患者数34万人の透析への影響があと3週間ほどで始まってしまう
エネルギーとしての石油や天然ガスそのものというより、そこから作られるあらゆるものの高騰、あるいは不足や枯渇の可能性が、戦争が長引くにつれて現実化しています。
特に、医療への影響は予想以上に早く訪れそうで、ロイターの報道では、早ければ 4月にも、まずは人工透析などに影響が出る可能性が述べられています。
(ロイターの報道より)
> 中東情勢の悪化を受けて石油派生品ナフサの供給不足がこのまま深刻化した場合、緊急性の高い医療機器が品目によっては4月半ばから8月ごろにかけて不足に陥る可能性があることが分かった。
ちなみに、日本のナフサの在庫は 20日分しかありません。
物流ニュースサイト「Logistics TODAY」では、3月27日の、「備蓄放出でも届かないナフサ、21中分類に連鎖」という記事の中で、影響が出る品目の「深刻化の時間軸」というものを掲示していまして、そのすべてがいずれは影響を受けるのですが、その中でも、すでに深刻化している分野と、早い段階で深刻化が訪れる分野として、以下が挙げられています。
・化学工場 エチレン施設の半数減産 [深刻化まで]すでに進行中
・宿泊、洗濯、浴場 燃料・溶剤不足 [深刻化まで]すでに進行中
・医療業 透析用樹脂不足 [深刻化まで]最短で数週間で逼迫
とあり、本文には、以下のようにあります。
> 最も時間がないのは医療業だ。透析用プラスチックの在庫は数週間分とされ、透析患者は全国で34万5000人規模にのぼることから、関連資材の供給不安は医療現場全体の懸念材料になっている。
このような中で、全国保険医団体連合会という日本の保険医の任意団体が、日本政府に対して「緊急対応」を求める文書を提出しています。内容は以下に書いています。
・全国保険医団体連合会が、医療用資材の供給不足に対して政府に正式に緊急対応を要求
NOFIA 2026年3月29日
ところで、最近、JPモルガンのエネルギーアナリストが、中東からの石油供給が停止する日付けを示した輸送マップを作成していました。
日本を含むアジアは4月1日に停止
以下のマップです。アメリカのエリアは割愛しています。
このマップを説明していた記事がありますので、ご紹介します。
なお、ご紹介する記事のタイトルは大げさであり、「大惨事は4月1日に始まる」とありますが、4月1日に大惨事が始まるのではなく、中東からの石油供給が停止する日ということで、先ほどの物流メディアなどからは、一部を除いた生活全体への本格的な影響は夏頃からだと思われます。
とりあえず記事です。
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JPモルガン、ペルシャ湾の石油供給停止を発表。大惨事は4月1日に始まる
JP Morgan Lays Out Persian Gulf Oil Cut-off; Catastrophe Begins April 1
halturnerradioshow.com 2026/03/28
JPモルガンのエネルギーアナリストは、ペルシャ湾産原油(全諸国からの原油)の流れと、輸送時間に基づいてそれらの原油がすべて配送される時期を示す輸送マップを作成した。ペルシャ湾が閉鎖されたため、最終配送は 4月1日から開始される。
JPモルガンのこのマップは、ホルムズ海峡が閉鎖されたという仮説シナリオを示しており、ペルシャ湾からの石油輸送(赤い線、1日あたりの百万バレル単位の輸送量)と、航行時間に基づいて地域ごとに「ほとんどの輸送が停止する」時期を追跡している。
・アジア 4月1日(中国、インド、日本が最も大きな被害を受ける)
・ヨーロッパ 4月10日
・北米 4月15日
・オーストラリア 4月20日
世界的な見解:リスクプレミアムと恐怖から世界中で価格が急騰したが、実際の供給不足は不均等に発生した。アジアが最初に深刻な供給不足に直面し(輸入業者への経済的負担)、米国とEUは戦略石油備蓄や迂回ルートを通じてわずかな緩衝材を得た。
この石油供給の停止は、迅速な事態沈静化、あるいは代替供給源(米国のシェールオイル/ロシア)への転換を余儀なくさせる。しかし、ロシアはガソリン供給の全面的な輸出停止を発表したばかりだ。
(参考記事) ロシアが4月1日からガソリンの輸出を禁止に
現実のペルシャ湾封鎖が目前に迫る中、世界は燃料不足による貿易の停止という事態に直面している。発電所が燃料切れを起こし、電力供給が停止する国も出てくるだろう。
電気がなければ商業は成り立たない。商業がなければ経済は成り立たない。経済がなければ仕事はなくなる。仕事がなければお金はなくなる。お金がなければ全てが崩壊する。世界経済システム全体が停止する。 人々は飢える。
ここまでです。
後半の方の、電力供給の問題や「飢え」の問題は、この 4月から始まるようなことではありません。しかし、ホルムズ海峡閉鎖が長引いた場合、あるいは、海上の封鎖がさらに激しくなった場合(イエメンのフーシ派が、紅海を封鎖した場合など)、状況はさらに悪化する可能性があります。
食料の問題は、価格は高騰するだろうにしても、すぐに「飢餓」という問題には日本は結びつかないでしょうけれど、ただ、現状でのアジア各地の状況を見ていますと、「日常生活が大きく変化する」のは、そんなに遠くないかもしれません。
しかし、日本でも先ほどまで繰り返し出てきた、ナフサの不足による(くどいようですが、在庫は 20日間のみです)医療、特に人工透析への影響は、場合によっては、
「34万人の日本人の生命に影響を与える」
ものであり、これは「非常事態」あるいは医療上の緊急事態を宣言してもいいものだと私は思います。
ところで、その「ナフサの現実」ということを最近また少し知ることができました。
ナフサを製造する装置は一度止めたら「再稼働が極めて困難」
ちなみに、ナフサの輸入先なんですが、以下の通りとなっていて、完全に中東依存であり、そして、ほとんどが現在のホルムズ海峡の閉鎖の影響を受けている国です。
石油生産量で世界1位のアメリカもまた、多くのナフサを製造していますが、アメリカは上のグラフだと、どこに入っているかというと、「その他 12.5%」の一部にしか過ぎません。
そして、何より驚いたのは、ナフサというものの製造の「特性」です。これは X に現役の医師の方が、以下のように投稿していたことから、自分でも調べ始めました。
医師の方の投稿より(一部)
「ナフサが足りないなら、使う量を減らして節約すればいいじゃん」 って思うでしょ?
ワイも最初そう思った。
無理なんだよ。エチレンクラッカーっていう、ナフサを分解してプラスチック原料を作る装置がある。
炉内温度800〜900℃で連続運転するプラントで、稼働率が60〜70%を割ると、工程が安定しなくなって止めるしかなくなる。「蛇口をちょっと絞る」が効かない。
全開か、全閉か。そういう装置。で、一度止めたらどうなるか。
再稼働には数週間〜1ヶ月以上かかる。
ここまでです。
これを読みまして、「ほんまかいな」と思い、調べますと、基本的にはこの通りのようです。
以下のような感じとなり、一度停止すると、その後は大変なようです。
エチレンクラッカーの真実
・エチレンクラッカー(ナフサを原料とする蒸気分解装置)には実務上の「最低稼働率の壁」(約70〜75%)が存在し、それ以下に下げると不安定化→停止せざるを得なくなる。
・日本国内でも、75〜80%台(時には70%台)で長期間低稼働を続けているが、これが「ぎりぎりのライン」で、60%台前半まで下げると「止めるしかなくなる」状態になる。
・しかし、一度止めた場合、再稼働が極めて困難で、再起動には数週間〜 1ヶ月以上かかる。
・また、日本国内のエチレンクラッカーは老朽化が進んでおり(50年超の装置が多い)、熱応力で配管・チューブに亀裂が入るリスクが高い。
・つまり、先ほどの投稿にあるような「節約のために量を減らせばいいという発想は通用しない」のがクラッカーの特性。
ここまでです。
結局、現在の中東情勢のままナフサ輸入が滞り続ければ、4月から 5月にはタイムリミットが来る可能性が高いのです。
政府や当局から何の対応もされなかった場合、医療上の非常事態は確実に発生すると見られます。戦争が行われている中東よりも日本のほうが多くの命が危険にさらされていると言っていいはずです。
短期では、その医療上のカタストロフ、中期(夏頃)には、燃料や日常製品全体に影響が及びます。
これが長期となった場合、肥料不足と燃料高騰から、農作物の大幅な減少、あるいは、農家の方々が自主的に廃業していく事例も多数出てくると思われ、いよいよ深刻な食料危機の可能性が高まります。
食料危機が日本だけの問題なら、輸入だの何だのという方法はあるのでしょうが、今は「世界全体で肥料不足と、少し先の穀物不足が明白となってきている」わけで、世界的な食料争奪戦となった場合、日本がどこまで戦略的に食糧を確保できるかは不明です。
歴史上でもあまりないような危機がすでに始まっています。
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