科学誌ネイチャーに掲載された論文を紹介した米国の記事より
・temblor.net
最近は、世界中で噴火も多いですが、世界でも日本においても中規模程度の地震が続いています。そういう中で、巨大地震の懸念が囁かれる地域も多いですが、最近のネイチャーに発表された興味深い研究論文に関する記事をふと見かけました。
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科学が巨大地震発生の正確な予測方法論にさらに近づいた可能性も
2011年の東北の地震は、地震の研究に関して非常に多くの提示がなされたものでしたが、その研究分野の中には「地震の予知」というものも今もあります。
非常に正直に書いてしまうと、現状では、日本も含めた世界中でのいわゆる地震学での予知や予測というものは現実的な役に立っているとは言い難い面があります。
それを「仕方ないこと」として諦める方向もありますでしょうし、あるいは「何かあるのではないか」と模索するかと方向もあるとは思います。
さて、現状はともかとくして、その「地震の予測」ということに関して、ひとつの方向性として、「宇宙(人工衛星)からの観測によるデータの重要性」というものが確実にあります。
2011年の地震の後のことですが、衛星データの解析から、
「東北でマグニチュード 9の地震があった直前、日本上空の赤外線と電子数が増大していた」
ということがわかったということをご紹介したことがありました。
詳しいところは、そのことが書かれていた米マサチューセッツ工科大学のレビューをご紹介しました以下の記事をご参照下さい。
・衝撃のデータ: 3月11日の地震の前に観測された日本上空の赤外線と電子量の急激な変化
In Deep 2011/05/20
具体的には、2011年3月10日から 3月11日にかけて、下の図のように、日本の東北の上空で赤外線のエネルギー量が普通ではない急激な増加を示していたことが、衛星のデータ解析でわかったのです。
これは、数日間の中での変化ですので、地震とかなり「直接的」な関係がありそうなものだと考えられたのですが、その後、2015年に発生したネパール大地震でもも、同じ高層大気での電子数の急激な変化が観測されました。他の事例も含めて、これは「巨大地震の時だけ」観測されています。
これについては、以下の記事で取りあげています。この記事は、後半は地震と全然関係ないものですが、前半に地震についてふれています。
・ネパール大地震での上層大気圏に変化から見る「地震の原因は宇宙にある」こと…
In Deep 2015/05/03
このような感じで、最近は、「宇宙の人工衛星からのデータが大地震の前兆と関係があるかもしれない事柄をとらえている」ことが多くなっていて、そして、これらに対しては今のところは、誰も反証できていません。つまり、どれだけ懐疑的な調査でも、その解析が間違いだという指摘は一度もされていないということです。
ですので、巨大地震の直前に上層大気に大きな変化が起きるということ自体は間違いがないことだと思われます。
今回ご紹介するものは、「上空の変化」ではないですが、やはり人工衛星が観測したもので、それは
「地球の重力の変化」
なのです。
論文に出ている図を示すと以下のようになります。
これだと、さすがにわかりづらいですので、少し大きくして説明を入れさせていただくと次のようになります。
2010年7月から2012年3月までの日本周辺の重力の推移
示されている月日を見ておわかりになると思いますが、これは、結構な期間での観測数値の変化で、少なくとも「数カ月単位での変化」のようです。
先ほど示しました上空の赤外線や電子数の変化は「翌日から当日にかけての変化」だったということに比べますと、長い期間でのものであり、直前の前兆というものではないようです。
ただ、今回のデータを見て思いましたのは、巨大地震の前には、次のふたつのことが合わせて起こっているらしいということです。
・地震発生の何か月か前から震源となる地域に重力異常があり
・そして、地震発生の直前に、震源となる場所の上層大気の赤外線と電子数の大きな変化がある
このことは、ほぼ確実なのかなと思いました。
どちらにも懐疑的な科学者たちからの反証が出されておらず、地震の原因が何かということはともかくとして「現象としては、そういうことが起きている」ということは間違いないと思われます。
それと共に、今回ご紹介するものも含めて、最近のこれらのデータからは「巨大地震の発生地と発生時の予測」は決して不可能なことでもないということも言えるのかもしれません。
では、記事の概要をご紹介します。
記事中に出てくる人工衛星 GRACE というのは、アメリカの NASA と、ドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で運用しているもので、2002年3月に打上げられて以来、地球の重力を詳細に観測し続けています。
最近の地球の重力の急速な変化をとらえたのもこの GRACE で、また、下の記事でご紹介した南極の巨大な重力以上を検出したのもこの GRACE です。
・次々と見つかる謎の巨大存在は2017年に「作動」するか : 南極の氷の地底から検出された「直径480キロの存在」、そして、ギザで見つかった「黒いモノリス」
2017年1月5日
その GRACE により、今度は「地球の巨大地震が重力の変化と関係しているかもしれない」ということが見出されたのかもしれません。
A giant precursor to a giant earthquake may have been detected by gravity satellites
temblor.net 2018/05/08
巨大地震に対する巨大な前駆物質が重力観測衛星によって検出された可能性がある
今月、ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載されたフランス人科学者たちによる研究論文には、2011年に東北地方太平洋沖地震(マグニチュード 9.0)が発生する数ヶ月前から日本列島において大規模な先行的な重力変化が起きていたことが見出されたことについて記されている。
この信号は、2002年に打ち上げられたアメリカとドイツに共同運営されている人工衛星 GRACE によって検知されていたが、研究者たちは、この 2011年の日本列島において観測された重力変化の信号は、GRACE が運営されてからの 7年間の他のどの信号とも匹敵しない巨大なものであることを見出した。
彼らは今回の発表以前に、同じ衛星データにより、2011年3月11日の東北の地震そのものによる重力変化と、その期間と関連した大きな重力信号の変化を以前に公表していた。
この時に発表された重力変化のデータは、(大地震と関連するデータとしては)それまでにはなかった独特のものだったこともあり、その後、この分析データは、長期的で懐疑的な評価を受け、また徹底的にテストされ、モデル化された。
その中で、彼らのデータが間違っていることを示すものは見出されなかった。もちろん、これは、彼らのデータが正しいことが証明されたということではなく、間違っているということは証明されなかったということである。
もし、この研究結果が、東北においてのみ当てはまるものでない場合、つまり、他の地震においても当てはまるとすれば、観測データが存在する近年の巨大地震において、これが確かめられれば画期的なデータとなる可能性がある。
たとえば、2004年のスマトラ沖地震(M 9.2)、2010年のチリ地震(M 8.8)、あるいは 2005年のインドネシアでの地震(M 8.6)などにおいても前兆のシグナルがあったかどうかということにおいてだ。
そして、今後の問題として、そのような信号が見られない地域において、人工衛星 GRACE でのリアルタイム観測の中で、大きな地震が発生する前にその信号を検知することができるのなら、それは画期的なことかもしれない。
これまで、どのような地震予知計画も、巨大地震の予測というハードルを克服したことはない。しかし、それは不可能ではないのかもしれない。今回の発見が突破口となる可能性がある。
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