がんと腸内細菌の関係
最近発表された論文で、
「がん患者の腸内細菌の組成が、健康な人の組成とはかなり異なる」
ことについての研究が取りあげられていました。
その論文

journals.sagepub.com
調査したのは以下の 4つの腸内細菌です。
・ビフィドバクテリウム(一般的にビフィズス菌と呼ばれる腸内細菌)
・コリンセラ菌 (ビフィズス菌の仲間に分類される細菌)
・フェーカリバクテリウム菌 (酪酸菌)
・バクテロイデス菌 (ヒトの腸内細菌の大部分を占める菌)
進行性がん患者では、健康な人の対照群と比較して、
・ビフィドバクテリウムが 82%少ない
・コリンセラ菌が 76%少ない
・フェーカリバクテリウム菌が 36%少ない
・バクテロイデスが 88%多い
という結果となりました。
つまり、進行性がんの患者の人たちは、
「ビフィズス菌と酪酸菌が少ない」
という状態で、
「バクテロイデス菌がかなり多かった」
ということになったようです。
まずは、その論文の概要をご紹介します。
がん患者と非がん患者の腸内細菌叢の変化:横断的メタゲノム研究
Gut Microbiome Alterations in Cancer and Non-cancer Adults: A Cross-Sectional Metagenomic Study
Sage Journals 2026/07/17
概要
導入
これまでの研究では、がんと腸内細菌叢との関連性が指摘されている。そこで本研究では、横断的、観察的、かつ遡及的な研究デザインを用いて、がん患者と非がん患者の腸内細菌叢の構成を調査し、がんと関連する可能性のある特定の微生物を特定することを目的とした。
方法
参加者 60名(対照群 20名、進行性がん患者 25名、非進行性がん患者 15名)の便サンプルをメタゲノム次世代シーケンシングを用いて解析した。細菌属の相対存在量の差を調べるために、マン・ホイットニーU検定 (※ 検定法のひとつ。こちらなどに詳細)を用いた。
結果
対照群と比較して、進行がん患者では腸内ビフィドバクテリウム、フェカリバクテリウム、コリンセラのレベルが統計的に有意に低く、一方、バクテロイデスのレベルは高かった。
非進行がん患者では、対照群と比較して腸内ビフィドバクテリウムのレベルが低く、統計的有意性に近づいていた。
結論
進行がん患者では、対照群と比較して主要な腸内細菌のレベルが著しく変化していた。これらは予備的な関連性であり、これらの知見を確認するためには、さらに大規模な研究が必要である。
ここまでです。
人々の腸内細菌環境が悪化している現在と未来
ビフィズス菌と酪酸菌が健康状態に関係するのはある程度わかるのですが、がん患者の人に多かった「バクテロイデス菌」というのは、どんなものなのかというと、決して「悪いもの」というわけではないですが、ヤクルト中央研究所のサイトでは以下のように説明されています。
ヒトの口腔内から腸内までの細菌叢を構成する優勢菌のひとつであり、基本的には病原性は低いですが、体の抵抗力が弱くなったときに病気を引き起こすこともある細菌です。yakult.co.jp
バクテロイデスというのは、免疫や抵抗力が弱くなったときに病気と関係することもあるようですが、そういう意味では、「がん」というのも、どこか免疫や体の抵抗力と関係する部分があるのかなとも感じたりします。
ビフィズス菌も酪酸菌もサプリで摂取できるものですが(ビフィズス菌、酪酸菌)、これらを摂取し続けることが、たとえば、がんなどの予防になるのかどうかは不明です。
それでも、「もともとビフィズス菌や酪酸菌が少ない(検査しないとわかりようがないですが)」場合は、サプリなどで補充し続けるという方法も悪くない気はします。腸内細菌は、たとえばビフィズス菌や酪酸菌を経口で服用しても「腸に定着することはない」ですので、どうしても、服用し続ける必要が出てきます。
酪酸菌に関しては、「老化を食い止める」効果があることもわかっています。以下の記事にあります。
腸内細菌環境が老化プロセスを変化させること、そして 「酪酸菌」が身体の若返りの要因となることが国際研究により突き止められる
In Deep 2019年11月16日
また、現在のアメリカの赤ちゃんは「 4人に 1人が腸内にビフィズス菌をまったく持っていない」ことが調査でわかってもいます。
アメリカの乳児の4人に1人は、赤ちゃんの免疫に最も重要なビフィズス菌を「腸内にまったく持っていない」ことが判明
earthreview.net 2025年10月14日
ここでご紹介した記事には、以下のようにありました。
研究で判明したこと
米国の乳児の 24%ではビフィズス菌が検出されなかった。
・非常に重要な免疫サポート菌種である B. infantis (ビフィズス菌の一種)が検出された乳児は、わずか 8%だった。
2歳までに広まる免疫関連疾患:
・乳児の 30%がアレルギー、湿疹、喘息と診断されていた。
今回のがんと腸内細菌の研究の結果を見る限り、ビフィズス菌のない子どもが増えているというのは、あまり良い兆候とは言えないのかもしれません。
なぜ最近になって、ビフィズス菌を持たない赤ちゃんが増えてきているのかについては、具体的な理由はよくわかっていません。ただ、2023年の研究では「COVID-19 ワクチン接種後、人々のビフィズス菌レベルが最大 90%も低下する可能性がある」ことが示されていて、やや関係がある部分もあるのかもしれません。
また、現在、40代以下などの「若い人のがんが急増している」ことがよく報じられます。
全世界でとめどなく若年層のガンが増加しており、そして今後この増加はさらに拡大することが確定している中で「ガンの自然退縮」を改めて考える
In Deep 2023年6月6日
予測では、2030年まで若年層のがんが増加し続けると予測されていて、これが腸内細菌の組成の変化と関係するのかどうかはわからないですが、がんが増え続けていることは確かです。最近のこちらの記事では、オーストラリア全土で 30代以下の若い人たちの大腸がんが急増していることを取りあげています。
2030年までのアメリカの直腸ガン患者の年代別推移の予測

dailymail.co.uk
腸内細菌の重要性が言われて久しいですが、今回の研究は小規模とはいえ、「腸内細菌環境が進行性のがんにも関係する」ということが明らかになりつつあるということでもあり、腸内細菌の重要性はさらに大きくなってきているようです。
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