地球の最期のときに

自然と人間の真の関係 : 「1日20分間、自然の中にいる」だけで、ストレスホルモンであるコルチゾールが大幅に減少することが研究で判明。そこから応用できる生活への実践法



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2019年4月4日の米ニューズウィークの記事より


newsweek.com




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自然が人間に与えてくれる具体的な影響


msn.com

「自然の中で過ごすことは精神衛生に良い」というような響きは、一種当たり前のように響くかもしれないですが、最近の科学や医学研究においては、どの程度良いことなのかということについての「具体的な数値」が出されてきています。

数日前に、冒頭の「自然の中にいることで、ストレスホルモンが減少する」という報道が、アメリカの相当多くのメディアで取り上げられていました。

この研究では、コルチゾールというホルモンの分泌の量を計測したのですけれど、コルチゾールとは以下のようなものです。労働安全衛生総合研究所のページからの抜粋です。

コルチゾールは副腎皮質から放出されるステロイドホルモンであり、ストレスとの関連では最もよく研究されているバイオマーカーです。ストレスを負荷すると(たとえば、人前でスピーチをさせるなど)、その値は10分–20分ぐらいの間に2–3倍に増加することが知られています。

また、コルチゾールは免疫系、中枢神経系、代謝系などに対して様々な生理学的な作用を有します。たとえば、長期にわたって過剰に分泌されると脳の海馬を委縮させることや、炎症のコントロールを悪くすること、また、うつ病の患者ではコルチゾールが高いことも報告されています。

つまり、コルチゾールはストレスと身体的・精神的健康を結びつける重要なホルモンといえるでしょう。

というように、コルチゾールが「日常で多く分泌され続ける」ことは、いろいろと身体や精神面に悪影響を与えるということがわかっているもののようです。

上の文章に、

> 長期にわたって過剰に分泌されると脳の海馬を委縮させる

とありますが、海馬の萎縮は、アルツハイマー病の場合にも顕著に見られることですので、コルチゾールが過剰に分泌されているような生活(ストレス過剰な生活)が長く続くことは、認知症的なものの発現とも関係してくる可能性があるのかもしれません。

そのコルチゾールが「自然の中に 20分間いるだけで大きく減少する」ことが判明したのです。

冒頭のニューズウィークの記事をご紹介します。


SITTING IN NATURE FOR JUST 20 MINUTES PER DAY CUTS STRESS HORMONE LEVELS
Newsweek 2019/04/04

1日あたり20分間、自然の中で過ごすだけでストレスホルモンのコルチゾールが減少することが研究で判明した

最近の科学的研究によると、少なくとも 20分間、自然と接触したと感じるだけで、ストレスホルモンのレベルが低下する可能性が見出された。

科学誌「フロンティア・イン・サイコロジー (Frontiers in Psychology)」に掲載された研究の著者は、自然を体験することが、ストレスに関連する体内の化学物質のレベルを下げることになるのかどうかを研究しようとした。

研究者たちは、都市部に住む 36人の人々に、少なくとも 10分間、週に3回、自然と触れ合っていることを感じさせる屋外の空間で過ごすように依頼した。

参加者たちは、これを合計 8週間続けた。

自然とふれる場所については、参加者たちの自由意志に任された。

研究を実施している間に、参加者たちから、4回、彼らが自然と触れ合う前後の唾液のサンプルを集めた。人の唾液には、コルチゾールというストレスと関係するホルモンが含まれており、唾液から濃度を測定することができる。

参加者たちには、この期間に、ストレスを感じさせるような活動に参加しないことを求めた。たとえば、夜間の外出や運動、電話の使用、読書などだ。

この研究の結果、参加者たちの唾液中のコルチゾール濃度は、自然の体験後、平均して 1時間あたり 21.3%減少していることがわかった。

コルチゾールの減少は、20〜30分間、屋外で過ごした場合が最も顕著だった。

また、α-アミラーゼ酵素も 1時間あたり 28%低下していたことが見出された。これは、自然の中で活発に動いた人、座っていた人、あるいは少し歩いた人などで同様だった。

今回の研究者たちは、この研究が、メンタルヘルスの問題の予防策や治療法、あるいは、健康維持のために、自然を体験することを薬とする方法を正確に処方することに役立ってほしいと考えている。

すでに、カナダやアメリカの健康関連組織では、自然との相互作用の恩恵を奨励している他、アメリカ心臓協会は、ストレスや不安を和らげるために屋外に出ることを推奨している。

この研究の主執筆者で、ミシガン大学の准教授であるメアリー・キャロル・ハンター博士 (Dr. Mary Carol Hunter)は次のように述べている。

「自然の中で過ごすことがストレスを軽減することはわかっていましたが、これまでは、自然体験が具体的にどの程度の利益を私たちにもたらしているのかがわかっていませんでした」

「私たちの研究は、ストレスホルモンのコルチゾールのレベルを効率的に下げるという観点から、最大の利益を得るためには、自然と触れ合っている感覚を持つことのできる場所に座ったり、その場所で歩いたりすることを 20分から 30分おこなうことが良いことを示したのです」


 

ここまでです。

自然の存在がたくさんあるところで 1日 20分過ごすだけで、「コルチゾールが大幅に減少する」という話で、日々、この程度の時間を自然の中で過ごすだけで、ストレスによる悪影響をかなり減らすことができるということになります。

 

ところで、この記事においては「自然の中で」という漠然とした表現となっていますけれど、自然といっても、基本的には一般的にふれあえるものとしては、植物、土や水というようなことになるのでしょうかね。まあ、その中でも「植物」の比重が高そうな気はします。

そして、この研究の記事を読んで、「漠然としている感」がぬぐえなかったこととして、人間のコルチゾールを減少させているのが、

 

自然のほうから人間に影響する存在する何らかの(物質などの)ものなのか

 

あるいは、

 

人間のほうの体内で単に起こっている反応なのか

 

というあたりはどうなのだろうなということでした。

たとえば、「自然」というのが、「植物」や「水」や「土」などであるのならば、自然に囲まれた場所ではなくとも、家のベランダなどで、20分間、植物などをいじっていても効果は同じように思うのですけれど、そのあたりはどうなのかなあと。

今度はぜひ、「植物をさわることとコルチゾールの分泌量の関係」や「水に触れることとコルチゾールの分泌量の関係」などの研究もされてほしい気もします。

「ベランダの植物や土や水でも、コルチゾールを下げる効果があるのか」ということには個人的に興味があります。と言いますのも、私自身、ベランダで植物を無心にいじっていることによって、メンタル的に相当楽になることが多いのですよ。

ですので、個人的には、「植物と人間の相互の影響関係」はあると思っています。

もう 7年も前の記事なのですけれど、

「植物は人間にさわられるだけで強くなる」

というアメリカのライス大学の研究を以下の記事でご紹介したことがあります。

驚異の植物の防衛力アップ法が米国の生物学者の研究により判明:その方法は「さわること」
 In Deep 2012年04月23日

 

この内容は、植物は、人間にさわられることにより「ジャスモン酸エステル」という、植物の構造自体を強くするホルモンを多く分泌するということがわかったというものでして、つまり、

「人に触れられるほど、植物は強くなり、虫もつきにくくなる」

のです。

下は、人間にさわられて成長した植物(右)と、さわられないで成長した植物の差を示したものです。

人間に触れられて育ったナズナ(右)と、そうでないナズナ


Plant Growth And Defenses Affected By Touch

触れられていないほうのナズナは、背丈こそ伸びていますが、いかにも弱そうに育っていることがわかります。このようにひょろひょろとした状態では、強い風や激しい天候に耐えられないはずです。

触れられて育ったほうは、茎がしっかりとして強く成長しているだけではなく、植物ホルモンのジャスモン酸エステルというものの分泌が多いために、カビやアブラムシなども発生しないのです。

私は、この研究結果を知って以来、自分の家の植物に対して、このことを徹底しました。つまり「毎日さわること」を徹底したのですが、思っている以上に効果があります。

それからしばらくして、うちの植物には基本的にアブラムシ等がつくことがほとんどなくなりました。

それに、上のナズナの写真でもおわかりかと思いますが、観賞的にも非常に違ったものとなってきます。簡単に書けば、「美しく育つ」のです。

 

この場合は、この効果を出しているのが、ジャスモン酸エステルという「植物のホルモン」だということなんですね。

そして、今回ご紹介しました、人間のコルチゾールもまたホルモンであるわけで、もしかすると、「植物と人間の間にホルモンに対しての相互の作用」とかがあるのかなと思いまして、このようなことを書いた次第です。

毎日、自然の中に行くということが簡単にかなわない環境の方も多いでしょうけれど、「自然のものとふれること」で、十分に私たちのストレスホルモンの減少に役立ってくれるのではないかなと、推測レベルでは思います。

あと、私はベランダで何かする時は、基本的に靴やサンダルを履かないで、あるいは、そのままベランダに直に座っておこなうのですが、このあたりは、やはり過去記事で、「アーシング」という、大地と直接接触することについて、これはコンクリートの上でも有効だということからおこなっています。

アーシングについては、以下の記事に書かせていただいいています。

https://indeep.jp/studies-show-what-grounding-or-earthing-will-give-to-the-human-body/

そして、この地面に素足をつけることについても、また「コルチゾール」と関係があるのです。

上の記事に、以下の記述があります。

地面に素足をつけると、ストレスホルモンであるコルチゾールの日内リズムが正常化し始めることもわかっている。

地面と直接接触するということも、どうやらストレスホルモンの正常化と関係しているようなのですね。

靴というものは、基本的に絶縁体ですので、靴を履いていると、自然の中にいても、アーシング効果はないと思われます。

 

最近は、このような「自然の中で過ごすことの健康への利益」についての研究がとても多くなっていますけれど、その一方で、以下の記事で取りあげましたが、最近は、たとえば、土とか、そういうものを含めた「自然を不潔なものと見なす傾向」が世界的に拡大しています。

https://indeep.jp/the-farther-a-person-is-from-nature-the-person-gets-sick/

 

今回はもうひとつ、自然と人間の精神衛生に関する最近の研究をご紹介して締めさせていただこうと思います。

それは、「子どもの時に緑に囲まれて育った人たちは、大人になって時に、精神障害になる確率が 50%以上低い」というものです。

これも当たり前のような感じのことではっても、このような具体的な数字が示されたのは、これが初めてです。

現代は、全世界のかなりの人たちが「都市部」で暮らすようになっていて、そして現実として、精神衛生の問題はどの国でも拡大しています。そのような問題を少しでも緩和させるひとつの手段が、今回ご紹介したような研究からわかってくるような気もします。

ここから、その記事からの抜粋です。


Being surrounded by green space in childhood may improve mental health of adults
medicalxpress.com 2019/02/25

小児期に緑に囲まれて育つことは、成人以降の精神的な健康を良好にする可能性がある

自然の豊かな環境で育った子どもは、人生の後半でさまざまな精神障害を発症するリスクが最大 55%低いことがわかった。

これは、デンマークのオーフス大学による新しい研究によって示されたもので、将来のために、緑豊かで健康的な都市を設計する必要性を強調している。

世界の人口は、現在、ますますその多くが都市部に暮らすようになっているが、WHO は全世界の人口のうちの 4億5000万人以上が精神障害に苦しんでいると推定している。

オーフス大学の研究者は、 1985年から 2013年までの人口衛星のデータに基づいて、幼少期に家の周囲が緑に囲まれている緑地の存在をマッピングし、このデータから、そこで育った子どもたちが、成長後に 16の異なる精神障害のうちのひとつを発症するリスクと比較した。

その結果、小児期に大量の緑に囲まれていた子どもは、他の既知の危険因子(社会経済的地位、都市化、そして精神障害の家族歴など)を調整した後でも、精神障害を発症するリスクが最大 55%低いことを示した。