医学や栄養学の世界の考え方が大きく変わりつつある。人間は単独で生きていく生き物ではなく、互いに協調・競合する微生物を内部に秘めた複雑な生態系だと考えられるようになりつつある。(welq via nature)
細菌、真菌、ウイルスなどの微生物は、億年単位で「人類の地球への登場」時のために待機し続けていた
前記事の、
・「体内の微生物は新たに定義された人間の臓器そのもの」だというマイクロバイオームという概念と出会いましたけれど…
2016/01/25
の続きといいますか、まあ実は続いてはいないですが、前回ご紹介できなかったエポックタイムズの「マイクロバイオーム」に関しての記事の翻訳などを含めて、ご紹介します。
このマイクロバイオームというものの概念ですが、アメリカ微生物学会の FAQ(よくある質問)に対しての定義をご紹介しておきます。
マイクロバイオームとは何か? / アメリカ微生物学会
・人間は、人間の細胞(ヒト細胞)と人間ではない細胞(非ヒト細胞)で構成されている
・皮膚や筋肉や血液細胞などのヒト細胞は遺伝子を含み、これはヒトゲノムと総称されている。これらのことについては、私たちは小学生の頃から教えられている
・人間の細胞ではない「非ヒト細胞」は微生物のことで、これらは遺伝物質を用いてエンコードされており、ヒト・マイクロバイオームとして知られている。これについては、私たちは教育では教えられてはこなかった。しかし科学はどんどん新しくなっている
・私たちは、自らの体の中に 37兆個のヒト細胞を持ち、その周囲に 100兆個の微生物を持っている
・微生物細胞には、細菌、古細菌、真菌、原生生物、およびウイルスが含まれる
・その中で、細菌が、ヒト・マイクロバイオームで最も一般的な微生物となる
・微生物は人類が登場する数十億年前から地球上に存在していた
・微生物はどこにでも存在する。土壌、海洋、水パイプ etc…
・地球では何十万もの種類の微生物が発見されているが、人間と関係を持つ微生物は 1,000種類に満たない
・ヒト・マイクロバイオームには、通常、数百種類の微生物が含まれていて、その重さは 1.13キログラムほどもある
・人体の中で最も微生物の量が多く見つかっているのは大腸、小腸、そして胃だ
この中で、これまで In Deep を書く中で、個人的に感動し、またそれらの「運命的なメカニズム」の精緻さに打たれたことを書きましたいくつかの記事の内容と関連している部分があります。
それは、上のアメリカ微生物学会のマイクロバイオームの定義の中にある、
> 微生物は、人類が登場する前の数十億年前から地球上に存在していた
という部分です。
何のことかといいますと、この人間の体内で人間と共生する微生物は、上にもありますように、何百万種と地球に存在するであろう微生物の中の「ほんのごく一部」であるわけですが、「共生」ということは、
「向こう(微生物)も人間がいて始めて生きられる(あるいは本来の生き方ができる)」
という意味かと思います。
その中には「悪者扱い」されているものもあります。
たとえば、胃潰瘍や胃ガンの原因とも言われ、悪名高くなってしまった「ピロリ菌」というものがおりますが、これなどは、ヘリコバクター・ピロリ - Wikipedia によれば、
> 2005年現在、世界人口の40-50%程度がヘリコバクター・ピロリの保菌者だと考えられている。
とありまして、世界人口の 50パーセント近くが保菌者というのは、もう「人類の常駐菌」であるわけで、ピロリ菌が、他の動物の胃などにも感染できるものだとしても、ピロリ菌にとっては、「人間が最終的な宿主であるに違いない」と思える部分があります。
なので、このピロリ菌も敵視ばかりされていますけれど、おそらく、何か人間にとって、とても有用な理由があって胃に住み着いているとも最近は思います。
(そんなこととも知らず、10年ほど前にピロリ菌を除菌してしまって、今は胃にピロリ菌がいない私…。ピロリ菌に申し訳なかったですし、その報いもいろいろと受けているのだと思います)
ピロリ菌はともかく、このような「人と一体化して、人の細胞と共に働いている体内の微生物(あるいは微生物の DNA )のことをマイクロバイオームといっていいのだと思います。
さて・・・・・・微生物が地球上に登場したのはいつか?
普通、「共生」という語感からは「同じよう時期に共に登場し、苦楽を共にする」というイメージがありますが、人類と微生物の関係は、そういうものではなかったようです。
男性と女性の間でさえ、かつて野坂昭如さんは「黒の舟歌」という歌で、
男と女の 間には
深くて暗い 川がある ♪
というように歌っていましたが、人類と微生物の間はどうだったのか。そこには深くて暗い川があるのか。
この微生物の歴史というものにはいろいろな意見もあり、また、地球の年代を計測する際に、よく使われる「放射性炭素」の測定は、絶対的な年代基準測定とならないかもしれないということも最近は言われています。
そのことについて、米国スタンフォード大学の研究者たちの懸念に関してを、6年くらい前に「「太陽からの未知のエネルギー」が地球の科学的測定での年齢を変化させている」というような記事にも書いたこともありまして、まあ、「地球の年齢」というもの自体がどうも曖昧なんですが、それを言い出すとキリがないですので、「とりあえず、地球の年齢は40数億年程度」ということで話を進めますと、化石などから、今から 35億年前などから「微生物は地球にいた」ということが言えそうです。
35億年前のものと見られている微生物の化石
・カリフォルニア大学バークレー校
これらが宇宙からやってきて・・・という話は、パンスペルミア説の話になってしまい、これを含めると、少しややこしくなるおそれがありますので、それについてご興味がある方は、カテゴリーの「パンスペルミア説」などをお探し下されば幸いです。
由来はともかく、地球最初の微生物たちから始まり、次第に多くの微生物で地球は覆われていくわけですが・・・。その歴史の中のどこかで「人類のマイクロバイオームとして、現在、ヒトの体内にする微生物」も登場していたはずなのですよね。
人類が地球に登場するのは、そこから「数億年も数十億年も先」の話なのに、マイクロバイオームとなる細菌たち、あるいは真菌たちは「共生する最終宿主が、ずーーーっと後に登場するヒトであるのに、その登場前からずっと地球にいた」はずなのです。
そして、最近の科学で明らかになっていることは、
「人間は、腸内などの微生物群がいなければ、生存できなかった」
ということです。
それは今もです。
私たちの体内に微生物たちがいるから、私たちは生きていられる。
そういう「人類と共生する微生物たち」が地球にいたからこそ、現生人類は地球に根付いて以来、堂々と地球で生きられている。自然の大災害や戦争や経済混乱が起きても、体内の微生物がいる限り、人類という「群」は一応は絶滅せずに生き続けられる(おそらく今後も)。
さて・・・・・。
このように、
「人類を地球で待ち続けていた生命たち」
ということに関しては、実は In Deep が新しくなった昨年の最初の記事、
・私やあなたはなぜ地球にいられる? それは「4.5億年の藻が植物として地球を支配するため」に上陸したから : 英国の専門機関により初めて解明された「植物はいかにして地球に誕生したか」
2015/10/07
という記事にも、「植物」に関して、ほぼ同じことが起きていた「可能性」を書いたことがありました。すなわち、「植物も地球の初期の歴史から、人類の登場の舞台を作るための DNA のプログラムを持って地球に現れた(あるいは、やってきた)」ということです。
植物、微生物…。あるいは、すべてが人類と共生関係?
地球の歴史の中で、植物は海から陸地へと上がり、ここから「生命の母体としての地球の形成」が始まったわけですが、それは、植物が、いわゆる「サバイバル」で進化したということではなく、
「藻は地上で生きるために他の菌類と共生するための遺伝子を《もともと》持っていた」
ということがわかったのです。
つまりは、何がどうであろうと、海の中の植物たちは「いつかは地上に上がり」、そして、地上を緑で覆い尽くすことが DNA に刻まれていたわけです。
上の記事の結論としては、「藻は最初から地上の植物になるために地球に存在していた」ということで、つまり、
「地球にやって来る前から、植物は、地球の地上で生き延びるための方法をその遺伝子の中に組み込んでいた」
ということでした。
これは植物自身の意志というよりは、「宇宙の寿司」…じゃないや、「宇宙の意志」に属する話かとも思いますが、誰がどうこうしたという話はともかく、すさまじく論理的な「偶然が入る余地のない絶対的な地球環境の進化の歴史」が、数十億年前に決められていたことに驚嘆したのです。
そして、昨年の記事、
・植物が「緑色」であり続ける理由がわかった! そして人間の生活システムの完成は「植物との完全な共生」にあるのかもしれないことも
2015/07/06
という記事で、「植物がこの世にある意味」というようなことが、おぼろげながらわかってきたわけです。
その意味は、おごった意味ではなく、
「植物は人間のために存在している」
ということです。
なぜ、これがおごっていないかというと、
「人間も植物のために存在しているから」
です。
完全な共生。
完全な表裏一体。
それが植物と人間の関係です。
そして、今、「微生物もそうだった」ということが、今回のマイクロバイオームについて知ったことで理解できてきたのです。
「微生物(細菌、真菌、ウイルス)は人間のために存在している」
と共に、
「人間は、微生物のために存在している」
とも言えるはずです。
どちらが「上」ということはなく、すべてが共生しているということなのだと理解します。
さて、しかし・・・。
ならば、人間を苦しめるタイプのウイルスやバクテリアに対して、私たちはどのように向き合ったらいいのか。
たとえば、最近なら、妊婦さんが感染すると胎児に大きな影響が出る可能性のあるジカウイルスなどのことがありますが(最近の地球の記録の記事でもその拡大ぶりについて書きました)、ふと思えば、これに関しても、
・ウイルス、そして「蚊」の意味とは何か?:人類文明に影響を与える可能性のあるジカウイルスの爆発的な感染拡大を前に考えておきたいこと
2016/01/05
という記事で少し書きましたが、ウイルスを媒介する「蚊」というのも、不思議な存在です。
1億年などの歴史を持つといわれている蚊ですが、「 1億年後に出現するかもしれない人類という生命に特化した病気の原因となるウイルスを運搬する術を持っている」ということが、とにかく不思議でしたが、これに関しても、植物や体内の微生物と同じようなものだと理解しつつあります。
それにしても、一体、そういうものには、現実的にどう対処したり考えるべきなのか。
そのあたりは難しいところです。
そんなわけで、前置き的なものが長くなりましたが、エポックタイムズのマイクロバイオームに関しての記事をご紹介します。
記事そのものはビジネス関係のものといっていいかと思います。
そして、単純に「健康関連記事」としても役に立つかもしれない部分などもありまして、例えば、「現代の人間はあまりにも繊維をとっていない」というようなことが体内の微生物の活性化を妨げているかもしれないことや、それらを活性化させる繊維は、生ニンニクとかタマネギとか生ネギなどの、わりとありふれたところにあり、そういうものが、体内の微生物の活性化につながるというようなことも知り、プチ健康オタク知識も増えるというようなことになっています。
いずれにしましても、私たちの体は「常に微生物の DNA と一緒になり働いている」ということを曖昧ではなく自覚できたのはよかったです。
ここからです。
The Next Food Fad Is Coming: Feed Your Microbiome
Epoch Times 2016/01/24
次の食品流行 : それはあなたの持つマイクロバイオームに(栄養を)供給をすること
食品業界は、次世代の「宝の山」の製品の上に座っているのかもしれない。
世界最大の食品会社で働く微生物学者たちは、今なお忙しく、それについての研究開発に取り組んでいる。
私たちのほとんどは、その宝の山というのが何かは聞いたことがないかもしれないが、しかし、それらの新製品についての製品がどのようなものかを推測することはできる。
「ヒューマン・フード・プロジェクト」( Human Food Project )の創設者であり、急速に進んでいる「ヒト・マイクロバイオーム」を含む研究フィールドの第一人者でもあるジェフ・リーチ( Jeff Leach )氏は以下のように述べる。
「今後数年間で、マイクロバイオーム製品の登場により、人々は食品を求めてスーパーの長い商品売り場の通路を歩く必要がなくなるでしょう」
この分野の研究は、たとえば、糖尿病やガン、肥満などのような現代の生活習慣病への治療への観点で驚くべ可能性を見せているジャンルだ。
リーチ氏がこのフィールドの研究に入るキッカケとなったのは数十年前に遡る。
彼の娘が「1型糖尿病」(訳者注:1型糖尿病とは、生活習慣病の糖尿病ではなく、主に子どもに起きる原因不明の難病です)と診断された時だ。
リーチ氏は、すでにグラノーラ・バーを共同開発している。そのグラノーラ・バーは「ヒューマン・フード・バー( Human Food Bar )」という名で、人間の体内のおよそ 100兆個の微生物、それは細菌、古細菌、真菌、原生生物、そして、ウイルスなどに「食糧」を供給するようにつくられた製品だ。
人間の細胞は、37兆個ほどもあるが、そのまわりにいる微生物の数は、その3倍近くにもなる。
マイクロバイオームの見識は、2007年にアメリカ国立衛生研究所に 200万ドル(約 2億4000万円)の補助金が出されたことにより飛躍した。80の研究機関が、サンプルの配列を決定し、マイクロバイオームの研究の基礎が確立していった。
アメリカ微生物学会に頻繁に出される「マイクロバイオームとは何か」という質問への答えは、
「マイクロバイオームは、人間の代謝活性の大きな範囲を担う”新たに発見された人間の臓器”と考えるのが合理的だと思われる」
というものだ。
そして、多くの研究者たちは、今では、食べることにより「私たちのバイクロビオームに供給する(微生物を活性化させるような食べ物を自分で食べる)」ことが可能であることを認めており、あるいは、それを奨励している。
これらの食品製品群が、低脂肪、高タンパク、低炭水化物、低カロリー、低糖であることに加えて、これらは健康な細菌やプロバイオティクス(体に良い影響を与えると考えられている微生物)を取り込むことによって健康な腸を育てる。
腸のための食品
「ヒューマン・フード・バー」は、その典型的な成分であるアーモンド、蜂蜜、レーズン、アプリコットなどと同様に、私たちの微生物に対しての特定の栄養の必要性をターゲットにした有機プレバイオティクス繊維を、アガベイヌリン(訳者注:メキシコの植物。テキーラの原料)として知られる植物と、バオバブ(アフリカなどにある樹の総称)のパウダーから取り入れている。
アガベイヌリン
・Agave Inulin
バオバブは 1,000年も生きることができるアフリカの木で、ビタミンCが豊富な果実をつける。
プレバイオティクスは、非消化性繊維の化合物で、これは、胃腸管の上部を通過して、私たちの微生物のための食品として作用することにより、腸内善玉菌の増殖を刺激する。
神経学者として著名なデヴィッド・パールミュッター博士( Dr. David Perlmutter )のブログによれば、プレバイオティクス(非消化性繊維の化合物)は他にも簡単に見つけ出すことができるという。
たとえば、アカシアガム(日本ではアラビアガム)、生チコリ根、生キクイモなど。あるいは、タンポポの若葉、生ニンニク、タマネギ、生ネギ、生アスパラガスなどだ。
リーチ氏の研究によれば、抗酸化成分および可溶性繊維が多く含まれるバオバブの果実は、タンザニアの狩猟採集民ハッザ( Hadza )の人々が食べていることがわかった。
ハッザの人々は、野生の果物や蜂蜜をとり、弓と矢で動物を撃って生活しているが、彼らは5万年ほどの間、このように生活してきたと推測されている。
ヒューマン・フード・プロジェクトの一環としてリーチ氏は、ハッザの人々のマイクロバイオームの多数のサンプルを取った。
そして、ハッザの人々のマイクロバイオームのそれと、近代的な生活をしている私たちとの差に、リーチ氏は魅了された、そして、そこから何を学ぶかを学習した。
リーチ氏は言う。
「おそらく、人間の食事の歴史の中でのあまりにも大きな変化は、繊維の摂取量の低下があると思われます。これは、文字通り、微生物たちを飢えさせています」
リーチ氏によれば、アメリカ人の平均的な繊維の摂取量は1日 20グラム未満だが、ハッザの人々は、1日 50グラムから 200グラムの繊維を摂取していた。
ヒューマン・フード・バーは、マイクロバイオームに供給することを目的として、9グラムの繊維が入っており、うまくいけば、体を健康の方向に微調整することができるとしている。
ヒューマン・フード・バーは現在、オンラインでのみ販売されており、ハッザなどの先住民族と活動する組織の 15万人の申し込み者などに販促されている。
このバーからの収入は、より多くの研究に資金を供給するために使用されることになる。
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