大西洋で発達中の海水面温度の低下減少「大西洋ニーニャ」
NOAA
世界の高温傾向に終止符が打たれる可能性
今年の夏は、日本などは非常に気温が高かったわけですが、この高温の傾向は比較的世界全体でのことだったようです。
現在のこの地球の高温傾向の最大の理由のひとつとして上げられているのが、2022年にトンガ沖で発生した海底火山の大噴火(21世紀で最大の海底噴火)の影響だということが、おおむね判明しています。以下で取り上げました。
(記事)2022年のトンガの海底火山の影響は「寒冷傾向ではなく強力な気温上昇作用」であることを知る。結局これからの地球の気温はどっちへ?
In Deep 2024年7月15日
もちろん、気象や気温には、エルニーニョやラニーニャなどの海水面温度の影響も大きく関わっているわけですけれど、トンガの海底火山噴火と、これらの海水温度の相互作用によって、今年の夏は、地域的にやや過度な暑さが展開されていたようです。他には特にこの温暖化には要因はないでしょう。
それでですね。
現在、大西洋で妙なことが起きていることが明確になってきました。
「海水面温度が急速に下がり続けている」
のです。
そのスピードは、やや驚異的で、たとえば大西洋の海面温度洋は「最近の 1週間」だけで、以下のように変化しています。
何が起きているのかなと、いろいろ見ていますと、NOAA (アメリカ海洋大気庁)のウェブサイトで、「大西洋ニーニャ現象が発生寸前」というタイトルの記事を見つけました。
「大西洋ニーニャ? 聞いたことないな」と調べても、日本語では出てきませんので、原文の Atlantic Niña というのを、そのまま日本語にした大西洋ニーニャで話を進めます。
エルニーニョやラニーニャは、太平洋で発生する海水温度の変化に起因するものですが、「大西洋」でも、同様のことが起きるようです。
そして、それは気候や気温にかなり大きく影響するようです。
NOAA の記事から一部抜粋します。
大西洋ニーニャ現象が発生寸前。なぜ注目すべきなのか
Atlantic Niña on the verge of developing. Here's why we should pay attention
NOAA 2024/08/14
今年初めのエルニーニョによる例年より暖かい気候から、夏の終わりまでに予想されるラニーニャによる例年より涼しい気候へと太平洋がどのように変化しているかを、気候学者たちが注意深く観察していることはご存知と思われる。しかし、偶然にも、大西洋でも今夏、同様のことが起こっているかもしれない。
北大西洋の大部分は、今年これまでのところ非常に暖かい。対照的に、6月初旬以降、中央赤道大西洋の海面水温 (SST) は、この時期の平均より 0.5 ~ 1.0 ℃低くなっている。この水温の低下が 8月末まで続くと、大西洋ニーニャ現象が宣言される可能性がある。大西洋ニーニャとはどのような現象で、熱帯大西洋周辺の天候や気候にどのような影響を与えるのだろうか。
大西洋ニーニャ(およびニーニョ)とは何か
大西洋ニーニャは、大西洋帯状モードと呼ばれる自然の気候パターンの寒冷期だ。(帯状とは「緯度に沿った」という意味)このパターンは、エルニーニョ現象と同様に、数年ごとに寒冷期と温暖期の間を変動する。
通常、東部赤道大西洋の海面温度は、やや意外な季節サイクルを示す。一年で最も暖かい海水は春に発生し、一年で最も冷たい海水(摂氏 25 ℃未満)は 7 月から 8 月に発生する。
この夏の海面温度の低下は、海面に作用する風によるものだ。地球には、熱帯地方の周囲に年間を通じて降雨帯がある。この降雨帯は、強い太陽熱によって駆動され、北半球では夏の間に北方に移動する。定期的な暴風雨は、赤道大西洋の南東から空気を引き込む。
これらの安定した南東風は、表面の水を赤道から引き離すほど強力で、深海の比較的冷たい水を表面にもたらす。赤道湧昇と呼ばれるこのプロセスにより、夏季には赤道大西洋沿いに比較的冷たい水流の塊が形成される。
しかし、数年に一度、この冷たい水流の塊は、大西洋の帯状モードの変動により、平均よりも大幅に温度が高くなったり低くなったりする。
水温が低い現象は大西洋ニーニャと呼ばれ、暖かい現象は大西洋ニーニョと呼ばれる。通常、大西洋ニーニョまたはニーニャとみなされるには、東部赤道大西洋の 3か月平均海面温度の異常が、少なくとも 2つの重なり合う季節にわたって ±0.5 ℃を超える必要がある。
0.5℃の変化? なぜそれが重要なのだろうか?
熱帯大西洋の ±0.5℃の水温差は大したことではないと思われるかもしれないが、この差は周囲の大陸の降雨量に多大な影響を及ぼす可能性がある。サヘル地域の降雨量の減少、ギニア湾の降雨量の増加、南アメリカ北東部の雨季の季節的変化はすべて、大西洋ニーニョ現象によるものとされている。
さらに、大西洋ニーニャ現象は、カーボベルデ諸島付近で強力なハリケーンが発生する可能性を高めることがわかっている。NOAA の2024年のハリケーン活動の季節予測は、太平洋赤道域のラニーニャ現象の予測と北大西洋熱帯地域の海水温の上昇に一部基づいている。
今後数週間、私たちはこの現象に注目し、今月後半にフォローアップ記事を投稿して、大西洋ニーニャが完全に発生したかどうかをお知らせしたいと思う。
ここまでです。
具体的な影響はわからないのですが、大西洋ニーニャが完全に発生した場合、
・地域的な異常気象
・異常な気温
・ハリケーンの多発
などがあり得るというようなことでしょうか。
日本からはずいぶん遠い海域で、日本にまで影響が及ぶかどうかはわからないですが、太平洋では秋にラニーニャ現象が発生する可能性が高くなっていると報じられている中、大西洋では、大西洋ニーニャという初めて聞く現象が発生しつつあるということでして、秋以降の気象と気温の予測はますます混乱する状況となっているようです。
なお、NOAA の記事を読みますと、科学者たちはこの現象について、「理解している」ように響きますが、実は、
「今回の発生の理由については誰にもよくわからない」
のが現実のようです。
先月、「地球の海流は、火星にコントロールされている」ということにについて、以下の記事で取り上げたことがあります。
(記事)地球が「酸素の消失段階に入った」ことを考えながら、海流のことや、その海流は「火星にコントロールされているという現実」を考える
In Deep 2024年7月22日
地球の現象は、いろいろと根本がわかってないことが多いのですが、やはり「地球だけの単位」で考えていても、いろいろとわからないままだとは思います。
太陽系の惑星同士が相互に作用し合っていることは今では明白なことともなっていますし、気候も含めて、惑星全体の相互作用と「サイクル」の問題なんじゃないでしょうかね。
ともあれ、最近の大西洋の急激な寒冷化について、わかりやすく述べていた作家の方の記事をご紹介して締めさせていただきます。
大西洋が記録的な速さで冷却している理由は誰にも分かっていない
No one can figure out why the Atlantic Ocean is cooling at record speed
bgr.com 2024/08/21
大西洋が急激に冷却化しているが、その理由は誰にも分かっていない。
世界の海水温は、AMOC (大西洋南北熱塩循環)の崩壊寸前までいった記録的な高水温が 1年以上続いている。しかし、こうした問題にもかかわらず、大西洋は今、非常に不可解な事態に見舞われている。海面温度が下がっており、科学者たちは何が起こっているのか解明しようと躍起になっている。
海水温は、通常、年間を通じて変化する。しかし、今年は「大西洋ニーニャ」の発生が過去よりもずっと早くなっていると科学者たちは言う。
この新しいパターンは、太平洋で予想されるより低温のラニーニャへの移行よりも先に発生しているようだ。世界の気温が低下することは大変喜ばしいことだが、世界中で天候に異なる影響を及ぼす可能性もある。
今後、大西洋の冷却率の変化により、15か月続いた記録的な海水温の上昇に終止符が打たれる。
また、エルニーニョ現象は 5月に終息し、ラニーニャ現象が 9月から 11月にかけて始まり、発達するとみられており、赤道沿いから吹き込む強い風によって冷たい海水が押し上げられることになる。
記録的な高温が長らく続いていることもあり、科学者たちは今年の残りの期間の気候と海水温がどうなるのか非常に興味をそそられている。
しかし、予測不可能なことも多く、科学者たちも慌てふためいている。
大西洋ニーニャ現象自体はまったく予想外ではないが、科学者たちは今年はそれを予想していなかったようだ。
大西洋の冷却速度はすでに加速しており、太平洋も今後数カ月で冷却が始まるとみられることから、両海が自らを冷却しようと奮闘する「綱引き」のような状況になる可能性が高いと科学者たちは言う。
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