごとに 500%以上引き上げられる可能性があり、一部の国はわずか数か月で 1,000%の関税に直面する可能性があるのだ。

ウクライナ侵攻への対応として、米国とその同盟国は約 1万6000件の制裁を発動し、ロシアの国家資産を凍結し、一連の厳しい金融制限を実施した。

血みどろの戦争が 4年目を迎える中、これらの措置はロシアの戦争目的を変えることに、まったく失敗したと言っても過言ではない

もちろん、この避けられない失敗は、ロシアが戦争を開始した動機を真摯に評価した者なら誰でも容易に予測できたことだった。

ロシアは、ウクライナが西側諸国と連携するのを阻止し、特に NATO 加盟を阻止するためには、ウクライナへの影響力を維持することが国家安全保障上の核心的利益であると見なしている。各国は自国が核心的利益とみなすものを守るためにあらゆる手段を講じるだろう。そして、ロシアがこれまでに費やしてきた莫大な血と財産を考えれば、ロシアも例外ではない。

したがって、追加の懲罰的措置によってロシアの戦略的な計算が意味のある形で変化することを期待すべきではない。

主要な戦略的同盟国やアメリカ合衆国を含む数十カ国が、ロシアと直接的および間接的に貿易を続けている2024年には、米国はロシアから 6億2,400万ドル (約 92億円)相当の濃縮ウランとプルトニウムを直接輸入した。

他の多くの国と同様に、アメリカ合衆国もロシア産原油を第三国から輸入し、それらの第三国がロシア産原油を購入して海外に販売している。この法案の支持者たちは、本当に大統領に米国に対して 500%の関税を課すことを求めようとしているのだろうか?

この法案は他にどのような国に影響を与えるのだろうか?

国連のトレードデータベースによると、イスラエルは 2024年にロシアから 1,060万ドル (約 16億円)相当のプラスチックを輸入した。この法案の支持者たちは、多方面作戦を展開するイスラエルに 500%の関税を課すことを本当に望んでいるのだろうか?

アジアにおける米国の防衛態勢の鍵と多くの人が考える台湾は、昨年、プラスチック製造に使用される石油化学製品であるナフサのロシア最大の消費国だった。

米国に輸入されるすべての台湾製品に 500%の関税を課すことで、台湾が中国の潜在的な侵略から自国を守るためのより有利な立場に立つと本当に考えている人がいるのだろうか?

同様に、アジアのもう一つの主要同盟国である日本は、2024年にロシアから約 360万ドル (約 5億3000万円)相当の液化天然ガス(LNG)と数十万ドル相当のプラスチックとゴムを輸入した。

欧州の同盟国も深刻な影響を受けるだろう。ロシアを強く非難する言論にもかかわらず、欧州連合(EU)へのロシア産 LNG の輸入量は 2024年に 19.3%増加した。2025年の最初の 15日間で、EU諸国は 83万7000トン以上のロシア産 LNG を輸入し、ドイツ、フランス、ベルギー、スペインが主要な輸入国となっている。

貿易データモニターによると、ウクライナは 2024年にロシアから20万ドル以上の石油製品を輸入したと推定されており、2025年1月1日まで、ウクライナは自国の国境を越えたパイプラインを通じてロシア産ガスの欧州への輸送を促進していた。

この法案によって最も大きな打撃を受けるのは、経済的にも戦略的にも米国だ。もしこれらの関税が実施されれば、米国と世界のほとんどの国々との貿易は維持不可能となり、米国の消費者にとって価格が上昇し、ドルがさらに下落するリスクがある。

また、地政学がますます不安定になっている今、この法案は複数の重要な同盟国との関係を悪化させるだろう。

米国は、持続不可能な 36兆ドル (5300兆円)の国家債務など、数多くの喫緊の課題に直面している今、これまで以上に同盟国を活用すべきだ。ところが、この誤った法案は多くの同盟国を遠ざけ、中国を含む他の貿易相手国に流れ込むことになりかねない。

この法案は、ロシアにウクライナ和平を求めるよう説得する上で何ら役立たないだろう。ロシアは、むしろ、米国が主要貿易相手国との間に更なる分裂を招くことを歓迎するだろう

ワシントンが事態を悪化させる力を決して過小評価してはならない。2025年ロシア制裁法案は、我々の鼻先を自らの顔に突き刺すようなものだ。議会はこの誤った法案を否決し、ウクライナにおける現実的な和平交渉の進展と、米国の国益を増進する政策の追求に注力すべきだ。


 

ここまでです。

さすがに、こんな狂気の法案が実際に可決されるとは思わないですが、もし、可決するようなことがあった場合、ロシアや中国、インド、ブラジルといったような国々の経済的な結束が強まるだけで、そして、

「アメリカには何も入ってこない」

という状況にもなり得ます。

500%なんていう関税を払ってまで、アメリカに何かを輸出したいと思っている国はないわけで、輸出業者たちはどんどんと代替輸出先を探す中で、アメリカは完全に孤立する可能性があります。

逆にそうなったら、何だか面白いですけどね。

そもそも、戦争が始まって以来、ロシアが経済制裁でダメージを受けたことは一度もないですし、ほとんどがブーメランとして西側への打撃となりました。ドイツなどは、景気後退にまで陥っています。

半年ほど前の「ロシアからのブーメランで米国と西側が死亡する日」という記事で、軍事アナリストのドラゴ・ボスニッチ氏という方の寄稿文をご紹介したことがあります。

2025年1月の寄稿文「クレムリンは追加制裁と圧力の脅威にも動じない」より

トランプ氏の、関税の脅しでクレムリンが悲鳴を上げて逃げ出すだろうという考えは、ロシア人を笑わせている。

主流のプロパガンダ機関の「予測」によると、歴史上最も包括的な制裁の 3年後の今、ロシア経済は「ボロボロ」になっていたはずだ。

しかし、それは起こらなかったばかりか、ロシアの経済パフォーマンスは驚くほど回復力があり、現在では英国の約 60%、ドイツの 15%以上、日本の 5%近くの経済規模となっている。

このことは CIA でさえ認めている。これはもちろんロシア経済に問題がないという意味ではないが、状況や、ユーラシアの巨人に対する西側諸国の事実上の全面戦争を考慮すると、ロシアの経済は素晴らしい成果を上げている。

したがって、トランプ氏が強化すると脅している制裁は効果がないことが証明されているだけでなく、(2022年の対ロシア制裁は)実際にはブーメラン効果をもたらし、多くの西側諸国の経済を破壊した。

その結果は EU、特にドイツにとって壊滅的であり、エネルギー価格が急騰し続け、生産経済の大規模な停止を余儀なくされているため、ドイツの産業は事実上崩壊しつつある。

Drago Bosnic

アメリカがロシアや、ロシアからエネルギー輸入国に新たな関税をかければ、この「多くの西側諸国の経済を破壊した」という状態が、さらに進むだけです。

そういう世紀の大ブーメランを見てみたい気もしますが、もし仮にこの 500%の関税が実施された場合、「世界の中心軸が変わる」直接的なキッカケとなり得るのかもしれません。

アメリカ帝国の終焉に向けての道をアメリカが走っていくのかどうかに注目が集まります。

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