サイコパス性を支配するのは腸内細菌なのか?
科学誌ネイチャー系の学術誌に、
「腸内細菌とサイコパシー特性が関連している」
という論文が掲載され、話題となっています。
サイコパシーというのは、日本語で「精神病質」とも記されますが、他のメンタル疾患とまぎらわしくなるので、ここではサイコパシーで通します。
これはいわゆる「サイコパス」といわれるような人物の気質で、一般的な概念として、
「共感や罪悪感の著しい欠如、冷淡さ、衝動性、表面的な魅力などを特徴とするパーソナリティ傾向(人格特性)」
を特徴としていて、もう少し簡潔には、
・尊大で虚偽的な対人関係(病的な虚言を含む)
・感情の欠落(冷淡で共感性の欠如)
・衝動的/無責任(現実的・長期的な目標の欠如)wikipedia.org
などで、「考えれてみればよく当てはまるという人はわりと多い」気もする気質です。
なお、この感じですと、犯罪者的なイメージが漂いますが、実際には、社会の高い地位にいる人々にも多く見られる気質で、大きな成功を収める人たちも多く(その裏で多くの人たちが苦労するわけですが)、政府のトップなどにも見られる気質です。
サイコパスについては、以下の記事でご紹介しました「わずらわしいサイコパスたちがこの世界を動かしている」という 2017年のプラウダの記事がわかりやすいかと思います。
サイコパスとその理念が世界を動かしている「悪意の時代」の中で
2017年3月20日
他にも、その人が本当にサイコパスかどうかはともかくとしても、ある国の大統領についても、何度か記事にしています。
1人のサイコパス王と60億人の奴隷たち
2025年4月10日
サイコパスかソシオパスのどちらかはともかく、マッドマンに支配され続ける世界とアメリカ
2025年7月17日
こういうような気質がどこから生まれるのかということについては、わかっていないわけですが、今回の論文では、
「サイコパスの気質が特定の腸内細菌に導かれている可能性」
を示しています。
これがいろいろと物議をかもしているわけですが、まずは、この論文を取り上げていた科学メディアの記事をご紹介します。
研究は、ポルトガルのポルト大学の研究者たちが主導して行ったもので、今のところ査読されてはいません。論文には以下のような注釈がつけられています。
本稿は、研究結果を早期に公開するため、編集前の原稿を提供いたします。最終出版前に、原稿はさらに編集されます。内容に影響を与える誤りが含まれている可能性があることをご了承ください。また、すべての法的免責事項が適用されます。
ここからです。
サイコパスの体内に生息する微生物が、悪行の原因となっている可能性があると科学者たちが主張
Organisms Living Inside Psychopaths Could Be Driving Bad Behavior, Scientists Claim
futurism.com 2026/08/13
物議を醸しそうな新たな研究で、科学者たちは腸内細菌叢の特定のバランスと精神病質的行動との関連性を発見したと主張している。
まだ査読を受けていない研究で詳述されているように、ポルト大学の生物医学研究者カロリーナ・コスタ氏率いる研究チームは、微生物叢がサイコパシー(精神病質)に関連する特性にどのように影響を与えるかを示す史上初の証拠を発見したと述べている。
サイコパシーとは、共感性の欠如、行動制御の悪さ、反社会的行動、そして極端な場合には犯罪行為を特徴とする、議論の的となっている人格概念だ。
サイエンス・アラート誌が指摘するように、これまでの研究では、サイコパスは前頭前皮質の神経経路など、類似した脳構造を共有していることが分かっている。
しかし、最新のこの論文では、こうした関連性がマイクロバイオームにまで及ぶ可能性を示唆している。
「腸内および口腔内の微生物叢の構成は、潜在的なサイコパシー的性格特性と関連している可能性があると我々は仮説を立てた」と研究者たちは論文に記している。この論文は、学術誌『 Translational Psychiatry 』に掲載された。「我々の知る限り、この関連性を探求した研究はこれが初めてである」
コスタ氏らは、サイコパシー特性を測定するために特別に設計された質問票に回答した成人参加者 200人の回答を分析した。また、参加者から採取した血液、唾液、糞便のサンプルを分析し、細菌組成を調べた。
腸内および口腔内の微生物の多様性自体は、サイコパシー特性との明確な関連性を示さなかったが、サイコパシー特性が強い人は、サイコパシー質特性が弱い人に比べて、3種類の細菌がより多く存在していた。
「アリソネラ属、 プレボテラ属、および C.エヴリエンシスは 精神病質スコアと有意な正の相関を示したが、 T.ヴィンセンティは負の相関を示した」と研究者らは結論付けた。
これらの微生物の役割は、消化やその他の代謝プロセスを助けることから、感染症の予防まで多岐にわたる。
研究チームは、特にアリソネラ菌がヒトの疾患と関連付けられており、炎症を促進することが分かっていると指摘している。炎症は「不安やうつ病などの精神疾患における重要な要因」であり、それによって「サイコパシーとの関連性の可能性」が示唆される。
プレボテラ属は、「感情、注意、感覚処理を司る脳領域の違い」とも関連付けられており、その結果、入力される刺激の文脈的詳細を符号化する際の特異性が低下する。
これらの主張は間違いなく物議を醸すだろう。まず、サンプルサイズが小さく、自己申告による調査結果に依存しているため、バイアスが生じやすく、結果が大きく歪められる可能性がある。研究者らは、結果は地域によって異なる可能性もあると指摘している。
「最後に、今回の研究結果は相関関係を示すものであり、特に腸内細菌叢と脳の間のコミュニケーションが双方向性であることを考慮すると、因果関係を確立することはできない」と彼らは結論付けた。
言い換えれば、実際には逆の関係である可能性があり、腸内細菌叢のバランスは、サイコパシー的な特性によって引き起こされているのであって、その逆ではないのかもしれない。
「例えば、食行動やホルモンバランスの乱れといった、サイコパシーに関連する要因が、腸内細菌叢の構成を形成する原因となっている可能性がある」と研究者たちは述べている。
とはいえ、これは人間の行動の極限を探る興味深い研究であることは間違いない。ただし、より徹底的に調査するためには、今後の研究が数多く必要となるだろう。
ここまでです。
ちなみに、論文の概要の冒頭には以下のようにあります。
> サイコパシーは、感情の乖離、衝動性、反社会的な傾向を特徴とする人格構成概念だ。臨床的有病率は 1%だが…
このように「全体の 1%がサイコパシー的特性を持つ」ということのようです。
率として多いのか低いのかはわかりませんが、100人に 1人くらいは、サイコパス、あるいはサイコパシー的な気質を持つ人たちがいるというのも事実のようです。
なお、比較調査で最も差があった腸内細菌の「アリソネラ菌」というのは、体内の炎症反応や、不安・うつ、さらには「性格傾向」との関連性が指摘されているものですが、なぜそうなるのかのメカニズムはわかっていません。
以前、「腸が脳を支配している」という研究をご紹介したことがありました。
「腸は第二の脳」……ではない。腸内システムは脳をも支配している「第一の脳」である可能性が高まる。それが意味するところは「人間は細菌に理性までをも支配されている」ということで……
2018年6月2日
腸が脳を支配しているのであれば、腸内細菌がその人の気質を乗っ取ることも可能なのかもしれません。
それはともかく、今回の論文では、いくつかの腸内細菌のうち、
「腸内のアリソネラ属が多い人ほどサイコパシー的特性のスコアが高くなる」
ということが見出されています。
できれば、このアリソネラ菌が「腸内で増えないほうがいい」ということにはなりそうですが(本人もそうですが、家族など)、それで、このアリソネラ菌という腸内細菌が「増える要因は何か」ということについて、少し調べてみました。
結局、「食生活」と関係するようです。
アリソネラ菌が増加する要因
2002年という、やや古い研究ですが、米コーネル大学の研究によると、
・穀物(糖質・炭水化物)の過剰摂取がアリソネラ菌を増やす
ようです。
ヒトではなく、動物での研究ですが、大量の穀物(グレイン)ベースの飼料を与えられた個体の消化管内で、アリソネラ菌が爆発的に増殖することが確認されたそう。
逆に動物の研究では、
・穀物ではなく干し草(牧草を含む)を中心に食べている動物の体内からは、アリソネラ菌がほとんど検出されなかった
とのこと。
なので、日々の食事は干し草というのがいいという…(できるわけねえだろ)まあ、結局、非常に一般的な答えとはなりますけれど、
「過度な穀物や糖質の摂取を避けて、野菜などを増やすことで、アリソネラ菌の過剰な増殖を抑えられる可能性が高い」
ということになるようです。
また、同じ穀物でも、未精製の穀物では、アリソネラ菌の増殖は抑えられていたそう。未精製の穀物というと、お米だと玄米的なもの、小麦だと全粒粉とかそういう感じですかね。
サイコパシーというような複雑な話ではなくとも、アリソネラ菌の増殖を抑えるだけで、メンタル面の安定につながる可能性が高いと思われますので、メンタル面に不安や問題がある方も、食生活の、ほんの少しの変化で改善する可能性があります。
やはり、アメリカの大統領のようにジャンクフードばかり食べるのは、性格への影響としても、あまりよくないのかもしれません。現在の米大統領専用機には、マクドナルドの箱が山のように積まれていることを保健福祉長官の RFKジュニア氏が USAトゥディ紙に語っていました。
ともかく、腸内細菌環境とメンタルの関係はつくづく興味深いですし、ジャンクフードと超加工食品が主流になった現代社会で人心が荒れていくという仕組みも理解ができます。
>> In Deep メルマガのご案内
In Deepではメルマガも発行しています。ブログではあまりふれにくいことなどを含めて、毎週金曜日に配信させていたただいています。お試し月は無料で、その期間中におやめになることもできますので、お試し下されば幸いです。こちらをクリックされるか以下からご登録できます。
▶ ご登録へ進む


