国際物流の超専門家が懸念する夏までのタイムライン
前回、アメリカと中国の(狂気の)貿易戦争について、以下の記事を書かせていただきました。
・米中の「貿易の完全停止」という狂気の最終戦争の勝者は? アメリカンドリームの完全終焉か中国共産党の崩壊か。それとも…
In Deep 2025年5月3日
その後、興味深い人物による発言がなされていたことを知りました。
北米で最も取扱量の多いコンテナ港であるロサンゼルス港のトップである専務理事のジーン・セロカ(Gene Seroka)氏という方が、ブルームバーグ・ニュースのインタビューを受けて、「今後のタイムライン」について語ったことが伝えられています。
このジーン・セロカ氏という方は、貨物輸送部門のプロ中のプロであり、海運、国際物流、経営管理の分野で、数々の受賞歴があることが、経歴に記されています。
このセロカ氏の語った一部に関しては、今日投稿しました「 6月下旬からアメリカの店頭の棚から中国製の商品が完全に消えていく見込み」という記事でご紹介しましたが、さらに詳しくセロカ氏のインタビューを分析していた記事を見ました。
ジーン・セロカ氏のインタビューを AI (人工知能)で分析し、予想されているタイムラインを書いた記事で、大変に興味深いものです。なお、これはセロカ氏が述べた言葉ということではなく、そこから AI が分析したものであり、そのため、やや過激な部分もあります。
まずは、その記事をご紹介します。
ロサンゼルス港湾のトップは、米国のサプライチェーンが5~7週間以内に急落して棚が空になり、在庫が枯渇すると警告している
Head of L.A. Port warns of incoming plunge in U.S. supply chain, empty shelves and inventory depletion in 5-7 weeks
naturalnews.com 2025/05/03
ロサンゼルス港湾の専務理事であるジーン・セロカ氏は本日ブルームバーグ・ニュースのインタビューを受け、すでに始まっているサプライチェーンの混乱、空っぽの棚、小売業界への衝撃といった不安なタイムラインを説明した。
重要なのは、セロカ氏が述べたことは、「すでに織り込まれている」ものであり、避けられないということだ。
中国からの商品の輸送にかかる時間差から、ロサンゼルスなどの港への貨物量の急減に基づいて、今後の小売在庫の枯渇を正確に予測することができる。
トランプ支持者を含む多くのアメリカ人が、今後の不足についてまだ完全に否定している状態にある中、社内の AI エンジン「エノク」に、ジーン・セロカ氏のインタビューを分析し、私たち全員がこれから耐えなければならない出来事のタイムラインをまとめるように依頼した。
ジーン氏は、大げさな印象を与えないように控えめな見積もりを提示している点に留意してほしい。
実際の状況は、彼がここで述べているよりもはるかに悪い可能性がある。特に、より多くのアメリカ人が目を覚まし、中国製製品が消えようとしていることに気づき、在庫がなくなる前に急いで買い漁ろうとすれば、状況はさらに悪化するだろう。
ジーン・セロカ氏へのインタビューに基づき、米国の消費者が予測できるサプライチェーンの混乱と製品不足、そして連鎖的な経済影響のタイムラインをご紹介する。
米国におけるサプライチェーン混乱のタイムライン
即時(今後1~2週間)(5月中旬)
輸入量の急激な減少:
・米国の港に到着する貨物が 30%減少しており (数では、コンテナが 50,000個減)、既存の積み残しが悪化し始めている。
・港湾やトラック輸送網の人手不足により荷降ろしの遅れが悪化している。
小売業者の反応:
・CEO たちが不確実性のため輸入、雇用、資本投資を凍結している。
・小売業者は、コスト上昇を相殺するために値上げ(10%以上)を警告している。
3~4週間前(6月上旬)
目に見える棚の不足:
・既存の出荷が枯渇するにつれ、中国製の商品(ウォルマートのような在庫の約 80%)が不足し始める。
・需要の高い商品(例:電化製品、春夏ファッションなどの季節商品)ではスポット的な品不足が発生する。
交通渋滞:
・トラック運転手は積載量が減り(コンテナ 4~5個から 2~3個に)、賃金が削減される。
・港湾労働者は残業時間がなくなり、標準以下の労働時間に移行し、操業がさらに遅れる。
5~7週間後(6月中旬から下旬、7月まで続く)
重大な在庫の枯渇:
・小売業者は 5 ~ 7 週間分の「通常」在庫を使い果たし、空売りの棚が広がる。
・解決策が見つからなければ、新学期用品が不足することになる。
経済への波及効果:
・物資不足により価格が上昇し、インフレが急上昇する。
・貿易量の減少により、物流(トラック輸送、倉庫)部門の失業率が上昇する。
貿易協定が成立した場合(楽観シナリオ)
回復までには 1ヶ月かかる:
・中国の港(青島、上海)から船舶を再配置し、コンテナを積み直すのに 2週間かかる。
・太平洋を横断するのに 2週間かかる。
・棚への商品の補充は 4週間以上経過してから始まるが、季節的な需要 (例: 夏のファッション)はすでに取り逃がされている可能性がある。
合意なき離脱の場合(最悪のシナリオ、議事録に基づく予測)
海上貨物の崩壊:
・中国からの出荷は 100%減少し、世界貿易が麻痺する恐れがある。
「絶望的な」状況:
・空っぽの棚、横行する盗難、そして都市部での社会不安。
長期的なダメージ:
・インフレが加速し、企業は拡大を停止し、失業は物流業界を超えて広がる。
重要なポイント
・スピードが重要:消費者と経済に取り返しのつかない損害を避けるためには、数週間以内のトランプ大統領と中国の貿易協定が極めて重要だ。
・世界規模のドミノ効果:混乱はすぐに中国を越えて(メキシコ、カナダ、東南アジア)広がるだろう。
・政治的圧力:新学期の児童不足により、本格的な危機を回避するために政府の介入が必要になる可能性がある。
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このタイムラインは、世界のサプライチェーンがいかに深く絡み合っているか、そしてその崩壊がいかに急速に日常生活を不安定にするかを強調している。
典型的なアメリカの労働者と消費者への経済的影響
また、別の AI エンジンに、4ヶ月間も合意に至らなかった場合にアメリカでの生活がどうなるかを予測してもらった。予測は以下の通りだ。
5~7週間後(6月中旬から下旬、7月まで続く)新たな危機
広範囲にわたる空の棚:
・小売業者は予備在庫を使い果たしており、中国からの新たな出荷はない。
・新学期に必要なアイテム(ノートパソコン、リュックサック、靴)が消えて、親たちはパニックに陥る。
・自動車部品の不足により自動車の修理が停止し、ディーラーでは主要部品が不足する。
経済的および社会的影響:
・品不足によりインフレが急上昇する(残りの商品で 20~ 30%以上) 。
・物流(トラック輸送、倉庫、小売)に携わる失業率が上昇する。
・中国製品に依存している中小企業(レストラン、修理工場)が閉鎖し始める。
8~12週間後(8月) - 社会崩壊の始まり
闇市場と盗難の急増:
・絶望が増すにつれ、都市部での略奪が増加する。
・電子機器、医薬品、工具などの闇転売市場が出現する。
製造停止:
・米国の工場(自動車、家電、医療機器)は中国製部品の不足により生産を停止する。
・テクノロジー企業(Apple、Dell、HP)は製品の発売を無期限に延期する。
住宅市場の崩壊:
・建設現場で中国製の資材(鉄鋼、配線、PVC パイプ)は使用されない。
・買い手が長期的な不安定さを懸念し、住宅価格が下落する。
13~16週前(9月) – 絶望が始まる
食糧と医薬品の不足:
・医薬品(抗生物質、ビタミン、ジェネリック医薬品)が不足する。中国は米国の医薬品原料の 80%を供給している。
・食料品店では缶詰、米、冷凍食品が配給制となる(多くは中国製の包装に頼っている)。
通貨と金融危機:
・輸入がなくなるとドルの価値が下がり、ハイパーインフレが迫る。
・企業収益が崩壊し、株式市場が暴落する。
市民の騒乱と政府の対応:
・食糧と物資の不足により大都市で暴動が勃発。
・港や配送センターの安全を守るために軍隊が配備される可能性がある。
・政府は必需品(燃料、医薬品、食料)を配給する。
長期的な影響(16週間を超えて合意に至らない場合)
永続的な経済的損害:
・工場、小売店、物流が崩壊し、何百万人もの人が失業する。
・米国はサプライチェーンを一から再構築せざるを得なくなる。そのプロセスには何年もかかる。
世界的な波及効果:
・メキシコ、カナダ、ヨーロッパは米国の経済崩壊に苦しむ。
・中国経済も輸出の減少により崩壊し、世界的な不況につながる。
結論:悪夢のシナリオ
4カ月以内に貿易協定が締結されなければ、米国は次のような事態に直面することになる。
・店舗の 80%で多くの棚が空になる。
・インフレの加速(価格が 2倍または 3倍になる)。
・大量失業(物流、小売、製造)。
・闇市場、略奪、そして社会不安。
・消費社会のほぼ完全な崩壊。
これを避ける唯一の方法は、迅速な貿易協定を結ぶことだ。
さもなければ、米国は数ヶ月以内に中国からの輸入なしでは第三世界の状態に陥る可能性がある。
ここまでです。
繰り返しますけれど、決して、ジーン・セロカ氏がこのようなことをブルームバーグに言ったということではなく、その発言内容を AI が分析した「予測」です。
どうも、この AI は「やや終末論的な学習訓練をされている」っぽいですが、いずれにしても、
「合意が長引け長引くほど、多少はこのような状態が出現するかもしれない」
ということのようです。
特に、労働者の雇用などの問題はかなり出そうです。
セロカ氏は、以下のように述べていました。
ジーン氏:
多くの CEO が私に「一時停止ボタンを押せ」と言っています。こんな価格ではもう輸入はしません。
状況がはっきりするまで 2時間かかるのか、2日かかるのか、それとも 2週間かかるのか分かりませんが、雇用は今のところ見送ります。設備投資は一時停止します。
小売業者たちは、現実的に考えて、たとえ 10%でも消費者に転嫁しなければならないと言っています。
現時点で、
・雇用
・設備投資
・価格
への影響がすでに出ていることが、この発言でわかります。
まあ、ともかく、早いところ合意に達するといいのですが、当事者であるトランプ大統領は、「ローマ法王になりたい」などと述べて、以下のような AI 生成画像を自らの SNS に投稿して満足している次第です。
トランプ氏が投稿した AI 生成画像
BDW
なお、今回のタイトルに「地獄の夏」という表現を入れたのですけれど、これは、17年ほど前に、未来予測プロジェクトのウェブボットが何度も使っていた表現でした。
2009年の夏頃に、
・金融市場の崩壊
・ドルの死
・洪水を筆頭とする自然環境の激変
・太陽活動の異常
・アメリカが巻き込まれる戦争
などが起きて、アメリカも世界も大きく変容していくというようなことが書かれていました。何度か記事でも取りあげています。
2009年にそんなことは起きなかったわけですが、コロナのロックダウンが始まった 2020年の夏は、それっぽいなと思ったりしていました。
しかし、先ほどの AI 予測のような状態になれば、まさに地獄の夏という言葉がふさわしいことにはなりそうです。
さすがに、トランプ教皇もそこまで愚かではないはずですので、何とか早いうちに解決に向かうといいのですが。
前の大統領も頭のほうにはいろいろと問題がありましたが、代替わりしても、あまり変わらないのかもしれないなとも、先ほどの教皇の姿を見ていて今は思います。
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