暴力と破綻への道を進むヨーロッパとすべての西側諸国
スウェーデンのオンライン日刊紙が、「貧困化したスウェーデンへようこそ」という意見記事を出していました。その記事をご紹介させていただこうと思いますが、少し前置きをさせていただきます。
このスウェーデンという国に対してのイメージは、日本や世界から見て、常に良好なイメージに満ちている感じですが、実際には現在のスウェーデンは、ヨーロッパで最悪の治安状況となっていて、これはほぼ移民政策のせいですが、ずいぶん以前より暴力の拡大が顕著になっていました。
何度か記事にしたこともあります。
・手榴弾抗争が続く「スウェーデンの憂鬱」に見るこれからの世界
In Deep 2019年11月30日
パンデミック以降、さらに暴力の応酬が激しくなり、「 2日に 1件の割合で爆弾テロが起きている」と報じられたこともあります。
・2日に1件のペースで爆弾テロが起きているスウェーデンで、「殺人事件の4分の3は移民によるもの」であることが判明
地球の記録 2024年10月29日
2024年には、さらに暴力犯罪が急増したことも発表されています。
こういう社会状況では、ある程度仕方ないことなのかもしれないですが、スウェーデンは、「国民の 4割が精神疾患」だというデータも発表されています。
・スウェーデンでは「国民の約4割が精神疾患」ということを示す新たなデータ
地球の記録 2023年6月13日
スウェーデンの人口は約 1000万人ですが、2024年の時点で、「 120万人が抗うつ剤を服用している」こともわかっています。
抗うつ剤、特に SSRI と呼ばれる薬剤は、副作用も強く、離脱症状(服用をやめると強い症状が出る)もとても強いですが、その離脱症状に悩まされているスウェーデン人が非常に多くなっていることも報じられています。
こういう環境では、学生たちへの心理的負担も多いのか、あるいは何か他の理由があるのかはわからないですが、スウェーデンでは、学生の学力が低下し続けていて、
「スウェーデンの高学年の 25%がまともな読み書きができない」
と報じられていたこともあります。
北欧というと、手厚い福祉が有名とされていますが、スウェーデンでは、その福祉も、移民政策のために崩壊しつつあります。
・福祉国家スウェーデンの福祉が崩壊するとき
In Deep 2020年1月27日
では、今後のスウェーデンに何か希望があるのかというと、何もないと思います。それは今回ご紹介させていただくスウェーデン紙の意見記事でもわかります。
というより、ヨーロッパ全体に希望が見えないと同時に、日本や韓国などを含めた「西側全体に希望が見えない」のが現状です。
エルサルバドルの奇跡
興味深かったのは、今回ご紹介させていただくスウェーデンの新聞の意見記事が、以下の文面で締められていたことでした。
スウェーデン紙の意見記事より
以前、報道で取り上げられたエルサルバドルの例は、この文脈において特に関連性が高い。なぜなら、この規模の政治的変化は可能であるだけでなく、特にスウェーデンのような小国では、非常に急速に起こり得ることを示しているからだ。
「エルサルバドルの例」という言葉が出てきますが、簡単に書きますと、エルサルバドルはこの数年で、
「奇跡の復活を遂げた」
のです。
エルサルバドルは、世界で最も犯罪率、特に殺人率の高い国として知られていましたが、2015年以来の以下のグラフを見ると、何が起きたかおわかりになるかと思います。
エルサルバドルの殺人数の推移
elsalvadorinfo.net
2015年には、10万人あたりの殺人件数が 103もあったものが(当時で世界でトップの殺人率)、2024年には 1.9 にまで急減しています。
なお、今年は 3月までの集計としてですが、エルサルバドルの殺人率は 1.05 にまで低下しています。
もちろん、この 2024年のエルサルバドルの 10万人あたりの殺人数が 1.9 というのは、日本と比較すれば高いですが(日本は 0.23)、たとえば、アメリカの殺人率は 6.51 あり (2022年)、エルサルバドルの殺人率の 1.9 というのが、いかに優れた数字かわかります。
ナジブ・ブケレ大統領という 43歳の人が、エルサルバドルを率いるようになってから起きたことですが、このような小さな国では(エルサルバドルの人口は約 600万人)、
「国が突然変わる」
ということはあり得ることを示したものではあります。
もちろん、ある程度強引な方法で犯罪を撲滅していったのですけれど、スウェーデンの先ほどの日刊紙の 2月の記事の冒頭には以下のように書かれてありました。
わずか数年で、エルサルバドルは数十年にわたって国を悩ませてきた残忍なギャング犯罪を撲滅した。
ナジブ・ブケレ大統領はグローバリスト反対派から「非民主的」だと非難されているが、エルサルバドル国民の間ではほぼ国民的英雄の地位を獲得しており、現在ビットコイン革命の先頭に立っている。
国家全体の殺人件数が少なくなるということは、犯罪者を一掃することでだけで達成されるというものではなく、一般的に「貧困が殺人を誘発する」ことも、ある程度事実です。
そして、「殺人が極端に少なくなる」ことが良いか悪いかというと、良いに決まっています。
日本は、スウェーデンやエルサルバドルと比較すれば、人口にしても経済規模にしても大国であり、そう簡単にすべてのシステムを変えることは難しいでしょうが、ある程度、指導者たちの「本気の意志」があれば、ほんの少しでも変えることはできるのだとは思います。
それがなされていない、あるいはむしろ悪化しているヨーロッパと西側の多くの国は破綻への道程を歩いていると思わざるを得ません。
何だか前置きが長くなってしまいました。
スウェーデンの意見記事そのものも結構長いものですので、そろそろご紹介に入ります。
ここからです。太字はこちらで施しています。
貧困化したスウェーデンへようこそ
Välkommen tillbaka till Fattigsverige
nyadagbladet.se 2025/03/15
私たちは、道徳的な面だけでなく、ますます明らかに破綻の兆候を示しているシステムの中で暮らしている。
スウェーデンの庶民は、家賃を払い、食料を買い、借金を避けるためにますます苦労しなければならなくなっている。
その一方で、スウェーデンとベルギーの政治体制は、まるで金のズボンをはいた少年のようにお金を無意味にばら撒き続けている。
税金は、ほとんど理解できないほどの額で、その税金は、ますます現実から乖離しているように見える巨大プロジェクトに使われている。
最近、ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏率いる欧州委員会は、ロシアに対する代理戦争の軍事費にさらに 9兆スウェーデン・クローナ(132兆円)を投資したいと発表した。
具体的な参考例として、これはスウェーデンの国家予算全体の 7倍以上であると言える。また、「欧州は防衛費を大幅に増額する用意がある」とも強調されている。
主流メディアの社説では、ヨーロッパが福祉を削減し、その代わりにそのお金を軍備増強に使っているという主張に興奮した雰囲気が漂っている。
フォン・デア・ライエン氏はさらに、資金調達の一部はさらなる融資を通じて行われる予定だと説明している(融資の他にどんな方法があるのか?)。スウェーデン国内でスヴェンソン氏は、この戦争は大企業や軍産複合体との決着をつけるためではなく、自由のために戦われているのだということを思い起こさなければならないと述べる。
しかし、決してそうではない。なぜなら、ヨーロッパ諸国をウォール街の安全な腕の中にさらに深く誘い込み、そのお金で武器を買うこと以上に、スウェーデンとヨーロッパにとって民主的に貴重なことがあるだろうか?
戦争で荒廃したウクライナに資金や装備を国外に送り出すというスウェーデン特有の努力と、他の EU 諸国と同様にウルズラ氏の寛大な寄付の負担を負わなければならないという事実により、ウクライナへの送った額は、今やスウェーデンの国家予算の年金項目を超えてしまった。
このような背景から、ますます多くの子ども連れの家族が立ち退きを余儀なくされ、ひとり親や年金生活者は満足に食事をとる余裕がなく、多くの人がローンなどの支払いについて必死の手段に頼ったり、日常生活に対処するために教会やボランティア団体に助けを求めたりしているという警鐘が鳴らされているのも不思議ではない。
家賃の値上げ、電気料金の高騰、食料費の高騰、賃金の低下などは、すべて実施されている政策に直接関連している経済現象の例だ。
全体として、多くのスウェーデン人が尊厳を持って生活することが不可能となり、深刻な家計負債の増加につながっている。
昨年の春、スウェーデン国民のスウェーデン執行当局に対する負債は 1190億スウェーデンクローナ(約 17兆円)に達し、わずか 1年で 17パーセント増加した。
家族を持ちたいと願う多くの若いカップルにとって、かつては当然のことだった家を持つことは、今では多くの人にとってほとんど素朴なユートピアとなっている。ティンブロのような新自由主義シンクタンクが、キッチンや窓のないスラム住宅の建設を政府に許可するよう求めているのは、時代の兆候だ。
北欧地域では長い間、後世の人たちは一般的に両親や祖父母の世代よりも物質的に恵まれていると信じられてきた。しかし、歴史書に出てくる貧しいスウェーデンが今、猛烈な勢いで復活している。
そのような時代に私たちが生きているということ以外、この展開を解釈するのは難しい。
国民の長期的な福祉よりも日和見主義的なイデオロギーと短期的な自己利益を優先することを一貫して示してきたすべての権力者たちによって、スウェーデンは貧しい国に戻った。
戦争、「気候」、そしてコロナ
2000年代に入ってから、あるいはこの 5年間だけでも、権力者たちが猛烈な勢いで取り組んできた事業の代償は、まったくもって把握しがたい。
これは、何千何十億ドルもの国民の資金が、さまざまな方法とレベルで努力とコストが分配されるプロジェクトに投入されることを意味する。
資金の流れは複雑な構造のため把握するのが難しい場合が多いが、一方で、資金がどこに行ったのかを判断するのはそれほど難しいことではない。なぜなら、資金がどこに行ったのかを彼らは非常にオープンにしているからだ。
ウクライナは、2022年以前は、ヨーロッパで最も破産し腐敗した国の一つであると広くみなされていた。
当然のことながら、現在、ウクライナに送金された資金の大部分が「消失」しており、送られた軍事装備が現在、ラテンアメリカなどの犯罪組織で発見されており、ヨーロッパでも確実に発見されていると発表されている。
過去 3年間の戦争はそれ自体がまったく無意味な事業であり、また、ウクライナとロシアの外交代表団が 2022年3月には、ほぼ全員一致で合意し、早くも和平協定で終戦に非常に近づいていたことを主流メディアが報じることはなかった。
信頼できる証言によれば、この合意は西側諸国によって妨害され、その仕掛け人は英国のボリス・ジョンソン首相だったとされているが、これはますます耐え難い情報となっている。
政治勢力が経済のブラックホールに資金を投資する習慣は、ウクライナに先行しており、残念ながらその後も続くことになるだろう。
これまで実施されてきた取り組みの中には、おそらく民主主義の利益のために行われた大量移民政策があり、アナリストによれば、スウェーデンは少なくとも年間 2500億クローナ (36兆円)の費用を移民政策に負担しているという。
何千億クローナもの資金がブリュッセルの EU の巨人に支払われているが、EU は現在、戦争と並行して、SNS コントロールプロジェクトのような新しい革新的な形の全体主義へと市民活動を展開している。
EU レベルでの「気候変動対策」もある。例えば乳牛に強力な薬を与えて放屁をやめさせるなどの取り組みに、これまで費やされ、今後も費やされ続ける数十億ドルについても言及できる。
スウェーデンの食糧供給は破壊されつつあり、農民反乱を起こす十分な理由はオランダだけではない。
スウェーデンの農業は、主に気候政策、制裁、エネルギー危機の名の下に閉鎖を余儀なくされており、最近、ノールランド地方の小麦粉農家の状況が危機的であること、そして、まもなくスウェーデン北部の酪農場がなくなる可能性があることが報じられた。
これに対して権力者たちが私たちに提示している「補償」は、世界の終末を回避するという約束と並んで、主に経済の実際のニーズにほとんど適合していない風力発電所で構成されている。
コロナ禍でのロックダウン政策も自由ではなかった。もっと正確に言えば経済を根底から傷つけた。
振り返ってみると、当時多くの批評家が指摘していたように、パンデミック時の対策は疫学的にはほぼ完全に無意味であったという結論にも達する。
精神的、肉体的な公衆衛生面も考慮に入れると、新型コロナウイルス対策の最終的な費用は依然として非常に不透明だ。
付け加えれば、これは、道徳的破綻を経済的破綻へと変換する過程にあるというはるかに多くの兆候を示しているシステムの表面的な反映にすぎない。
リーダーシップの危機
スウェーデンや他の多くのヨーロッパ諸国は歴史的に、特定の時期に極度の貧困に陥ったことがあるが、今日生きている人の中でそれを覚えている人はいない。
かつては、貧困があまりにも蔓延し、人口のほぼ 3分の1が祖国に将来を見出せず、飢餓と不作から逃れて大西洋の向こう側でより良い生活を求めることを選んだ時代があった。
もちろん、現代のスウェーデンと 19世紀のスウェーデンの間には大きな違いがあるが、私たちが当然だと思っていた基本的な経済基準さえも奪われる可能性があり、実際に現状で奪われつつある。
残念ながら、この問題に対する簡単で迅速で現実的な解決策はないが、根本的な変化が起こることも同様に非常に重要だ。
基本原則は単純であり、主流メディアの霧の向こう側を見ることができる人なら誰でもよく知っている。
権力者が国民の幸福に奉仕する意志や能力を持っていない限り、国民は実施されている政策から利益を得ることはできない。
今日のスウェーデンとヨーロッパの権力者たちは、スウェーデンとヨーロッパの人々への奉仕以外の動機によって動かされていることが、かなり以前から疑いの余地なく示されてきた。
残念ながら、政治だけではなく、大手銀行やメディアなど社会を支える他の分野でも、同じような不適切な権力者が存在する。社会神経系における精神的貧困はさまざまな形で現れ、今ではますます具体的な経済レベルにも現れている。
経済状況を変える可能性のある個別の改革を数多く挙げることは十分可能だが、実際に必要なことが「根本的なシステムの変化」である状況では、個別の改革は二次的な問題だ。
必要なのは、表面的なマスメディアの言説や超グローバリストの利益団体ではなく、国民に奉仕するという実際の責任と機能を果たす政治的リーダーシップだ。
その意志があるのなら、国の利益と発展に真に役立つ分野やプロジェクトに同じ資金を優先させることは、もちろん全く問題はない。
以前、報道で取り上げられたエルサルバドルの例は、この文脈において特に関連性が高い。
なぜなら、この規模の政治的変化は可能であるだけでなく、特にスウェーデンのような小国では、非常に急速に起こり得ることを示しているからだ
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