トランプ政権が「死刑執行法」の拡大を告知
アメリカで、「死刑執行の方法を大幅に拡大する」というように読める司法省のプレスリリースが昨日 (4月24日)発行されていました。「司法省、連邦死刑制度強化に向けた措置を講じる」というタイトルのプレスリリースです。
アメリカの死刑制度は「州政府による死刑制度」と「連邦政府(つまり国家)による制度」にわかれます。
州政府による死刑制度の方は、現在のアメリカでは 50州のうち半数程度の州が死刑を廃止、あるいは執行停止していますが、逆にいえば、残りの半数程度は死刑制度は存続しています。
また、連邦(アメリカ国家)の死刑執行は、実際にはほとんど行われていませんでした。それを打ち破ったのが、第一期のトランプ政権です。
トランプ大統領は、過去約 100年ほどのアメリカの歴史で、連邦当局による死刑執行を最も行った大統領となっています。以下は、2020年12月の BBC の報道からの抜粋です。
トランプ氏、死刑執行を次々と命令 任期終了を目前に
BBC 2020/12/01
ドナルド・トランプ米大統領は、任期が終わりに近づく中、立て続けに死刑を執行しようとしている。
来月20日にジョー・バイデン次期大統領が就任するまでに、連邦政府による死刑執行が5件予定されている。アメリカでは政権の移行期間中には政府は死刑を執行しないことが、130年にわたって慣例となっている。
仮にこの5件の死刑がすべて執行されれば、トランプ氏は過去約100年で、在任中の連邦レベルの死刑執行が最も多い大統領となる。今年7月以降だけで、連邦政府の死刑執行は13件になる。
こういう大統領としての「記録」も保持しているトランプ氏ですが、今度は、「連邦当局による死刑執行制度の強化」に乗り出しました。
これについては、先ほどの司法省のプレスリリースを今日の BBC が以下のように報じています。
米政権、連邦当局の死刑で銃殺を認める ガスと電気椅子も追加導入
BBC 2026/04/25
アメリカの司法省は24日、連邦刑務所に対し、死刑執行の手段の拡大を指示した。従来の薬物注射に加え、銃殺、ガスによる窒息、電気椅子を導入する。
同省はこの日公表した文書で、この拡大によって死刑制度が「強化」され、「最も残虐な犯罪を抑止し、被害者に正義をもたらし、遺された人々に長らく待ち望まれていた決着をもたらす」としている。
また、致死量の薬物注射による刑の執行は妥当だとし、薬剤ペントバルビタールを「致死注射薬のゴールドスタンダード(最もすぐれた選択肢)」だとしている。
アメリカでは連邦当局による死刑は、ジョー・バイデン前大統領の在任中、執行がほぼ停止されていた。
一方、ドナルド・トランプ大統領は昨年の2期目就任初日に、死刑執行の再開を司法省に指示した。
死刑が機能する条件
トランプ氏は死刑が大好きなようですが、私自身は、人道的な意味ではなく、犯罪抑制の意味としての死刑制度には若い時から懐疑的で、「無意味」とさえ思っています。くどいようですが、人道的な意味での考えではありません。
死刑には犯罪抑止力がないからです。
これについては、以前、こちらの In Deep の記事で、AI の考え方を聞いたことがあります。
結局、死刑は一般的な犯罪抑止としては機能せず、ただ、「社会の弾圧のためには一時的に機能する」ことが歴史では示されています。思想犯に対しての死刑などですね。
思想犯(社会を乱す思想)としての死刑で歴史で最初の頃に出てくる著名人にソクラテスがいますが(紀元前399年に死刑)、ソクラテスの死刑により、ソクラテス個⼈の弾圧には成功したわけですが、結局は、後の哲学史はその思想が権威となっていきます。
ソクラテスの死後約 2000年後の日本では、野坂昭如さんがテレビCM で「ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか♪」と歌っていた姿を小学生の時に何度か見た気がしますが(それはどうでもええわ)、ともかく、ソクラテスの名前と思想は長くこの世に残り続けました。
しかし、こういう個人への弾圧としての死刑ではなく、「多数への死刑」というものは、一時的ではあっても、体制保持を強化する面はあるようです。
1930年代のソ連でのスターリンの粛清では、トロツキー派や反対派を思想犯として数百万⼈が処刑・投獄され、これにより、スターリン体制は安定し、反対運動が表⾯化しにくくなったということもあります。
中国にしても北朝鮮などにしても、いろいろな独裁体制下の国で、こういう「死刑を組織維持のツールとして使う」ということが繰り返されてきました(最近ならサウジアラビアとか)。
そして、今回のアメリカの「死刑執行についての改訂」は、
「そのような弾圧や体制維持が目的なのではないか?」
という意見が早くも出ています。
もともと連邦政府による死刑執行などは数年で数件というような小さな数で推移していたわけですから、そこに、多種多様な死刑執行方法などは必要ないはずです。
それが、今回のアメリカ司法省の告知では、
・薬物注射に加え
・銃殺
・ガスによる窒息
・電気椅子
の 4種類が用意されることになったわけです。数との比較では無意味な改訂にも見えますが、
「これから大量の死刑が起きるアメリカの未来」
が少しでも想定されているのなら、多様な死刑執行方法があらかじめ準備されることは不思議ではありません。特に「銃殺」なんてのは、大量処理に向いていますし、また、ガスによる窒息というのも「ガス室」というような概念を取り入れると、大量の処刑を一度に行える可能性が見えなくもない方法です。これらを入れた時点で、いろいろと考えるところはあります。
私個人はどこまで行っても、死刑を肯定することはできませんが、進行している事実としてお知らせしたいと思いました。
これについて、アメリカの独立系ジャーナリストのレオ・ホーマン氏という方が、サブスタックで意見記事を書いていましたので、それをご紹介して締めさせていただきます。
トランプ大統領、連邦犯罪に対する死刑執行の強化と迅速化に着手、銃殺刑、電気椅子、窒息刑を「簡素化された」手続きに追加
Trump moves to bolster and 'expedite' death penalty for federal crimes, adding firing squads, electrocution, esphyxiation in 'streamlined' process
Leo Hohmann 2026/04/25
この話には、大手メディアが報じている以上の側面があり、政府が将来の政治的反対意見への弾圧に向けて着手した他の変更点との関連で捉えるべきである。
トランプ政権は金曜日 (4月24日)のプレスリリースで、重大な連邦犯罪で有罪判決を受けた者に対する死刑執行方法として、銃殺刑、電気椅子、ガス窒息刑を代替手段として追加することで、連邦死刑制度を大幅に拡大する計画を発表した。
声明には、「トランプ大統領の就任初日の大統領令は、公共の安全を守るため、死刑判決の求刑と執行を優先するよう司法省に指示した」と記されている。
トランプ氏は最初の任期中に、20年ぶりに連邦政府による死刑執行を再開し、任期最後の数ヶ月で 13人の連邦囚人を薬物注射で処刑した。
私の見解
これは非常に憂慮すべき報告書であり、政府が死刑執行に必要な致死薬が不足しているという理由(※ 薬物注射での死刑執行では薬物が不足する可能性があると司法省は述べています)を額面通りに受け取るべきではない。それは、もっと邪悪な別の意図を隠蔽するための、でっち上げの言い訳のように聞こえる。
正直で公正な政府による死刑執行なら私は全面的に賛成する。
しかし、このような権限をエプスタインのような腐敗した一派、つまり今や連邦政府を牛耳っていると判明している連中に委ねることは、我々国民にとって破滅的な結果をもたらす可能性がある。
連邦犯罪で死刑執行される人はごく少数であるため、今回の動きの動機には疑問を抱かざるを得ない。
数百人、あるいは数千人ものジャーナリストやその他の率直な反体制派を一斉検挙し、死刑に値するほど重大な連邦犯罪、例えば反逆罪などで起訴する、何らかの取り締まりを計画しているのだろうか?
ご存知の通り、トランプ大統領は最近、イラン政策に賛同せず、ガザ、レバノン、イランにおけるイスラム教徒とキリスト教徒の大量虐殺を含むイスラエル政府のあらゆる行動に対する彼の異常な支持に同調しないジャーナリストを、わざわざ「低IQ」「敗者」「トラブルメーカー」と名指しで非難している。
アレックス・ジョーンズ氏、メーガン・ケリー氏、タッカー・カールソン氏、キャンディス・オーウェンズ氏、ジョー・ケント氏、ショーン・ライアン氏等は、いずれもトランプ大統領が許容できる政策批判の範囲外だと考えている人物として名指しされている。
これはアメリカ大統領としては前代未聞のレトリックだ。
トランプ大統領就任以来、連邦政府が過去 1年間で倉庫を買い漁ってきたことも忘れてはならない。政府は不法移民を収容するための新たな拘留施設に数千万平方フィートのスペースが必要だと主張しているが、実際には不法移民の一斉検挙はほぼ停止しており、その目的のために追加のスペースは必要ないはずだ。
この話にはもっと裏があり、政府は今後数ヶ月、数年の間に何が起こるかを把握しているため、より迅速かつ確実な連邦政府による処刑方法を準備しているのだと思われる。
内乱、内戦、そして海外での第三次世界大戦など、いずれも政府による言論の自由への弾圧と、反逆行為とみなされる範囲の拡大につながる可能性が高いのだ。
点と点は繋がるために存在している。
・パランティア・テクノロジーズ (※ 高度なデータ解析の政府や企業向けのデータ活用を支援する起業)のような政府請負業者は、AIを使って全アメリカ人の個人情報を急速に収集している。これはまさにファシズムだが、現代技術が政府による反体制派の排除を効率的に支援する点で、ナチス時代のファシズムよりもさらに危険だ。
これをテクノクラシーと呼ぶ人もいるが、私はテクノファシズムと呼ぶ。政権を握る政党によっては、あっという間にテクノ共産主義に転じる可能性もある。いずれにせよ、本質は同じだ。個人の自由とアメリカの根幹をなす自由が侵食されていくのだ。
・政府は、国民一人ひとりに関する情報の収集・保存量を大幅に増やすため、2,500か所以上の AI データセンターの建設を急ピッチで進めている。
・大統領と議会の両党は、 2001年9月11日の同時多発テロ後に開始された政府の令状なしの監視プログラムを再び延長することについて、完全に合意している。
・トランプ政権が2025年10月に出した命令に基づき、連邦軍がアメリカの都市への「迅速な対応」のために動員されている。
・少なくとも17の州で、政府が人間を収容する倉庫を購入している。
・複数の州で、反ユダヤ主義の定義を改め、イスラエル国家に対するほぼあらゆる批判を犯罪とする新たな法案が次々と提出されている。
・そして現在、米国司法省によって連邦政府による死刑執行手続きが拡大・簡素化されつつある。
異論を一切許容しないテクノファシスト超国家の出現に向けて、あらゆる要素が整いつつある。
ロイター通信は、「米国の州政府または連邦政府が新たな死刑執行手順を採用した場合、死刑囚は、その新たな手順が米国憲法で禁止されている『残酷で異常な刑罰』に違反していると主張し、法的異議申し立てを行うことができる」と指摘している。
そして同メディアはこう付け加えている。
「こうした異議申し立てはこれまで常に米国最高裁判所で却下されてきた。最高裁はこれまで、採用された死刑執行方法が違憲であると判断したことは一度もない」
私たちは、これから起こる事態から身を守るために組織的に行動しなければならない。
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