かなり多くの種類の薬が腸内細菌環境を破壊している
米エポックタイムズで、最近の研究が取り上げられていまして、それは、
「何種類かの薬は、腸内細菌環境を非常に長く変化させてしまう」
ことがわかったという研究でした。
場合によっては、「二度と元の腸内環境に戻ることがない」という場合もあるようです。
研究で調査された薬剤は以下でした。
腸内細菌環境を長く変化させる薬剤のカテゴリー
・抗生物質
・抗うつ剤
・ベンゾジアゼピン(抗不安剤や睡眠薬等)
・プロトンポンプ阻害剤(胃酸を止める薬)
・ベータ遮断薬(狭心症や頻脈性不整脈の諸症状を改善する薬)
・ステロイド
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs/一般的な鎮痛剤)
皮肉な話だなあと思ったのが、このリストの中に抗うつ剤やベンゾジアゼピンなどの「神経精神科の薬が含まれている」ことでした。
何が皮肉かというと、
「腸内細菌環境の悪化は、精神疾患と関係する」
ことがわかっているからです。
以下の記事などで、研究をご紹介しています。
・自殺の多くは腸内環境の改善で防ぐことができる可能性
In Deep 2019年11月25日
・デンマークで行われた世界最大規模の調査により、幼少時の抗生物質の使用は若年時の精神疾患と強く関係することが明確に
In Deep 2019年2月28日
また、パーキンソン病の発症の原因が、抗生物質による腸内環境の破壊である可能性があることについてのフィンランドの研究をこちらの記事でご紹介しています。
あるいは、「線維筋痛症」の根本的要因が、腸内細菌環境の変化であることを突き止めたカナダの研究をこちらでご紹介しています。
アレルギーなどもそうです。食物アレルギーと関連する「腸内細菌の種類」が 2019年に特定されていてます。以下の記事にあります。
・食物アレルギーと関連する「腸内細菌の種類」がついに特定される。これにより、理論的には「すべての食物アレルギーを完治させる」ことが可能に
In Deep 2019年6月25日
今、アレルギーを持つ子どもの数が非常に増えていますが、いろいろな原因はあるだろうにしても、「小さなうちから薬を飲み過ぎていて、腸内細菌環境が悪化してしまった子どももいるのだろうな」とも思ったりします。あと、殺菌ばかりしているような過剰な衛生環境も、腸内環境を悪化させます。
さきほどの薬の一覧には「非ステロイド性抗炎症薬」もありました。ロキソニンとかアスピリンとかイブプロフェンとかの一般的な解熱剤ですが、今は子どもにも平気で解熱剤を飲ませる時代ですからねえ。
エポックタイムズの記事にも、
> 特に、赤ちゃんは腸内細菌の変化に対して非常に脆弱だ。
とあり、小さな子どもへの先ほどのような薬剤の使用は、できるだけ控えめであったほうがいいような気がします。
生まれた時から病弱で多大な薬を飲んでいた私のように、「回復に30年かかる」とかいうことになりかねません(参考記事)。
まずはエポックタイムズの記事をご紹介します。
特定の薬は、服用を中止した後も腸内環境の変化が何年も続く
Gut Changes Persist Years After Stopping Certain Medications
Epoch Times 2025/10/08
最近の研究で、抗生物質や抗うつ薬などの一般的な薬が腸内細菌に永続的な変化を残す可能性があることが示された。
薬は一般的に服用後、数時間から数週間で体内から排出される。しかし、最近の研究では、何年も前に服用した薬が腸に影響を与え続ける可能性があることが示唆されている。そして、服用頻度や服用期間が長いほど、その影響は大きくなる。
9月に医学誌 mSystems に掲載された研究によると、一般的に使用されている薬剤 10種類のうち 9種類近くが腸内細菌に永久的な変化を残す。その中には、これまで消化への影響と関連づけられたことのない薬剤も含まれている。
これは抗生物質だけでなく、高血圧、不安、胃酸過多を管理するために使用される薬剤にも当てはまる。
「一般的な医薬品が腸の健康に与える影響を過小評価している可能性があります」と、この研究には関与していないレスバイオティック・ニュートリションのパートナーシップ担当ディレクターで栄養士のカラ・シードマン氏はエポックタイムズに語った。
あなたの腸は記憶している
この発見は、以前から腸内細菌を阻害することが知られている抗生物質をはるかに超えるものだ。
抗うつ薬、ベータ遮断薬、オメプラゾール (プロトンポンプ阻害薬)、ベンゾジアゼピン、メトホルミン(血糖降下薬)など、ヒト細胞を標的とする薬剤でさえ、腸内細菌叢の構成を変化させることが研究で示された。
「私たちは薬が人間の細胞にのみ作用するとよく考えますが、薬は腸内生態系、つまり微生物、腸管バリア、免疫システムとも相互作用します」とシードマン氏は述べた。
この研究では、多くの薬剤が腸に持続的な影響を残し、服用を中止してから 3年以上経ってもその影響が見られることが明らかになった。
薬剤自体が原因かどうかを検証するため、研究者たちはより小規模なサブグループを経時的に追跡調査した。
このグループでは、薬剤の服用開始時に腸内環境の変化が予測通りに現れ、服用を中止するとその変化が元に戻ることが多かったことから、因果関係が示唆された。
研究結果によると、一般的な薬剤は抗生物質と同様の作用を示すことが示された。不安症の治療によく処方されるベンゾジアゼピン系薬剤は、腸内細菌叢の多様性を低下させることで、特定の広域スペクトル抗生物質と同程度に腸内環境を変化させた。
抗うつ薬も、抗生物質と同様のパターンを示した。
影響を受ける腸内細菌
抗うつ薬やベータ遮断薬などの薬剤曝露によって増加する一般的な細菌の種類に、クロストリジウム属細菌がある。これらの細菌種の中には、まれにヒトの感染症と関連付けられているものもある。
ベンゾジアゼピンは、ドレア・フォルミシゲネランス (細菌)およびルミノコッカス・トルク (炎症性腸疾患などに関係する腸内細菌)の増加と関連している。
ドレア・フォルミシゲネランスは、いくつかのヒト研究において肥満やメタボリックシンドロームとの関連が指摘されているが、有益な代謝産物を生成することもある。
ルミノコッカス・トルクは腸内壁の粘液を分解する細菌で、過剰に存在するとクローン病、過敏性腸症候群、代謝障害などの腸内疾患と関連するとされる。
同じ症状に使用される薬剤が、必ずしも腸に同じように影響を及ぼすわけではない。例えば、ベンゾジアゼピン系薬剤の中では、ザナックス(日本のソラナックス)はジアゼパム(日本のセルシンなど)よりも腸内細菌叢の多様性を大きく損なうことがわかった。
プロトンポンプ阻害剤は、歯周病や虫歯に関連するストレプトコッカス・パラサングイニスやベイロネラ・パルブラなどの口腔内細菌の増加と関連があった。
おそらく最も印象的だったのは、これらの変化が累積的に生じたことだろう。抗生物質の使用歴のある人は、最後に抗生物質を処方されてからどれだけ時間が経っていたかに関わらず、抗生物質を服用したことがない人と同じ腸内多様性を完全に回復することはなかった。
過去の使用が積み重なり、高用量かつ長期間の使用は、腸内微生物叢におけるより強力で持続的な変化をもたらした。この相加的パターンは、ベンゾジアゼピン、ステロイド、およびベータ遮断薬で見られた。
薬が腸内細菌叢に与える影響
薬が腸内細菌に影響を及ぼすメカニズムはいくつかある。
薬剤は、腸内細菌の一部の増殖を遅らせたり阻害したりしながら、他の細菌の増殖を阻害することで、腸内微生物叢のバランスを変化させる。有益な微生物を直接殺したり抑制したりする薬剤もあれば、胃酸を変化させたり、免疫反応に影響を与えたり、腸内壁を弱めたりする薬剤もある。
抗うつ薬は腸内細菌のエネルギー生産と利用を阻害し、場合によっては直接死滅させる可能性がある。非ステロイド性抗炎症薬は腸内壁を刺激し、腸の漏れ (リーキーガット症候群)や炎症を悪化させ、繁殖しやすい微生物を変化させる。
有益な微生物は、炎症を鎮めるのに役立つ短鎖脂肪酸を生成するが、これらの有益な微生物が排除されると、短鎖脂肪酸のレベルが低下し、腸の炎症や腸内バリアの破壊につながる可能性がある。
腸の炎症や腸バリアの破壊は、脂肪肝、インスリン抵抗性、そしておそらくは心血管疾患リスクの上昇などの代謝障害の一因となる可能性がある。
薬の服用を中止した後に、腸内細菌叢が回復する可能性はある。特に、腸内環境がもともと多様であった場合や、食事療法が腸内細菌叢の再生を促す場合はなおさらだ。ただし、一度消滅し、補充されなければ、完全に消滅してしまう菌もいる。
2024年のレビューでは、回復は必ずしも完全ではないことが指摘されている。多様性が回復したとしても、一部の種が二度と戻ってこなかったり、入れ替わったりするため、細菌の組成は数ヶ月間変化したままになることがある。
特に、赤ちゃんは腸内細菌の変化に対して非常に脆弱だ。
2022年の研究では、プロトンポンプ阻害剤(PPI)を 400日以上投与された乳児では、腸内細菌叢の多様性とバランスが低下し、これらの変化は投薬中止から 1ヶ月後も持続することが明らかになった。
研究者たちは、PPI の長期使用は短期使用よりも腸内細菌叢を乱す可能性があると結論付けた。
幼少期に抗生物質にさらされると、代謝障害やアトピー性疾患のリスクが高まるほか、後年になってアレルギー、喘息、代謝性疾患を発症するリスクも高まる (研究)。
回復は個人的なもの
薬が腸に与える影響は予測可能だが、その影響の程度は大きく異なる。
シードマン氏は以下のように述べる。
「食事はマイクロバイオーム (腸内細菌叢)の健康と回復力にとって最も強力な要因です。私たちが食べるものは、微生物の多様性、食物繊維の発酵、胆汁酸の生成に影響を与え、これらはすべて薬剤と相互作用します」
高繊維食は抗生物質使用後のバランス回復に役立つが、低繊維食は腸内バリアを弱め、炎症を促進し、腸内細菌叢の回復を遅らせる可能性がある。腸内炎症は薬剤の吸収速度を変化させ、胆汁酸の変化は脂溶性薬剤の代謝に変化をもたらす可能性がある。
個人のベースラインの腸内細菌叢構成も重要な要素だ。「同じ薬を服用した 2人の人が、腸内細菌叢の元々の多様性や健全性によって、マイクロバイオームの変化や回復時間に大きな違いが見られることがあります」とシードマン氏は付け加えた。
ここまでです。
この中に、
> プロトンポンプ阻害剤(PPI)を 400日以上投与された乳児では…
という下りがあって、驚きましたが、小さな子どもにそんなに長期にプロトンポンプ阻害剤を投与する事例ってあるのですね。
プロトンポンプ阻害剤は、胃酸の分泌を強力に抑制する薬で、胃潰瘍とか逆流性食道炎などに処方されるものですが、これもまた問題のある薬剤で、たとえば、
「 3年以上プロトンポンプ阻害剤を服用し続けた場合の胃がんの発症リスクは 800%上昇する」
ことが 2019年の研究でわかっています。以下の記事にあります。
・胃潰瘍や逆流性食道炎に幅広く処方される胃薬「プロトンポンプ阻害剤」は胃ガンのリスクを最大で8倍にまで上昇させる可能性。そして腸内細菌環境を破壊する示唆も
In Deep 2019年9月30日
胃の薬なのに、結局、胃がんの発生率を非常に高くするという矛盾に富んだ薬ですが、処方されている方の数は多いと思います。
先ほどの研究では、プロトンポンプ阻害剤は、ルミノコッカス・トルクという細菌を増加させるようですが、これはクローン病や、あるいは大腸がんなどの腸疾患と関係するとされています。胃も腸もどちらも破壊するという意味では、プロトンポンプ阻害剤は、かなりの破壊力を持つといえます。
あと、これらの薬は、「さまざまな臓器を守っている粘液を分解してしまう」のですね。以下の 3種類の薬が、粘液を分解することがわかっています。こちらの記事で取り上げています。
粘液を分解する薬
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
・抗生物質
結局、特に子どもの健康を守る、あるいは維持するためには、薬の投与にできるだけ慎重になるということが重要なのかもしれません。
場合によっては、一生影響が続くマイナス面を負ってしまう可能性もあるのですから。
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