驚くべき地球の「酸素供給」の仕組みが明らかに
わりと最近、「地球の水が急速に酸素を失っている」ことについてご紹介したことがありました。以下の記事です。
(記事)地球が「酸素の消失段階に入った」ことを考えながら、海流のことや、その海流は「火星にコントロールされているという現実」を考える
In Deep 2024年7月22日
地球の酸素ではなく、地球の「水中の酸素」です。
水中の酸素は当然、海の生物の多様性と関係します。
この記事を書きました同じ日の 7月22日に、科学誌ネイチャーにある論文が発表されていまして、その内容を最近知りました。
それは、
「まったく光の届かない、深海の海底から酸素が発生していた」
ことを発見したことについての論文です。
現在の知見では、「地球の酸素は、すべてが光合成によるもの」とされていて、地上や水中の植物たちによるものだとされています。
> 現在の大気中の酸素分子はそのほぼすべてが光合成由来だと考えられている。 Wikipedia
まず、その論文を紹介していた記事をお読みいただければと思います。
「なぜ、地球の水中の酸素が急激に減少しているのか」
についての、ひとつのヒントになるかもしれません。
海底で「暗黒酸素」が発見され、生命の起源に関する考えに疑問を投げかける
‘DARK OXYGEN’ DISCOVERED ON THE OCEAN FLOOR, CHALLENGING IDEAS ON LIFE’S ORIGINS
thedebrief.org 2024/07/22
新たな研究で発表された調査結果によると、科学者たちは深海底で「暗黒酸素」を生成する金属鉱物を発見した。
この調査結果は、地球上の酸素は光合成生物のみによって生成されるというこれまでの仮説を覆す可能性がある。
海面下 13,000フィート (約 4000メートル)の深さで行われたこの発見は、地球の海底の完全な暗闇の中でも酸素が生成できることを示している。この新たな発見は、地球上の好気性生命の起源に関する現在の理解に疑問を投げかける可能性がある。
「暗黒酸素」の発見
「地球上で好気性生命が始まるためには酸素が必要であり、地球の酸素供給は光合成生物から始まったというのが私たちの理解です」とスコットランド海洋科学協会(SAMS)のアンドリュー・スウィートマン氏は語った。同氏はクラリオン・クリッパートン帯として知られる太平洋の山岳海底山脈の海底サンプルを採取中にこの画期的な発見をした。
「しかし、光のない深海でも酸素が生成されていることが今ではわかっているのです」とスウィートマン氏は付け加えた。
スウィートマン氏と彼の同僚によると、この発見の鍵は、海底の天然鉱床である多金属団塊(多種の金属の岩石塊)にあるという。
これらの団塊は、小さな砂粒ほど小さいものから野球ボールほどの大きさのものがあるが、コバルト、銅、リチウム、マンガン、ニッケルなどの金属で構成されており、これらはすべてバッテリー製造に不可欠なものでもある。
現在、酸素の生成がこれらの団塊と関連していることが明らかになったため、スウィートマン氏と今回の発見に関わった他の研究者たちは、深海採掘を含む産業への影響についてすでに再検討している。
「深海生物の酸素源を枯渇させないよう、これらの物質の採掘方法を再考する必要があります」と、この現象を説明するのに役立つ可能性のある電気化学実験を率いたノースウェスタン大学の研究者フランツ・ガイガー氏は述べた。
ガイガー氏はスウィートマン氏とともに、研究チームの研究結果をまとめたネイチャー・ジオサイエンス誌に掲載された新しい研究論文の共著者である。
驚くべき発見
当初、スウィートマン氏は海底での酸素の検出はセンサーのエラーによるものかもしれないと考えていた。
「私たちは家に帰ってセンサーを再調整しましたが、10年間にわたってこうした異常な酸素濃度の数値が出続けたのです」とスウィートマン氏は声明で述べた。
他の手段による追加検証が最終的にこの驚くべき発見を確認するのに役立ち、スウィートマン氏は 2023年の夏にガイガー氏に連絡を取り、このような異常な状況下で酸素が生成される可能性のある方法を探ることにした。
ガイガー氏の過去の研究には、錆と海水がどのように電気を生成するかに関する研究が含まれていた。
この研究から、2人は海底で増殖する多金属団塊が、海水の電気分解によって生じる酸素の存在を説明できるほどの電気を生成する可能性があるかどうかの調査を始めた。
わずか 1.5ボルト (一般的な単三電池の電圧とほぼ同じ) で、海水を水素と酸素に分解するのに十分なエネルギーが得られる。
テスト中、個々の結節は最大 0.95ボルトを生成することが観察され、それ自体驚くべきことだが、これは電気分解に必要な電圧にはるかに足りない。
しかし、スウィートマン氏とガイガー氏は、複数の結節が密集すると、直列に接続された複数の電池と基本的に同じように機能し、酸素を生成するのに十分な電圧を提供できることを発見した。
クラリオン・クリッパートン地帯にあるこれらの「ジオバッテリー」は、数十年にわたる世界の供給需要を満たすのに十分なエネルギーを持っていると思われる。しかし、欠点は、数十年前の過去の研究で、深海採掘が行われた地域では、単純な生物に至るまで、ほとんど回収されていないことが明らかになっていることだ。
「 2016年と 2017年に海洋生物学者が 1980年代に採掘された場所を訪れ、採掘された地域では細菌さえ回復していないことを発見しているのです」とガイガー氏は最近の声明で述べた。
「しかし、採掘されていない地域では海洋生物が繁栄していました」と彼は付け加えた。なぜ海底の採掘された部分が何十年もの間、まさに「デッドゾーン」のままなのかは謎のままだ。
ガイガー氏にとって、こうした問題は「海底採掘の戦略に大きな疑問符を付けることになります。なぜなら、団塊が豊富な地域の海底の動物相の多様性は、最も多様性に富んだ熱帯雨林の多様性よりも高いのです」
スウィートマン氏、ガイガー氏らによる、この新しい論文「深海底における暗黒酸素生成の証拠」は、2024年7月22日にネイチャー・ジオサイエンス誌に掲載された。
ここまでです。
このまま深海の掘削が拡大していくと
やや難解な部分もありますが、要するに、
バッテリー製造に不可欠なコバルト、銅、リチウム、マンガン、ニッケルなどの海底の金属が電気を生成することにより、光の届かない海底で「酸素」を発生させる。
という理解でいいのだと思うのですけれど、これらの金属は「海底から人間が採掘するもの」ですが、重要なのは記事の以下の部分です。
> 1980年代に採掘された場所を訪れ、採掘された地域では細菌さえ回復していないことを発見している…
これらの金属が採掘された海底は、
「生物がまったくいない完全なデッドゾーンになっている」
ことを述べているわけです。
一方、以下のようにあります。
> 「しかし、採掘されていない地域では海洋生物が繁栄していました」と彼は付け加えた。
この記事では、
> なぜ海底の採掘された部分が何十年もの間、まさに「デッドゾーン」のままなのかは謎のままだ。
とありますけれど、謎も何も、「これらの金属を枯渇するほど採掘するだけ採掘すれば、酸素はまったく発生しなくなるため、永久的なデッドゾーンになるのは当然」です。鉱石が掘削され尽くされた場所が数年、数十年で元の状態に戻るわけがありません。
これはつまりは、海中の酸素が減っている理由が、「人間による鉱物の乱獲」であることが明らかになっているとは思えないでしょうか。
そしてデスね。問題はさらに「現代」の話と関係します。
これらのバッテリーに必要不可欠な鉱石の「需要量」は、昔と比べて、どうでしょうか。
たとえば、20年前と比較して、スマートフォンやタブレットやコンピューターなど、バッテリーがなければ駆動しない家電や機器の数は、「どれだけ膨大に膨れ上がった」か。
それだけではなく、クリーンエネルギーの名の下に、何から何まで電化にしていくという方向性の「バッテリー依存社会」では、今後も、ますます過剰な量のそれらの
「海底で酸素を作り出している金属たちの掘削が大規模に進む」
はずです。
こんなことが地球の環境にいいはずがない(曖昧な意味での「環境」ではなく、「生存環境」のこと)。
深海の「デッドゾーン」がどんどん拡大していく。
生き物のいない海の範囲がさらに広がるということです。
私も、酸素というものは、植物だけが生み出す恩恵だと思っていましたが、「鉱物」も「酸素の供給」という面で、私たち人間を養い続けてきたということになります。海洋生物がいなければ、私たち人類は生き残っていることはなかったでしょう。
この絶妙なバランスが、電気テクノロジーが極度に進んだ、この、たった数十年間くらいで崩壊しつつあるということです。
無茶な海底の掘削をやめない限り、海の酸素量全体もさらに減少して、必ず海の環境は少しずつ死んでいくはずです。
こういう方向からも人類の滅亡という方向にはきちんと動いているのだなと実感します。
現状のテクノロジー生活のままですと、何もかもその方向に進みます。
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