2025年1月20日までの約2か月間
バイデン政権が、ウクライナに米国製の長距離ミサイルの使用を許可し、ウクライナが実際にそれでロシア国内を攻撃して以来、この戦争が、地域紛争から国際的な戦争に発展する可能性が著しく上昇している気配があります。
最近のメルマガでもご紹介したのですが、ウクライナ軍の元最高司令官が、「第三次世界大戦は正式に始まっている」と発言したことについて、アメリカの報道メディアのポリティコが報じています。
ロシアとウクライナの戦争は、すでに「まったく2国間の戦争ではなくなっている」ようです。
2022年から一貫して、イランの攻撃ドローン(シャヘド136)がウクライナを攻撃し、そして今では兵士も北朝鮮軍が台頭しています。
対する NATO とウクライナ、という形になっていまして、現時点で、複数の国家と複数の国家による戦争状態となっているわけです。
最近、米国のジェームス・リッカーという方が寄稿していた文章を読みました。
そのタイトルは、今回のタイトルにしましたのと同じ「核のチキンゲーム」ですが、それをご紹介したいと思います。
ジェームス・リッカーさんは、米国の弁護士であり、経済学者、投資銀行家です。この方の記事は、今年 6月にも以下の記事で翻訳したことがあります。
・核戦争はどのように始まるのか
In Deep 2024年6月8日
この記事には、最近、ロシアがウクライナに報復として発射した新型のミサイル「オレシュニク」についての記述もあり、参考になります。
オレシュニクというのは、 「ひとつの弾道ミサイルに複数の弾頭を装備し、それぞれが違う目標に攻撃ができる」という MIRV と呼ばれるシステムと似ているもので、以下のようなものです。
この新型ミサイルには 6個の弾頭があり、それぞれに 6個の子弾頭が付いている。つまり、ミサイル 1発あたり合計 36個の発射体となる。
以下はオレシュニクによりウクライナの工場が攻撃されたときの映像ですが、見直すと、6発のミサイル(子爆弾)すべてが正確に目標を攻撃しています。そして、この時には、他の 30発のミサイルもウクライナの別の施設を攻撃したのだとみられます。
Spectacular footage of several warheads striking an object in Dnipro pic.twitter.com/XaF52eu1dX
— Zlatti71 (@Zlatti_71) November 21, 2024
そのスピードもすごい。
オレシュニクのスピードはマッハ10で、時速にすれば 12,000キロを超える速度で飛行する。秒速でも 3.3キロメートル以上です。1秒間で 3キロ以上飛んで行く。
つまり「迎撃することは不可能」な兵器です。
このようなものに核弾頭が搭載された場合、どうにもならない。
しかし、バイデン政権は、ロシアへの挑発をやめていません。
ロシア側は、次期大統領のトランプ氏と交渉を始める用意があると述べていますけれど、大統領就任式は来年 1月20日であり、まだ 2カ月あるのです。
ともかく、ジェームス・リッカーさんの寄稿文です。
核のチキンゲーム
Playing Nuclear Chicken
James Rickards 2024/11/27
私たちは第三次世界大戦のエスカレーションの階段を着実に上り続けている。
先週、バイデン氏は愚かにも、米国のミサイルを使ってロシア領土の奥深くを攻撃する許可をウクライナに与えた。
そして、ロシアはプーチン大統領の約束通りに対応した。
11月21日、ロシアはオレシュニクとして知られる新しい極超音速ミサイルを発射した。これは明確なメッセージを送るために設計された独特の兵器だ。
オレシュニクは、核 ICBM で一般的な MIRV (ひとつの弾道ミサイルに複数の弾頭を装備し、それぞれが違う目標に攻撃ができる弾道ミサイルの弾頭搭載方式)技術に似たシステムを利用している。
この新型ミサイルには 6個の弾頭があり、それぞれに 6個の子弾頭が付いている。つまり、ミサイル 1発あたり合計 36個の発射体となる。
これは、目標に到達する直前の 6個の子爆弾のうちの 1個の静止画だ。
注目すべきは、発射体が光っているのはロケットエンジンの噴射によるものではないということだ。弾頭ははるかに高い高度でブースターエンジンから分離し、その後、滑空している。
子爆弾が光るのは、マッハ10(時速 12,231キロ)の速度で高密度の大気と摩擦して生じたプラズマバブルのせいだ。これは秒速 2.1マイル (秒速 3.37キロメートル)にあたる。
このような速度であれば、たとえオレシュニクの子弾に爆発力の大きなペイロードがなくても、運動エネルギーだけで効果的な攻撃手段となる。これは、軌道から不活性のタングステン棒を投下するという、俗に「神の棒」と呼ばれる SF 兵器のコンセプトに似ている。
米国と NATO はオレシュニクに対して防御手段を持っていない。時速 7,600マイルで飛行する 36発の独立した発射体を標的にするのは無謀だ。弾頭が分離する前にミサイルを攻撃することも不可能だ。
なぜなら、オレシュニクは、可変速固体ロケットエンジンを搭載しており、軌道が予測不可能だからだ。
この新しいミサイルが、以下のロシアの素極超音速兵器庫に加わることになった。
・キンジャール – マッハ10の空中発射弾道ミサイル
・ジルコン – マッハ9の艦上発射巡航ミサイル
・イスカンデル – マッハ7の地上発射弾道ミサイル
・R-37M – マッハ6空対空ミサイル
これらの兵器はいずれも完全に運用可能で、フル生産されており、ウクライナ戦争で効果的に使用された。現在まで、これらの兵器は通常の爆発物でのみ使用されている。しかし、最初の 3つは核弾頭を搭載することができる。
NATO の防空軍はロシアの極超音速兵器に対してほとんど成果を上げていない。そして、防空軍や弾道ミサイル基地を標的とする可能性が高いオレシュニクなどの新たな選択肢により、ウクライナにおける通常兵器のバランスはロシアにさらに有利になった。
一方、米国は初の極超音速通常ミサイルである長距離極超音速兵器(LRHW)の実用化に苦心している。米国は長年極超音速ミサイルの開発に取り組んできたが、技術的課題は極めて大きい。マッハ 5以上の速度で飛行すると、大量の熱と摩擦が発生する。
米国の肥大化した防衛部門は今のところ要求を満たすことができていない。トランプ氏が軍産複合体の再生に成功することを願う。そうでなければ、我々は遅れをとり続けることになるだろう。
核オプション
バイデン氏はロシアを挑発しながら、抑止力として暗黙のうちに米国の核兵器備蓄に頼っている。現時点では、通常ミサイル技術に関しては米国はロシアに対抗できない。
したがって、バイデン氏がロシアのレッドラインを進んで越えるとき、彼は全面戦争を防ぐために米国の核兵器の脅威を当てにしている。彼はまた、ウクライナ戦争を終わらせるというトランプ大統領の約束を妨害しようとしているようにも見える。
これは信じられないほど無謀な行為だ。
大きな問題の一つは、ロシアがさらに大規模で近代的な核兵器を保有しているということだ。
ウクライナが米国のミサイルを使って首都モスクワや原子力発電所を攻撃した場合、ロシアは核攻撃で報復する可能性がある。
私たちは本質的には彼ら(ロシア)のブラフを暴露している。しかし、彼らは自らの防衛抑止態勢を維持する必要があり、さもなければ弱体化しているように見えかねない。
そこから、事態は急速に悪化する可能性がある。
核戦争に勝者はいない。
バイデンとその取り巻きたちは危険なゲームをしている。彼らは何億もの命を賭けているのだ。
これらすべては、勝ち目のない紛争をまた引き延ばすためだけのものだ。我々は対テロ戦争から何も学んでいないのだろうか? 米国の単独超大国としての統治は終わった。これは、米国の政策がそれに応じて適応できるようにするために、国民が理解する必要がある現実だ。
ディープステートがこのことに早く気づけば気づくほど、私たち全員にとっては良いこととなるだろう。
キューバ危機の教訓は明らかだ。第一の教訓は、エスカレーションを避けること。第二の教訓は、エスカレーションが始まったら、エスカレーションを緩和することが極めて重要であるということだ。これらの教訓に従わなければ、核戦争への道は一直線となる。
ロシアはトランプ政権と直ちに交渉を始める用意があると示唆しており、トランプの次期大統領就任が第三次世界大戦を阻止できる唯一の手段かもしれない。
就任式の日が早く来てほしい。
ここまでです。
リッカーさんは、「就任式の日が早く来てほしい」で文章を締めていますが、この 2カ月間は、極度に緊張する瞬間が何度かあらわれるのかもしれません。
なお、ちょっとズレた話ですが、以前、「天体の座位」というものについて、ふれたことがありました。以下の記事にあります。
・殺戮の中で地球に笑顔と自由が定着する日までの道程を、秩序と無秩序の同居を主張する「不和と争いの女神」エリスの言葉から知る
In Deep 2023年12月5日
当時、天体の動きと社会の動きの関係性の歴史にお詳しい方から連絡をいただいたことがありまして、示していただいた資料自体は非常に長いもので、全体をご紹介するのは難しいですが、直近の話ですと、以下の時期が「やや危うい」となっていました。
・2024年11月初頭 火星と冥王星が衝(180度)
・2024年末~2025年始 火星が逆行し冥王星と再び衝
・2025年4月後半 火星が再び冥王星と衝
もっとも、天体の座位から見れば、混乱が拡大するのは、2025年に入ってからであり、そして 2026年、そしてその先と、さらに激しく混乱する可能性があるようです。
ご時世的にも、それは非常に納得する感じでもありまして、トランプ大統領就任というだけで、すべてが丸く収まるということには、おそらくはならない可能性があるのかもしれません。
2020年からのコロナの混乱も、なかなか激しいものでしたが、2025年からの混乱は、質の違う混乱になるようには思っています。
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