報復の形は
前回の記事「ロシア-ウクライナ戦争の「999日目」に発生した終末的な展開…」の後すぐウクライナは米国製のミサイルをロシア国内に向けて撃ってしまいました。ウクライナもこれを認めています。
共同通信より
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は19日、ウクライナと米国の高官の話として、ウクライナ軍が同日、米国製の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」でロシア西部ブリャンスク州の弾薬庫を攻撃したと報じた。ロシア国防省はATACMSによる攻撃があったと発表していたが、ウクライナは公表していなかった。
バイデン米政権が米国供与の長射程兵器によるロシア領攻撃を容認したことが明らかになったばかりで、実際に使われるのは初めてとみられる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、ブリャンスク州への攻撃について「詳細は避けるが、ATACMSなど持っている長射程兵器は全て使う」と述べ、ATACMS使用を事実上認めた。
共同通信 2024/11/20
この攻撃は、プーチン大統領が「核兵器使用原則の閾値を引き下げた」後に行われました。核兵器使用の閾値を引き下げたというのは、簡単にいえば、
「以前よりも核使用が適用される条件が下がった」
ということになります。
今後どうなるのかはわからないですが、まずは、これについて各報道をまとめていた米ゼロヘッジの記事をご紹介します。
ウクライナのATACMSによるロシアへの攻撃は、プーチン大統領が核兵器の閾値を引き下げた後に行われた
Ukraine's ATACMS Strike On Russia Comes After Putin Lowers Threshold For Nukes
ZeroHedge 2024/11/20
バイデン大統領がウクライナに対し、ロシア領土の奥深くを攻撃するために米国製の長距離 MGM-140 陸軍戦術ミサイルシステムの使用を許可してから約 1日後、新たな報告によると、ウクライナ軍がブリャンスク州西部の軍事施設を攻撃したという。
これに先立ち、ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアの核兵器ドクトリン(核の使用原則)はウラジーミル・プーチン大統領によって変更され、署名されたと述べた。
同報道官は、「ウクライナ軍がロシアに対して西側の非核ロケットを使用した場合、核攻撃の可能性がある」と示唆した。
RBC ウクライナ通信は 11月19日に「ウクライナ国防軍は初めて ATACMS 弾道ミサイルでロシア領土を攻撃した」と報じた。
RBCウクライナは、ブリャンスク州カラチェフ市近郊の軍事施設が ATACMS で攻撃されたと伝えた。この場所はウクライナ国境から約 115キロの距離にあった。
「確かに、我々は初めて ATACMS をロシア領土攻撃に使用した。攻撃はブリャンスク州の施設に対して行われ、命中は成功した」とある情報筋は地元メディアに語った。
一方、 ウクライナのキエフ・ポスト紙は、ロシアのミサイル砲兵総局第67兵器庫が攻撃を受けたと伝えた 。同施設には、大量の対空ミサイル、多連装ロケット弾、砲弾、誘導爆弾が備蓄されていたと伝えられており、その多くは北朝鮮から供給されたものだった。
キエフ・ポスト紙は次のように伝えた。
ソーシャルネットワーク上の住民を含むロシアのメディア筋は、カラチェフ地区内から爆発音が聞こえ、「軍事基地」が攻撃されていることを示唆していると報じた。
ロシアのアストラ・テレグラム・チャンネルは事件の動画を共有し、地元の報道によると、この兵器庫は 2023年後半と今年 6月と 10月に攻撃を受けたという。
ブルームバーグは攻撃に関するさらなる詳細を明らかにした。
ロシア国防省は、ウクライナ軍がウクライナとの国境にあるブリャンスク州の軍事施設に対して米国製の ATACMS 弾道ミサイルによる攻撃を開始したことを確認したと、インターファクス通信が報じた。
・ミサイル5発が撃墜され、1発が損傷。死傷者は報告されていない。
・ミサイルの破片が軍事施設で火災を引き起こした。
以下は攻撃の映像と思われるものだ。
❗️For the first time in history! The Armed Forces of Ukraine today struck a facility on the territory of the Russian Federation with ballistic ATACMS from the United States, - media reports citing sources. pic.twitter.com/kO4Qs9ASPr
— MilitaryNewsUA (@front_ukrainian) November 19, 2024
これに先立ち、クレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフ氏は記者団に対し、ウラジーミル・プーチン大統領がロシアの核兵器ドクトリンの新たな変更に署名したと語った。
ペスコフ氏は、新たな変更は「ウクライナ軍がロシアに対して西側諸国の非核ロケットを使用することで核攻撃の引き金となる可能性がある」ことを意味すると述べた。
ペスコフ氏の発言は、バイデン大統領がロシア奥地の軍事目標に対するウクライナの ATACMS の使用を承認した直後になされた。
さらに、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、G20サミットの合間にブラジルのリオデジャネイロで行われたイベントで核ドクトリンについて言及し、核兵器使用の閾値は引き下げられたと述べた。
ラブロフ外相は、ロシアの立場は核戦争は起こらないというもので、ロシアの核政策は核を「抑止力」とみなす米国の政策と根本的に変わらないと主張した。しかし、それでもロシアはウクライナが米国の長距離ミサイルを発射した場合には「それに応じて対応する」と付け加えた。
プーチン大統領は、米国とそのヨーロッパの同盟国に対し、自国領土内のロシアの軍事施設に対して ATACMS を使用すると直接の衝突を引き起こす可能性があると警告しており、バイデン・ハリス陣営の戦争屋とヨーロッパ諸国は、世界を第三次世界大戦へと近づけ続けたことになる。
一方、ドナルド・トランプ・ジュニア氏は、 バイデン政権によるこの極めて危険な策略を、父親が大統領に就任する前に世界を第三次世界大戦に危険なほど近づけようとするホワイトハウスの極左民主党の動きだと見ている。
ドナルド・トランプ・ジュニア氏の投稿より
「軍産複合体は、私の父が平和を築き、人命を救う機会を得る前に、第三次世界大戦を確実に起こしたいようだ」
予測市場プラットフォームウェブサイト「ポリマーケット」のユーザーは、「 2024年に核兵器が爆発するか?」という契約の入札額を、 東部標準時午前4時の 11%から東部標準時午前9時30分には約 18%まで引き上げた。
「トランプ氏は最初の90日以内にウクライナ戦争を終結させるか?」は 38%、「ウクライナは2025年までにモスクワを攻撃するか?」は 31%などとなっている。
神様、私たち全員を助けてください (God help us all)。
ここまでです。
市場予測マーケットでは、核が使用される可能性はかなり低いと全体的に予測されているようです。
しかし、最初にご紹介しました共同通信の記事の中で、ウクライナのゼレンスキー大統領が、
「持っている長射程兵器はすべて使う」
と述べていたり、あるいは今後も連続して米国製の長距離ミサイルでの攻撃が続いた場合はどうなるのだろうか、という懸念はあります。
ロシアの元大統領のメドベージェフ氏は、以下のように書いています。
ドミトリー・メドベージェフ氏のテレグラム投稿より
この場合、ウクライナと NATO の主要施設がどこであろうと、それらに対して大量破壊兵器で反撃する権利が生じる。そして、これはすでに第三次世界大戦だ。おそらく老バイデンは本当に人類の大部分を引き連れて優雅に死ぬことを決心したのだろう。
どうなっちゃうのかは、よくわからないままですが、本当にどうなっちゃうんでしょうかね。
核攻撃の際の「受け手」の基本原則
なお、昨日、地球の記録に「スウェーデン政府が国民に「戦争への備えを呼びかけるパンフレット」500万冊を配布」という記事を投稿したのですが、そのスウェーデン国民 520万世帯に配布されるパンフレット「危機や戦争が来たら」の中には、核の項目もあります。以下のように書かれています。
核兵器
世界的な脅威レベルが上昇し、核兵器が使用されるリスクが高まっています。核兵器、化学兵器、生物兵器が使用される攻撃の際には、空襲のときと同じように身を隠してください。民間防衛シェルターが最善の保護を提供します。放射線レベルは数日後には大幅に低下します。
ここに「放射線レベルは数日後には大幅に低下します」とありますが、これについての正確な数字は、14年前の記事「核攻撃を受けた際の対処法」にあります。
そこから抜粋しますと、以下のように 7時間ごとに 10倍ずつ放射線レベルが低下していきます。
セブン-テン・ルール(The “seven-ten” rule)
最初の爆発の後、放射線の量は、7時間ごとに 10倍ずつ減少することを覚えておくのもいいかもしれない。
たとえば、 500ラド(ラドは、吸収した放射線の総量の単位)のレベルは、7時間で 50ラドまで下がり、そして、2日後(49時間後)には 5ラドまで減少する(元の 100分の1)。
つまり、もしもあなたが良いシェルターを持っているのなら、そこで 7時間じっとしていれば、生き残る可能性は高くなるということになる。
2日間で放射線の総量は 100分の1にまで低下するということです。
もちろん、爆心地等だとどうにもならないですが、そうでなければ、このセブン・テン・ルールは覚えて役に立つ数字です。
また、核兵器の爆発では電磁パルス(EMP) が発生しますので、EMP 兵器や巨大な太陽フレアと同様の影響があり、広範な地域で、さまざまな電気インフラがクラッシュする可能性が高いです。
先ほどのセブン・テン・ルールを取り上げていた記事にも以下のようにあります。
EMP(電磁パルス)
核兵器は、電気系統やインフラに損傷かクラッシュを引き起こす電磁パルス( EMP )を発生させるので、核攻撃の際には、テレビ、ラジオ、電話、インターネット、 ATM などにアクセスできなくなる可能性がある。また、電力、給水システム、食糧配給、輸送などに影響が出る可能性もある。
……ふと気づくと、何だか、核戦争が起きるというような想定をしている流れとなってしまっていますが(苦笑)、まあ、そうは思ってはいなくとも、「可能性」は以前より高いということは事実のようにも思われます。
アメリカの弁護士であり、投資銀行家であるジェームズ・リッカーという人が、今年 6月に「彼らは核戦争を始めようとしているのだろうか」という記事を書いていまして、こちらのブログ記事で翻訳しています。
リッカー氏は、その文章を以下のように締めています。
「彼らは核戦争を始めようとしているのだろうか」より
皮肉なことに、そのような状況では、脅威の少ない側が先制攻撃の優位を得るために実際に核戦争を始める可能性がある。
その結果は壊滅だ。第三次世界大戦だけでなく、地球上のほとんどの人類の終焉となる可能性がある。生き残った人々にしても、おそらく生き残らなければよかったと思う状況になるだろう。
この無謀なエスカレーションが続けば、第三次核戦争で私たちは破滅するかもしれない。誰がこれを止めることができるのだろうか。
米国とウクライナの無謀なエスカレーションは今や頂点に達しているわけですが、それでも、今後どうなるかなどは予測できるものではありません。
ともかく、ロシア・ウクライナ戦争 1000日目の出来事でした。
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