南極が劇的に緑化している理由は?
昨日、「南極が劇的な速度で緑化している」というネイチャー誌に掲載された論文について世界中のメディアが報じていました。
当然というのか、多くのメディアが「気候変動」というものと結びつけて報じていたのですが、どうも「他に」気になる部分があるのです。
以下は、ザ・ナショナル紙からの記事の抜粋です。
報道より
南極大陸の植生被覆面積は、1986年の 1平方キロメートル未満から 2021年にはほぼ 12平方キロメートルへと、ここ数十年で 10倍に拡大した。これは、衛星画像を使用して南極の変化を描写した研究によるものだ。
この傾向は 2016年以降、ほぼ 3分の1加速しており、この期間に毎年 40万平方メートル以上拡大している。
以下は、南極大陸の西(という表現でいいのかな)、つまり地図での左側の領域の衛星画像です。
南極の衛星画像より
thenationalnews.com
確かに緑が増えている様子がうかがえるのですが、最初にはっきりと私の考えを書きますと、
「気温ではなく、地熱の問題なのでは?」
ということになるのですが、それについて書かせていただこうと思います。
とりあえずは、まず最初に緑化についての報道をご紹介しておきます。
わりとわかりやすく書かれている英メトロの記事です。
憂慮すべき衛星画像が、南極が「劇的な」速度で緑化していることを明らかに
Worrying satellite image shows Antarctica is turning green at a ‘dramatic’ rate
metro.co.uk 2024/10/04
南極大陸があまりにも「劇的に」緑化しており、その将来全体が危ぶまれていると警告されている。
南極半島は世界平均よりも速いペースで温暖化しており、猛暑が頻繁に発生しているため、同地域の植生は急増している。
エクセター大学、ハートフォードシャー大学、英国南極調査局の研究者たちは衛星データを用いて、気候変動に応じて南極半島がどの程度「緑化」してきたかを評価した。
その結果、植生被覆面積は 40年前の 10倍以上となり、1986年の 1平方キロメートル未満から 2021年にはほぼ 12平方キロメートルにまで急増していることがわかった。
衛星画像もこれらの調査結果を裏付けており、半島の植物の量が増加し、その拡散が加速していることを示している。
ネイチャー・ジオサイエンス誌に掲載されたこの研究結果は、大陸の将来について厳しい警告で締めくくられている。
エクセター大学のトーマス・ローランド博士は次のように語った。
「南極半島の植生が気候変動に敏感であることは今や明らかであり、将来的に人為的な温暖化が進めば、この象徴的かつ脆弱な地域の生態と景観に根本的な変化が見られる可能性があります」
「我々の研究結果は、南極半島、そして大陸全体の環境の将来について深刻な懸念を引き起こしています」
「南極を守るためには、こうした変化を理解し、その原因を正確に特定する必要があるのです」
南極半島は、在来植物が時間とともに広がり、緑が増えているだけでなく、新しい植物種がより一般的になりつつあるのではないかと懸念されている。
新たな外来種がエコツーリストや科学者、その他の訪問者によって持ち込まれ、半島に定着する恐れがあると懸念されている。
研究者たちは、「緑化」の加速を引き起こしている特定の気候と環境要因を明らかにするために、さらなる研究が緊急に必要だと述べている。
ここまでです。
温暖化とか気候変動とかの言葉がたっぷりと出てくるのですけれど、これとは別に、「異常なこと」が南極で起きています。
昨年の
「海氷の減少ぶり」
が異常なのです。
以下は 1989年からの 34年間の南極の海氷面積の推移のグラフです。
1989-2023年の南極海氷面積の標準偏差
BDW、VISHOP
2023年は、異常でしょう。
いくら何でも常軌を逸した急減です。
こんなのは、「気温」で語ることのできるものではないです。
そもそも、南極の氷の平均の厚さは「 2.6キロメートル」あり、氷床の一部では、5キロメートル近くの厚さがある場所もあるのです。そう簡単に些細な外部大気の気温の変化の影響を受けるものではないです。少なくとも、先ほどのグラフの 2023年のようなことは気温の変化で起きるものではないのです。
「何が起きているのかなあ」と、このグラフを見て、さすがに思いましたが、ふと思い出したのは、7年前の NASA による発表でした。
そこは地球で最も火山が密集している場所
その発表は、
「南極大陸の下からイエローストーン火山と同等の地熱が発生し、それが南極の氷床を溶かしている」
というものでした。
2017年の以下の記事で取り上げています。
(記事)ノア級の洪水の原因? : 「南極の氷床がイエローストーン級巨大火山の熱によって内側から溶かされている」とNASAが発表。南極の氷が全部溶けた場合、世界の海水面は今より60メートル上昇
In Deep 2017年11月13日
当時の NASA の記事は以下にあります。
南極の地下からの熱い報告 (2017/11/07)
Hot news from the Antarctic underground
この NASA の発表を取り上げていた当時の報道の冒頭です。
「これはクレイジーだ」:南極の巨大火山が大陸の内側から氷床を溶かしている
NASAジェット推進研究所(JPL)の科学者たちは、南極の氷床に関しての新しい理論を支持する新たな証拠を発見した。
それは、南極大陸で起きている氷の崩壊は、巨大な地熱源、つまり内部からの熱によって引き起こされているというものだ。
その熱の出力は、アメリカのイエローストーンの規模に近い出力を伴っていることが考えられるという。
地球の地殻を上昇する大変高い熱を持つ溶融した岩の上昇流を「マントルプルーム」と呼ぶが、この地熱の熱源によって、南極大陸の西部にあるマリーバードランドなど大規模な氷床に沿って見える南極の氷の崩壊を説明できる可能性があるのだ。
このマントルプルームは新しい発見ではないが、最近の研究により、11,000年前の急速な気候変動で氷河期から温暖な気候になるより「以前」の時代に、なぜ大規模な氷床の崩壊が発生したのか、そして、なぜ今、大規模な氷床の崩壊が起きているのかを説明できることになりそうだ。
NASAのジェット推進研究所の科学者ヘレーネ・セロウッシ博士は、以下のように述べる。
「これはクレイジーだ、と私は思いました。しかし、その熱量がどのくらいで、そして、どのくらいの量の氷がいまだに残っているのかはわかりません」
RT 2017/11/10
この記事にありますように、以前、「大規模な氷床の崩壊」が起きたのは、
「氷河期」
でした。
ですので、南極の氷の融解や氷床の崩壊は、「気温の変動によって起きるものではない」ということは、すでに科学的にわかっていたことなのです。
記事の中には、「全体の氷床が溶ける可能性さえある」としていたものもありましたが、南極の全部の氷が融解すると、「地球全体の海水面は 60メートル以上水没する」とされています。
60メートル海水面が上昇しますと、たとえば、関東などは以下のようになります。青い部分が水没する地域です(所沢云々とあるのは見逃して下さい)。
これらの水没状況については、こちらの記事の後半にあります。
ともかく、現在、南極の氷が減少し、あるいは、南極大陸が「緑化」している理由のひとつとして、
「南極大陸の氷床の下にある超巨大火山の地熱の発出が進んでいる可能性をあらわしている」
ということは言えるのではないかと思います。
ちなみに、「地球で最も火山が密集している場所」はどこであるかご存じでしょうか。
「それは南極」
なんです。
英国エジンバラ大学の研究者たちが明らかにしたもので、南極には「 138 個の火山がある」ことがわかっています。以下は、そのうち、 2017年に衛星観測で見つかった 91の火山を示しています。
先ほどの「緑化している地域」と火山の位置は比較的一致しています、
南極の火山については、2017年11月のこちらの記事にあります。
現在の地球の「高い気温」の問題に関しては、たとえば、「 2022年のトンガ沖の海底火山の噴火が、翌年以降の気温上昇傾向と関係している」ことを、記事にしたことがありましたが、それでも、1℃前後の上昇の範囲であり、極地の氷床に影響を与えるほどのものとは思えません。
そもそも、南極ではなく「北極」のほうでは、今年「急激に海氷面積が増加している」のです。2024年9月は、観測史上最大の増加となっています。
1978年から2024年9月21日までの北極海の海氷面積の推移
BDW
これは、トンガ沖の海底火山の影響で地球の気温が上昇している中で起きていることです。
ですので、極地の海氷は気温に大きく左右されるものではなく、「他の理由」が常に存在しているのだと考えます。
そして、現在も続いていると見られる南極での火山活動がさらに大きくなれば、そして、2023年の南極の海氷のあまりにも急激な融解が、今後も拡大していけば、
「海水面は必ず上昇する」
ことになります。
その理由は、よく言われる気候変動的なものとは異なるメカニズムで発動するわけですが、メカニズムがどうであれ、南極の氷が崩壊すればするほど、海水面は上昇していきます。
究極的には、さきほどの水没マップのような時代に、いつかは突入する可能性もないではないのかもしれません。
私自身は、現在の南極の急速な変化を見ていますと、「いつかはそれは起きる」と確信しています。
気温によってではなく、地熱と火山により地球の大きな変化が始まるのです。
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