「正常」というバランスが崩壊するとき
以前、マッジ・ワギーさんという方の記事を以下でご紹介したことがあります。
核戦争など起きなくても、現在すでに「核戦争後の大飢饉」のシミュレーションと同じ状況に突き進んでいる世界と日本の今後を思う
In Deep 2026年5月16日
2026年からの世相をかなり厳しく想定されている方ですが、最近また彼女の記事を読みまして、そこに以下のようにあった部分が何となく気に入り、ご紹介させていただこうと思います。
> 歴史は、社会が単一の破滅的な出来事によって変容することは稀であるという、身の引き締まるような教訓を与えてくれる。多くの場合、社会は、一見無関係に見える一連の危機が互いに影響し合い、変化していくことで変容する。 Madge Waggy
「そうなんだよなあ」と思います。
コロナのパンデミックの際に、私たちはこの世の「不条理な仕組み」をいろいろと知ることになりましたけれど、今年 2月のホルムズ海峡の閉鎖された時点から知ったこともいろいろとありました。この出来事により、さまざまな「この世のシステムの脆弱性」を私たちは学習することになりましたが、全体的に非常に微妙なバランスの上に社会、あるいは世界というものは成り立っているのだなと知りました。
豆腐かなんかを買っていても、「このパッケージは…なるほどなるほど」などと思えるようにもなりました。プリンとかの(食べ物の羅列はいいから)…まあ、いろいろと知ることができた機会ではありました。
ホルムズ海峡閉鎖後、結局、日本を含めて目立つような混乱や困難は今のところ見られていないわけですが、このホルムズ海峡の閉鎖というのは、
「いろいろな種を蒔き続けていて、そこには、生えてくる芽が控えている」
という状況だと思います。
まあ、イランとアメリカの戦争も再燃しましたし、そして、トランプ氏自身も、「停戦は終わりだ」と述べています。
ついでに、イランを「クズ」呼ばわりしていました。以下にあります。
トランプ氏、「停戦は終わった」と正式に述べ、イランを「クズ」だと罵倒
NOFIA 2026年7月8日
停戦が続かないであろうことは誰でも予想していたことですが、イランは、ホルムズ海峡の厳格な封鎖をほのめかしており、紅海側のバブ・エル・マンデブ海峡の閉鎖もちらつかせています。むしろ事態は以前より悪化するのかもしれません。
でも、こういう単一の出来事がどうこうというのではなく、「いろいろなことが重なって、いろいろな結果が次に示される」ということなのかもしれません。
金融市場も不安定です。韓国市場は、2日連続の一時的な取引停止となり、市場から消失した金額は、35兆円にのぼります。日本でも株式市場が下落しましたので、日本と韓国を合わせれば、この 2日間で 138兆円が吹き飛びました。トランプ氏が正式に停戦の終了を述べた以上、明日もかなり下がるのかもしれません。
金融市場ではクラッシュにも近いような相場状況が続いている上に、まったく関係ないことに思われるかもしれないですが、世界では天候も異常に不安定です。
こういうものが相互に作用し始めて、それが「穏やかな社会状況につながる」とはとても思えません(まあ、普通そうだわね)。
ともかく、2026年は平穏では済まない感じは常にしていまして、それは、「単に始まりかもしれない」とも思います。
前置きが長くなってしまいましたが、マッジ・ワギーさんの記事をご紹介します。なお、かなり長い記事で、2回にわけようと思います。
また、「マッジ・ワギーさんという人は誰なのか?」については、私はいまだにわからないのですね。ブログのプロフィールには
「私は自分の考えを皆さんと共有したいと思っている高齢の女性です」
としか記されていません。
しかし、彼女の記事は米国の多くのブログなどで引用、転載されています。
ともかく、ここから記事です。タイトルにある「 SHTF 」というのは、アメリカのプレッパーたちなどがよく使うスラングで、「最悪の事態が起きて大混乱に陥る状況」を表します。壊滅的な自然災害や戦争、経済破綻など全般を指します。
誰も予想もしない速さで世界を変えてしまう可能性のある、3つのSHTFシナリオ!
The Three SHTF Scenarios That Could Change The World Faster Than Anyone Expects!
Madge Waggy 2026/07/03
数十年にわたり、世界の安定に対する最大の脅威は、歴史書や軍事シミュレーション、あるいは冷戦の暗黒時代といった遠い未来の出来事として捉えられてきた。
しかし今日、そうした前提はますます維持が困難になっている。国際的な防衛費は数十年来の水準に達し、武力紛争は地域安全保障体制を絶えず変化させ、ヨーロッパ、北米、アジアの各国政府は、民間防衛、サイバーセキュリティ、重要インフラの保護に多額の投資を行っている。これらは平時を想定した準備ではなく、ほんの数年前と比べて著しく不安定化した世界への対応策なのだ。
歴史は、社会が単一の破滅的な出来事によって変容することは稀であるという身の引き締まるような教訓を与えてくれる。多くの場合、社会は、一見無関係に見える一連の危機が互いに影響し合い、変化していくことで変容する。
地政学的な対立、経済の不安定化、インフラの崩壊、そして国民の信頼の漸進的な低下などがその例だ。
備え、国家安全保障、あるいは歴史的前例といった観点から見ても、一つの結論は驚くほど一貫している。それは、最も重大な局面は、それが始まってから初めて認識されることが多いということだ。
最悪の事態を引き起こす可能性のあるトップ3シナリオ
1. その始まりは誰にも気づかれない
大規模災害に関する最大の誤解の一つは、それが単一の劇的な出来事から始まるというものだ。
映画の影響で、私たちはサイレン、キノコ雲、テレビ番組を中断する緊急放送などを期待するように仕向けられてきた。しかし、 現実ははるかに劇的ではない。ほとんどの危機は静かに、ほとんど人知れず始まり、対処可能な一時的な不便さとして現れ、突然手に負えなくなる。
2020年の最初の数週間を思い出してみてほしい。
見慣れないウイルスに関するニュース報道が何週間も流れていたが、ほとんどの人はそれに気づかなかった。ごく少数の専門家を除いて、国際旅行が停止したり、企業が一夜にして閉鎖されたり、スーパーマーケットの棚が一般の買い物客によって空っぽになったりするとは、真剣に信じていた人はほとんどいなかった。
今振り返ってみると、警告の兆候は明白だったと簡単に言える。当時は、それらは毎日注目を集めようと競い合う絶え間ないニュースの流れの中に紛れていた。このパターンは歴史を通して繰り返されてきた。大きな混乱はめったに予告なしには訪れない。
あまりにも多くの雑音に囲まれているため、後になって散在する出来事が明確な時系列として認識されるまで、ほとんど誰もそれに気づかないだけだ。
これが重要な理由は、2010年代後半に突入する国際情勢が、個々に見れば必ずしも破局につながるわけではないリスクで異常なほど混雑しているように感じられるからだ。
ウクライナ戦争は欧州の安全保障政策を再構築し続けている。NATO 加盟国の多くで軍事費が増加し、数十年にわたり軍縮を続けてきた国々が、今や兵士の募集を拡大し、弾薬の備蓄を再構築している。
アジアでは、台湾周辺での海軍活動が活発化し、北朝鮮はミサイル開発計画への投資を続け、太平洋諸国の政府は、ほんの数年前には大げさに聞こえたであろう緊急時対応計画を準備している。
これらの出来事のどれもが、必ずしも世界規模の紛争につながるわけではないが、それらが複合的に作用することで、たった一つのミスが、それが始まった地域をはるかに超えた影響を及ぼす可能性のある環境が作り出されている。
軍事計画立案者たちは、現代の戦争は正式な宣戦布告よりも、急速にエスカレートする一連の事件から始まる可能性が高いと長年主張してきた。
サイバー攻撃によって通信ネットワークの一部が機能停止に陥る。諜報機関は、通常の演習であるかもしれないしそうでないかもしれない、異常な軍事行動を察知する。衛星画像は対立する政府によって異なる解釈をされ、それぞれが相手が先に動こうとしていると確信する。政治指導者たちは、不完全な情報に基づいてリアルタイムで意思決定を迫られる。長く待ちすぎるとリスクが伴うが、性急に行動すると、まさに避けたい危機を引き起こしてしまう可能性があることを認識しながら。
歴史には、すべての参加者が戦争を望んでいたからではなく、すべての参加者が相手側がすでに戦争は避けられないと判断していると信じていたために拡大した紛争の例が数多く存在する。
2. ブラックスカイ・イベント
電力網について深く考える人はほとんどいない。電力網は、ほとんど意識されることなく、人々の日常生活を静かに支えているシステムの一つだ。
スイッチを入れると明かりが灯り、銀行アプリを開けば数秒で決済が完了する。オンラインで食料品を注文すれば、倉庫、物流会社、輸送拠点、在庫管理システムなどに関わる何千もの意思決定が、顧客の目に触れることなく行われる。
現代のインフラの最大の功績は、その規模ではなく、日常生活に溶け込んでいることにあるのかもしれない。システムのどこか一部が機能しなくなった時、初めて日常の営みの背後にある驚くべき複雑さが、無視できないほど明らかになるのだ。
ここ数年、その複雑さは無視できないほど大きくなってきた。各国政府は、公共部門と民間部門の両方において、電力ネットワークの強化、通信インフラの保護、サイバーセキュリティの向上に多額の投資を行ってきた。
その動機は容易に理解できる。現代経済は、毎秒膨大な量の情報を交換し、電力需要のバランスを取り、輸送スケジュールを調整し、金融取引を驚くほど正確に同期させるシステムに依存している。
一つのネットワークに影響を与える障害は、一つの場所に留まることはほとんどない。比較的局所的な障害でさえ、予期せぬ影響を他の場所に及ぼす可能性がある。これは、システムが設計上脆弱だからではなく、数十年にわたる技術進歩によってシステムが深く相互接続されてきたためである。
防災コミュニティがしばしば「ブラックスカイ」イベントと呼ぶ事態の根底にある考え方は、壮大な災害から始まるわけではない。
むしろ、それは過去の危機の初期段階に似た形で、徐々に、ほとんど静かに展開していく。地域的な停電は、電力会社が当初予想していたよりも長く続く。複数の大都市圏で携帯電話ネットワークが不安定になる。
電子決済端末が断続的に中断し始め、技術者が問題の原因を調査する間、企業は現金のみを受け付けざるを得なくなる。配送ルートを管理するソフトウェアが矛盾したデータを生成し始めたため、配送センターは遅延を報告する。
これらの事態はどれも単独では壊滅的なものではないように見える。それぞれ個別に説明できる。しかし、これらが複合的に発生すると、数日前であれば個々の事件では決して得られなかったような、はるかに大きな注目を集めるパターンが生まれ始める。
初期の展開
1. 停電は、最初に発生した地域を超えて広がる。
2. コミュニケーションは完全に途絶えるのではなく、次第に一貫性を欠くようになる。
3. 小売業のサプライチェーンで配送遅延が発生し始める。
4. 金融機関は、技術的な異常を調査する間、一時的な安全対策を講じる。
5. 緊急対応機関は、長期にわたるインフラ障害を想定して設計された緊急時対応手順を発動する。
状況の解釈をますます困難にしているのは、不確実性が伝播するスピードである。
現代社会は毎時間膨大な量の情報を生み出すが、混乱期には、検証済みの事実の供給を答えを求める需要がほぼ常に上回る。報道機関は、新たな情報が入手可能になるにつれて変化する公式ブリーフィングに頼っている。独立系アナリストは、衛星画像、交通データ、公開されているインフラ報告書を比較検討するが、しばしば異なる結論に至る。
ソーシャルメディアプラットフォームは、何千もの場所からの目撃証言を同時に拡散し、正確な観察と誤解、憶測、意図的な誤情報が混ざり合うため、それらを区別すること自体が困難になる。
歴史が示すように、不確実な状況下では、信頼性は物理的なインフラと同じくらい重要になることがある。
スーパーマーケットが数週間分の在庫を抱えることはほとんどない。なぜなら、現代の物流システムでは、長期保管よりも継続的な補充の方がはるかに効率的だからだ。ガソリンスタンドは、驚くほど安定したスケジュールでの配送に依存している。薬局は、予測可能な需要パターンを反映した定期的な配送を受けている。病院は、途切れることのない輸送を前提とした高度な調達システムを通じて物資を調整している。
通常であれば、こうした仕組みは世界経済の最大の強みの一つと言える。しかし、長期にわたる混乱期には、一見無関係に見える分野であっても、わずかな遅延でさえ影響を及ぼし始める可能性がある。
各地から報告が相次ぐ中、当初の停電問題から徐々に、より広範なレジリエンス(回復力)の問題へと注目が移っていく。技術者たちは損傷したインフラの復旧に注力する一方、政府機関は複数の管轄区域にわたる情報調整に努める。
企業は、状況が切迫するまで紙の上でしか存在しなかった事業継続計画を実行に移す。一部の組織はバックアップシステムへスムーズに移行できるが、他の組織は数年前に策定された緊急時対応策が、今日の業務の複雑さを反映していないことに気づく。
刻一刻と進展が見られる分野もあれば、予期せぬ後退もあるため、楽観と懸念が同程度に混在する状況が生まれている。
これらは、すぐにパニックを引き起こすのではなく、まず最初に目に見える変化は日常生活に現れる。
家族は、最悪の事態を想定しているからではなく、最近の経験から、不安な時期には普段の購買習慣がどれほど急速に変化するかが分かっているため、ペットボトルの水、電池、保存食などを買い足し始める。金物店では、携帯用発電機や非常用照明の需要が増加していると報告される。地方自治体は、もともと悪天候に備えて策定された防災計画を見直すよう住民に呼びかける。
これらの個々の決定は、それぞれ単独で見れば合理的に見えるが、それらが合わさることで、日常生活は微妙ながらも紛れもない形で変化し始める。
当局が復旧作業には当初の予想よりもかなり時間がかかる可能性があると発表する頃には、議論はすでに電力そのものにとどまらず、より広範な領域に及んでいる。真の問題は、電力が最終的に復旧するかどうかではなく、継続的な接続を前提として築かれた社会が、その継続性がもはや当然のことではなくなった時に、どのように適応していくかということだ。
技術的な説明や技術報告書よりも、この問いこそが、その後の数週間の決定的なテーマとなる。
3. 隠れた変数
あらゆる危機は、具体的な問題から始まる。
国境沿いで軍事衝突が勃発したり、サイバー攻撃によって基幹サービスが麻痺したり、金融ショックによって市場が混乱に陥ったりする。こうした出来事は、測定、マッピング、記録が可能であることから、ニュースの見出しを飾る。そして、インフラの損傷、経済的損失、政治的影響といった後遺症を残し、アナリストは差し迫った緊急事態が過ぎ去った後も、それらを検証することができる。
より難しい問題は、そうした測定可能な出来事が、はるかに目に見えにくい何かに影響を与え始めた後に何が起こるかということだ。
歴史が示すように、社会が崩壊するのは単一の大惨事によることは稀である。むしろ、社会は不確実性そのものによって試されることが多い。情報は断片化し、新たな事実が明らかになるにつれて公式声明は変化し、テレビ放送、ポッドキャスト、ソーシャルメディアプラットフォーム上で、政府が現実的に対応できる速度をはるかに超える相反する解釈が飛び交う。
数時間のうちに、何百万人もの人々が同じ出来事を目にしながらも、実際に何が起こったのかについて全く異なる結論に達する可能性があるのだ。
現代の情報環境は、このプロセスをかつてないほど大きく変革した。以前の世代では、ニュースは比較的少数の新聞、ラジオ局、テレビネットワークを通じて伝達されていた。
しかし今日では、事実上誰でも写真、動画、目撃証言を公開でき、それらは数分以内に世界中の人々に届く。この情報の民主化は、透明性を高めるための素晴らしい機会を生み出したが、同時に、信頼できる報道と不完全な情報や操作された情報を区別することを著しく困難にした。
軍事的緊張、インフラの混乱、経済的不確実性によって、すでに逼迫した状況下では、情報そのものが新たな重要な資源として扱われるようになる。
正確な報道は、膨大な量の矛盾する主張と競合するからこそ、ますます価値が高まる。コミュニケーションの遅れは憶測の余地を生み出し、矛盾する発言はさらなる議論を招き、未解決の疑問は、捜査官が初期評価を終える前に、数十もの可能性のある説明を生み出す。
こうした不確実性の緩やかな低下は、政治の枠をはるかに超えた影響を及ぼす。金融市場は、出来事そのものだけでなく、次に何が起こるかという予測にも反応する。信頼できる予測を立てることが難しくなると、企業は投資を延期する。消費者は高額商品の購入を控え、雇用主は採用決定を遅らせ、国際企業はより明確な見通しを待つ間、事業拡大計画を見直す。
これらの個々の決定は、単独では劇的なものではないように見える。しかし、それらが集合的に作用すると、たった一つの見出しよりもはるかに効果的に経済活動を再構築する可能性がある。
現代史を通して、同様のパターンが繰り返し現れてきた。経済危機は、資源の枯渇よりもむしろ信頼の崩壊によって加速されることが多かった。
銀行システムは、預金が引き続き利用可能であるという信頼に依存している。サプライチェーンは、契約上の義務が履行されるという信頼に依存している。民主主義は、たとえ極めて深刻な意見の対立が生じた時期であっても、制度が平和的に紛争を解決できる能力を維持しているという国民の認識に依存している。
信頼が一度低下し始めると、それを回復することは、損傷したインフラを修復したり、物理的な資産を再建したりするよりもはるかに困難になることが多い。
ここまでです。
次回は、セクション「不確実性が高まる時期によく見られる兆候」から続けます。
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