拡大し続ける子どもへのメンタル薬の多重処方
以前、アメリカの子どもの大多数に、おびただしい量と種類の「向精神薬」が処方されていることと、その問題について、米ブラウンストーン研究所の代表であるジェフリー・A・タッカーさんの文章をご紹介したことがありました。
特に、今は ADHD (注意欠陥・多動症)と診断された子どもたちに、コンサータ(かつてはリタリン)などの構造的には覚醒剤と同等の薬効のある薬が、かなり小さな子どもにも積極的に処方されているのが現状で、これはアメリカでも日本でも同じだと思われます。
これについて最初に書いたのは、もう 10年くらい前の「子どもたちの未来。メンタル治療とリタリンやコンサータ」という記事ですが、スクールカウンセラーをされていた方から、「今では幼稚園から処方されている」ということをお伺いしまして、ショックを受けたことがありました。
まだ脳が完成していない小さな子どもに、脳に直接作用するこれらの薬を与えれば、後々の脳形成にどう影響があるのかはわかりません(実際にわかっていません)。
その後、今は若年層のメンタル疾患には SSRI というものが台頭していまして、これもまた非常に問題のあるものなんですよ。「医学という名の悪の輪廻」という記事など何度か記しています。私が最も否定的な薬のひとつです(まあ、否定的なものはいっぱいありますが)。
ともかく、そんな現実がある中で、最近、アメリカのジョセフ・メルコラ博士の「子どもへの投薬の長期的影響」という記事を読みました。
ショックを受けたのは、その見出しのひとつにある、
「アメリカの双極性障害の子どもの割合は 4,000%増加した」
というものでした。
この根拠を自分で探してみますと、米スタンフォード大学医学部の小児双極性障害プログラム准教授の以下の論文の中にありました。
小児双極性うつ病の診断と治療における課題
Challenges in the diagnosis and treatment of pediatric bipolar depression
2009年の論文ですので、今はさらに増えていると見られます。
論文には以下の記述があります。
米国では過去 10年間で 18歳未満の小児および青年の双極性障害の診断がコミュニティ内で 4000%増加した。この増加が認識の増加、発症の増加、または過剰診断によるものかは明らかではない。ただし、双極性障害が 50% ~ 66%の割合で小児期に発症することが明らかになりつつある。
したがって、成人の双極性障害の発症率が 4%であれば、米国だけで少なくとも 100万~200万人の小児が双極性障害またはその初期症状を呈していることになる。
子どものメンタル疾患と診断されるもの(過剰に診断されている事例がたくさんあると思います)が、信じられないペースで増えているようで、そして、それに対してアメリカでは「薬の多重投与で対処する」というのが一般的になっているようです。
メルコラ博士の記事は、わりと長いですので、そろそろご紹介したいと思いますが、記事に出てくる「小さな子どもたち」に処方されている薬の数々が、私自身が、二十代、三十代などに服用していたものと重なる部分があり、
「ちっちゃな子どもがあれらの薬を…」
と思うと、何とも切ないものがありますが、大人はともかく、小さな子どもに関しては、医療体制やシステムに問題があるということ以前に、父親や母親がその問題のある現状を認識しなければいけないとは思います。
基本的に医師や医療体制は、あなたが思うほど、あなたの子どものことを考えてはくれません。
時代時代の医療プロトコルに従っているだけです。医療プロトコルに従った処方をしている限りは、たとえお子さんが亡くなっても障害が発生しても、医師が処罰を受けることはありません。
ワクチンと同じです。
ここから記事です。
「薬と生きる子どもたち」 - 子どもへの投薬の長期的影響
‘Kids on Pills’ — The Long-Term Impacts of Medicating Children
Dr. Joseph Mercola 2024/10/08
子どもの精神疾患の発症率は驚くべき速さで増加している。これに対しての従来、そして現在の解決策は向精神薬だ。
今日では、子どもが精神状態を管理するために複数の精神系の薬を服用することは珍しくない。しかし、これは本当に最善の処置なのだろうか。それとも、私たちは子どもたちに深刻な副作用を及ぼし、長期的には意図せず精神状態を悪化させているだけなのだろうか。
オンリー・ヒューマンの 2022年のドキュメンタリー「薬を飲んでいる子どもたち:ボトルから出る幸せ」は、精神疾患を持つ子どもたちの治療オプションを詳しく取り上げている。
ステファニー・シュミット氏とリリアン・フランク氏が監督したこの映画は、アメリカとヨーロッパの子どもたちがこれらの疾患に対してどのように治療され、投薬されているか、そして彼らの健康への長期的な影響はどのようなものかを比較している。
米国の双極性障害の子どもの割合は 4,000%増加
このドキュメンタリーは、精神疾患のためボストンのマサチューセッツ総合病院で治療を受けた数人の子どもたちの生活を追ったものだ。
ボストンの医師たちは、数歳に満たない子どもを含む子どもたちの精神疾患を早期に診断したため、何年もの間、批判と論争の対象となってきた。
それぞれ 9歳と 6歳の姉弟、アンナとウィル・バートウェルは双極性障害(躁うつ病)と診断されており、予測できない気分の変動に悩まされることが多い。母親のケリーさんは次のように語る。
「ほんの些細なことでも、2時間も怒り狂ったり、泣き出したりします。アンナは、落ち込んでいるときに人が言うようなことを言い始めることもあります。例えば、ある週は蝶や花や虹など、幸せなものをいろいろ描きます。そして次の週は、黒いクレヨンで落書きをしたり、紙を破ったりしながら、『もう生きたくない』などと言い続けるのです」
マサチューセッツ総合病院の患者であるジェイリーンは、 3歳のときに双極性障害と診断された。彼女の場合、躁病的な側面がより顕著だ。精神科医であり、同病院の主任医師でもあるロバート・ドイル医師は次のようにコメントしている。
「振り返ってみると、ジェイリーンは最も典型的な双極性障害の子どもでした。私が今まで見た中で、彼女は躁状態がひどく、笑いが止まらず、制御不能で、方向転換できない子どもでした」
しかし、ヨーロッパの医師たちは、このような精神異常を違った方法で診断している。フランクフルトにクリニックを持つマーティン・ホルトマン医師によると、米国で双極性障害の診断に使われる要因が、単なる行動の説明として考慮されるならば、子どもたちは注意欠陥多動性障害(ADHD)などのより軽い障害と診断されるだろうという。
ホルトマン氏は、フランクフルトの若いアメリカ人患者が ADHD の治療に精神刺激薬を処方されることがあるが、これらの子どもたちが休暇で米国に行くと、米国で双極性障害と診断されたと言って追加の処方薬を持って帰ってくる様子を詳しく述べている。
アメリカの子どもたちは多剤併用療法の犠牲になることが多い
多剤併用療法とは、健康状態に対処するために複数の薬を使用することを指し、これは、高齢者と若者の両方で蔓延しつつある。
小児科学ジャーナルに掲載された最近の研究によると、調査対象となった 302人の小児患者のうち 68.2% が多剤併用療法を経験している (論文)。
特集されたドキュメンタリーの中で、ジェイリーンの母親エリザベスさんは、ロバート・ドイル医師が娘の病状を管理するためにさまざまな種類の薬を処方した様子を語った。
「 6歳くらいのとき、不安症が出始めました。それで、私がドイル医師にそのことを話すと、彼は『そうだ、抗不安薬を飲ませましょう』と言いました。それで、その時点で、彼はジェイリーンを落ち着かせるためにロラゼパム(※ ベンゾジアゼピン系の抗不安薬。日本でのワイパックスなど)を飲ませました。でも、何の効果もありませんでした。ジェイリーンはさらに興奮しただけでした」
「次に、ドイル医師は『じゃあ、クロノピン(※ ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬。日本のリボトリールなど)を試してみましょう』と言いました。私たちはそれを試しましたが、ジェイリーンには効果がありませんでした。何も助けにはなりませんでした。」
「それから、彼(ドイル医師)はリスパダール(※ 抗精神病薬。米国では統合失調症、躁病、自閉症などに処方される)のような薬を混ぜ続けました。それがジェイリーンを本当に助けた唯一のものでした。それで私たちは、それが効果があるかどうかを見るために、用量を増やし、増やし、用量を分割し続けました」
ドイル医師は、記憶障害や発作などの副作用がある気分安定剤のリチウムをジェイリーンに少量投与しようとしたことも付け加えた。これは長期使用では腎不全のリスクさえある。
しかしそれでも効果はなく、ジェイリーンは混乱し始め、はっきり考えることができなくなったため、ドイル医師はリチウム治療を中止した。
一方、アンナは躁面を抑えるためにエビリファイ(※ 抗精神病薬)という新薬を服用しているが、激しい気分の変動と泣き出してしまう発作に苦しんでいる。
アンナの母親によると、エビリファイには躁面を抑える効果があるが、その結果、鬱がより顕著になり、アナの激しい感情爆発を引き起こしていると医師は言ったという。
実際、米国の子どもたちは、精神衛生上の問題の治療に強力な薬を投与されている。これらの薬が問題の根本に対処していることはほとんどない。さらに、薬自体が新たな問題を生み出す。その結果、さらなる症状が出て、追加の薬で治療することになる。
子どもに複数の薬を投与してもほとんど効果がない
薬の過剰処方が、最終的に副作用の増加と健康の悪化という悪循環に子どもたちを陥れることは間違いない。
ドキュメンタリーでは、体重増加、成長障害、睡眠障害、神経過敏、気分変動など、向精神薬が子どもたちに及ぼす副作用のいくつかについて触れている。
薬を服用している子どもたちは、心臓病や糖尿病などの病気にかかるリスクも高くなる (論文)。
さらに憂慮すべきなのは、薬物カクテルがほとんど、あるいは全く効果をもたらさないことが示されていることだ。
例えば、Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology に掲載された2021年のレビュー論文では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を他の ADHD 治療に追加した場合、「気分や不安の併存疾患に対する効果の証拠は最小限」しかなかったことが判明した (論文)。
現在、米国では 600万人の子どもたちが向精神薬を服用しているが、これらの薬の多くは子どもへの使用が承認されていない。
ドキュメンタリーは以下のように述べている。
「医師たちは、他の薬を早期に処方することを『個別の治療の試み』として正当化することができる。これは、世界中で向精神薬を服用している 1,700万人の子どもたちの大半を占める米国では日常茶飯事だ」
精神医学心理学研究センター所長のドミニク・リッチオ博士は、なぜ子どもに抗精神病薬を投与すると特に有害になる可能性があるのかを次のように説明している。
「抗精神病薬を誰にでも、特に子どもに与えると、不均衡を引き起こします。それは脳に送り込まれる外因性物質であり、意図的に不均衡を引き起こすのです」
「私の意見では、医師たちは子どもたちに非常に有害なことをしています。なぜなら、創造性、愛、感情、感覚を司る脳の中心を閉ざすことをしているからです。それはまさに、私たちを人間らしくし、動物と区別するものなのです」
小児における多剤併用療法の長期的影響はまだ不明
ADHD と双極性障害を患う 11歳のラウル君は、診断されて以来、さまざまな向精神薬を服用している。
養父母のテッサさんとテレンス・ウィリアムズさんによると、処方された薬の中には、バスパーなどの抗不安薬、コンサータやリタリン(※ 共にメチルフェニデートという、つまり覚醒剤)などの興奮剤、さらには抗てんかん薬のデパコートも含まれているという。
また、ラウル君の爆発的な行動が悪化し、暴力的になり、発作を起こした事件についても記述している。彼は精神科病棟に 1か月入院した。義父のテレンスさんは、薬が効いていると期待していたため「非常に動揺した」と話す。
「私たちは、好転しつつあると思っていたが、実際にはまったく悪化したのです」と彼は語った。
ヨーロッパの医師たちは、幼い子どもに向精神薬を処方することに伴う長期的なリスクも強調している。臨床精神薬理学者のブルーノ・ミュラー=オーリングハウゼン博士によると、これらの薬は「興奮作用が強い」ため、服用した患者は睡眠障害、協調運動障害、興奮、さらには自殺願望を経験することが多い。
パーキンソン病について詳細な研究を行っているドイツの神経生物学者ジェラルド・ヒューター博士も、幼児におけるメチルフェニデート(※ リタリンやコンサータなど)の長期使用について懸念を表明し、次のように述べている。
「脳の機能を変える薬を非常に早い時期に処方すると、脳の成熟に変化をもたらしてしまいます。同じ向精神薬を大人に処方しても、大人は、すでに脳が完成しているのですが、子どもはそうではないのです」
「脳がまだ発達段階にある子どもにこれらの薬を与えると、脳の発達に影響を及ぼす可能性があります」
ヨーロッパでは、子どもに薬を処方することはあっても、一度に複数の薬を子どもに処方することに関しては、アメリカの医師ほど行わない。ホルトマン医師によると、
「私たちはすぐに薬を処方しません。そして、ほとんどの場合、高用量は与えません。何種類もの薬を処方することもありません。アメリカ人はほとんどの場合で、複数の薬を服用していますが、私たち(ヨーロッパの医師)は、そのことには慎重になっています」
子どもの代弁者になりましょう
2008年、ハーバード大学医学部とマサチューセッツ総合病院の医師らが製薬会社から数百万ドルの資金提供を受けていたことが発覚し、大きな話題となった。これは、大手製薬会社が、大人も子どもも同じように医薬品が第一選択の治療薬となるよう、いかにして糸を引いているかを示す明確な証拠だ。
ドキュメンタリーの中で、元心理学者で「Overdosed America (過剰摂取と化したアメリカ)」の著者でもあるジョン・エイブラムソン博士は次のようにコメントしている。
「子どもたちを助けようと最善を尽くしている医師たちが、高価な薬が小児双極性障害の治療法として認められる以前と同じことをするのではなく、薬や高価な薬を使ってその目的を達成するという印象がありますが、これは、その(子どもにも向精神薬を処方するという)見地がどのように生み出され、普及されるかという資金提供システムと間違いなく関係があります」
子どもの行動上の問題の多くは、不健康な食事、感情の乱れ、毒素への曝露に関連していることも認識する必要がある。
たとえば、あなたと子どもの腸内細菌叢の健康に注意を払うことは非常に重要だ。研究によると、出生時と子どもの生後 1年間の腸内細菌叢の構成は、ADHD などの神経発達障害の発症に重要な役割を果たしている (論文)。
ADHD のリスク増加と関連付けられているその他の有毒物質には、鉛、フタル酸エステル、BPA、農薬、大気汚染などがあり、これらは脳の発達と神経伝達物質システムを阻害し、子どもの行動と認知機能に影響を及ぼす。
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