The structure and function of the brain
脳機能も生殖機能もどちらも
今日、ブログ地球の記録の記事で、「フタル酸エステルが生殖細胞の DNA を破壊する」という論文を取り上げていた医学メディアの記事をご紹介しました。
この記事を書いた後、その医学メディアの「関連記事」のところに、
「フタル酸エステルが脊椎動物の正常な脳機能を損なうことが判明」
という記事を見たのでした。
脳機能まで壊すのかよ、と初めて知りましたけれど、つまり、フタル酸エステルは、
「脳と生殖機能のどちらにもダメージを与える」
ということになるようなのです。
フタル酸エステルは、プラスチック製品を柔らかくするために使われるもので(可塑剤というらしいです)、非常に多くのプラスチック製品に使われています。
そして、マスクにも非常に多く使われていて、中国の研究では、「各国から集めたマスクの 90%からフタル酸エステル類が検出された」ことがわかったこともあります。
フタル酸エステルが、生殖機能に影響を及ぼすということ自体は、ずいぶんと以前から知られていたことで、たとえば、2019年に発表されたマウスの研究では、以下のようなことがわかっています。
2019年2月の医学メディアの記事より
米イリノイ大学の研究者たちは、メスのマウスに 10日間、フタル酸ジイソノニル(フタル酸のエステル化により製造される有機化合物)を経口投与し、経過を観察した。その結果、メスたちの生殖周期は乱れ、その後最大で 9ヶ月の間、妊娠する能力が低下したことを発見した。
…これらの研究では、フタル酸ビスがホルモンのシグナル伝達、ならびに卵巣の成長および機能を破壊することも発見されている。
この記事は、以下で翻訳しています。
(記事)プラスチックが「100%の人々の体内に存在する」可能性が高い中、プラスチック製品に含まれるフタル酸エステルが「メスの妊娠率を著しく下げる」ことが判明
In Deep 2019年2月19日
先ほども書きましたように、マスク、特に使い捨てマスクには、このフタル酸エステルがほぼ全体的に使われていまして、そして、「脳と生殖機能に悪影響を受けてはいけない最大の世代」というのは、「子どもと若者」です。
脳がすでに完成していて、生殖機能などはどちらでもいい中年以降の世代には大した影響はないのでしょうけれど、子どもと若者には、それらの影響は大きいはずです。
その子どもたちに、2020年からの 2年間とか 3年間とか、実質的に強制的なマスク着用が義務づけられていたわけです。
仮に学校に行っている間だけだとしても、登下校を含めて 1日 6時間とか 8時間などを着用し続け、そして 2年とか 3年などの長期にわたり、子どもたちはフタル酸エステルを豊富に含むマスクを「口に直接つけて呼吸していた」ことになるわけです。
マスクの有害性は今までもいろいろと書きましたけれど、小さな子どもに関して、脳機能の損傷は「酸素不足」だけでも十分に影響するのですけれど、そこにフタル酸エステルの悪影響も重なるようです。
いろいろと書きたいこともありますが、まずは、その論文を取り上げていた記事をご紹介します。
論文そのものはこちらにあります。
なお、フタル酸エステルには種類かあり、オリジナル記事では、DEHP とか DINP などの表記となっているのですが、DEHP は「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」というもので、 DINP は「フタル酸ジイソノニル」というものですが、この日本語で書いても、むしろわかりにくいですので、全体として「フタル酸エステルのひとつ」とさせていただきます。
論文によれば、フタル酸エステルは血液脳関門も破壊するようですので、その悪影響もあるのかもしれません。
フタル酸エステル可塑剤への曝露が脊椎動物の正常な脳機能を損なうことが判明
Plasticizers impair normal brain function in vertebrates, study finds
Medical Xpress 2024/10/23
ドイツのバイロイト大学の研究者たちは、可塑剤 DEHP (フタル酸エステルのひとつ)と DINP (フタル酸エステルのひとつ)が脊椎動物の正常な脳機能に悪影響を及ぼすことを発見した。これらの可塑剤はPVC、塗料、化粧品などの製品に使用されている。
研究者たちは、その研究結果を学術誌「Ecotoxicology and Environmental Safety」に発表した。
フタル酸エステルはさまざまなプラスチック製品に重要な添加物として含まれており、最も一般的に使用されている可塑剤の 1つだ。
しかし、可塑剤は時間の経過とともにこれらの製品から浸出することが多く、環境に入り込み、食品、衣類、ほこりなどを介して人体に侵入する。
特に DEHP は発育と生殖に重大な影響を及ぼすことが証明されているため、多くの場合、より安全な代替品であると考えられる DINP に置き換えられている。
しかし、最近の研究では、DEHP は血液中の病原体や毒素から脊椎動物の脳を守る血液脳関門も損傷する可能性があることが示されている。これは成人にも危険をもたらす可能性がある。
したがって、DEHP とその代替物質が成人の脳に及ぼす潜在的な影響を評価することは、プラスチック製品の安全性を評価する上で非常に重要だ。
研究のため、バイロイト大学動物生理学部のベネディクト・マリック氏、シュテファン・シュスター教授、ピーター・マックニック博士は、金魚を環境関連濃度の可塑剤に 1か月間さらした。
その後、魚の後脳にある最大の神経細胞であるマウスナーニューロンを調べることで、DEHP と DINP が脳に与える影響を調査した。
マウスナーニューロンはこのような測定に利用でき、さまざまな感覚システムからの入力を受け取るため、調査に適したモデルだ。
ピーター・マックニック博士は以下のように述べている。
「人間がフタル酸エステル可塑剤と接触する方法は、もちろん、可塑剤が添加された水中を泳ぐ我々の研究対象魚とは異なります。しかし、我々の研究結果は、ある程度の注意を払えば、人間にも当てはまる可能性があります」
「神経細胞が情報を処理し伝達する方法や、神経細胞間での情報伝達などの基本的な脳機能は、魚と人間の両方で類似しています。これが、可塑剤への曝露の影響を観察するところです」
魚のマウスナーニューロンを測定したところ、DEHP と DINP の両方が神経細胞の伝導速度を 20%低下させたことが示された。
伝導速度の低下は他の神経細胞に悪影響を及ぼし、正常な脳機能を損なう可能性がある。
さらに研究者たちは、神経細胞間の接続、つまりシナプスにさまざまな悪影響が見られ、神経細胞間の信号伝達にも悪影響が見られることを観察した。また、両可塑剤が魚の視覚を損ねる証拠も発見した。
研究は以下のことを示した。
・フタル酸エステルへの急性曝露は成体脳機能の基本的な側面に影響を及ぼす。
・DEHP と DIN はどちらも神経シグナル伝達と中枢情報処理に影響を及ぼす。
・どちらも興奮と抑制のバランスを崩す。
・どちらも伝導速度の大幅な低下を引き起こし、神経膠細胞に影響を及ぼす可能性がある。
ここまでです。
フタル酸エステルに暴露した魚は、神経細胞の伝導速度を 20%低下させ、これにより「正常な脳機能を損なう可能性がある」ということにつながるようで、あと、
「フタル酸エステルが魚の視覚を損ねる証拠も発見した」
と、視覚にも影響があるようです。
(※ なお、14年前の米国の魚の研究で「魚は目ではなく、多くを松果体で見ている」ことが判明しています。こちらの記事に引用しています)
あと、重要なのは、このマウスの研究は「成体」を使っておこなわれたものだということです。
同じことが当てはまるのなら、子どもだけではなく、人間の成人の「脳機能」にも同じ影響があり得るということです。
こんなに多彩な毒性があるフタル酸エステルですが、もう何十年も使われているものでもあります。
しかし、「何十億人もの人たちが、フタル酸エステルを使用した製品を直接口に当てて数年間過ごす」という状態が続いたのは、人類史上で初めてではないでしょうか。
その有害性に興味が出まして、いろいろと資料を見ていましたら、経済産業省の「フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)の有害性評価」という資料がありました。
これはさきほどの記事に出ていました略称の DEHP というフタル酸エステルです。
「ほ乳動物の内分泌系及び生殖系に及ぼす影響」という項目には、以下のような部分がありました。
雌雄のマウス(6 週齢)に DEHP 0、1,000、5,000、10,000、25,000 ppmを 4 週間混餌投与した試験で、25,000 ppm 群で雌雄に胸腺の萎縮、雄に精巣重量の減少及び精巣の萎縮が、雌に卵巣の黄体の消失がみられている (Hazleton, 1992a)。
「胸腺の萎縮!」と驚きましたが、胸腺は、子どもや若い人たちの免疫をつかさどる重要な器官です。パンデミック以来よく書いていたことでもあります。
この資料には、他にもさまざまなマウスやラットの研究が引用されていますが、中には「精子の完全消失」というものが含まれていたものもありました。
また、生殖発生毒性試験についても多く引用されていますが、そのひとつは以下のようなものです。
生殖発生毒性試験においても数多くの報告があり、親動物への影響や胎仔毒性、催奇形性がみられている。
雌のマウスにDEHP 0、0.025、0.05、0.1、0.15 %を妊娠 0日から 17日まで混餌投与した試験では、親動物への毒性として91mg/kg/dayで嗜眠状態、191 mg/kg/day以上の群で肝臓重量の増加が、胎仔への毒性として 91 mg/kg/day群で奇形胎仔の増加、191 mg/kg/day以上の群で吸収胚、死亡胎仔の増加、生存胎仔数、生存胎仔の体重減少がみられている (Tyl et al., 1984 ; 1988 )。
どうでもいいですけれど、この研究って「1984年」のものですよ。つまり 40年前の研究です。
その後、フタル酸エステルの使用がどのように規制されたのかは定かではないですけれど、しかし、それを使用したプラスチック製品は 40年前よりおびただしく増えていると思われます。
また、以下のような引用もありました。
雌雄のマウスに DEHP 0、0.01、0.1、0.3 % を 106日間(同居前7日間及び98日間の同居中)混餌投与した実験では、0.1%群で妊娠率の低下、産仔数及び生存仔数の減少がみられ、0.3 %群では妊娠が成立していない。
また組換え交配試験では、最高用量の雄と対照群の雌の交配で妊娠率、産仔数、生存出生仔率の減少がみられ、対照群の雄と最高用量群の雌の交配で1匹も妊娠が成立していない (Lamb et al., 1987)。
「これでは、人間社会の出生率が上がるわけないよなあ」とも思いますが、ともかく、数十年前から、その毒性はある程度わかっていた中で、フタル酸エステル類は使用され続けてきたようです。
そして、ついに「フタル酸エステル類を使用したマスクを数年間着用する」という時代を迎えたという次第です。
なお、最初のほうにあげました米イリノイ大学の研究者によると、フタル酸エステルは、体内での半減期は短いそうで、「数日以内に尿中に排泄される」のだそうです。しかし、速やかに排出されても、影響は数ヶ月に及んでいることが懸念されることだと述べていました。
フタル酸エステルの影響がどのくらい続くのかは正確にはよくわからないようで、そして、その暴露から完全に離脱できたとして、つまり、マスクならマスクを完全に外すことができる生活が始まったあと、どの程度の期間で影響が消えるのか、あるいは「影響が消えない部分もあるのか」どうかは、やはりわかりません。
ただ、いずれにしても、小さな子どもたちにまでマスクを長期間事実上の強要をしていた時代の罪は、果てしなく大きなものであることは間違いないと思われます。
>> In Deep メルマガのご案内
In Deepではメルマガも発行しています。ブログではあまりふれにくいことなどを含めて、毎週金曜日に配信させていたただいています。お試し月は無料で、その期間中におやめになることもできますので、お試し下されば幸いです。こちらをクリックされるか以下からご登録できます。
▶ ご登録へ進む