「我々はこんなことを繰り返してはいけない」
ヨーロッパやアメリカの多くの国では、次第に緩和されてきているとはいえ、ロックダウンや移動の制限などが続いています。
そして、ロックダウン開始から約2ヶ月程度と、ある程度の期間が過ぎたこの数日間、欧米のさまざまなメディアでは、
「ロックダウンとは効果のある対策だったのだろうか」
という内容の「ロックダウンの検証」記事が多くなっています。
私自身は、日本程度の自粛政策でも悪影響しかないと思っているひとりですが、アメリカやヨーロッパの厳格なロックダウンなどは、「人間の健康の保護のためには論外の政策」だと今も思っています。
そもそも、「外に出ない」という生き方がどれだけ不健康なことか。
内容までは書かないですけれど、以下のような報道のタイトルだけでも、太陽に当たらない生活がどれだけ感染症対策に良くないことかおわかりになるのではないでしょうか。太陽は「有効な」ビタミンD を人の体内に作ります。経口のビタミンD摂取は副作用とせめぎ合うほど大量に飲まないと効果的ではないのです。
・巣ごもり、骨が危ない ビタミンD 不足注意 短時間の日光でも必要量 (毎日新聞 2020/05/20)
・【新型コロナ】重度のビタミンD欠乏で死亡率2倍か 米研究報告 (Yahoo ニュース 2020/05/10)
基本的にビタミンDは、太陽光とセットアップしないとあまり意味がありません。
それだけではなく、太陽光は、メラトニンやセロトニンといった重要なホルモン分泌をコントロールしています。これをできるのは「太陽だけ」なのです。長時間、太陽を浴びないということは、考えられないほど危険なことなのです。
ついには、アメリカのニューヨーク州では、
「新型コロナが重症化しているのは、家から出ていない人たちばかり」
だという事実を、ニューヨーク州のクオモ知事が述べた報道までされていました。以下はその報道の概要です。
新型コロナウイルスで入院した人たちのほとんどは、ステイホームしていた人たちであることは衝撃的だとクオモ知事は言う
アンドリュー・クオモ知事は、5月6日、ニューヨーク州での新型コロナウイルスによる新しい入院患者のほとんどは、家にのみ滞在し、ほぼ外出せずにいた人々だと語った。
データは、約 100のニューヨーク州の病院からの約 1,000人の患者を含むものだと知事はブリーフィングで述べ、そして、このデータは、新しい入院患者の 66%が、自宅で待機していた人々であったことを示している。次に数が多い入院患者たちは、老人ホームの 18%だった。
数字としては、
・18%が老人ホーム
・1%未満が刑務所
・2%がホームレス
・2%が集会施設
・66%が自宅待機していた人たちだった。
このことについて、知事は「衝撃的だ」として、このように述べた。
「入院患者のほとんどが家にだけいた人たちだったのです。その人たちが公共交通機関を利用したのではないかとも考えましたが、彼らは公共交通機関を利用していなかったのです。これらの人々は文字通り家の中だけに滞在し続けていました」
言われるままに家から一歩も出なかった人からどんどん悪化していったというのがニューヨークでの事実でした。
これは世界中どこでも同じだと思われます。
ロックダウンの最大の難点はこの「健康に悪い」という点です。
どこからどう合理的に考えても、そうとしか言えない。
精神衛生的な面からもです。
しかし、以下の記事に書きましたように、ロックダウンされている方々の多くが、「それが望ましい」と考えているようで、それなら、どれだけ健康に悪かろうと構わないのかもしれないとも思います。
2020年の生活 : コロナウイルス下の世界の光景と現実をもはや呆然と眺める
投稿日:2020年5月18日
この記事では、イギリスでの 5月はじめの世論調査で、「イギリス人の約 90%が新型コロナウイルス対策としてのロックダウンを続けるべきだ」と回答したことが示されています。
それならもう仕方ないわけですが、この理由は、おそらく多くの人たちが、
「ロックダウンには感染拡大と死者数の増加を抑止する機能がある」
と考えていることから来ているのだと思いますが、この数日間、欧米の多くのジャーナリズムで示される数値とデータは、
「明らかに効果を否定している」
ものでした。
少なくとも「ロックダウンの強い有効性は見出せない」のです。
今回は、まず、米ブルームバーグが、ヨーロッパのロックダウンを検証した記事をご紹介します。
もうひとつ、先ほど英国の世論調査にふれましたが、その英国の「ロックダウンの影響」について記された記事をご紹介します。
まずは、ヨーロッパのロックダウンを検証した記事からです。
ヨーロッパの「ロックダウン実験」の結果がこれだ
The Results of Europe’s Lockdown Experiment Are In
bloomberg.com 2020/05/20
ヨーロッパ各国の政府が、新型コロナウイルスの発生を制御するために取ったさまざまな方法を振り返り、それらがいかに効果的な方法であったかを確認することは、今後、国家の経済活動を再開するために必要なことだ。
下のグラフは、英オックスフォード大学によって行われたヨーロッパの規制の相対的な厳しさを示している。
さまざまな基準を追跡し、各段階でどれほど厳格に制限がおこなわれたかを評価している。
対策への反応の時間(いかに素早く対応したか)
各国で行われた決定が正しいものであったかどうか、あるいはそれがどれだけ厳密に守られたかについては結論を出せる段階ではないが、この分析は、ウイルスを封じ込めるための各政府の戦略の「意味」を写すものではある。
ヨーロッパの中で、「最も早くロックダウンを開始した」国はイタリアとスペインで、特に素早い対策に出た。一方で、そうではない国もあり、特にスウェーデンは、他の国と比較するとはるかに緩い対策を選択している。
ポルトガルとギリシャは、もともと感染者数は比較的少なかったが、ロックダウンを選択した。そして、ヨーロッパの中で最も厳格なロックダウンを国民に課したのは、フランスとイギリスだった。
次に示すグラフは、各国の行動規制やロックダウンの厳格さと、その対策が過剰な死亡者数を抑制できたかどうかを、通常の全体の死亡数傾向と比較した指標で示したものだ。
このグラフを見る限り、対策の厳しさと死者数の間にはほとんど相関関係が見当たらない。
以下のグラフでは、青いラインを超える死は、通常と比較して「過剰死」となる。
以下は、比較的過剰死のある(平年より死者が多かった)国だ。
以下は、過剰死が比較的少ない(平年より死者が少ない)国だ。
これらのグラフが示すように、ヨーロッパでは、死者の数に関して、およそ3つのグループの国が出現していたことがわかる。
英国、オランダ、スペインを含むグループは、非常に高い過剰死亡率を経験している。
そして、スウェーデンとスイスを含むグループも、通常よりもはるかに多くの死者を出しているが、英国、オランダ、スペインの最初のグループよりは、はるかに過剰死は少ない。
ギリシャやドイツなど、死亡が通常の範囲内にとどまる国もあった。
しかし、この過剰死のデータは、各国の封じ込め措置の相対的な厳格さは死亡率と関係がないことを示しており、つまり、上記の 3つのグループのいずれの国民にも対策の厳格さはほとんど影響しなかったことを示している。
ドイツはイタリアよりもはるかに穏やかなロックダウンを施していたが、ドイツの死亡率はイタリアよりはるかに低く、ウイルスを封じ込めることに成功しているといえる。
全体的な印象としては、ロックダウンと移動の制限は、新型コロナウイルスの蔓延を阻止するためな必要な対策と見なされていた。
しかし、いくつかの国にとっては、感染初期の準備と豊富なヘルスケアのリソースがあるために、厳格なロックダウンを行う必要がなかった面もある。たとえば、ドイツは、近隣諸国よりも優れた試験方法と連絡先の追跡、および集中治療室を備えているため、ロックダウンを緩くすることが可能だった。
当然のことなのかもしれないが、ロックダウンを最も激しくおこなった国は、最も経済的に苦しむことになるようだ。欧州経済の統合された貿易主導の性質を考えると、比較的緩いロックダウンをおこなった国々が実際にどれだけの経済的利益を得られるかはまだわかっていない。
たとえば、輸出主導型のスウェーデン経済は今年 7%縮小する見通しだと政府が発表している。パンデミック前にすでに経済が縮小していたドイツは、すでに不況の中にある。
ロックダウンの経済的苦痛
データは、新型コロナウイルスへの対応が厳しい国は、経済的にも苦しんでいることを示している。
このようなロックダウン期間の経済データは、数値として表示されてはいるが、パンデミック中に正確な経済データを収集することは明らかに困難で、それを考慮すると、ロックダウン期間の経済データの数値は、今後大幅に改訂される可能性がある。
いずれにせよ、過去数か月が示唆していることは、経済的コストだけが過酷なロックダウンのマイナス面ではないということだ。
新型ウイルスのパンデミックの経験から、私たちが学ばなければならないことは、最も厳格な暴力的なロックダウンに依存するだけではなく、適切なテクノロジーと大規模な試験と追跡を使用して、迅速かつスマートに対応する方がはるかに優れていることがこのデータは示している。
仮に、新型コロナウイルスの流行の第二波があった場合、我々は最初のこのような誤りを繰り返すべきではない。
ここまです。
イギリスの経済への影響がはっきりしてきましたので、そのことを伝えていた報道をご紹介して締めさせていただきます。
アメリカのデータはよく見ていましたが、イギリスの正確なデータを見るのは、これが初めてです。アメリカと同様に悲惨なものとなっています。
レイオフと失望の波の中で、英国の労働者たちは苦しんでいる
Furloughed and Frustrated, Workers Are Struggling Across the U.K.
bloomberg.com 2020/05/20
英国の失業者と不完全雇用者による給付金請求は、4月に記録的に増加し、国中に苦しみが広がっていることがわかった。求職者たちの手当および関連するユニバーサルクレジットの請求は、4月だけでも 85万6500件増加した。
2008-09年の金融危機(リーマンショック)の最悪の月の同様の数値の増加は、14万3000件だったことを考えると、途方もない数といえる。
英国が公式にロックダウンを開始したのは 3月23日だったが、それまでにも、政府は、国民を保護するために「家に留まる」ように通告していた。店舗はすぐに閉鎖され、サプライチェーンが遮断された。多くの企業の収入源は枯渇し始め、労働者たちは労働時間を短縮し、あるいは解雇、レイオフされた。
ロックダウン後の 2週間で、英国のユニバーサルクレジットの福祉支払いの請求は合計で 550,000件を超えた。通常の週では、約 50,000件だ。
地域的には、観光に依存している英国の地域が給付請求の最大の増加を見ている。
税務記録に基づくデータは、4月の英国の従業員数は、ほぼ 2%減少したことを示唆している。
ブルームバーグエコノミクスによると、1月から 3月の間の英国の失業率は 3.9%だったが、今四半期は 7%以上に急上昇する可能性がある。
毎日、数千人もの新型コロナウイルスの確定例が確認されているにもかかわらず、英国は、ロックダウンから脱出して経済の再開を始めている他のヨーロッパ諸国に追いつこうと試みている。
ここまでです。
この英国の「産業別のダメージ」は、おそらく、日本にもある程度は当てはまるものになるのかもしれません。
英国では以下のような産業が特に強い影響を受けていたようです。
・観光
・飲食店
・アート、エンターテイメント
・娯楽全般
・建設
こういう業種では、英国では、半数程度の従業員が一時解雇されているようです。
今の世界は全体がお互いに経済で影響し合っているために、本当の影響の数値は、今後時間の経過と共に出てくると思われます。つまり秋から冬にかけて大きくなり、その後、来年あるいは再来年とさらに影響が拡大しそうです。
各国では、「訪問者の異様な減少」も報じられていまして、日本の 4月の外国人訪問者数は「前年比 99.9%減」だそうです。
・訪日外国人数4月は99.9%減、コロナ禍で過去最少の2900人 (ロイター 202/05/20)
今後、仮にパンデミックが収束したとしても(しなくても)、先になればなるほど影響が強く出ていく状況となっていくことは避けられなさそうです。
私自身は、2025年が現世の節目だと考えていますが、それに向けて過激な時代が始まりそうです。
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