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地球最期のニュースと資料

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ヒアリの何が恐いのか…を調べてみると、結論から書くと、子どもの致死率は「天文学的に低い」上に、歴史的な人災の本件で我々が何を言う権利があるのかと思ったり

      2017/07/18

heritagedaily.com

人間に生息域を拡大されて憎まれる悲しきダジャレ王

最近はヒアリについての報道をたくさん目にするようになっています。

今のところ残念なのは、いまだに「ヒアリが見つかってヒヤリとした」というダジャレをテレビニュースで聞いていないことですが、いつか誰かがきっと言ってくれると信じて生きていこうと思っています。

あるいは、「日本のアリはシロートだけど、玄人のアリはクロード・ヒアリ、なんちゃって」というダジャレもまだ出ていないようで、日本の未来も明るくない感じですが、あれ? なんでこんなこと書いてんだ?・・・と思って、現在の気温を見てみましたら 35℃らしいんですよね。

私の家の中では私の部屋にだけエアコンがありません。

それで、ちょっと自分の部屋にいて少し気がおかしくなったのかもしれません。

場所を変えようと思います。

(移動)

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ヒアリの「子どもへの脅威」を計算してみる

というわけで、やや涼しい場所に移動してきました。

話をヒアリに戻しますと、種類を問わず、アリに輪(リング)を見せると集まるとされていますが、「ここにリングが」とヒアリに示して「ヒアリング、なんちゃって」という……(涼しい場所に来ても言うこと変わっとらんやんけ)。

さて、そういうわけで、最近は「ヒアリの脅威」が多く喧伝されています。

先日も、

アメリカの「ヒアリ」への対策費と被害費の合計は「年間1兆円」を超えている
2017/07/12

という記事などを書きまして、少なくとも経済的な意味では、アメリカではヒアリに対して、かなりの損害や対策費を計上していることがわかりました。

しかし、

「いったい、このアリの何がこわいのか」

というのが実はよくわかりません。

1976年のアリ対猪木戦では、「アリの一発がこわい」ということになっていましたが、こちらのアリにもそういう明確なものはあるのか。

一般論としては、下は東京都環境局のページですが、以下のように説明されています。

ヒアリ 健康被害の具体例

・刺されると、アルカロイド系の毒によって非常に激しい痛みを覚え、水疱状に腫れる。

・さらに毒に対してアレルギー反応を引き起こす例が、北米だけでも年間で1500件近く起こり、100人以上の死者が出ている。

ということのようで、つまり、

「刺されると死の危険がある」

という部分が最も懸念されているもののようです。

ということで、この脅威がどのくらいのものかを考えてみたいと思いました。

子どももいますし、私自身も命に危険のある虫はイヤですし、そのあたりを考えてみたいと思います。

本当にものすごく危険なら、やはりいろいろと生活で考えなければならないこともありますしね。

ヒアリが先に入ってきた国の状況から考えてみます。

南米ブラジルの一部のマイナー生息域だけに生きていたヒアリを世界に広めたのはもちろん人間ですが、基本的には、その人間の「貨物の移動網」と共にさまざまなところに住むようになったようです。

いろいろな説があるようですので、ここではふれないですが、ヒアリは自ら生息域を積極的に拡大していく生き物ではないようです(そうなら、近代以前にもっと南米全体に広がっているはず)。

それはともかく、ヒアリは、Wikipedia によれば、今では、アメリカ、中国、オーストラリアなどに多く分布しているようですが、データが最も揃っているのがアメリカのようですので、そこからいくつか探してみました。

まず、

「毎年、どのくらいの人がヒアリから被害を受けているのか」

ということについてですが、これは正確な数値というものは出ていません。つまり、ヒアリに刺されて病院に来た人しか数値では集められないということがあるからですが、そういうところからの推定ですので、幅がものすごいです。

1999年のアメリカの害虫駆除関係のデータには、

・年間 500万人がヒアリに刺されている

とあります。

しかし、最近のアメリカの文献を引用したと思われるこちらには、

・アメリカでは、毎年1400万人以上の人々が刺されており

という部分があり、この 20年間ほどで増えたのか、あるいはデータにバラツキがあるのかわからないですが、中間値を取るというより、

「アメリカでは毎年、少なくとも 500万人、最大値では 1400万人以上がヒアリに刺されている」

ということにさせていただこうと思います。

これは確かにすごい数値だと思います。

単純にどのくらいの頻度でアメリカでは刺されているのかを考えてみますと、アメリカの人口は3億人以上ですが、ヒアリはアメリカ全土に分布しているわけではないですので、その主要な分布区域を見ますと下のようになっています。


nfogram.com

濃い黄色と薄い黄色の州がありますが、「濃い黄色はガチで全域に定着している」州で、薄い黄色は、「定着が確認されている州」です。

それで、この州のそれぞれの人口を示してみます。

ヒアリの主要生息州(濃い黄色)の人口

サウスカロライナ州 470万人
ジョージア州 980万人
フロリダ州 1900万人
アラバマ州 480万人
ミシシッピ州 290万人
ルイジアナ州 450万人
テキサス州 2560万人

合計 7100万人

テキサス州がとても人口が多く、この主要生息州の人口は約 7100万人でした。

ヒアリの生息州(薄い黄色)の人口

ミズーリ州 600万人
アーカンソー州 290万人
オクラホマ州 380万人
ニューメキシコ州 200万人
アリゾナ州 650万人
ネバダ州 270万人
カリフォルニア州 3770万人

合計 6100万人

こちらでは、カリフォルニア州が大変人口が多く、半分以上がカリフォルニア州ですが、6100万人ということになりました。

このふたつを足すと 1億3200万人ということになり、ちょうど日本の人口に近い感じのものとなっています。

「この中で、毎年 500万人から 1400万人くらいが刺されている」

というのは確かにすごい数です。

というか、たとえば、日本の人口は 1億2700万人ほどですが、その日本人のうちの 500万人から 1400万人が刺されるような虫の例ってあるだろうか・・・。

日本人の1割近くが影響を受ける虫・・・。

最も近そうなのは「蚊」ですかね。蚊はもう少し多く刺されていますかね。

それで症状が激烈なのですから、厄介は厄介であることはわかります。

 

いずれにしても、どうやら、アメリカでは、

「生息地域の1割くらいの人がヒアリに刺されている可能性がある」

ということになりそうです。

確かにこれはものすごいですが、しかし、ここで逆に思うことがあります。

言われているように「ヒアリに刺されると、死に至る可能性がある」というようなことがあるとすれば、それは大変だ・・・と思いつつも、ふと、先ほどの東京都環境局のページの文章を思い出します。

それは、

アレルギー反応を引き起こす例が、北米だけでも年間で1500件近く起こり、100人以上の死者が出ている。

という部分です。これがどのくらい正確な数値なのかはわからないですが、東京都環境局を信じさせていただきますと、

・年間で1500件のアレルギー反応

から計算できるのは、先ほどのデータのうち 1400万人の数字を使わせていただきますと、

ヒアリに刺されてアレルギー反応を引き起こす人は全体の「 0.01 % 」

ということになりますでしょうか。

計算の世界に入りますと、もうさっぱり苦手な分野で、間違っている部分があるとしても、アレルギーになる人の率は「 1万人に 1人」というような割合となるようです。

さらにヒアリに刺されての死亡率となりますと、1400万人の数字を使わせていただきますと、

ヒアリに刺されて死亡する率は「0.0007 % 」

となるようです。100万人に 7人くらいでしょうか。

下のようなことが書かれてあるマイアミ大学の科学論文も見つけまして、統計にはバラつきがあるようではあると共に、「毎年 50万人が緊急治療を受けている」ということから、その症状は強いものではあることはわかります。

・ヒアリに刺されて毎年 50万人が緊急治療室に運ばれている。
・毎年、ヒアリにより 40人が死亡している。
・殺虫費用を入れて、アメリカでは年間60億ドル(6600億円)がヒアリ対策に使われている

 slideshare.net

 

 

おそらく子どもや若い人は命に関わることはほとんどないのでは

なお、これらのデータには「死亡者の年齢分布」がないのです。

それで、「ヒアリに刺されて死亡する原因の多くはアレルギー反応(アナフィラキシー)によるもの」と考えますと、推定でしかないですが、おそらく「ヒアリに刺されて死亡する方の大半は高齢者」だと思うのです。

なぜそう思うのかといいますと、同じアナフィラキシーで亡くなる例で、日本でも一般的なものに「スズメバチに刺される」事例があります。

その「スズメバチに刺されて死亡する年齢分布」がどのようになっているかご存じでしょうか。日本の場合です。

先に結論を書きますと、

「ほぼ圧倒的に高齢者だけが亡くなっている」

のです。

「ほぼ」というのは 100%ではないというだけで、スズメバチに刺されて亡くなる99%以上は 40歳以上で、80%以上が 60歳以上です。

ハチ刺傷による年齢別死亡者数

 

アナフィラキシーのメカニズムによるものなのでしょうけれど、理屈はともかく、

「若い子どもたち、幼い子どもたちはスズメバチに刺されたぐらいでは、ほぼ絶対に死なない」

ということが少なくとも統計では言えるのです。上の統計の年代の中では、日本でスズメバチに刺されて死亡した最も若い方は 37歳の男性です。

だからヒアリも大丈夫とは言わないですが、これはある程度は参考になる現実ではないかとも思います。

さきほどの、「ヒアリに刺されて死亡する率」と計算できる「 0.0007 % 」という数値と、このスズメバチでの死亡者の年齢分布を考えますと、一概にはいえないにしても「基本的に、子どもに関してはそんなに恐れるものでもないかもしれない」という気はします。

症状が激しいようですので、大変は大変でしょうけれど、「刺されると、たくさんの人が死んでしまう」というようものでは(若い人には)ないと思われます。

なお、現実的な若い方の死亡事例に関しましては、年間 数百万人以上がヒアリに刺されているかもしれないアメリカで、この数年に関しては、ニュースを検索した限りでは、少年や少女がヒアリに刺されてなくなった例は、

・2013年にテキサス州の 13歳の男の子が死亡
・2016年にアラバマ州の 29歳の女性が死亡

の2つの例しか見いだせませんでした。

しかし、逆にいえぱ、「アレルギー体質」の人は、年齢と関係なく注意が必要なのかもしれません。今は、花粉症の人がこれだけ多いように、アレルギー体質の人たちは日本中にいますので。

それでも、ふと、今年2月の記事、

今季の季節性インフルエンザの「恐ろしい」致死率・・・
2017/02/03

を思い出しまして、そこに書きました2017年はじめの季節性インフルエンザの致死率(7480000分の 9 = 0.0001% )よりは、ヒアリでの致死率のほうが高いとも言えそうです。

季節性インフルエンザでは、100万人に 1人から 2人亡くなる(ほぼすべてが高齢者)というのに対して、ヒアリでは、20〜30万人に 1人くらい亡くなる(おそらく、ほぼすべてが高齢者)ということになるのでしょうか。

子どもの死に関してはゼロではないですが、アメリカの最近数年間だけのデータでは、最高で数十万分の 1くらいから、低い数値では「数千万分の 1」くらいの確率ではないかと思います。ないとはいわないですが、とても希な事例かと思います。

まあ、そんなわけで、自分の子どもに対しては、ヒアリはさほど恐れるものではないとわかっただけでも調べてよかったです。

ただ、地球の記録の記事にアメリカの報道を載せましたけれど、

アメリカでのヒアリの駆除と管理にかけられている推定年間費用は 約 7800億円に近い。

ここには、ヒアリに刺された場合の治療費は含まれていない。ヒアリによる治療費は年間約 5600億円

というように、社会への影響は小さくはなさそうです。

ただ、これはその記事が正しいかどうかわからないので、訳さないですが、アメリカのある科学系の記事に、

「ヒアリは行動範囲が狭い生物で、自分で生息域を遠方に広げることはない。世界中にヒアリを広めたのは人間の輸送網がメイン」

とありました。

これが事実なら、勝手に人が世界に広めて、勝手に迷惑がっているというのも、何だかヒアリに申し訳ない気はしました。

ブラジルを通る世界全体の輸送網が築かれる以前には、ブラジルの隣国あたりにさえ、ヒアリはいなかったことを考えますと、「本来ヒアリは行動範囲が狭い昆虫」だというのは事実かもしれません。

もしヒアリが災難なら、典型的な人災なのかもしれないですね。

日本語においてはたくさんダジャレを提供してくれるヒアリですが、人間との関係にはそこはかとない悲哀があります。



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