チャールズ・ネナー氏が再び登場
地政学および金融サイクルの専門家であるチャールズ・ネナー氏という方のインタビューを何度か取りあげたことがあります。
2022年に、
「来年から始まる戦争サイクルでは、世界人口の3分の1が死亡する」
と述べていたものをご紹介したり、あるいは、今年 3月には、以下の記事でご紹介したインタビューでは、「戦争サイクルと、不況により、これから非常に厳しい時代が来る」と述べていました。
・景気後退ではなく「大恐慌」に直面している
In Deep 2025年3月10日
なお、ネナー氏の長期サイクル予測は、
「 1928年と 2025年が同じで、1929年と来年(2026年)は同じ」
だとしています。
1929年は、世界恐慌が始まった年ですが、来年は、それと同じだと述べています。
ということは、ネナー氏の分析によれば、今年より来年のほうが、さらに厳しくなるということなのですかね。
ちなみに、最近まで知らなかったのですが、改めて、この方の経歴を見てみますと、このチャールズ・ネナーという人は、1997年から 2008年まで、ゴールドマン・サックスのマーケットタイミング部門責任者をつとめていたそうで、それはそれとして、
「もともとは医学部を卒業して、オランダで医者をやっていた人」
なのですね。
経歴は、こちらにありますが、
> 1979年 アムステルダム大学医学部を卒業し、アムステルダム医療センターで一般外科医、その後精神科医として勤務した。
とあります。
その後、なぜかメリルリンチ(米国三大投資銀行のひとつ)で、財務コンサルタントを務め、その頃に「サイクルを予測するアルゴリズム」を構築し始めたようです。
現在のネナー氏の予測はその延長ということになりそうです。
ご自身のビジネスページには、ちょっとかっこいいご自身の写真なども載せられています。
チャールズ・ネナー氏
charlesnenner.com
まずは、そのネナー氏の最新のインタビューをご紹介します。
述べていることは以前とさほど変わりません。
2025年と2026年に不況サイクルが到来する - チャールズ・ネナー氏
Depression Cycle Arrives in 2025 & 2026 - Charles Nenner
USA Watchdog 2025/04/22
著名な地政学および金融サイクルの専門家チャールズ・ネナー氏は、大規模な戦争サイクルだけでなく、2025年末から 2026年にかけて不況も到来すると予測している。
これはトランプ関税によるものではなく、ネナー氏が追っている景気循環の一部に過ぎない。この大きな下落はいつ始まるのだろうか? ネナー氏は「今後数ヶ月で…」として以下のように説明した。
「…そして今年の終わりは下落の年になるだろう。2026年も下落の年になるだろう。非常に深刻な状況になると思われる。」
「昨年、私は S&P500が 4,000まで下落すると予想すると書いた。つまり、6,200から 4,000まで下落した場合、もし悪い銘柄に投資していると、投資資金の 50%を失う可能性があるということだ。それを取り戻すには、残りの資金で 100%の利益を上げなければならなくなる」
「その後、株価は反発し、その後、再び下落する可能性がある。 ブローカーのリストを見ると、99%が楽観的だった。彼らは S&P500が 6,800ドルまで上昇すると予想していたが、実際に下落すると考えを変えた」
ネナー氏は、今年の株式市場は下落すると予測しているが、2026年には、さらに注意が必要だと述べている。
「 1928年と 1929年のサイクルが 2025年と 2026年と同じ位置にあるため、2026年にはさらに状況が悪化するだろう」
S&P500指数は 4000を下回るだろうか? ネナー氏は言う。
「間違いなくそうだと思っている。再び下落する前に、そこから反発する時期があるとも予想している」
ネナー氏は長年、ダウ平均株価が 5,000ドルまで下がると予想してきた。 現在は 39,000ドル近くまで上昇している。それについて、ネナー氏はこう語る。
「そう、5,000ドルまで落ちるという計算が出ている。S&P については計算していない」
ダウ平均株価が 5,000ドルまで下がるというのは、かなり弱気な見方だが、ネナー氏の発言を軽視する前に、この件に関する彼の論理を聞いてみてほしい。 ネナー氏はこう説明している。
「 1つの単純な仮定をしてみよう」
「中国と台湾の間で大きな戦争が起こったら、市場は上昇すると思いわれるだろうか? それとも、その可能性は五分五分だと思われるだろうか? つまり、この考えに基づけば、市場が好調にならない可能性が五分五分ということになる」
「もちろん、中国は台湾を占領したがっている。台湾が中国に属していないという歴史はない」
「米国が中国と戦争になれば、米国は負けるだろう。米国は中国との模擬戦争で 15回の戦争ゲームのうち 15回で敗北している」
ネナー氏は依然として長期的に金(ゴールド)を好み、その上昇を予測している。 銀については、ネナー氏は次のように述べている。
「銀は出遅れているが、5月以降、ようやく銀が追いつき始めると予想している」
ネナー氏は、金利は依然として長期的に上昇傾向にあるが、引き下げられる可能性もあると考えている。ネナー氏はまた、米ドルは今のところ大丈夫で、これ以上下落することはないだろうと考えているという。
ここまでです。
中国の台湾侵攻の際の日本の被害シミュレーション
ネナー氏の金融や経済についての発言は、以前の発言とさほど変わらないですので、それはともかくとして、以下の部分が気になりました。
> 米国が中国と戦争になれば、米国は負けるだろう。米国は中国との模擬戦争で 15回の戦争ゲームのうち 15回で敗北している
「模擬戦争で 15回の戦争ゲームのうち 15回で敗北している? そんなデータどこにある?」と思いまして、探してみたのですが、「見当たらない」のですよ。
あるいは、ネナー氏独自のシミュレーションなのかもしれないですが、かなり探したのですが、「 15回の戦争シミュレーションのうち 15回で米国が敗北している」というデータは見当たりませんでした。
しかし、中国の台湾侵攻の際のシミュレーション自体は、さまざまに行われているようで、特に 2024年の報道では、シミュレーションの模擬戦争で、
「中国軍が、米軍と日本軍の連合軍に 8回勝利した」
というものはありました。
要約します。
中国は、米軍と日本軍に 8回の勝利。米軍主催の軍事演習では中国が決定的な優位に
China Scores 8 Victories Against US, Japanese Troops; US-Held Wargames Give Decisive Edge To Beijing
Eurasian Times 2024/03/04
中国が 21世紀における米国にとって最大の脅威として浮上した。様々なシンクタンクが長年にわたり実施した軍事演習の調査は、米軍の暗い現状を浮き彫りにしている。
台湾はインド太平洋地域において、米中間の明らかな争点となりつつある。長年にわたり、各国政府やシンクタンクは台湾紛争を根底に据え、様々なシナリオを展開してきた。
2016年から 2023年にかけて行われたこれらの軍事演習の研究では、中国による台湾の迅速な制圧の結果もあれば、米軍の血みどろの勝利、あるいは、中国の圧倒的勝利まで、さまざまな結果が出ている。
比較のために、この戦争ゲーム研究は、2017年以前、そして、2017年からロシアが 2022年2月にウクライナに侵攻する間の時期のシミュレーション、さらには 2022年2月以降の 3つの個別の時代に分けられている。
2018年以前の軍事演習は、多大な犠牲を払いながらも、米国、台湾、そして同盟国にとって有利な結果に終わる傾向があった。
2018年から 2022年2月までの間の研究では、米国と台湾の状況は暗澹たるものとなり、勝利はわずか 1回、敗北は 4回、膠着状態は 2回にとどまった。
2022年以降、ロシアのウクライナ侵攻により戦場に新たな視点がもたらされ、その結果は米国と台湾にやや有利なものとなった。
別のシミュレーションシナリオでは、ランド研究所の代表者がメディアに対し、2025年以降を舞台にしたウォーゲームにおいて、米国は急速に資産を失ったと明らかにした。
ランド研究所によると、このウォーゲームでは、米国は戦域における資産を「非常に急速に」失い、「侵略を阻止するための戦力投射が戦闘空間に不可能」となった。
この軍事演習では、中国による台湾侵攻は成功した。
CIMSEC (シンクタンク)の調査によると、「人民解放軍は、複数の空挺作戦と水陸両用作戦を用いて、効果的な米国支援が到着する前に、敵の拠点を制圧することができた」という。
2020年には、新アメリカ安全保障センターによって「東シナ海での虐殺」と題された別のウォーゲームが実施された。この限定的な研究は、中国が尖閣諸島の一つを占拠し、日本が奪還に取り組んだ後に事態がどのように展開するかに焦点を当てている。
米国は日本を支援したが、交戦規則は限定的だった。
紛争は激化し、米日両軍は損害を被ったにもかかわらず、中国軍から島の支配権を奪取することができなかった。
ここまでです。
この後も、他の戦争シミュレーションが書かれているのですが、全体としては、
「米軍と日本の自衛隊は、人民解放軍に勝てなかった」
という結果となったものが多かったようです。
シンガポールのストレートタイムズ紙の 2024年11月の記事では、「日本側の被害」について、詳しく書かれていました。
抜粋すると、以下のようになります。
報道「軍事演習で日米が中国の台湾侵攻を撃退、しかし莫大な犠牲を払うことになった」より
米国と日本は中国による台湾侵攻を撃退できるだろうが、わずか 2週間の戦闘で多大な損失を被ることになるだろう。
日本の笹川平和財団が実施した卓上戦争ゲームでは、米国は最大 19隻の艦船と約 400機の戦闘機を失い、兵士約 1万1000人が死亡または負傷したと示された。
中国は、空母 2隻を含む軍艦 156隻、戦闘機 168機、そして死傷者 4万人以上となった。
一方、日本は 144機の戦闘機、15隻の艦船、約 2,500人の兵士を失った。
台湾では約 1万3000人の兵士が死亡または負傷し、18隻の船舶と 200機の航空機が失われた。
結局、すべての側が多大な損失を被った後も、台湾は自治権を持つ島として残った。
このシミュレーションでは、米国と日本が勝つには勝ったのですが、その被害は甚大だったことが示されたようです。
まあ、結局、チャールズ・ネナー氏の言う「模擬戦争で 15回の戦争ゲームのうち 15回で米国は敗北している」というデータは見つけられなかったわけですが、今回のことで知ったのは、
「中国が台湾に侵攻した際には、日本も大きな影響を受ける」
というシミュレーション結果でした。
ちなみに、私は、2020年頃から、「 2025年が激動の頂点となる」と考えていましたが、最近、それが間違っていたことに気づいています。
「 2025年は単なる始まりでしかない」
ということのようです。
1929年に始まった世界恐慌は、10年以上続きました。
そんな時代の中をこれからわりと長く生きていくということになるのでしょうか。
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