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5月23日にメルマガ新しい暗黒時代 - 人類は退化しているを発行させていただきました。

2025年からの世界 アメリカの憂鬱 中国という国 人類の未来 資本主義の終焉

米中の「貿易の完全停止」という狂気の最終戦争の勝者は? アメリカンドリームの完全終焉か中国共産党の崩壊か。それとも…

投稿日:


Robert Laberge




 

狂気に近い事実上の宣戦布告

昨日、トランプ大統領が「イラン産原油の購入国には二次制裁を課す」と警告したことについて記事で取りあげました。

正確には、SNS のトゥルー・ソーシャルにトランプ氏は以下のように書きました。

ドナルド・J・トランプ氏の投稿より

警告:イラン産石油および石油化学製品の購入は、今すぐ停止しなければならない。イランからいかなる量の石油または石油化学製品を購入する国または個人も、直ちに二次制裁の対象となる。いかなる形態においても、アメリカ合衆国との取引は禁止される。

truthsocial.com

これが伊達や酔狂で書いたのでしたら問題ないのでしょうが、「本気」だった場合、制裁の対象は、イランというより、おおむね「中国」になります。

イラン原油の最大の買い手は中国で、イラン産原油の 90%以上を購入しているのが中国だからです。以下は最近の報道からです。

5月1日のナショナル・レビューの報道より

貨物追跡会社 Vortexa の海上輸送データによると、イランの石油輸出の 90%は中国によって購入されており、3月のイランから中国への石油輸出量は 1日あたり 180万バレルと過去最高を記録したと、ロイターが船舶追跡データを引用して報じた

nationalreview.com

こういう状況ですと、中国がイランからの石油の購入をやめることができるわけもなく、結局行き着くのは、先ほどのトランプ大統領の投稿にある、イランの石油を購入した国や個人は、

> いかなる形態においても、アメリカ合衆国との取引は禁止される。

ということになります。

もはや関税 145%だとか、そういう話ではなく、「完全な貿易停止」ということになるわけです。

どんなことでも簡単に前言を翻すトランプ氏ですので、本当にこのような「完全な取引停止」を行うか、あるいは続けるかどうかは不明です。

しかし、仮に行ったとした場合、そりゃまあ、中国も大変でしょうが、アメリカはどうなるか?

たとえば、アメリカで使用されているハイテク関係の中国からの製品の依存度は以下のようになっています。

2025年4月10日の米国の報道より

ホワイトハウスが中国製品すべてに 125%の関税を課すことは、多くのテクノロジー企業が、デルや HP などのアメリカの企業も含め、中国で製品を製造しているため、エレクトロニクス業界に大きな打撃を与えるだろう。

ブルームバーグによると、米国は金額で次の製品の大半を中国からの輸入に依存している:

ゲーム機(86%、60億ドル)、PCモニター(79%、50億ドル)、スマートフォン(73%、410億ドル)、リチウムイオン電池(70%、160億ドル)、ノートパソコン(66%、320億ドル)

つまり、これらの製品を必要とする消費者や企業にとって、中国製以外の製品の選択肢はほとんどないか、まったくないということだ。

そして、トランプ大統領の中国への 125%の関税が維持されれば、約 1000億ドル相当の商品の価格が一夜にして 2倍になる。

tomshardware.com

さらには、医薬品ですね。

5月2日の米 msn の報道より

「米国で消費される処方薬の原材料の 90%は輸入されていると推定されています」と、アポロのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は述べている。その大部分は中国から輸入されており、サプライチェーンにおける大きなリスクとなっている。

米国と中国の間で進行中の関税紛争により、特にヘルスケアと医薬品の分野では投資家たちが神経をとがらせており、価格ショックが業界全体に波及し、投資家と患者の両方に影響を及ぼす可能性がある。

スロック氏は、いくつかの重要な製品グループにわたって中国への依存度が高いことを示しており、米国の医薬品サプライチェーンの脆弱性がさらに浮き彫りになっていると指摘した。

msn.com

薬の種類としては、米フォーチューン誌が、米国立衛生研究所のデータに基づいた数字を示していまして、次のようになっているそうです。

・イブプロフェンの約 95%が中国から輸入
・抗炎症ステロイドであるヒドロコルチゾンの 90%以上
・アセトアミノフェンの 70%
・ペニシリンの 45%

fortune.com

専門家は、「その結果、数週間以内に米国の店舗の棚は空になり、消費者と中国製品を中間財として使用している企業にとって、COVID-19のような品不足が起こるだろう」と述べています

まして、5月2日にトランプ大統領が書いた内容は「完全な貿易停止」ですからね。

これらのアメリカ国内での品不足は、現状のままですと、必ず起きそうです。

 

ロシアと関係する「500%」の関税も協議中

それと同時に、アメリカ議会は、

「ロシアからエネルギーを輸入する国に 500%の関税を課す」

という計画を立てていて、今の状況ですと、可決される可能性が強いようです。以下にあります。

アメリカ議会が「ロシアからエネルギーを輸入する国に500%の関税を課す」計画を発表。採決される見込み
 BDW 2025年5月3日

報道には以下のようにあります。

ブルームバーグは 5月2日、トランプ米大統領の重要な同盟者の一人である共和党のグラハム上院議員が「2025年 対ロシア制裁法案」を積極的に推進していると報じた。

この法案は、ロシアに厳しい制裁を課すだけでなく、ロシアの石油、天然ガス、ウラン、その他のエネルギーを購入する国々に最大 500%の懲罰的関税を課すことも計画している

グラハム氏の事務所は、この関税は中国、インド、イランに最も大きな影響を与えると予想されると指摘した。

関税 500%などという数字になると、冗談か狂気かのどちらかとしか言いようがないのですが、議会は本気のようです。

アメリカは、中国にもロシアにもイランにも喧嘩を売っているわけですが、中国への喧嘩は(続けられるのなら)先ほどのように「アメリカ国内での徹底的な品物不足」を導きます。

ロシアに関しては、よくわからないですが、ウクライナとの和平云々はほぼ完全に消えたことにはなりそうです。

そして、イランへの喧嘩なんですが、これは最悪の状況として、

「イランがホルムズ海峡を閉鎖する」

という核オプションがあるのかもしれません。

2023年にイスラエルが、ガザへ侵攻した少し後に、フィンランドのヘルシンキ大学の経済学准教授が「最悪の予測」を上げていました。

以下の記事にあります。

イスラエル・パレスチナ戦争による全世界への「経済と市場のカタストロフ」がもたらす劇的な「終末の時代」に突入した可能性
 In Deep 2023年10月15日

あくまで「最悪の状況」としてのシナリオでしたが、以下の 10点をあげていました。

トゥオマス・マリネン准教授の2023年10月10日の記事より

1. 紛争は地域戦争にまでエスカレートし、米国も直接関与することになる。

2. OPECは石油禁輸で対抗。

3. イランがホルムズ海峡を封鎖

4. 原油価格は 1バレルあたり 300ドルに達する。

5. ヨーロッパは LNG 不足により 本格的なエネルギー危機に陥る。

6. エネルギー価格の大幅な高騰はインフレを再活性化し、中央銀行もそれに応じて対応する。

7. 金融市場と世界の銀行セクターは崩壊する。

8. 米国は債務危機に見舞われ、連邦準備制度はさらなる金融市場救済策の制定を余儀なくされる。

9. オイルダラー貿易は崩壊する。

10. ハイパーインフレが発生する。

そして、仮にこのようなことが発生した場合、最終的には、

 

1) ヨーロッパのエネルギーの状況に終末的状況をもたらす可能性がある。

2) 米国経済の壊滅的な崩壊が引き起こされる可能性がある。

 

と述べていました。

上の「3」に、

> イランがホルムズ海峡を封鎖

とありまして、その次の「4」から壊滅的なシナリオとなっていくわけですが、もちろん、ガザの戦争の中では、これは起こりませんでした。

ホルムズ海峡というのは、世界で消費される石油の 6分の 1と液化天然ガス (LNG) の 3分の 1が通過する海域であり、ここが閉鎖されると、エネルギー価格に大きな影響が出ます。

第四次中東戦争のあった 1973年10月に、イランは「イスラエルを支援する西側諸国に対する石油禁輸を宣言した」のですが、その後、半年で、石油価格は世界的に 300%近く上昇したのでした。

過去には先ほどのシナリオと似たようなことがあったと。

今回のトランプ大統領の「イラン産石油の購入国への厳しい二次制裁(すべての取引停止)」が、本当に行われて、それが継続されるとしたなら、ホルムズ海峡などもあっても不思議ではないのかもしれません。

 

米ナチュラルニュースが、このトランプ大統領の「中国との全面的な取引の停止」についての発言を受けて、記事をリリースしていました。

ナチュラルニュースは、もともと保守系の、つまりトランプ氏寄り「だった」メディアですが、最近の関税措置や二次制裁の政策を受けて、二ナチュラルニュースのマイク・アダムスさんなどは、ついに、

「ほとんど狂気だ」

とツイッターに投稿していました(こちらに翻訳があります)。

今回ご紹介する記事を書いた人は別の記者ですが、アメリカ経済の今後を激しく懸念しています。まあ、やや極端な描写もあるのですが、そういう表現をする人たちが多いですので、多少割り引いて読むべきだとは思いますが、そうなる「可能性」は、少しはあります。

ここからです。





トランプ大統領が中国への全面的な貿易禁輸を発表、経済崩壊への懸念が高まる

Trump announces total trade embargo on China, sparking fears of economic collapse
naturalnews.com 2025/05/02

トランプ大統領は、中国によるイラン産原油の購入への報復として、医薬品、電子機器、食品を含む中国製品の輸入を全面的に禁止すると発表し、世界市場に衝撃を与えた。

アナリストのマイク・アダムズ氏が「サプライチェーンのアルマゲドン」と表現したこの措置は、大量失業、ハイパーインフレ、そして世界恐慌よりも深刻な危機を引き起こす恐れがある。

アナリストらは、店の棚が空になり、技術が不足し、自動車生産が停止し、そして、医薬品危機が発生し、失業率が 50%に達し、生活必需品のインフレ率が 100%になる可能性があると警告している。

この禁輸措置により米ドルの下落が加速し、BRICS 諸国(中国、インド、トルコ)は金本位制に基づく貿易体制へと移行し、アメリカの経済的優位性が弱まる可能性がある。

イランはホルムズ海峡を封鎖することで報復し、世界の石油供給を 21%削減し、石油価格を 1バレル 300ドルまで急騰させ、欧州のエネルギー危機を悪化させる可能性がある。

BRICS諸国が力を増すなか、米国は経済的に自滅する危険にさらされているため、専門家たちは富を金や銀に換え、必需品を備蓄し、社会崩壊に備えるよう勧告している。

Truth Social を通じて発表されたトランプ大統領の政策は、イランと貿易を行うあらゆる国または団体に二次制裁を課し、イラン産原油の最大の買い手である中国を事実上米国経済から切り離すものだ。

「輸入、投資、そしていかなる形態での取引も一切禁止する」とトランプ大統領は宣言した。

アナリストたちは、この政策が米ドルの世界的な支配力の崩壊を加速させ、各国を BRICS のような代替貿易システムへと向かわせる可能性があると警告している。

 

経済の終末:空っぽの棚、大量失業、ハイパーインフレ

当面の影響は壊滅的なものになると予想される。

小売業の崩壊:ウォルマート、アマゾン、その他の大手小売業者は中国製品に大きく依存している。アダムズ氏は、数週間以内に棚が空になり、その後、業界全体が倒産すると予測している。

テクノロジーの供給停止: iPhone や半導体を含む米国の消費者向け電子機器の 80~ 90%は中国製であり、生産ラインが停止する恐れがある。

医薬品不足:インスリンを含む命を救う医薬品が薬局から消えてしまう可能性がある。

自動車産業の停止:自動車メーカーは中国製の部品に依存しており、部品がなければ組立ラインが停止する。

アダムズ氏は、絶望的な状況にあるアメリカ国民が食糧不足に直面する中、失業率 50%、生活必需品のインフレ率 100%、さらには人食いまで起こると警告している。

「これは誇張ではない。トランプ氏がまさに経済自殺の導火線に火をつけたのだ」と彼は述べた。

 

生存戦略:金、分散化、そして備え

アダムズ氏はアメリカ国民に次のことを呼びかけている。

1. ドルを捨てて、金、銀、土地を手に入れる。

2. 不足が起こる前に、靴から医療用品まで必需品を備蓄する。

3. 左翼の反乱や政府による弾圧の可能性を含む社会崩壊に備える。

「中国は木の皮を食べて私たちより長く生き延びることができる」とアダムズ氏は警告する。「アメリカ人? ドーナツ売り場が空っぽだったら暴動を起こすだろう」

 

結論

トランプ氏の賭けは、米国史上最大の経済崩壊を引き起こすリスクをはらんでいる。それはドルの覇権を崩壊させ、BRICS を新たな世界秩序として確固たるものにする可能性もある。アダムズ氏は痛烈にこう述べている。

「米国は自らにガソリンを浴びせている。中国はただ我々が燃えるのを見守るだけでいいのだ」


 

ここまでです。

失業率 50%だとか、インフレ率 100%だとか、やや大げさな感じですが、マイク・アダムスさんの言葉にある、

「中国はただ我々が燃えるのを見守るだけでいいのだ」

は、ちょうど昨日リリースしました In Deep メルマガで、2008年の経済危機を予言したことで広く知られるピーター・シフさんというアメリカの経済評論家の最近の発言を載せさせていただいたのですが、以下のように述べていたことを思い出させます。

もちろん、ピーター・シフさんは中国寄りの人でも何でもありません。

ピーター・シフ氏の発言より

長期的には、これは(米国との貿易関係が切れたことは)中国にとって最善の策と思える。なぜなら、中国は米国との貿易をこれ以上続けず、止めるべきだからだ。

なぜなら、米国は中国を食い物にしているからだ。米国は支払いをせず、実質的に何の価値もない借用書を渡すだけだ。決して支払いをしない顧客へのベンダーファイナンスを維持することで、中国経済はめちゃくちゃになっている。

そして、これは中国経済に深刻なダメージを与えており、そのダメージを早く修復できればできるほど、中国にとっては良いことだ。

schiffgold.com

トランプ大統領の昨日の発言にある「中国との貿易の完全な停止」は、ピーター・シフさん的な考えからは、むしろ中国に良い影響を与えてしまうことにもなりそうです。

米中どちらも修羅場であるのは事実ですけれども。

日本も流れ弾に当たってしまうようなことがあるとやや困りますね。

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