中国の人口が減少に転じたことを報じるロシアのメディア
中国で起きていた「歴史的な出生数の減少」
ロシアのメディアを眺めていましたら、「中国が人口減少に転じる」という冒頭の見出しの報道が目に止まりました。
元記事は香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニングポストの記事で、そちらを読んでみましたところ、この「人口減」というのは、まだ中国当局から発表された確実な情報ではないのですが、人口減という言い方はともかく、
「中国で、驚くほどの《出生数の減少》が起きている」
ということがわかったのでした。
中国は、2016年にそれまで 40年近く続けていた「一人っ子政策」を廃止して、二人目の子どもを持つことを許可したのですが、それにも関わらず、2018年は前年比で大幅な出生数の減少となったことが報じられています。
かつて、中国の人口計画当局は、「 2018年には、中国の 1年間の出生数は 2000万人に達するだろう」と予測していました。
ところが、2018年の中国全土の出生数は、
「 1500万人に満たない可能性が高い」
というのです。
500万人の誤差というのは相当なものですが、そのサウス・チャイナ・モーニングポストの記事を最初にご紹介しておこうと思います。
実際には、この人口減少の問題は、東アジア全部の問題なのですけれど、世界最大規模の人口を誇る国の「人口減少と少子高齢化」というのは、なかなかインパクトのある響きではあります。
それでは、ここからです。
なお、このサウス・チャイナ・モーニングポストの記事には書かれていませんが、ロシアのメディアでは、専門家たちの集計により「 2018年の中国の人口は、前年比マイナス 250万人となっている可能性が高い」と報じています。
China birth numbers expected to fall to lowest level since 2000, creating new economic and social challenges
South China Morning Post 2019/01/02
中国の出生数は2000年以降の最低レベルに落ち込むことが予想され、経済および社会的に新たな課題を生み出している
中国の国営紙グローバルタイムズによると、中国の昨年の出生数は、中国政府が一人っ子政策を緩和したにもかかわらず、1500万人を下回る予測だという。中国当局は 2016年にそれまでの一人っ子政策から 2人目の子どもを許可する政策を導入したにもかかわらず、高齢者人口の増加と少子化による経済の停滞への懸念が高まっている
中国で 2018年に生まれた子どもの数は、2000年以来、最低の水準に落ち込んでおり、これは、「中国の人口の歴史的転機として記憶される」と言われるほどのものとなっている。
すでに中国は、自国の経済成長に苦しみつつある渦中だが、この人口の問題はそれをさらに脅かす「人口危機」と言えるものだと中国のメディアや専門家たちは述べている。
グローバルタイムズ紙によれば、2018年の中国の出生数に関する最終的な数字は 1500万人を下回っており、これは、その前年の 2017年よりも 200万人以上減少していることになる。
この数値が確実なものであるならば、中国家族計画当局が以前に見積もっていた「 2018年には、出生数は最大で 2000万人に到達する」という数を大幅に下回る。
中国の国家統計局は今月(2019年1月)後半に 2018年の中国全体の出生数を発表すると予想されているが、すでに中国各地の地方当局によって発表されているデータは、すべてにおいて出生数の相当の減少を示している。
米ウィスコンシン大学マディソン校の研究者であり、中国の家族計画政策について長年分析しているイ・フシアン(Yi Fuxian)氏と、北京大学のエコノミストであるスー・ジアン(Su Jian)氏の二人は、中国政府が、中国が長期の人口減少に転じるという見方に転換し始めたのではないかとする論文を発表した。
中国が一人っ子政策を廃止し 2人目の子どもを許可した 2016年の出生数こそ前年の 1,655万人から 1,786万人に増えたが、その翌年の 2017年には 1,723万人に減少し、一人っ子政策廃止の効果は短く終わった。
イ氏とスー氏は、サウス・チャイナ・モーニングポストに対して以下のように述べている。
「 2018年は中国の人口の歴史的な転機として記憶されるでしょう」
「中国の人口は減少に転じ、今後、高齢化の問題が加速することで、経済的活力は弱まります。かつて世界の総人口の 3分の 1近くを占めていたこの国は、誤った人口統計方針のおかげで、人口が減少していくことになり、後退が始まりました」
中国の高齢化による社会問題は、出生率および結婚率が低下するにつれて悪化している。
中国の新聞によると、中国で最も人口の多い州の 1つである山東省の聊城(りょうじょう)市では、2018年の最初の 11か月間の出生数は、2017年の同時期の出生数から 26%減少した 64,753件だった。
山東省の青島では、地方自治体の家族計画当局によると、2018年 1月から 11月の間の出生数が、前年比 21%減の 81,112人だった。
エコノミストのファ・チャンチュン(Hua Changchun)氏は、このように、出生数が 20%程度の減少が全国的に再現された場合は、中国全土の 2018年の出生数が 1400万人程度にまでなってしまう可能性があると調査報告書に書いている。
ファ氏は、報告書に、このような出生数の減少は、将来の不動産需要の崩壊を含む中国の経済的、社会的発展に広範な影響を与える可能性があると付け加え、以下のように述べている。
「この人口の急激な減少は、おそらく長く続く新しい時代、すなわち人口が減り続けていく中国の時代の幕開けとなるだろう」
ファ氏によると、すでに中国では急速に高齢化する社会のプロセスが始まっているという。たとえば、少子化、20〜 50歳の年齢層の人々の比率の減少、高齢者人口の急増などだ。
中国政府は、2016年に一人っ子政策を廃止した後、出生数が急激に伸びるだろうと予測していた。しかし、現実には出生数は増えなかった。
不動産開発会社のチーフエコノミストであるレン・ゼピン(Ren Zeping)氏は、中国が「人口統計学的な危機に陥っている」と指摘する。
そして、レン氏は、「中国政府は直ちに産児制限を解除し、国民にたくさんの出産を奨励しなければならない」と警告する。
中国の国家統計局は、2016年に出生率データの公表を中止している。
ここまでです。
東アジアの「人口減少と少子高齢化」の問題に関しては、大体 1年ほど前に、日本と韓国について、それぞれ別の記事で以下のように取りあげさせていただいたことがあります。
韓国という国が消える時 : 日本と同じともいえる「避けることのできない壊滅的な人口崩壊が始まった」ことについてヨーロッパの政治統計サイトが詳細を解説
そのそれぞれの記事に載せました日本と韓国の「今後の人口の展望」は以下のようになっています。
今の状態が続くとしますと、統計的な計算では、日本は、あと 300年後に「人口が消滅する」ことになります。ほぼゼロになると。
もっとも、「 300年後にはこの世そのものがあるかどうか」という問題もあるのですが、単なる計算ではそうなります。
韓国も似たようなものでしょうが、隣国の北朝鮮は少子高齢化ではないはずですから、そのあたりがどうなるかという感じかもしれません。
しかし、やはり中国の人口減は影響が大きそうで、「国全体が人海戦術で経済を押し上げてきた」イメージのある中国にそれができなくなる。
日本の例でわかるように、少子高齢化の影響はものすごく短い期間の間に進行して影響が出始める。たとえば、30年前に、私たちの日本が今ほどひどい少子高齢化になるとはほとんどの人が考えてもいなかったと思うのですが、現実にこうなっています。
そして、実際には今は、「全世界的に主要国の人口が減少に転じ始めている」という事実もあります。
下の報道は、昨年 11月のもので、世界的な出生率が当初の予測を大きく超えるほど減少していることが医学誌ランセットで発表されたことを紹介しているものです。
2018年11月9日のニュージーランドの報道
・radionz.co.nz
ランセットによれば、全世界規模で見ると、1950人には一人の女性が生涯に出産する子どもの数(特殊出生率)が 4.7人だったのに対して、2017年には「 2.4人」と、約半分にまで落ち込んでいます。
しかし、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、そして日本などアジアの主要国に限ってみれば、この出生率はさらに下がり、今は「限りなく 1に近づいて行っている」感じさえあります。日本は 2018年で「 1.43」でした。
なお、この特殊出生率は「 2.1を下回ると人口減に向かう」とされていますので、世界の主要国のほとんどが人口減少に向かっていると考えられます。ですので、移民などの話が出やすいのかもしれません。自国民だけでは人口を維持できない国ばかりになっている。
どうして世界中がこのようなことになってしまったのかということは、それが、どこかの国に限定されているのではなく、「地球規模で拡大している」ということからも、それぞれの国の政策の話とはあまり関係ないことがわかります。
その根本にある「こと」は、実は、わりとはっきりとわかるのですけれど、それはまた別の機会に書ける時があれば書いてみたいと思います。