子どもたちに対する狂気の民族浄化とジェノサイド
今月の初め頃に、ピューリッツァー賞受賞歴のあるジャーナリストのクリス・ヘッジスさんの文章をご紹介したことがありました。
・ジェノサイドの最終章:止まることのないイスラエルによる民族浄化がもたらす史上最大規模の地獄
In Deep 2025年4月2日
ガザでは、イスラエルによる支援物資のブロックにより、いよいよ本格的な飢餓が迫っているとみられ、また、正確な数値はわからないですが、今も、毎日、
「ガザでは 1日平均 100人の子どもが殺害されている」
そうです。
そして、現在もイスラエル軍は、ガザの病院等を中心とした攻撃を続けていて、アルジャジーラによれば、いくつかの病院が機能停止に陥っているようです。
これを援助している国のひとつが、間違いなくトランプ政権下の米国なわけですが、今日、
「トランプ大統領がユダヤ教への改宗手続き中」
という報道を知りまして、「おいおい…」と思った次第です。
トランプ氏が、まさにイスラエルの下僕であることを示している事態ともいえます。
以下に、イスラエルの報道を翻訳しています。
・「トランプ大統領がユダヤ教への改宗手続き中」というイスラエルの報道
BDW 2025年4月13日
もう何もかも気が違った世界に進んでいるわけですけれど、アメリカでは、少なくともトランプ支持者たちは、
「見て見ぬふりをしている」
のが現状です。米ゼロヘッジなんかもそうですね。
人道問題など、もはや気にもしていません。ガン無視です。
しかし、今回のクリス・ヘッジスさんの文書では、そういう人道的な問題にもふれながら、
「結局、アメリカとアメリカ人にこのブーメランは降りかかってくる」
ことを書いています。
歴史の流れの予測は誰にもできないですが、「もうアメリカは終わり」だという土壌を、トランプ氏自身が作り出しているようにも見えます。
アメリカはますます嫌われる国となっていき、そして、最大のテロ標的の国ともなってく可能性もあります。かつての、
「嫌なアメリカが戻ってきた」
という感じでしょうか。
クリス・ヘッジスさんの記事をご紹介します。オリジナル記事には、すべての事象に報道などへのリンクが示されていますが、リンクのラインばかりとなってしまいますので、割愛しています。
ここからです。
イスラエルはガザを空にしようとしている
Israel is About to Empty Gaza
Chris Hedges 2025/04/13
イスラエルは、第二次世界大戦終結以来最大規模の民族浄化作戦を実行に移そうとしている。
3月2日以降、ガザ地区への食糧・人道支援の流入を全て遮断し、電力供給を停止したため、最後の淡水化施設は機能を停止している。
イスラエル軍はガザ地区の半分(長さ25マイル、幅4~5マイル)を制圧し、ガザ地区の 3分の2を避難命令下に置いて「立ち入り禁止区域」とした。これには、イスラエル軍に包囲されている国境の町ラファも含まれる。
4月11日、イスラエルのカッツ国防相は、イスラエルはハマスとの戦争を「強化」し、「ガザ地区の住民を南部から避難させ、米国のドナルド・トランプ大統領によるガザ地区住民の自主移住計画を実行するなど、あらゆる軍・民間の圧力をかける」と発表した。
3月18日にイスラエルが一方的に停戦を終了して以来(イスラエルはこれを一度も尊重していない)、イスラエルは民間人に対する容赦ない爆撃と砲撃を続け、パレスチナ保健省によると、1,400人以上のパレスチナ人を殺害し、3,600人以上を負傷させている。
国連によると、平均して 1日 100人の子どもが殺害されている。同時に、イスラエルはエジプトとの緊張を煽り、パレスチナ人をエジプト領シナイ半島に大量追放するための布石を敷こうとしている。
ベザレル・スモトリッチ財務大臣もカッツ氏の発言に同調し、ハマスが「打倒」され、残る 59人のイスラエル人人質が解放されるまでイスラエルは全面封鎖を解除しないと述べた。
「一粒の小麦さえガザには入らない」と財務大臣は誓った。
しかし、ガザの壊滅と大量虐殺を乗り越えてきたハマスが降伏したり消滅したりするとは、イスラエルでもガザでも誰も予想していない。
もはや問題は、パレスチナ人がガザから強制送還されるかどうかではなく、いつ強制送還され、どこへ送られるかだ。
イスラエル指導部は、パレスチナ人を国境を越えてエジプトへ追い出すか、アフリカ諸国へ移送するかで板挟みになっているようだ。
米国とイスラエルは、民族浄化されたパレスチナ人の再定住について協議するため、スーダン、ソマリア、そしてソマリアの分離独立地域として知られるソマリランドの 3つの東アフリカ諸国政府と接触した。
大規模な民族浄化は壊滅的な結果をもたらし、米国と同盟を結んでいるアラブ諸国の政権の安定を脅かし、アラブ諸国内で激しい抗議運動を引き起こすだろう。
イスラエルと隣国ヨルダン、エジプトとの外交関係は既に破綻寸前であり、断絶につながり、地域は戦争へとさらに近づくことになるだろう。
外交関係は、1979年のキャンプ・デービッド合意調印以来、最悪の状態に陥っている。
エジプトとヨルダンのイスラエル大使館は、10月7日のハマスをはじめとするパレスチナ武装勢力によるイスラエル侵攻を受けて、安全上の懸念から職員が撤退したため、ほぼ無人となっている。
エジプトは、昨年 9月にイスラエル大使に任命されたウリ・ロスマン氏の信任状を受理していない。また、昨年、ハレド・アズミ前大使が召還された際も、エジプトは新駐イスラエル大使を任命しなかった。
イスラエル当局は、エジプトが北シナイ地方での軍事プレゼンスの拡大と新たな軍事施設の建設によってキャンプ・デービッド合意に違反していると非難しているが、エジプト側はこれらの容疑は捏造であると主張している。和平条約の付属書は、エジプトがシナイ地方に追加の軍事装備を配備することを容認している。
イスラエルの元参謀総長ヘルジ・ハレヴィ氏は、エジプトの「安全保障上の脅威」について警告した。
カッツ氏は、イスラエルはエジプトが 1979年に両国間で締結された「平和条約に違反する」ことを許さないと述べた。
エジプト当局は、ガザとエジプトの 9マイルの国境に沿って走り、非武装化されるはずのサラーフッディーン軸としても知られるフィラデルフィア回廊を占領することで条約に違反したのはイスラエルであると指摘している。
「ガザとエジプトの国境沿いでのイスラエルのあらゆる行動は、エジプトの国家安全保障に対する敵対行為にあたる」と、元軍情報部長官でエジプトのモハメド・ラシャド将軍はアラビア語紙アシャルク・アルアウサトに語った。
「エジプトはこのような脅威を黙って見ているわけにはいかず、あらゆる可能性のあるシナリオに備えなければならない」とラシャド将軍は述べた。
イスラエル当局は、パレスチナ人のエジプトへの「自発的移送」を公然と呼びかけている。
クネセト(イスラエルの国会)議員のアヴィグドール・リーベルマン氏は、「大半のパレスチナ人をガザからエジプト領シナイに移住させることは、現実的かつ効果的な解決策だ」と述べた。
リーベルマン氏は、ガザの高い人口密度(世界有数の人口密度を誇る地域の一つ)と、エジプト領北シナイの広大な「未開発の土地」を対比させ、パレスチナ人はエジプトと共通の文化と言語を共有しているため、いかなる強制移送も「当然のこと」だと指摘した。
また、エジプトがイスラエルとハマスの仲介役として「現在の政治情勢から経済的利益を得ている」こと、そして「トンネルやラファハ検問所を通じた密輸活動から利益を得ている」ことを批判した。
イスラエルのシンクタンク、ミスガブ国家安全保障研究所(元イスラエル軍・治安当局関係者が所属)は 2023年10月17日、政府に対し「ガザ地区全体から撤退するまたとない機会」を活用し、エジプト政府の支援を得てカイロにパレスチナ人を再定住させるよう求める論文を発表した。
イスラエル情報省から流出した文書には、ガザ地区のパレスチナ人を北シナイに再定住させ、帰還を阻止するための障壁や緩衝地帯を建設するという提案が含まれていた。
イスラエル軍は既に容赦なくパレスチナ人をガザ地区の封鎖地域に追い込み、閉じ込められたパレスチナ人への継続的な爆撃作戦を展開する一方で、エジプトとの国境沿いに抜け穴だらけの避難口を設けているため、追放は迅速に行われる可能性が高い。
この(パレスチナ人の)追放はエジプト軍との致命的な対立を招き、ガザ地区におけるパレスチナ人に対するいかなる民族浄化も「越えてはならない一線」としているアブドルファッターハ・エルシーシ氏率いるエジプト政権を瞬く間に危機に陥れることになるだろう。
そこから地域紛争へと発展しないというのは至難の業だ。
イスラエルは「大イスラエル」構想の一環として、シリアと南レバノンの領土を掌握しており、エジプト、ヨルダン、サウジアラビアの領有もその一部としている。
ガザ沖の海底ガス田を狙うイスラエルは、スエズ運河を迂回し、紅海に面するイスラエルの破綻したエイラート港と地中海を結ぶ新運河の建設計画も打ち出している。これらの計画は、ガザからパレスチナ人を追い出し、ユダヤ人入植者を移住させることを前提としている。
アラブの民衆の怒り
ここ数ヶ月、エジプト、ヨルダン、ヨルダン川西岸、カタールを訪問した際に私が目撃した怒りは、大量送還が行われれば、正当な怒りとして、それは爆発するだろう。
これらの政権は、権力維持のためだけに行動を起こさざるを得なくなるだろう。組織化された集団によるものであれ、単独犯によるものであれ、イスラエルと西側諸国、特にアメリカ合衆国を標的としたテロ攻撃が激化するだろう。
このジェノサイドはイスラム過激派にとって、まさに夢のような勧誘の場だ。
米国とイスラエルは、この残虐行為の代償をある程度理解しているはずだ。しかし、彼らはそれを受け入れているかのように見え、国家共同体から追放した者たち、彼らが「人間以下という動物」と呼ぶ者たちを、愚かにも抹殺しようとしている。
イスラエルと米国は、パレスチナ人が何世紀にもわたって暮らしてきた土地から追放されたらどうなると考えているのだろうか?
絶望に陥り、希望も尊厳も生計の手段も奪われ、地球上で最も技術的に進歩した軍隊の一つによって虐殺されている人々は、どう反応すると考えているのだろうか?
パレスチナ人のためにダンテの作品のような地獄を創り出すことで、テロリズムを鈍らせ、自爆攻撃を抑制し、平和を促進できると考えているのだろうか?
中東に広がる怒りの波紋、そしてそれが私たちへの憎悪を何十年にもわたって植え付けていくであろうことを、彼らは理解できないのだろうか?
ガザにおけるジェノサイドは、今世紀最大の犯罪だ。
それはイスラエルを苦しめることになるだろう。そして、私たち(アメリカ人)を苦しめることになるだろう。パレスチナ人に対して私たちが犯した悪行が、私たちの目の前に降りかかることになるだろう。
蒔いた種は刈り取られる。
私たちは憎しみと暴力の地雷原を蒔いてしまった。
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