地球の最期のときに

「なぜ氷は滑るのか?」あるいは「なぜ水は凍るのか?」という理由が今でも科学の世界では決着がついていないことを知り驚きつつも「雨も氷も微生物がいなければ成立しない」ことを改めて思い出す



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科学は(今のところ)わからないことばかり

ブログなどを書き始めたこの十数年で知ったことのひとつとしては、

「すでに誰もが知っている既知の科学知識だと思っていたことの多くが実はまだわかっていない」

ということでした。

たとえば「」。

雲がどのように生成されるかなんてのは、すでにグリグリに解明されていることだと思っていたのですが、2011年に欧州原子核研究機構 (CERN )が、「宇宙線が雲を作るメカニズムの一部を解明した」という報道を見たのでした。

つまり、この 2011年という年代まで「雲はなぜ生成されるのかわかっていなかった」ことになります。

その後、デンマーク工科大学のヘンリク・スベンマルク教授という存在を知り、この人が 25年間(2016年の時点で)にわたって、雲と宇宙線の関係を研究し続けていたことを知ります。

以下の記事などにあります。

スベンマルク博士の異常な愛情が今ここに結実 :「雲の生成は宇宙線によるもの」という説が25年にわたる観測の末に「結論」づけられる。そして、太陽活動が長期の地球の気温のコントロールに関与していることも
In Deep 2016年8月29日

今でも、全面的な科学界での意見の一致はないとは思いますが、少なくとも、雲の生成に「最も大きく関与している」のが宇宙線だということが、明らかになってきています。

あとは、

「なぜ飛行機が飛ぶのかいまだによくわかっていない」

ということも、2013年のこちらの記事に書いたことがあります。

これは、米フェルミ国立研究所の物理学者デビッド・アンダーソン博士と、ワシントン大学の航空力学専門家スコット・エバーハート博士が共著した『 UNDERSTANDING FLIGHT 』(飛行の理解)という本に記載されているもので、端的にいえば、「飛行機がなぜ飛ぶかは、いまだにわかっていない」のですが、

「飛ぶ理由はわからなくとも、航空力学は存在し、そのシミュレーションも完ぺきにおこなえる」

というのが現代の構造となっています。

つまり、飛行機が飛んでいるという理由については「仮説以外は存在しない」のです。

これについては、竹内薫さんという方の『99.9%は仮説』という著作でもふれられていると思います。

飛行機がなぜ飛ぶかわかっていない、という話を聞いたときには、さすがに「そんなわけねーだろ」と思っていましたが、各種の「仮説」以外には存在せず、しかも、どの仮説でも完全には説明できないのだそう。

科学の新しい発見というものは結構ありまして、たとえば、「この世で一番完全な球体は何?」と聞かれた場合、何だと思われるでしょうか。

「この世」というか、私たちを取り囲んでいるものの中で…となりますと、これがまた、

「太陽」

「電子」

なんです。

これは、別々の発見で、それぞれ以下で取りあげています。どちらも十数年前の記事です。

私たちの太陽が「宇宙の中で最も完全な球体」であったことが判明してショックを受ける科学者たち
In Deep 2012年8月18日

 

電子は「宇宙に存在するものの中でもっとも丸い存在」だった : 英国の研究者たちの10年間に渡る執念の研究が突き止めた「宇宙の奇蹟」
In Deep 2011年5月27日

 

私たちの周囲で「最も大きな存在のひとつ」である太陽と、「最も小さな存在のひとつ」である電子が、この世で最も完全な球体を持っているのです。

上記の太陽についての報道より

太陽の赤道付近の膨らみの部分の正確な計測値が出た時、科学者たちは、その数値が自分たちの考えていた数値と違うことにすぐに気づいた。クーン博士は「ショックを受けました」と言う。

太陽の直径は 140万キロメートルだが、赤道付近の幅の違いは、たったの 10キロメートルだったのだ。

これは、太陽を直径 1メートルのボールと置き換えて考えると、赤道付近の東西と南北の直径の差が、1700万分の 1メートルしかないということになる。

これは、私たちの太陽がこれまで計測されたあらゆるものの中で最も丸い物体だということがわかったことになり、そのことに天文学者たちは驚いている。

 

上記の電子についての報道より

英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、電子の形について、これまででもっとも正確な計測を施した。そして、その結果、電子がほぼ完全な球形であることが判明した。

その亜原子粒子が 0.000000000000000000000000001センチメートル未満の、ほぼ完全な丸であることが確認されたのだ。

これは、言い方を変えれば、電子を「太陽のサイズ」にまで拡大したとしても、その円形の誤差の範囲は髪の毛一本の中に収まる程度の誤差となるほどの完ぺきな円であることを意味する。

こういうこともわかったのは、ついこの十数年の間のことです。

そして、最近、「ふたつの解明されていないこと」を知るに至ったのでした。




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「氷はなぜ滑るのか?」あるいは、そもそも「なぜ氷は生成されるのか?」は実はよくわかっていない

この見出しの通りですが、最近、科学メディアの Quantaマガジンで、

「氷はなぜ滑りやすいのか? 新たな仮説が登場」

というタイトルの記事を読んだのです。

「新たな仮説」とありますように、何と、「今の科学では、氷がなぜ滑りやすいのかわかっていない」のでした。

記事にはこのようにあります。

> 氷がなぜ滑りやすいのかという、一見単純で何世紀も前からの疑問の解明に、今、私たちは確実に近づいている。

今のところは、わかっていないのです。

ただ、この記事は、そのまま翻訳しても、かなり内容が難解なもので、これまでの仮説と今回の仮説だけを挙げますと、以下のようになります。

仮説1:圧力 (1800年代半ばに登場した理論)

氷の上を歩くと圧力によって表面が溶け、滑りやすくなると提唱した。しかし1930年代、ケンブリッジ大学物理化学研究所のフランク・P・ボウデンとTP・ヒューズは、圧力融解説に疑問を投げかけた。彼らは、平均的なスキーヤーが氷の融点を大きく変えるには、圧力が小さすぎる。氷の融点を大きく変えるには、スキーヤーの体重は数千キログラムも必要となるはずだ。

仮説2:摩擦 (1930年代に登場した理論)

ボーデンとヒューズは、水の層の形成について別の説明を提唱した。それは、水に対して滑る何かによって生じる摩擦熱によって水が溶けるというものだ。研究チームはスイスアルプスの人工氷洞で、氷と他の物質間の摩擦を測定するための複雑な装置を用いて、この理論を検証した。

…この説明は今でも教科書に載っているが、多くの科学者はこれに異議を唱えている。「この説明の問題点は、スケートをしている自分の後ろの氷しか溶けないということだ」とアムステルダム大学の物理学者ダニエル・ボン氏は言う。氷は、摩擦熱を引き起こすような動きが起こる前、つまり踏んだ瞬間から滑りやすくなることがある。

仮説3:前融解(1842年に登場した理論)

何かが氷に接触する前から氷の表面が濡れているという説。イギリスの科学者マイケル・ファラデーは、二つの氷が触れ合うと凍りつき、温かい手でさえ氷にくっつくことを観察した。彼はこの現象の原因を、氷の露出した表面に薄い融解層があり、それが覆われると再び凍るためだと説明した。

ファラデー自身もこの現象を説明できず、チャールズ・ガーニーをはじめとする他の科学者が解明するまでにほぼ 1世紀を要した

仮説4:非晶質化(最近登場した理論)

最近、ドイツのザールラント大学の研究チームは、これら 3つの有力な説すべてに反論する論拠を明らかにした。まず、氷の表面を溶かすほどの圧力がかかるには、例えばスキー板と氷の接触面積が「不当に小さい」必要があると彼らは述べている。(略)

科学者たちは、ダイヤモンドなどの他の物質の研究から別の説明を探した。宝石研磨師たちは、ダイヤモンドの面によっては他の面よりも研磨しやすい、つまり「柔らかい」面があることを長年経験から知っていた。

2011年には、別のドイツの研究グループが論文を発表した。この現象を説明するために、研究者たちは 2つのダイヤモンドが互いに滑り合うコンピューターシミュレーションを作成した。表面の原子は機械的に結合から引き抜かれ、移動したり、新しい結合を形成したりといった動きが可能になる。この滑りによって、構造のない「アモルファス」層が形成される…。(略)アティラ氏とその同僚たちは、氷でも同様のメカニズムが起こっていると主張している。

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何だかわからないにしても、大変なことになっている…」と思わざるを得ませんが、それぞれの理屈はともかく、「氷はなぜ滑りやすいか」は、1800年代から 150年以上もかけた論争となっている科学的議題のようです。

この人たちにかからせると、「かき氷として出てくる氷はなぜ白いのか」にも 150年くらいの論争が続くかもしれないですし、あるいは、仲村トオルという名前はあるのに、仲村コオルという名前がないのはなぜなのか、にも 150年くらい議論が続きそうです(そういう名前はあるかもしれないですが)。

しかしですね。

この Quantaマガジン誌の「関連記事」のリンクにあった記事タイトルを見て、さらに私は驚愕したのです。

その記事のタイトルは、

「水が凍る仕組みの永遠の謎」

でした。

「こっちもわかってねえのかよ!」と感嘆した次第ですが、見出しには以下のようにあります。

> 氷を作るには、氷点下の気温だけでは不十分だ。予測不可能なこのプロセスには、微細な足場、ランダムな揺らぎ、そしてしばしば少量のバクテリアが必要だ。

「氷の生成には、核としてのバクテリア(あるいは有機物)が必要」であることについては、これは「雨」については過去に書いたこともあり、後に少しふれますが、つまり、氷生成には、核、つまり氷の種が作られること(氷核形成)が必要で、そこから氷生成に行き着く全体のメカニズムはわかっていないようなのです。

これも大変に難解な記事で、単に翻訳してご紹介しても、寿限無の世界になってしまいますので、簡単に氷ができる仕組みを書きますと、以下のようなことのようです。

氷ができるまで

・氷核形成は、偶然のランダムな揺らぎによって小さな三角形のH 2 O分子の塊が六角形の氷構造を形成することで始まる(このあたりですでによく理解していませんが)

・この氷の胚が核へと成長し、凍結を開始するかしないかは、エネルギー放出などの状況によって変わるため、これで氷になるわけではない。

・不純物は核形成のエネルギー障壁を劇的に低下させ、氷形成温度を上昇させる可能性がある(水に不純物が混じっていたほうが氷はできやすい)。

・表面が氷核形成に適しているか適していないかを決めるいくつかの要因は特定されており、表面構造の秩序性は重要。

・これを支えているのが一種のバクテリア(タンパク質)である可能性が高い。

というようなことで、理解できていない部分があるとはいえ、最終的には、「微生物の援助がなければ、氷はできにくい」ようです 。実際、アメリカのいくつかの州の人工降雪機では、すべてにシュードモナス・シリンガエと呼ばれる細菌が使われているのだそう。

また、そして、この記事の締めがすごい。

アメリカのボイシ州立大学で氷核形成物質を研究しているコンラッド・マイスター教授というの人の台詞で記事は終わるのですが、以下のようにありました。

記事より

「雲の上には、氷を作るのに非常に優れたバクテリアや菌類がいます」とマイスター教授は言う。「そこで、一体何が雨を降らせるのかという疑問が湧いてきます」

要するに、

「雨を降らせるのも、氷を凍らせるのも、《生物がやっている》」

というニュアンスの発言となっているのです。

宇宙空間から常にウイルスやバクテリアが降り続けていることについては、ここではあえて書きません。かつて何度書いたことだからです(こちらなどにあります)。

ひとつダイレクトに関係しているとすれば以下の記事があります。氷晶核として最も有効に働く物質は「有機物」であるということを取りあげています。

雨という現象は「そのすべてが宇宙からの作用」であることに気づく。そして、私たちは雨に当たるたびに、宇宙からやって来た無数の生命の洗礼を浴びている
In Deep 2019年11月10日

 

この記事では、「微生物がいなければ、地球に雨はほとんど降らない(有機物以外の有効な自然の核は考えにくい)」ということを書いているのですけれど、先ほどのコンラッド・マイスター教授の言うことも、ほとんどこれに近いことです。

雨というのは、私たちが空中あるいは宇宙から来て「雨となった」生物による洗礼を受けているという事象であることを改めて認識します。

科学は面白いものですが、地球のシステムはもっと面白いですね。

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