地球の最期のときに

[衝撃] 2億5000万年前の地球史上最大の大量絶滅では「まず植物が先に絶滅」し、それから他のすべての絶滅が始まったことが判明。そこから思う「今まさに進行している地球の6度目の大量絶滅事象」



投稿日:2019年2月3日 更新日:

2019年2月1日の米ネブラスカ大学のニュースリリースより


Nebraska Today




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すべての他の生命の登場に貢献した「植物」という存在。その植物が消えた時には他のすべての生命は再び消える

このブログでは、「植物」というものについて取りあげることが多いです。

植物に対しては、いろいろな考え方があると思いますが、私自身の植物に対しての考え方、そして最近では、微生物に対してもそうですが、おおむね以下のような考えでここ数年固定されています。

これは、以下の過去記事から抜粋させていただきます。

微生物、植物…。地球上のすべてが人類と共生関係であり表裏一体であるかもしれないことを確認させてくれる「人間と細菌たちの共存=マイクロバイオーム」の概念
 In Deep 2016年1月26日

In Deep の過去記事からの抜粋

昨年、「植物が「緑色」であり続ける理由がわかった…」という記事を書いている時に、「植物がこの世にある意味」というようなことが、おぼろげながらわかってきたのです。

その意味は、おごった意味としてではなく、

「植物は人間のために存在している」

ということです。

「植物は人間のために存在している」というような響きはおごっているように響くかもしれないですが、なぜ、これがおごっていないかというと、

「人間も植物のために存在しているから」

です。

完全な共生。
完全な表裏一体。

それが植物と人間の関係だと認識するようになりました。

そして、今、「微生物もそうだった」ということが、今回のマイクロバイオームについて知ったことで理解できてきたのです。

「微生物(細菌、真菌、ウイルス)は人間のために存在している」

と共に、

「人間は、微生物のために存在している」

とも言えるはずです。

どちらが「上」ということはなく、すべてが共生しているということなのだと理解します。

こういう感じなのですけれど、そもそも、この地球の生命体系というのは、「海にいた古代の藻が、4.5億年前に地上のバクテリアと共生して最初の植物に進化した」ことによって始まり、この時の植物の誕生から他のすべての生命が花開いていったということが、2015年に国際共同研究者たちによって突き止められたのですけれど、これは当時、私は大変に感動したものでした。

海にいて「水のない場所での生活を知らないはずの《藻》」が、地上のアーバスキュラー菌という微生物と「共生する」ことで、

「この地球に最初の植物が誕生した」

のです。当然、この地球には、植物が最初になければ、他の生命の息吹は何も生まれなかったはずです。

4億5千万年前に、「古代の藻と微生物が共生したとき」から、地球のすべてが始まった。

これに関しては、以下の記事でご紹介させていただいています。

https://indeep.jp/plant-earth-human-4-5-million/

さて、この

この地球の生命体系は、植物がいなければ成り立たない

ということがはっきりしたというようなことが、最近の米ネブラスカ大学の研究で明らかになったのです。

それは、地球の歴史上最大の大絶滅があったときに、

まず最初に植物が絶滅していた

ことが判明したのでした。

この地球では、5回の大量絶滅が起きたとされていますが、この研究は、その中で最大の事象であった大量絶滅に対してのもので、以下のような事象です。

ペルム紀末の大量絶滅 – Wikipedia

古生代後期のペルム紀末、P-T境界(約2億5100万年前)に地球の歴史上最大の大量絶滅がおこった。

海生生物のうち最大96%、全ての生物種で見ても90%から95%が絶滅した。

これらの生物種の大絶滅に先駆けて、「まず地球上から植物たちが消えていた」ということのようなのです。

とりあえず、ネブラスカ大学のニュースリリースをご紹介しますので、お読みくだされば幸いです。


Nickel and died: Earth’s largest extinction likely took plants first
unl.edu 2019/02/01

ニッケルと植物の死 : 地球の歴史上最大の大量絶滅は、まず植物から起きたと見られる

大絶滅として知られる地球の歴史上最大の大量絶滅では、当時の地球上にいたほとんどの生命が生き残ることができなかった。しかし、ネブラスカ大学リンカーン校が率いる新しい研究は、多くの動物たちが絶滅するよりずっと以前に、まず植物から絶滅が始まったという強い可能性が見出された。

約 2億2500万年前、地球では、パンゲアと呼ばれる超大陸が激しく大地の分裂を起こしていた。地球内部からはスーパープルームが上昇し、世界各地の火山活動が活発となり、現代のシベリアにある火山群が次々と噴火し始めていた。

その中で、多くの火山の噴火は、約 200万年間ものあいだ、地球上の大気に炭素とメタンを吹き込み、これらの噴火により、海洋生物の約 96パーセントが絶滅し、陸上の脊椎動物の 70パーセントが姿を消した。これは地球の歴史上で最大の大量絶滅だった。

しかし、新しい研究によれば、噴火の副産物である「ニッケル」が、およそ 40万年前にオーストラリアの植物を絶滅させたかもしれないことを示唆している。

ネブラスカ大学リンカーン校の地球大気科学部の教授で、論文の執筆者であるクリストファー・フィールディング(Christopher Fielding)氏は以下のように述べる。

「これは大きなニュースです。これまでも、そのことについての示唆はあったのですが、そのことが具体的に突き止められたことはなかったのです。今回の研究で、地球の歴史がまたひとつ明らかになろうとしています」

研究者たちは、化石化した花粉、岩石の化学的組成と年代、そしてオーストラリア南東部の崖の底から採取した堆積物の層を研究することによって、今回の結論に達した。

研究者たちは、オーストラリアのシドニー盆地の泥岩の中で、驚くほど高濃度のニッケルを発見した。

地球大気科学部の教授のトレイシー・フランク(Tracy Frank)氏は、この調査結果はシベリアのニッケル鉱床を通じた溶岩の噴火を示していると述べる。

その火山活動がニッケルをエアロゾルに変え、そこから、地球上の植物の生命の大部分がニッケルに毒されるほど南に何千マイルも大気中を流れた可能性がある。ニッケルの同様の急増は、世界の他の地域でも記録されたとフランク教授は言う。

フィールディング教授は以下のように言う。

「それは状況の組み合わせでした。そして、それは地球の歴史における5回の主要な大量絶滅のすべてを通じて繰り返しされています」

もし、そうなのだとすれば、確かに、その後の大量絶滅でも、植物の絶滅が先駆けた後に、他の大半の動物たちが絶滅する引き金となったかもしれない。

植物の不足で死ぬ草食動物、そして草食動物の不足で死ぬ肉食動物、そして、毒性の物質が川から海に流れ、結果として二酸化炭素が上昇し、酸性化と気温の上昇が進む。

研究チームはまた、別の驚きの証拠を見出した。これまでは赤道近くの場所で行われることが多かった、この地球上最大の絶滅に関する以前の研究の多くでは、その間に堆積した堆積物の急激な着色の変化を明らかにしていた。

灰色から赤色の堆積物への変化は一般的に、火山活動による灰と温室効果ガスの放出が世界の気候を大きく変えたことを示していると研究者たちは述べていた。

それでも、その灰色 – 赤色のグラデーションは、シドニー盆地でにおいては、はるかに緩やかなものであり、噴火からの距離は当初、他の場所で見られる激しい気温上昇と乾燥からそれを緩衝するのに役立ったことを示唆した。

この 2億2500万年前の大量絶滅の時間的進行とその規模は、地球の現在の生態学的危機を超えたものではあるが、しかし、 2億2500万年前の大量絶滅と現在には類似性がある。

研究者たちは、特に温室効果ガスの急増と種の絶え間ない絶滅の連続が似ているとして、これらは研究の価値があるものになるだろうと述べている。

そして以下のように述べた。

「地球の歴史の中でこれらの大量絶滅事象を振り返ることは、私たちに何ができるかということを知ることができるという意味において意味があります」

「地球の状況は過去にどのように混乱したのか? いったいどんなことがあったのか? そして、その変化はどのくらいのスピードで進んだのか。そのようなことを研究することは、私たちが、『今の地球で何が起きているのか』を知り、研究することの基礎になるのです」

この研究は、アメリカ国立科学財団とスウェーデン研究評議会よって資金が供給され、論文は、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された。


 

ここまでです。

これは簡単にいいますと、当時の大規模な火山活動によって、地球のあらゆる場所において噴火の副産物である「ニッケル」が広がり、それによって植物が消えてしまったという事象が他の生物種の大絶滅に先駆けて起きていたということが、ほぼ確実になったということのようです。

このこと自体も「植物と生命体系の関係」ということについて大きな示唆を与えてくれる重要な研究でもありますが、これは、単に過去の研究ではなく、実際には、「現在の地球と照らし合わせて考えることができること」であることにも気づきます。

記事の中に、以下のような下りがあることがおわかりでしょうか。

しかし、 2億2500万年前の大量絶滅と現在には類似性がある。

という部分です。

そして、この数年に In Deep で書いた記事のいくつかを思い出しますと、

「今もまた、植物が絶滅し続けている時代」

だということが言えるのです。

以下のような記事は、そのタイトルからも、内容がご想像できると思われます。

https://indeep.jp/global-coral-reefs-bleaching-event-and-seaweed-die-off/

https://indeep.jp/phytoplankton-decline-nasa/

上の記事にありますように、現在は「まず海の植物が消えている」ということになっています。

そして、地上のほうですけれど、地上の植物の 80パーセントほどは、「昆虫による受粉によって生きている」のですね。

その昆虫が「壮絶な勢いで消滅していっている」ことを以下の記事でご紹介したことがありました。

https://indeep.jp/75-percent-decline-over-27-years-in-total-flying-insect-biomass/

 

この

> 昆虫類の生息量が過去27年間で75パーセント以上減っている

というのは、ちょっとした「大量絶滅レベル」なのですが、仮にこのようなペースで地球の昆虫が減少していった場合、それに続いて、同じようなペースで、かなりの種類の植物が消えていくということになると思われます。

上の記事から抜粋しますと、昆虫は以下のように激しく減少しています。

2017年10月の米国科学メディアの記事「過去27年間で、羽を持つすべての昆虫類の生息量の75%以上が減少していたことが判明」より

発表された研究論文によれば、すべての羽のある昆虫のバイオマス(ある空間内に存在する生物の量)は、自然保護区域において、過去 27年間で 75パーセント以上減少していたことがわかった。

昆虫は、野生の植物の 80パーセントの受粉を担っており、鳥類の 60パーセントに食物源を提供するなど、自然界の生態系機能に重要な役割を果たしている。(略)

この結果は、それまで報告されていた蝶や野生のミツバチ、蛾などの種の最近報告された自然界での減少と一致している。

しかし、この調査では、特定の種類だけではなく、羽を持つ昆虫の全体的なバイオマスが大きな減少を起こしていることがわかり、事態の深刻さを示している。

研究者たちは、この劇的な減少は、生息地に関係なく明らかであるとしており、天候や、土地の利用状況、および生息地の特性の変化などの要因では、全体的な減少を説明することはできないことも判明した。

この減少は、大規模な要因が関与しなければ説明がつかないことを研究者たちは示唆しており、今後の研究では、昆虫のバイオマスに潜在的に影響を与える可能性のある全範囲をさらに調査すべきだとしている。

このように、現在の昆虫の減少は、

大規模な要因が関与しなければ説明がつかない

というように、個別の要因とは関係なく、あるいは昆虫の種類とも関係なく、とめどなく拡大していています。

 

これらの一連の流れを見ますと、どうしても、

 

「今の地球では6度目の大量絶滅事象が急ピッチで進行している」

 

と言わざるを得ないと思われます。

 

それは、何万年で進行するとか、そういう穏やかなペースのものではなく、「非常に急ピッチ」で進んでいることは、昆虫が「 27年間で 75パーセント減少した」ということからもおわかりかと思います。

おそらくは数十年単位の中で「あっという間に進行する大量絶滅事象」というものが起きていても不思議ではないと思われます。というよりすでに、起きていると言えそうです。

 

今、地球ではさまざまな動物・植物あるいは、あらゆる生命体系がものすごいペースで絶滅し続けていますけれど、根本的な要因はほとんどわかっていません。

ただ、今回の大量絶滅と植物の関係から、「植物が本格的に絶滅し始めたら」その後、速やかに他の生物の大量絶滅も進むと見て間違いないと思われます。

それが今なのかどうかはともかく、現状の生物の絶滅の進行度から見れば、21世紀中にも、恐竜の絶滅以来となる 6度目の大量絶滅が進行して「完遂」にまでいたるかもしれません。