こちらは、現在のアメリカの大統領であるトランプ氏の4年前のツイートです。
2013年1月23日のトランプ氏のツイート
それから、4年が経ち、下は、先日 3月8日に、アメリカ財務省長官スティーブン・ミンチン氏がアメリカ議会に書いた文書です。
トランプ大統領が「債務上限の引き上げなど、とんでもない」と言ってから4年後、今度は大統領という立場のもと、それを真剣に考えなければ「アメリカはデフォルトする(かもしれない)」という時がやって参りました。
前回の記事、
・気づけば、世界の借金は「1京7500兆円(175 ,00 ,000 ,000 ,000 ,000円)」になっているアルマゲドンぶり。そして、3月15日以降のアメリカは「すべてが停止」するのかしないのか
2017/03/14
でふれました、アメリカの債務上限の施行に関しての延長期間が 3月15日に終わり、3月16日から「アメリカの債務残高は法定限度額に達する」ということになります。
今回は、前回の続きではないですが、「アメリカのデフォルト」に関係した記事などを少しご紹介したいと思います。
ちなみに、そもそも「デフォルト」という言葉を気軽に使っていますが、正確な意味としては下のようになります。
デフォルト - 金融用語大全
デフォルトは、公社債の元利支払いが遅延したり、元本の償還が不能となることをいいます。
発行会社が経営不振に陥り事実上倒産することにより発生します。
この場合、債務者や第三者に「デフォルト宣言」を通知すると、債務者は期限の利益を失い、債務者は債権の保全措置を講じることができます。
これが「国家に起きる」ということですが、国家のデフォルトは、それほど珍しいことでもなく、20世紀からだけでも、メキシコ(1982年)、ブラジル(1987年)、ロシア(1998年)、アルゼンチン(2001年、2014年)、エクアドル(2008年)などの例があります。
このデフォルトに関して、まずは、アメリカの人気サイト「ゼロヘッジ」の昨日 3月15日の記事をご紹介したいと思います。
わかりにくい団体名などもありますが、記事の後に簡単に説明いたします。
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Carson Block: "The Possibility Of US Default Is Greater Than Anyone Seems To Realize"
Zero Hedge 2017/03/15
アメリカのデフォルトの可能性は、多くの人々が考えているよりも大きいと思われる
アメリカ大統領選挙以来、株式市場をユーフォリア(市場の熱狂的陶酔感)が支配してきた。
しかし、投資家たちは、議会が債務上限を引き上げることができなくなることによる米政府のデフォルトのリスクを見落としているように見える。アメリカのデフォルトの可能性は、多くの人々が考えているよりも大きいもののように思われる。
特に、市場は2つの重要な数字を無視しているように見えるが、この2つの数字は、共に世界市場に深刻な影響を及ぼす可能性があるものだ。
その数とは、「 218 」と「 189 億ドル」(約 2兆 2000億円)だ。
218という数字は、下院での得票数だ。法律では 3月16日に復活する債務限度額を引き上げる、あるいは一時停止するためには、アメリカ合衆国の下院で 218票が必要となる。財務省の現金残高は、この債務限度額の引き上げか一時停止が成立するまで、あるいはアメリカが債務不履行に陥るまで続く必要がある。
今月のアメリカ財務省の現金残高は 1890億ドル(約 22兆円)で、財務省は 1日平均 20億ドル( 2300億円)を取り崩しながら運営している。既存の債務の償還は、月に 1000億ドル( 11兆円5000億円)実行されている。
財務省のスティーブン・ミンチン財務長官は、最終期限が来ることを認めており、先週、議会に対して、限度を直ちに上げることを提言した。
しかし、債務上限を上げるか一時中断することに賛成する数が下院で 218票に達することは、前回(2015年)の財政対決の時よりも困難となる可能性もある。ドナルド・トランプ大統領は、ほぼ確実に債務上限をを上げようとしているが、大統領に投票権があるわけでもない。
共和党が議会で 237議席を支配しているが、その共和党のティー・パーティー勢力(※ 共和党の最も保守的な勢力)は、過去に債務上限の引き上げを続けることを断固として拒否してきた歴史がある。
共和党は、医療保険制度改革(オバマ・ケア)を撤廃しなかったことで、すでに共和党内のティー・パーティー勢力の反乱に直面している。
この抵抗勢力のメンバーたちは、前回の債務限度額をめぐる対決の中で、その地位を立てようとし続けた非常に右寄りの「フリーダム・コーカス(Freedom Caucus)」という派閥を構成している。
フリーダム・コーカスには 29人のメンバーがいる。
彼らが全員、債務上限の引き上げに反対するとなれば、債務上限の引き上げのための下院の得票数は 208票にしか届かない。
民主党がその日に救いの主となることを期待するのは、少なくとも最初の段階では非現実的なことかもしれない。民主党議員たちは、席の後ろで、共和党員同士が、この問題で戦っている姿をとりあえずは楽しげに見るように思われる。
民主党が最終的に救助に乗るとしても、それは、共和党と共和党での争いの期間が終わってからということになるだろう。
財務省が他の債務よりも利息の支払を優先させるべき地点に達することを望んでいる人は誰もいないのだが、そこが市場の信頼が後退するであろう閾値となる。
債券市場はすでにこの可能性に反応しており、アメリカの株式市場が涙を流しているにも関わらず、利回りが高まり価格は下がり、潜在的な混乱の懸念が殆どないことを示している。
理想的な世界では、債務上限を再度設定するような政治は演じられない。それは明らかに私たちが生きる世界ではない。
アメリカの党派内の分裂は、今やデフォルトが実現するかもしれないほど広がっているのかもしれない。
基本的にはデフォルトに陥るというシナリオにはならないだろうが、しかし、議会は、その前の最後の一線ぎりぎりまで向かうだろう。
ここまでです。
つまりは、前回までのように、「ぎりぎりまでもめるだろうが、最終的にはどこかの線で妥協して、デフォルトは回避されるだろう」という可能性が最も高いということになりそうですが、記事には今までとどう違うのかということが記されています。
可能性は低いながら、その時には
この中で、問題となるのが「フリーダム・コーサス」というグループだそうですが、これは、2015年10月のロイターの記事に、
> 共和党の最も保守派の下院議員40人ほどからなるグループ「Freedom Caucus」
という記述があり、「共和党の中での最も保守派の人たち」によるグループのようで、この人たちに関しては、「決して債務上限の引き上げを認めない」と考えられているようです。
債務上限の引き上げにはアメリカの下院(議員数は 435人)の半数以上の 218票の票が必要だそうですが、237議席を持つ共和党の中の最保守派のフリーダム・コーカス( 29名)が反対に回れば、過半数の票をとることができないということになるようです。
なお、デフォルトに陥る可能性は少ないだろうとはいえ、一般的な例として挙げれば、そのような事態に陥った場合は、政府機能が停止することになります。
4年前の「アメリカ政府機関閉鎖」を思い出せば
デフォルトとは違いますが、2013年10月に「アメリカ政府の暫定予算案が成立しなかったため、政府機関の一部が 16日間にわたって閉鎖される」ということがあったことを思い出します。
下のようなことがあったのです。
NASA職員97%が自宅待機、国立公園閉鎖も
読売新聞 2013/10/02
(2013年の)10月1日に始まった米政府機能の一部停止は、幅広い分野に影響を及ぼす。
例えば米航空宇宙局(NASA)は職員約1万8000人のうち実に97%が自宅待機となる。より大きな組織でも財務省(約11万2000人)の80%、商務省(約4万6000人)の87%が自宅待機となるなど、中央行政や国家プロジェクトの停滞を招くことは避けられない。
目に見える形ですぐに影響が出たのが、国立公園などの閉鎖だ。壮大な自然を売り物にした国立公園や、本物の宇宙船がみられるワシントンの国立博物館などは日本をはじめ世界中から観光客を集めている。それらの閉鎖が長引けば、旅行者はもちろん、米国内外の旅行産業にも打撃となる。
こういうことは、アメリカ国内での影響は大きくても、アメリカ以外には影響はないだろうと思っていたのですが、わりと頻繁に NASA や、NOAA (アメリカ海洋大気庁)のサイトを見る私のような人にとっては結構な影響がありました。
それらの「すべてのウェブサイトが閉鎖」されたのです。
その 16日間の政府機関閉鎖のあいだ、NASA をはじめとした多くのアメリカ政府系のウェブサイトは、どこにアクセスしても、下のような「政府機関は閉鎖されました。現在ご利用いただけません」と表示されました。
2013年10月1から16日までのNASA(またはすべての政府機関のサイト)の表示
・数百年来の弱い太陽活動の中で突然起きた「太陽の大爆発」の余韻と共に NASA のサイトも NOAA のサイトもシャットダウンした朝
2013/10/02
などに記したことがあります。
おそらく、デフォルトした場合も、同じようなことになるのだと思われます。
あと、年金とかの国家からの支給制度や、あるいは「フードスタンプ」というアメリカの配給システムがあるのですが、それも停止されるのかもしれません。
実は今のアメリカは、フードスタンプを含めた「国家の食糧支援プログラム」を受けている人の数が「1億人」を超えているのです。
これは誇張ではなく、アメリカ農務省の公式な資料(アメリカ農務省 栄養補助プログラムに関しての監査報告書)にある数値です。
下はその資料からの抜粋ですが、そこには、
4700万人を超えるフードスタンプの受給者を含めて 1億100万人が何らかの食糧支援プログラムと関係している。
と書かれてあります。
アメリカ農務省の資料より
2013年10月13日に、このフードスタンプのカード読み取りシステムに何ら巣のトラブルが発生して、全米で「フードスタンプが使えなくなる」という事態が発生したことがありました。
それと同時に全米各地で「略奪」と「暴動」が発生し、拡大寸前にまでなったのでした。
これについては、その時の記事、
・アメリカ全土で発生したフードスタンプのシステム停止によりインターネット上で巻き起こる「食糧暴動」の空気 (2013/10/14)
・「瞬間的に略奪が発生するアメリカの現実」を目の当たりにしながら、グアム海底の構造物を眺めていた日 (2013/10/16)
などをご参考いただければ幸いです。
まあ、略奪とか暴動はともかくとしても、国家による食糧支援プログラムが「停止」した場合、困る人たちが「1億人以上いる」のがアメリカの現実です。
起こる可能性はあまりないとはいえ、いろいろな意味で、アメリカのデフォルトは副次的なさまざまな災難をもたらす可能性があるものには思います。
そんなわけで、2〜3年ごとに出てくる「アメリカのデフォルト」の話題ですが、何もなくても混乱気味なトランプ政権になって初めての債務上限問題は今後どのようになりますかね。今晩あたりからの議会で話し合いが行われることになるのでしょうかね。
しかし、考えれば、このデフォルトの問題は、前回の記事で書かせていただきました「世界の借金額」(比率で日本がチャンピオンですが)を見ますと、そう遠くない未来に、連鎖的に起きるものなのかもしれないですし、その時のための「練習」はあってもいいのかもしれませんね。