・増加する「GOING OUT OF BUSINESS (廃業)」のメッセージ。タイ・バンコク。Chiangrai Times
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拡大する無慈悲
最近ずっと思っていたことに「ポストにチラシが全然入れられなくなった」ということがあります。
私の住むあたりは、いわゆるベッドタウンと呼ばれる場所でして、以前は、マンション販売を筆頭にした不動産関係の宣伝がたくさんポストに入れられていまして、それに加えて、小学校から高校まで学校が多いために、塾などのチラシもとても多かったですし、定番の食事のデリバリーなどを含めて、本当に毎日たくさんのチラシがポストに入れられていました。
美容院とかジムとかパチンコ屋さんなんかのものもよく入っていました。
それらが、今はまあ、見事に減りました。
「数日間一枚も入っていない」
という日もあります。
こうなりますと、さびしいもので、よく「チラシを入れないで下さい」と、ポストに貼ってある世帯を見たりしますが、私などは、「チラシ歓迎します」と紙を貼りたくなります。
これが景気的な問題によるものなのか、地域的な理由のようなものなのかよくわからないですけれど、現実として極端にポスティングが減りました。
このポスティングの仕事をしているのは、このあたりでは、たいていは高齢の男性でして、ヨロヨロと自転車でチラシを運び、ヨロヨロとチラシを入れている姿は、なかなか大変そうで、どちらかというと嫌われやすいポスティングですけれど、疲れた顔をしてチラシを入れているご老人を見ると、つい「ご苦労さんです」と言ってしまいます。
しかし、今はチラシそのものが入っていないので、そういう人たちの姿を見ることもほとんどなくなりました。
「あの人たちも今、仕事ほとんどないんだろうなあ」と思うと、それはそれで心配な面もありますけれど、それはともかくとしても、新型コロナウイルスによるパンデミックでの準ロックダウンや緊急事態宣言などの影響は、当初、飲食を筆頭としたサービス業から始まりましたけれど、しかし、今書いたポスティングはささやかなものですが、
「お店がひとつなくなれば、そこから別の業種に影響が波及していく」
というのはある程度は当然で、この世は、仕入れから情報伝達、チラシのデザインをする人や、お店の看板を作ったり、お店を改修する業務など、ひとつの小さな店舗でも、影響を与える業種は多岐にわたるはずです。閉鎖や破綻が複数にわたれば、その影響は波状に拡大していくと思われます。
そして、そうなるまでには、ある程度の時間がかかるものだと思われます。
それに関しては、先日の以下の記事で取り上げさせていただきましたニューヨークの人気レストランの経営者もそのように語っていました。
ニューヨークからすべてのレストランが消える日… : 同時多発テロの直後にレストランをオープンして繁盛店にしたオーナーからの「閉店の挨拶」に思うこれから
投稿日:2020年9月12日
そんな中で、日銀の以下のような発表を聞きました。
日本の景気の現状判断について、日銀は、
「景気は持ち直しつつある」
と述べていました。
これは、「日銀、金融政策の現状維持を決定 輸出・生産回復で景気判断を前進」(ロイター 2020/09/17)という記事にありますが、これを聞きまして、「おいおい」と思った方は多いのではないでしょうか。
もちろん「その通りだ」と思われた方もいらっしゃるのでしょうけれど、どちらかといいますと、多数は「おいおい」と感じられるような気もします。
毎日、ニュースの見出しを見るだけでも、以下のようなことが伝えられます。
・カラオケ業界が「もう限界」 閉店500店超す (朝日新聞デジタル 2020/09/16)
・時短解除も客足戻らず 都心の酒場 (中日新聞 2020/9/16)
・USJ 客足戻らずバイト削減 (時事通信 2020/09/16)
・成田空港ターミナルビル12店閉店 行列の人気店も (毎日新聞 2020/09/15)
・コロナ禍、京都清水寺周辺の名店が続々閉店 (まいどなニュース 2020/09/11)
こんなようなニュースが、毎日毎日、小さくどこかで報じられ続けているのですけれど、日銀は「景気は持ち直しつつある」 と。
それぞれの国の大きな経済指標や、数値が仮に上向いていっているとしても、「個別の案件は今後さらに壊滅的になってく可能性」が、いたるところに示されています。
日銀などの組織は「数字」しか見えていないのかもしれません。そこには「人間はいない」と思っている。
この世というのは、いろいろな人たちが、いろいろな仕事をしながら、お互いに影響して生きているのです。日銀のような人たち、あるいは政府の人たちというようなものもそうかもしれないですが、そういう人たちは、その根本的な社会のシステムを知らないで、教育を受けて大人になってしまった人たちなのだと思います。社会を動かしているのは「数字」だと信じている。
強力なロックダウンをおこなった世界の各国では、さらに深刻で、今年の 5月に、ヨーロッパのロックダウンによる経済への影響を以下の記事で書かせていただいたことがありました。
ヨーロッパの統計が明らかにした「ロックダウンの無意味さ」。しかし、失われたさまざまはもう戻らない
投稿日:2020年5月21日 更新日
この記事には以下のように書かれています。
今の世界は全体がお互いに経済で影響し合っているために、本当の影響の数値は、今後時間の経過と共に出てくると思われます。つまり秋から冬にかけて大きくなり、その後、来年あるいは再来年とさらに影響が拡大しそうです。
ここには、
> 今の世界は全体がお互いに経済で影響し合っている
と書いてありますが、これを「国内」として言い換えれば、
「異なる業種全体がお互いに経済で影響し合っている」
ということになり、そして「本当の影響の数値は、今後時間の経過と共に出てくる」ということは同じだと思います。
景気というか、個々の仕事や生活は、時間と共に回復するのではなく、時間と共に影響が拡大すると考えるのが合理的ではないでしょうか。
そのようなことを示すアメリカの最近の調査結果が、さまざまなメディアで報じられていましたので、ご紹介したいと思います。
これは、アメリカの「ビジネスの閉鎖状況」が時間と共に悪くなっていっていることが示されたものです。
7月より、さらに 8月のほうが閉店、破綻、営業終了が増えているのです。
米 NBC ニュースの報道です。
ここに出てくる Yelp というのは、アメリカ最大のビジネスレビューサイトのひとつで、 1ヵ月の訪問者が 1億人以上のサイトです。
現在まで再開されずに閉鎖している事業のほぼ 60%が、その閉鎖が永続的なものになることを新しいデータは示した
Almost 60 percent of business closures are now permanent, new Yelp data shows
NBC NEWS 2020/09/16
米ローカルビジネスレビューサイト Yelp は 9月16日、最新の経済レポートを発表した。レポートは、新型コロナウイルスの世界的流行の経済的犠牲の結果として、アメリカ中の事業閉鎖が拡大していることを明らかにした。
8月31日の時点で、16万 3,735の事業が閉鎖したことを Yelp に表明しており、これは 7月中旬から 23%増加している。
Yelp はまた、閉鎖が恒久的になった(二度と再開されない)ビジネスを集計した。この数は過去 6か月間で着実に増加しており、現在は、9万 7,966に達している。これは、現在までに再開されていないビジネスの 60%に相当する。
Yelp のデータによると、全体として、ビジネスの閉鎖は増え続けており、7月中旬の前回のレポート以降、永続的な閉鎖は 34%増加した。
Yelp は、ビジネス危機の始まりを今年 3月1日からと見なしており、約半年後の結果がこのようなものとなったことになる。
中小企業の多くが大きな打撃を受けたが、しかし、その中でも、造園業者、請負業者、弁護士などの家庭を対象とするサービスや専門家によるサービスは、衣料品店や家の装飾ビジネスなどよりも、閉鎖率がはるかに低くなっている。
自動車に関するサービスも比較的低い閉鎖率だった。
過去 6か月間、パンデミックによる制限により、最も大きな打撃を受けたのは、レストラン、バー、ナイトライフ関係の事業だ。8月31日の時点で、3万 2,109軒のレストランが閉鎖されたままだ。完全な閉鎖を余儀なくされたレストランの数は、その中の 61%となっている。
Yelp の担当者は、今後数週間および数か月間のアメリカの政策変更と決定は、これらのビジネスの閉鎖が恒久的になるかどうかに影響を与える可能性があると指摘している。
バーやナイトクラブも、パンデミックの影響を大きく受けている。恒久的な閉鎖の率は 7月以来 10%増加し、現在 54%だ。
小売業は 7月以降、恒久的閉鎖の同様の増加を経験し、10%増加し、合計 58%となった。
また、このレポートは、美容ビジネスの恒久的閉鎖の月ごとの驚くべき増加を示していた。アメリカの美容ビジネスは、 7月より約 42%多く、そのビジネスを完全に閉鎖した。
州によって閉鎖の度合いも異なる。
各州の閉鎖率を見ると、ハワイ州が最も大きな打撃を受けており、カリフォルニア州、ネバダ州、アリゾナ州、ワシントン州と続く。ハワイ州は観光に大きく依存しており、7月の失業率は 13%だった。
最終的に、Yelpのデータは、非常に多くの部分のビジネスが、依然としてパンデミックの経済的影響を感じていることを示しており、多くの州やビジネスの分野で、すぐには回復が見られない可能性があることを示している。
ここまでです。
Yelp は、「事業の閉鎖が落ち着く時期を予測することはできない」と述べています。
なお、この記事の中に「ハワイが最も閉鎖率が高い」とありますが、9月15日には、以下のようなタイトルの報道がありました。日本語の記事です。
・ハワイ:新型コロナの影響で人気レストラン50店舗以上が閉店 (My ハワイ 2020/09/15)
かなり大きな数だと思います。
ところで、そのハワイ。
「今もなおロックダウン中」であるということをご存じでしたか?
以下は、9月9日の報道からです。
ホノルル市長、オアフ島のロックダウンを延長
9月8日、ホノルルのコールドウェル市長は、現行のステイ・アット・ホーム・オーダー(外出禁止令)を2週間延長することを発表しました。これにより、当初9月9日までとされていた外出禁止令は、9月23日まで施行されることになります。
この期間、必要不可欠とみなされるビジネスの営業のみ制限付きで許可されます。託児施設、建設業、医療機関、教育機関、宗教などのビジネスが含まれます。
一方で、当該カテゴリーに属さない不要不急とみなされるビジネスは、レストラン、小売店、理髪店や美容室、マッサージ、スパ、洗車サービスなどのパーソナルサービス、スポーツジムなどで、これらは営業が許可されません。レストランではテイクアウトのみ可能です。
今回の規制ではすべての集会が禁じられます。 (My ハワイ 2020/09/09)
なお、この報道の締めは次のようなものでした。
オアフ島の2度目のロックダウンにより、さらなる解雇が相次ぎ、中小企業はいつまで経営を継続できるかなどの懸念が高まりました。州当局は公共の健康を考えると犠牲は仕方がないと述べています。
ここに、
> 公共の健康を考えると犠牲は仕方がない
という当局の談話がありますが、ハワイもまた「人命尊重の方法の意味を履き違えている」ことが見てとれます。今の状態では、ハワイでは、さらに失業率が増加することが確実であり、そして「当局からの援助はいつか止まり」ます。このことが将来的な人命の毀損につながっていかないわけがない。
なお、海外からのハワイへの旅行が再開されるのは、こちらによりますと、10月1日からのようですが、しかし、「旅行者全員に PCR 検査義務」があるそうです。
さわやかなハワイの風の中で、いつもマスクをして歩かなければならず、ビーチには行けるけれど、仮に今のままの状態でレストランもバーもジムもすべて閉鎖中……というような観光地には、仮にハワイ観光が再開されたとしても、進んで行く人は少ないのではないでしょうか。
しかも、先ほど書きましたように、それまであったハワイのさまざまな人気レストランが閉店している状況では、観光地として復活するのにどれくらい時間がかかるのか。
どこでもわりと同じようことになってはいるようで、タイは昨年以来のビジネスの閉鎖が 40%急増したと報じられています。しかし、これで止まるのではなく、調査したタイ「サイアムコマーシャル銀行」傘下の調査会社である経済情報センターは、
「タイにおいての事業閉鎖は、下半期にさらに数値が上昇すると予測している」
と声明を出していました。
つまり、「これからが本番」ということであり、多くの国や地域が同じようなことになっていくと思われます。
もはやレミングの集団と化しているような…
昨日、JR の駅の構内を歩いていましたら、今ではどこでも流される「新型コロナウイルスに関してのお願い」というようなアナウンスが流れていたのですけれど、
「テレワーク等をご活用されることにより……」
というようなことを述べていました。
つまり、「できれば、あまり電車を利用しないでほしい」と言っているわけです。JR 自らが。
「そうか、乗ってほしくないのか」と思いながら家に帰り、その後、家で見ましたのが、以下のふたつの報道でした。
・JR東日本、4180億円の赤字 21年3月期予想、民営化後で初 (共同通信 2020/09/16)
・JR西、2400億円赤字へ 21年3月期、過去最大の赤字幅 (神戸新聞NEXT 2020/09/16)
それでもなお、「できるだけご利用をお控えいただいて…」と言うようにするしかなくなっている。
そんなこと言いたいわけがないのに。
スーパーなどでも今は、「できるだけお一人で」とか「混雑した時間帯を避けていただき」等の文言がアナウンスされることが多く、つまり「できれば当店に来ないでほしい」というようにもとれるアナウンスをよく聞きます。
ひねくれた人なら、「じゃあ、もう貴店には行かないようにします」と思う人もいるかもしれません(私ですが。行くスーパーの選択肢が減ってしまいました)。
もちろん、このアナウンスだって本心であるわけがないことはわかるのです。
日本には「自分で自分の首を絞める」というような表現があり、これはどの国にもある程度同じ表現があるようですが、さまざまな国や地域の多くの業種が、そのような状態となっているように見えて仕方ありません。
レミングの群れ…というような言葉も思い出します。
もちろん、誰も海に向かって突き進むレミングになりたいわけではないのに、海に走り続けなければならなくなっている。誰かに操られているように…。
まるで、レミングの調教師がどこかにいるような世界です。
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