グアテマラの子どもの約半数は栄養不足による発達阻害
コロナのパンデミックの頃、非常に多くデータを参照させていただいた統計サイトである Our World in Data (データで見る私たちの世界)がありますが、最近、そこでショッキングなデータを見ました。
それは、
「グアテマラおよび同地域における小児の発育阻害率」
というグラフで、以下です。日本語にしています。
年齢相応の健康的な成長に照らして想定される身長を著しく下回る5歳未満の子供の割合(2019~2023年)

OurWorldInData
これは、
「グアテマラの幼児のほぼ半数が慢性的な栄養失調による発達阻害に苦しんでいる」
ということを示していることになります。
具体的には、身長が想定されるものより極端に低くなってしまうことなどが挙げられます。
また、この発育阻害が慢性的な栄養失調が原因ならば、他にも「感染症に弱い」(「胸腺」という子どもの免疫に重要な器官の発達には適切な栄養が最も重要)とか、あとは「脳の発達の阻害」ですね。
幼児の脳は急速に成長するため、栄養、特にタンパク質や鉄分が不可欠です。(JA によると、脳の成長に必要な栄養素は、ブドウ糖、アミノ酸、必須脂肪酸、リン脂質、ビタミン、ミネラルだそうです)。
大人の栄養不足よりも、子どもの栄養不足は深刻な後遺症をもたらすと思われます。
そういうグアテマラのデータを見たのですが、そのページには、さらに Our World in Data の記事へのリンクが示されていまして、それは、これらのグアテマラなどの子どもの発達阻害の現状と照らし合わせて、「過去の日本との対比」をデータとして述べています。
記事の小見出しは、
「現在、発育阻害率が高い国々は、日本が 70%から 5%にまで改善させた経験から何を学ぶことができるだろうか?」
というものでした。
グラフ満載の記事で、書いたのは、 Our World in Data のハンナ・リッチーさん(執筆)という方と、トゥナ・アシスさん(データ)という海外の方です。
日本は確かに戦後、著しく子どもの健康状態が上昇して、乳幼児死亡率も劇的に下がりました。これを「医療のおかげ」と考える人も多いですが、
「基本的には栄養状態の改善のおかげ」
です (あとは 水道による「衛生的な飲料水の普及」もあります)。さらには、回虫などの寄生虫の社会からの排除ということもあったようです。
ともかく、その記事をグラフと共にご紹介したいと思います。現状の日本はともかく、かつて日本は、こういう偉業をなしえた国でもあったようです。
ここからです。
20世紀を通じて、子どもの発育阻害は劇的に減少した
Childhood stunting fell dramatically over the 20th century
Hannah Ritchie and Tuna Acisu 2026/05/11
現在、発育阻害率が高い国々は、日本が70%から5%にまで改善させた経験から何を学ぶことができるだろうか?
現在、世界の子どもの 4人に1人が発育阻害に苦しんでいる。これは 5歳未満の子ども 1億5000万人に相当する。
年齢に対して身長が低すぎる子供は発育阻害とみなされる。これは栄養失調の結果だ。ここで言う発育阻害とは、単に同年代の子供より少し身長が低い子供のことではなく、医学的に許容される健康的な成長範囲よりも身長が低い子供のことを指す。
発育阻害は、栄養不良や頻繁な病気への曝露を反映しており、栄養素の保持能力が低下し、必要量が増加する。発育阻害は、子どもの発達が阻害されていることを示しており、その影響は幼少期にとどまらず、身体的発達と認知的発達の両方に影響を与え、生涯にわたって続く可能性がある。
今日、世界各地の発育阻害率を見ると、大きな違いが見られる。一部の国では発育阻害はほぼ根絶されているが、アジアやアフリカでは依然として多くの国で、3分の1以上の子どもが発育阻害に苦しんでいる。
これは、今日では発育阻害が稀な地域で、いつ、どのようにして発育阻害が減少したのかという疑問を提起する。
新たな重要なデータセットが、いくつかの答えを与えてくれる。
これまで研究者たちは、1990年代まで遡る発育阻害率に関する質の高いデータしか持っていなかった。しかし、エリック・シュナイダー氏とその同僚による大規模な取り組みによって、このギャップが埋められ、1世紀以上にわたる状況の変化を把握できる記録が綿密に収集された。
彼らが最近発表した論文のデータによると、20世紀を通じて多くの国で子どもの発育阻害が劇的に減少したことが示されている。このデータは以下のグラフで確認できる。
発育阻害率 (英国、米国、日本、韓国、ノルウェー、オランダ)

1990年代には、多くの高所得国で発育阻害率が 10%未満にまで低下していたものの、多くの低・中所得国では依然として深刻な問題であった。
しかし、彼らも進歩を遂げている。下のグラフでは、中所得国の一部における発育阻害率をご覧いただくことができる。
発育阻害率 (グアテマラ、インディア、バングラデシュ、スリランカ、ペルー、ブラジル、中国)

なお、この過去のデータは 2歳から 10歳までの子供を対象としており、最新のデータは 2010年代のものだ。一般的に更新される指標は 5歳未満の子供に焦点を当てているため、これらの長期的な過去の数値を現在の数値と直接比較することは困難だ。
しかし、大まかな傾向は似ている。先進国における現代の発育阻害率は非常に低い一方、低・中所得国では、子供の 5分の1以上(場合によっては 3分の1以上)が発育阻害に苦しんでいるのが一般的だ。
この長期データ自体が、子どもの健康状態が劇的に改善する可能性があり、発育阻害率が高いことは避けられないことではないことを示している。
進歩がどのようにして可能になるのかを理解するために、私は一つの国、日本に焦点を当てたいと思う。
20世紀初頭には、日本の子供の 70%以上が発育阻害に苦しんでいた。今日では、その割合はごくわずかである。
日本における発育阻害の蔓延から低レベルへの推移を示す長期的なデータが存在するということは、多くの低・中所得国がこの歴史的軌跡の中で現在どのような位置にあるかを理解し、文脈づけることができることを意味する。
下のグラフは、過去 100年間の日本の発育阻害率の低下と、2010年代のいくつかの国における発育阻害率を比較したものだ。日本は質の高いデータを持っているため、これを年ごとの系列としてグラフ化することができる。
なお、このデータは各コホートの子供の出生年に基づいており、測定年に基づいているわけではないことに注意してほしい。
例えば、今日のブルンジと東ティモールの率は、1920年代の日本とほぼ同等であることがわかる。マラウイとインドは、1940年代の日本とほぼ同等だ。
日本の発育阻害対策の各段階における介入と変化を理解することは、それぞれの段階にある国々にとって貴重な教訓となるだろう。
日本はどのようにして発育阻害を減らしたのか?
日本の成長過程を時系列で捉えるには、いくつかの重要な時期に分けて考えると良いだろう。第二次世界大戦前の 1900年代初頭は、発育阻害が緩やかなペースで減少した時期であり、戦争中は進歩が停滞した時期、そして戦後は、発育阻害が劇的に減少した時期である。
戦前の時代
1900年代初頭には発育阻害率が約 70%だったのが、1940年代初頭には 40~45%にまで低下した。平均すると、年間約 0.8パーセントポイントのペースで低下していた。
戦後、栄養状態の改善が発育阻害の減少に重要な役割を果たした一方で、研究によると、戦前のこの時期においては、感染症対策の方がより重要であったことが示唆されている。20世紀前半、日本では胃腸疾患による死亡者数が大幅に減少した。全国的に死亡率は約 40%減少し、主要都市ではわずか 10年間で半減した。
この進歩の大部分は水道網の拡大によるものだった。東京では、水道を利用できる世帯の割合が 1920年の約 30%から1930年代半ばには 80%に増加した。
研究者らは、この清潔な水の供給網の整備が、この期間における乳幼児死亡率と感染症による死亡率の減少 の30~ 40%を占めたと推定している。
これは、戦前の日本と同程度の発育阻害率を抱える国々にとって、今日どのような意味を持つのだろうか?
発育阻害率が非常に高い国々を見てみると、下痢性疾患による子供の死亡が頻繁に発生していることがわかる。
日本の歴史は、これらの国々が清潔な水、安全な衛生設備、衛生施設の拡充を通じて感染症の抑制に注力することで、子供の発育阻害を減らすことができる可能性を示唆している。
第二次世界大戦時代の逆行
第二次世界大戦後の日本の発育阻害の急激な悪化について述べる前に、戦争末期には進歩が停滞し、場合によっては後退した可能性さえあることを指摘しておく価値がある。
研究によると、栄養レベルに一時的かつかなり深刻な逆転現象が生じたことが示唆されている。
1日の平均摂取カロリーは、1941年の約 2,100kcalから 1945年には 1,800kcal未満に減少した。戦争末期の東京での調査では、大多数の子供たちが 1日に 1食以下しか食べていないことが報告された。
戦時中はデータ収集が大幅に制限されていたため、日本の初期の時系列データには空白期間が見られる。しかし、データは、発育阻害のレベルが戦後の方が戦前よりも高かったことも示している。
この発育阻害に苦しむ日本人児童の集団で興味深いのは、彼らが幼少期後半に同年代の子どもたちに追いついたことである。成人する頃には、彼らは同年代の子どもたちと同じくらいの身長になっていた。これは、環境が改善されれば、子どもたちは生後数年間だけでなく、幼少期後半にも栄養面でのショックから回復できることを示唆している。
これは政策にとって重要な意味を持つ。もし追いつき成長が可能であれば(日本のデータが示唆するように)、そもそも栄養不足を予防する方が費用対効果が高く有益だが、幼少期を通して栄養状態を改善することで、子どもたちは栄養格差を埋める機会を得ることができる。
戦後の急速な進歩
戦後、発育阻害の減少は加速し、年間平均約 2.2パーセントポイントの減少となった。
戦前は疾病対策に重点が置かれていたが、戦後は疾病と食生活の両方に同時に取り組んだため、進歩のスピードはほぼ 3倍になった。
日本の公衆衛生研究者たちは後に、この時期の日本を「寄生虫の楽園」と表現した。農村部に住む人々の 10人中 7人が、腸内に寄生して栄養素の適切な吸収を妨げる回虫や鉤虫に感染していた。他の感染症も蔓延していた。
しかし、戦後 30年の間に状況は一変した。日本は鉤虫症、回虫症、マラリアなどの疾病を効果的に撲滅し、下痢性疾患も大幅に減少した。これは、清潔な水の供給と衛生設備の拡充、学校での駆虫プログラム、そして衛生教育への多大な投資の成果であった。
1950年から 1980年の間に、清潔な水道水を利用できる人の割合は 30%未満から 80%以上に増加した。
もう一つ、あまり注目されていない変化は、「人糞堆肥」から化学肥料への移行だった。
20世紀の大部分において、日本の農業は栄養源として人糞(人糞)に大きく依存していた。第二次世界大戦前には、その一部は合成化学肥料に置き換えられたが、戦争中はこれらの供給がほぼ完全に途絶えた。
この慣習は、農村部の人々の間で寄生虫感染、特に鉤虫感染の主要な原因となった。糞便中の寄生虫の卵は土壌中で数週間生存することができ、人々は畑で栽培された野菜やその他の食品を食べることによって、あるいは畑で働く人々の皮膚に幼虫が侵入することによって、それらを摂取した。
戦後の数十年間で、化学肥料が徐々に人糞に取って代わり、農業を通じたこれらの寄生虫の伝播経路が断たれた。感染症への曝露は大幅に減少した。
現在、発育阻害率が 5%から 40%の範囲にあるほとんどの国では、安全な水、衛生設備、衛生習慣へのアクセスを拡大することで感染症対策に取り組むことが極めて重要だ。
これらの資源の不足に起因する死亡率は、日本の現状と比較すると依然として非常に高い水準にある。寄生虫によって引き起こされるフィラリア症などの病気は、依然として蔓延している。
日本は、衛生習慣の重要性に関するインフラ整備と教育プログラムの実施によってこれを実現した。これは、特に学校教育において、日本の戦略の重要な部分を占めていた。
発育阻害の減少がこれほど速かったのは、疾病負担の軽減や子供たちが栄養素をより容易に吸収できるようになったことだけでなく、栄養摂取量自体が改善されたためでもある。
20世紀後半、日本の食生活は米や穀類といった主食への依存度が高いものから、肉、魚介類、果物をより多く含むものへと変化した。下のグラフは、1961年(データが入手可能な最も古い年)以降の各食品群の 1日平均供給量で測定した、この変化を示している。
戦後、総カロリー摂取量が増加しただけでなく、食生活の多様化によって、それまで単調な穀物中心の食生活では不足していた重要な微量栄養素や良質なタンパク質の摂取量も増加した。
当時の日本政府は子どもの栄養を優先事項とした。戦後、学校給食は大幅に拡大した。
1948年当時、学童の半数は部分的な給食、つまり牛乳と副菜だけの食事を受け取っていた。1960年代までには、ほぼすべての子供たちが、より充実した完全な給食を受け取れるようになっていた。
子供たちの栄養状態は劇的に改善し、母親たちの栄養状態も同様に改善した。
かつて日本の発育阻害率が非常に高かった理由の一つは、母親の栄養失調であった。栄養失調の母親は、赤ちゃんが低体重で生まれるリスクを大幅に高める。1900年から 1970年の間に、日本の平均出生体重は250グラム増加した。
現在、多くの低・中所得国では、低出生体重児が多数生まれている。インドのような国では、その割合は 4分の1を超えています。そのため、子どもたちが生まれる前から不利な状況に置かれないようにするためには、母親の健康状態を改善することが不可欠だ。
他の国々も進歩できる
日本の発育阻害対策の進歩は目覚ましいものだった。しかし、それは決して特異な事例ではない。
近年のいくつかの国では、戦後の日本の変貌ぶりに匹敵するほどの急激な衰退が見られた。
下のグラフは、過去数十年のエチオピア、ネパール、ペルーのデータを示している。これらの国は、急速な発展を遂げた現代の模範例としてしばしば挙げられる。注目すべきは、これらの国が南米、アフリカ、アジアにまたがっている点である。
小児の発達阻害率の推移 (エチオピア、ネパール、ペルー、日本)

20世紀における発育阻害率に関するこの新たな長期データセットは、発育阻害が避けられないものではないことを理解するのに役立つ一方で、あらゆる場所で発育阻害を根絶することの難しさについても正直に認識する必要がある。
ブルンジやインドのような国々は、数十年前の日本と同じような状況にある。
日本の経験は、変革は可能であることを示しているが、そのためには疾病、食生活、インフラ整備といった分野において、世代を超えて継続的に取り組む必要がある。とはいえ、それは投資する価値のあるものと言えるだろう。何億もの子どもたちの未来がかかっているのだから。
ここまでです。
日本の歴史では、これらの様々な努力のおかげで発育阻害そのものは大きく減りましたが、その後は、子どもの数自体が減少し続けていて、そして、日本は人口も減少し続けています。
つまり、「将来的に維持できなくなる可能性が高い国家」となってしまったという現実はあるのですが…。
それはそれとして、この記事で、「合成肥料の普及がいかに重要なものだったか」がわかり、栄養状態の改善と共に、合成肥料の普及で、寄生虫も大幅に減少したことが書かれています。
そして現在、肥料の世界的な流通に支障が出ているという現実も思い出します。
人間の人口の拡大は「肥料生産の拡大」と同じ曲線を描いていることを以下の記事で書いたことがあります。
100年かけて4倍に増加した地球の人口は、実は「肥料生産の拡大」と同じ曲線を描いている。ホルムズ海峡閉鎖で肥料生産が長く崩壊した場合は…
In Deep 2026年3月23日
日本は食料自給率が特に低い国のひとつですが、今後の世界情勢次第では、これまでの栄養と衛生により寿命を延ばしてきた日本の歴史の逆転ということもあり得るのかもしれません。
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