2016年4月21日の英国エクスプレスより
ほんの1週間ほどの間に、マグニチュード6以上の地震が世界中で毎日のように起こる状態が続いています(正確には 4月22日までの 10日間で 9回)。
そのような中、上のような記事がありまして、現実に地震が続いている中で物騒なタイトルであると共に、普通なら、このようなものは問題外の記事なのですが、
・発言をしているのが元USGS(アメリカ地質調査所)の地質学者であること
・「金曜日(日本では4月23日の土曜日)」と、極めて日時を限定していること
・サンアンドレアス断層に言及していること
そして、
・地震を誘発する条件に「満月と新月」の概念を入れていること
などに、やや興味を持った次第です。
というのも、最近、フランス国立科学研究センターが、「月が地球の磁場の維持に関与している可能性」をプレスリリースで発表していまして、月が地球に与えている力学的な力は予想以上に大きなものかもしれないということがわかってきたのかもしれないのです。
・The Moon thought to play a major role in maintaining Earth’s magnetic field
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月は地震に影響を与えるか
そのようなこともあり、今回のエクスプレスの記事に「満月と地震」という概念が出ていることに少し関心を持った次第です。
もちろん、満月は毎月あるわけですから、毎月毎月、満月のたびに地震を気にしていたらキリがないですが、今のような、ちょっと尋常ではない地震の連続の時期には、少し気にはなります。
元 USGS の地質学者は、ジム・バークランドさんという人で、下のようにテレビなどにも出ている方のようです。
記事は後でご紹介しようかと思いますが、その記事の中に、下のような部分があるのです。
バークランド氏は、これまで起きた 25個の巨大地震のうち、20個は、満月か新月の時に起きていると言う。
「そうなの?」と思い、そして、これなら自分でも調べられますので、現在の歴史の中でのマグニチュードの大きな地震の上位 10の日付けと満月の関係を見てみました。
時代が古いものは新月の日を調べられませんでしたので、満月だけです。
マグニチュードの数字の後ろに「赤」で示したものは、地震発生日と満月が完全に一致したか、前後3日以内に起きたものです。
歴代でマグニチュードが大きかった地震
1 チリ地震 1960年5月22日 M 9.2 – 9.5 (満月は5月11日)
2 スマトラ島沖地震 2004年12月26日 M 9.1 – 9.3 (満月は12月26日)
3 アラスカ地震 1964年3月28日 M 9.1 – 9.2 (満月は3月28日)
4 アリューシャン地震 1957年3月9日 M 8.6 – 9.1 (満月は3月16日)
5 東北地方太平洋沖地震 2011年3月11日 M 9.0 (満月は3月19日)
5 カムチャツカ地震 1952年11月4日 M 8.8 – 9.0 (満月は11月2日)
7 チリ・マウレ地震 2010年2月27日 M 8.8 (満月は2月28日)
7 エクアドル・コロンビア地震 1906年1月31日 M 8.8 (満月は2月9日)
9 アリューシャン地震 1965年2月4日 M8.7 (満月は2月16日)
10 スマトラ島沖地震 2005年3月28日 M 8.6 (満月は3月25日)・地震の年表 – Wikipedia より。
うーん、微妙ですが、歴史上の大地震の少なくとも半分は満月の時期に起きていたということを初めて知りました。
満月は基本的に月に1度しか来ないことを考えると、ある程度は、満月の時には大きな地震が起きやすいという傾向があるといえるのか、偶然なのか。
これだけでは何とも言えませんが、ちょっと気になりましたので、過去5年くらいの全世界のマグニチュード7以上の地震の時はどうだったのかを調べてみました。
最近のものでしたら、満月も新月も日付けがわかりますので、地震の発生の日と近い場合は、後ろに満月、あるいは新月の日付けを記しました。
2011年から 2015年までの全世界のマグニチュード7以上の地震の回数は 18回でした。ここに記したのは本震だけで、余震とされるものはマグニチュード7以上でも記していません。
2011年から2015年までの5年間のマグニチュード7以上の地震
2011年
3月9日 三陸沖で地震 – M 7.3
3月11日 東北地方太平洋沖地震 – M 9.0
4月20日 中国四川で地震 – M 7.0 (4月18日が満月)
10月23日 トルコ東部地震 – M 7.1
11月8日 沖縄本島北西沖で地震 – M 7.02012年
1月1日 鳥島近海で地震 – M 7.0
3月20日 メキシコ南部で地震 – M 8.0 (3月22日が新月)
4月11日 スマトラ島沖地震 – M 8.7
11月7日 グアテマラで地震 – M 7.42013年
2月6日 ソロモン諸島で地震 – M 8.0
4月16日 イラン南東部で地震 – M 7.7
9月24日 パキスタン南西部で地震 – M 7.72014年
4月1日 チリ沿岸北部で地震 – M 8.2 (3月31日が新月)2015年
4月25日 ネパール大地震 - M 7.8
5月30日 小笠原諸島西方沖地震 – M 8.1
9月16日 チリ中部で地震 – M 8.3 (9月13日が新月)
10月26日 アフガニスタンで地震 – M 7.5 (10月27日が満月)
11月14日 薩摩半島西方沖地震 – M 7.1 (11月12日が新月)
うーん・・・こちらはどうですかね。
18の地震のうち 6つの地震が満月か新月と時期がシンクロしていますが、全体の3分の1くらいということは、それほど、その時期に多発しているということでもなさそうです。
満月と新月がそれぞれ月に一回ずつで、つまり、約 15分の1 ということになり、さらに、上では前後3日までを加えていますので、この数字だと、「普通の頻度」の範囲に入るような気がします。
ただ、「少なくはない」とも思いましたが。
今年 2016年のマグニチュード7以上の地震は
・1月24日 アラスカでの地震 M7.1 (満月は1月24日)
・4月16日 熊本大地震 – M 7.3
・4月16日 エクアドルの地震 – M 7.8
で、アラスカでの地震は、満月の日に発生しましたが、熊本とエクアドルの地震は違います。今年の 4月は、満月が 4月7日、新月が 4月22日ということで、むしろ、満月や新月と最も離れた日に起きていたことがわかります。
こういう「外的な作用での地震の誘発の可能性」に関しては、昔からいろいろと研究はされていて、2011年の日本の大震災の後、さらに世界中で行われるようになったと感じますが、決定的な説が出たとはいえません。
たとえば、太陽フレアと地震の関係については、ずいぶん以前からおこなわれていました。
過去記事の、
・太陽活動と地震・噴火の活動に関しての2つの考え方
2011/02/17
の中で、2007年にアメリカ地球物理学連合が発表した「太陽フレアは地震のトリガーとなり得るか」という論文の要旨を記したことがあります。
それは以下のようなものでした。
アメリカ地球物理学連合の論文「太陽フレアは地震のトリガーとなり得るか」の概要
・BクラスからXクラスまでの太陽フレアの発生後、10時間から 100時間後に発生していたことが示される多くの地震の存在があるため、太陽フレアの増加と地震の発生の時間や遅れには関係があると認められる。
・ただし、大きな太陽フレアが大きな地震と関係するという証拠は掴めない。つまり、フレアの規模と地震の規模の関連は見当たらない。
・推論としては、太陽フレアによって放出された荷電粒子が、地球の磁場圏でリング状の流れを作り、それが断層帯でプレート運動を強めるという可能性がある。
というもので、「関係はあるようだが、はっきりとそのメカニズムはわからない」というところで、他の研究も含めて、そこで止まっています。
・・・しかしですね、「長いスパン」で見た場合、むしろ、この逆の傾向があるのです。つまり、
「太陽活動が弱い時の方が大地震が発生しやすい」
ということを示すグラフがあるのです。
下は、1980年から 2010年までの「太陽黒点数と地震の規模を比較したグラフ」です。
太陽活動(黒点数)の大小と地震の規模の傾向の比較
・Solar Activity vs Earthquakes
赤いラインが最も下にある時、すなわち、太陽の黒点の数が最も少ない時期に、マグニチュード7のような大きな地震がおきている傾向があることがわかります。
太陽活動が弱くなると、増えるものは「宇宙線」です。
ですので、先ほどの過去記事にも書いたことがありますが、宇宙線も地震と関係しているような感じはします。
しかし、一方で、マグニチュード8級のような巨大地震に限定すれば、東日本大震災や、ネパール大地震の時に観測され続けている「高層大気圏の電子数と赤外線の変化」というのも、確実に大地震と関係があると考えられています。
[参考過去記事]
・衝撃のデータ: 3月11日の地震の前に観測された日本上空の赤外線と電子量の急激な変化 (2011/05/20)
・ネパール大地震での上層大気圏に変化から見る「地震の原因は宇宙にある」こと… (2015/05/03)
結局、これまで、地震への影響として、
・太陽フレアの影響
・太陽活動の影響
・宇宙線の影響
・高層大気の電子数などの変化
・月の影響
というようなものが説として出され続けているわけですが、グラフなどを見ると「どの説にも、そのように説明できる部分がある」ということにもなり、つまり、「どれもが原因である可能性がある」というようなことも言えるのかとも思います。
おそらくは複合的なものということになるのでしょうけれど、上の理由がすべて、下(地層)ではなく、上(空や宇宙など)に要因があるということは興味深いかもしれません。
いずれにしても、冒頭の地質学者の言う日付けは、もうすぐですので、的中するかどうかはすぐにわかることですが、しかし、「月と太陽や惑星などの位置から地震を予測する」という人たちは案外いて、「惑星直列」から地震の予測をし続けているオランダ人が、自分のサイトと、YouTubeに、やはり、「2016年 4月22-23日にマグニチュード 7.5以上の地震が発生する」というように記しています。
こういう予測は世にたくさん溢れていますが、地震が発生することに関しての決定的な要因がわかっていない現状では、ひとつの要因による地震の予測は、当たることもあるかもしれないけれど、基本的にはあやういものと判断してもいいのかもしれません。
そして何より、これだけ連日のように地震が頻発している状況では、上のような規模かどうかはともかくとして、環太平洋火山帯での地震はどこで起きても不思議でも何でもないということは事実で、予測をする必要もないほど地震は今も連続し続けています。
ここから、英国エクスプレスの記事です。
Scientist warns MEGA EARTHQUAKE threatening millions will hit USA as early as FRIDAY
Express 2016/04/21
科学者は、金曜日の早くに何百万人を脅かす地震がアメリカを襲うと警告している
ひとりの地質学者が、次の 48時間以内に、数百万人の命を脅かす壊滅的な地震と津波がアメリカを襲う可能性があると警告している。
かつてロマ・プリータ地震(1989年にカリフォルニアで発生したM6.9の地震)の発生を予測したことで名高い元アメリカ地質調査所(以下、USGS)の科学者ジム・バークランド(Jim Berkland)氏は、巨大地震は、通常、満月と新月の時に発生すると言う。満月や新月の時には、地球は重力の影響を受けるためだという。
バークランド氏は、過去 80時間に、日本やエクアドルの地震のような壊滅的な被害をもたらした地震を含めて、8つの大きな地震が起きていることに言及した。
バークランド氏は、サンフランシスコでマグニチュード 3.5から 6.0の地震が近く起きると 1989年10月13日に予測した。その4日後の 10月17日に、マグニチュード 6.9の地震がカリフォルニア州北部のロマ・プリータで発生した。
氏は、世界の直近の 25個の巨大地震のうちの 20個は、新月あるいは、満月の間に起きていると言う。
バークランド氏が最も懸念しているのは、カリフォルニア州からオレゴン州、ワシントン州にまで伸びるサンアンドレアス断層と、北にあるカスケード沈み込み帯での地震の発生だ。
そこで地震がおきた場合には、それは巨大な規模の地震となり、また、津波が発生するために被害が壊滅的になる可能性があると言う。
「新月と満月に注意して下さい」と氏は強く述べる。
満月と新月は、分点潮(月がほぼ赤道上にあるとき、1日二回の満潮と干潮の水位の違いが最も小さくなる時)と呼ばれる極端な重力の力を引き起こし、それが地球の大地に影響を与えると述べる。
バークランド氏は、カリフォルニア大学バークレー校で地質学をまなび、USGS で地質学者として働いた。しかし、バークランド氏が最初に地震の予測をした後、アメリカ政府の関係者から、(地震の予測は)人々にパニックを与える可能性があると警告を受けた。
メジャーストリームの科学者たちは、地震を引き起こす要因としてのバークランド氏の理論に異議を唱えている。
他の人物で、やはり同じ日に地震の予測をしている人物もいる。何の科学的背景もないが、惑星の直列からの地震を予測を続けているオランダ人のフランクス・フーガービーツ(Franks Hoogerbeets)氏という人物だ。
フーガービーツ氏も、4月22日から 23日(日本時間 23日から 24日)に大地震が起きることを YouTube 上で警告した。
これらの予測の内容そのものはともかくとしても、西海岸での大地震がアメリカの地質学上の長年の懸念であることは事実だ。