現在までの最後となる2022年11月8日の皆既月食。次は2025年3月。space.com
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赤い月にこだわってきたこの10年
今回は、中世の火山噴火の正確な時期を、赤い月(皆既月食)の記述から特定することに成功したという論文についてご紹介しますが、そういう科学とは関係のない話から始めさせていただきます。
実は、この「赤い月」というのは、このブログと因縁がありまして、最初に書きましたのは、検索しますと 2014年の4月ですから、9年前くらい前ということになります。
・赤い月と黒い太陽: 2014年から 2015年まで「4回連続する皆既月食」がすべてユダヤ教の重要宗教祭事の日とシンクロ。そして、過去の同じ現象の時に「イスラエルの建国」があった
In Deep 2014年04月06日
その後、ずいぶんとこの「赤い月」については書かせていただきました。
以下に記事一覧があります。
「赤い月」というのは、皆既月食のことで、皆既日食では、太陽が黒くなりますけれど、皆既「月食」では、月は赤くなるのです。
色を強調していますけれど、以下のような感じでしょうか。
英語ではブラッド・ムーン (血のような月)とも呼ばれます。
この皆既食の際に、
「太陽では黒くなり、月では赤くなる」
ということ自体が、私にとっては、とても示唆的であり、もともと日食や月食という現象に「奇跡性」を感じている私 (過去記事)としては、感慨深いものです。
皆既月食で、月が赤く見える理由は、光の「散乱」というものにより、そのように見えるようです。
皆既月食が赤く見える理由
Canon Global
皆既月食には「スーパーブラッドムーン」と呼ばれるものがあります。
スーパームーンは「地球から見た満月の円盤が最大に見える」ときのことで、ブラッドムーンは「皆既月食のこと」で、これが重なるものです。
さらにいえば、ブルームーンという言葉があり、これは色の青とはまったく関係なく、「1ヶ月のあいだに満月が2回あること」をいいます。
これらが全部重なると、「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」というということになり、これは大変に珍しい現象で、最近では、2018年に発生しましたが、それ以前は、その 150年前だったのです。
そして、大変に興味深いこととして、日本が江戸時代であった 1866年にスーパー・ブルー・ブラッドムーンが発生した年は、
「その年に江戸時代が終わった」
のでした。
以下の 2018年の記事に書きました。
・150年ぶりに「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」が出現する : 前回の1866年は江戸時代が消える日本の近代史上最大の転換点の時だった
In Deep 2018年1月19日
翌年からは、実質的に明治時代となりました。
まったく変わったのです。
それで、それから 150年後の 2018年にスーパー・ブルー・ブラッドムーンが出現したわけですが、
「翌年の 2019年に新型コロナウイルスのパンデミックが発生した」
のでした。
やはり、世界はまったく変わったのでした。
もちろん、このパンデミックが「大した出来事でない」とする解釈なら、大した問題ではないのでしょうが、しかし、このパンデミック (コロナという病気そのものではなく)と、その対策が社会のすべてを変化させたことは疑いの余地がありません。
衛生管理体制の問題や、ワクチンによる人口動態の大幅な変化 (死亡数の大幅な増加や、出生数の大幅な低下など)だけではなく、「過去最大の懸念となりかねない銀行と金融危機」も、このパンデミック対策での無謀な政府援助が原因のひとつとなっています。
・アメリカの銀行破綻の連鎖の最大の原因が、「パンデミックの景気刺激策とロックダウンの影響」であることを知る
In Deep 2023年3月13日
銀行の危機は、少なくともアメリカにおいては、根本の部分においてまったく変化していないですので、時期はともかく、必ず起きます。
それに加えて、アメリカでは、
「リーマンショック時をはるかに超える商業不動産危機」
が迫っていることを、モルガン・スタンレーの資産運用部門の責任者が報告書で述べていました。以下に報道の翻訳があります。
・モルガン・スタンレーが、米国の商業用不動産の今後の「壊滅的な崩壊」を警告 (2023/04/10)
最高投資責任者の方は、報告書に、以下のように書いています。
「この市場は、大きなハードルに直面しており、ストラテジストたちは商業用不動産が 2008年の金融危機時よりもさらに悪い約 40%の下落になると予想している」
商業用不動産だけではなく、アメリカの集合住宅の販売も壊滅的な崩壊に近づいています。
・アメリカの集合住宅の売上高が74%減少、2008年以来最大。価格も高値から20%下落 (2023/04/04)
これもパンデミックのロックダウン中に、アメリカでは、移住ブーム等が起こり、どんどん家や集合住宅が建設され、そして、パンデミック中にどんどん家賃が上昇しました。
今、「家賃も住宅価格自体も、どちらも大きな下落に転じて」おり、そのため、不動産の持ち主たちが、ローンの返済に難渋し始めているようで、今年、「不動産の投げ売り」が起きる可能性を専門家が懸念しています。
さらに、最近の銀行の預金流出危機の後から銀行は「融資をしなくなってきている」ため、新しい資金も借りられない状態で、不動産を投げ売るしかない。
米ノースマーク証券の集合住宅部門の代表者は、
「(不動産の危機は)始まったばかりです」
と述べています。
このようなことが、商業用不動産と住宅不動産の両方に「仮に」起きてしまった場合、事態がリーマンどころではなくなることは想像できます。
そして、「ドルの死」という懸念はどんどん強くなっています。
・ドルの崩壊が、曖昧ではなく始まった
In Deep 2023年4月6日
あくまでアメリカの話ですが、今年は食糧生産もどうなるかわからなくなってきています。
アメリカ最大の食糧生産地であるカリフォルニアの今年の春の状態は、ほぼ絶望的です。
・リアルな「水没」に直面しているカリフォルニアの農地
地球の記録 2023年4月5日
また、アメリカの春小麦の生産の約 4分の3を占めているノースダコタ州、サウスダコタ州、ミネソタ州もまた、「過去最大級の積雪」により、この春の小麦の作付けが危ぶまれています。
・アメリカの春小麦生産地域の積雪量が今世紀最大に。過剰な土壌水分により作付けが大幅に遅れる見込み (2023/4/09)
この3州の積雪量は、21世紀ではダントツに最大です。
アメリカの春小麦生産地の積雪量
gro-intelligence.com
このような、
・過去最大の金融危機 (の可能性)
・過去最大の不動産危機 (の可能性)
・過去最大の食糧生産の危機 (の可能性)
・ドルの死 (の可能性)
が、同時期に一気に襲ってきた場合、社会が「今まではとはまったく異なる」状態になることは避けられないと思われます。
積雪は別にして、これらの原因のほとんどが、パンデミックとその対策に起因していると考えると、
「スーパー・ブルー・ブラッドムーンが発生した 2018年の翌年」
というのが、どれだけ劇的な時期を「招く要因となった年だったか」ということがわかります。
もちろん、これらは、あくまでアメリカの問題ですが、これが一気にアメリカで発生した時に、日本が無傷である可能性はほとんどないはずです。
というわけで、オカルト的な前振りが長くなってしまいましたが、ここから本題です。
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赤い月と巨大火山の噴火
数日前、科学誌ネイチャーに以下のようなタイトルの査読済み論文が発表されました。スイス、アメリカ、イギリス、フランス、アイルランド、カナダの複数の研究機関の専門家たちによる研究です。
月食は中世の火山活動のタイミングと気候への影響を明らかにする
Lunar eclipses illuminate timing and climate impact of medieval volcanism
nature 2023/04/05
これは、中世の修道士たちによる文書や、東アジアの歴史書などを精査し、そこから「皆既月食」が出てくる描写を探しだし 、それと既存の氷床中の火山灰などのデータと照合することで、
「西暦 1100 年から 1300 年の間に起こった約 10 回の巨大な火山噴火の日付を明らかにした」
というものでした。
なぜ、赤い月を歴史書から調査したかというと、以下のような理由からです。大気が巨大な噴火の噴煙に覆われた場合、火山塵により光が遮られ、「月や太陽の見え方が変化する」ことがまずあります。
そして、以下のようなことにより、月食に特化して調べたようです。
・月食が起きた正確な日時は、どれだけ過去であっても計算からわかる
・火山噴火によって大気の状態が変化するが、日中はその差異があまり目立たない
・太陽光のない夜間のほうが差異がわかりやすい
・そこで月食の記述を調査した
・宗教書や歴史書にある「月食の色や光の状態が普通ではない」記述の場合、それ以前の火山噴火の影響である可能性が高い
というような感じです。
しかし、あまりにも巨大な噴火であった場合、昼も夜も関係なく、光が弱くなることがかつての文書で示されています。
これは推定でしかないですが、西暦 535年の「インドネシアのクラカタウ火山の巨大噴火」か「海底火山の巨大噴火」かのどちらかによって、翌年からの数年間、世界中の空が暗くなりました。以下は、東ローマ帝国の歴史家の記録です。
東ローマ帝国の歴史家プロコピオスの西暦 536年の記録より
昼の太陽は暗くなり、そして夜の月も暗くなった。太陽はいつもの光を失い、青っぽくなっている。
われわれは、正午になっても自分の影ができないので驚愕している。太陽の熱は次第に弱まり、ふだんなら一時的な日食の時にしか起こらないような現象が、ほぼ丸一年続いてしまった。
月も同様で、たとえ満月でもいつもの輝きはない。
この西暦 536年からの世界については、ずいぶん以前から記していますが、最近では、以下のようなものでしょうか。
・西暦536年からの十数年間「地球から太陽の光が消え暗黒の世界となった」。無数の人々の命を奪ったこの現象の原因は海底火山の噴火である可能性が高まる
In Deep 2019年12月22日
また、噴煙があまりにも濃い状態では「太陽さえ赤やピンクになる」可能性があるかもしれません。以下は噴火ではないですが、「山火事の煙によってピンクになった」太陽です。
チリのサン・フェルナンド上空の奇妙な色彩の太陽 2016年12月15日
indeep.jp
ともかく、研究者たちは、中世の文書から、月の異常や太陽の異常などの記述を探しだして、それと他のデータを参照して、「いくつかの巨大火山噴火の正確な噴火の時期を判明させた」のでした。
この論文を報じていたカナダの報道をご紹介します。
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月食に関する中世の書物は、歴史的な火山噴火の日付を特定するのに役立つ可能性がある
How do you pinpoint a historical volcano eruption? Look at medieval writings about the moon, new study says
CTV 2023/04/07
中世の修道士たちが夜空を見上げ、天体の観測結果を書き留めていたとき、彼らは自分たちの記述が数世紀後、まったく別の分野である火山学の科学者グループにとってかけがえのないものになるとは思っていなかっただろう。
査読付き学術誌ネイチャーに 4月5日に掲載された新しい研究は、修道士や筆記者たちによる月食の記述が、地球上で最大の火山噴火のいくつかを研究する上でいかに重要であったかを説明している。
これらの中世の文書と何世紀にもわたる気候データの組み合わせを使用して、研究者たちは、西暦 1100年から 1300年の間に起こった約 10回の火山噴火の日付を明らかにすることができた。
主執筆者のセバスチャン・ギエ氏は、「最も暗い月食は、すべて大規模な火山噴火から約 1年以内に起こったことに気付いた」と述べる。ギエ氏は、ピンク・フロイドのアルバム『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』を聴いていたときにこのことに気づいたという。
ギエ氏はプレスリリースで次のように述べている。「私たちは(過去の)月食の正確な日を計算できるので、それにより、噴火がいつ起こったを絞り込むための可能性が開かれた」
研究者たちは、これらの地球を揺るがす出来事のより正確な日付を取得することで、火山が極端な気候変動にどのように寄与しているかをより明確に把握するのに役立つ可能性があると述べている。
月食と火山の関係
そもそも、火山の噴火について知るために、なぜ月食に関する文献を読んだのだろうか。
この研究に先立って、科学者たちは南極大陸とグリーンランドの棚氷の堆積痕跡を使用して、1100年から 1300年の期間が過去 2,500年間で最も火山活動が活発な期間の 1つであったことを確認した。
当時の地球の人口は少なく、これらの大部分に噴火そのものの記録は残っていない。
しかし、十分に巨大な噴火の後には数千キロメートルにわたって広がる噴煙による塵の雲が、おそらく(日照不足や寒冷化などの)悪天候として記録されていた可能性がある。
噴煙による塵の雲は、日中はあまり目立たない。しかし、月食にはその状態が現れたはずだと研究者たちは理論付けた。
通常、皆既月食では、地球の影がほとんどの光を遮っているが、地球の周りを曲がっている太陽からの光のために、月が空に赤く見える。
これは、仮に、歴史書にある記述が通常よりも暗い月食を記述している場合、それらはその近年の火山活動の兆候である可能性があることを意味すると思われる。
調査には 5年間を費やした。
研究者たちは中世の記録を精査し、異常に見える日食の記述を探した。
ヨーロッパ、中東、東アジアの僧侶や書記たちは、これらの壮大な事象の際の色に至るまで、月食の詳細な説明を残していた。
研究者たちは、多くの宗教書が血のように赤い月を使って、来るべき災難を予言していることが助けになったと指摘している。
月食の発生日は、太陽、地球、月の動きに基づいて、数学的精度で予測することができる。これらのパターンは、それ以前の、ずっと以前に発生した月食の正確な日付も計算できることを意味する。
ヨーロッパでは、1100年から 1300年の間に 64回の皆既月食があったことがわかっている。これらの確認された 64回の皆既月食のうち、51回は中世の文献に詳細に記述されていた。
これらの 51回の皆既月食のうち 5つは、月が空で非常に暗いと報告されていた。
日本の筆記はまた、1229年 12月初旬の異常に暗い月食について次のように書いている。
「年老いた人たちでも、このような月は見たことがなかった。月の円盤の位置は見えず、まるで月が消えてしまったかのようだった。それは本当に恐ろしいものだった」
火山の冬を確認する気候データ
これらの何世紀も前のテキストに記載されている、より暗い月食が火山塵の影響を受けた可能性があるという理論を確認するために、研究者たちはそれらを既存の気候データと相互参照した。
英ケンブリッジ大学地理学科のクライブ・オッペンハイマー教授は、以下のように述べた。
「これらの噴火の存在については、南極とグリーンランドの氷に痕跡が残っているので、(曖昧な時期は)わかっていました」
「そして氷床コアからの情報と中世の描写の説明を組み合わせることで、この時期の最大の噴火のいくつかがいつ、どこで発生したかをより正確に推定できるようになったのです」
巨大な火山噴火は、その直後に気候に幅広い影響を与える可能性がある。その影響は非常に大きく、地球の気候史に測定可能な痕跡を残す。たとえば、1815年に現在のインドネシアにある有名なタンボラ山の噴火は非常に大規模で、 1 年間、地球の気温が低下し、「夏のない年」と呼ばれた。
この研究の著者の一人であるマーカス・ストッフェル氏は、火山噴火の影響を次のように述べている。
「ある場所では干ばつが発生し、別の場所では洪水が発生するなど、異常な降雨につながる可能性もあります」
気候記録でこれらの「火山の冬」を探し、大規模な噴火に関連する他の気候マーカーを探し、異常な月食の記録と相互参照することで、研究者は 5つの注目すべき噴火の日付を絞り込むことができた。
その 1つは、現在のインドネシアにあるサマラス火山の 1257年の噴火の推定噴火時期であり、研究者はその年の春/夏に絞り込んだ。
日付を明確にすることができた別の噴火は、1171年 5月から 8月の間に発生したものに絞り込まれた。これは、800年以上前に発生した噴火の時期の特定だ。
「火山が噴火した季節を知ることは不可欠です。火山の粉塵の拡散や、これらの噴火に関連する寒冷化やその他の異常気象に影響を与えるからです」とギエ氏は述べている。
ここまでです。
長くなってしまったのですが、ひとつ注釈させていただきます。
この中に、日本の 1229年12月の異常に暗い月食の記述があります。年表を見てみますと、この翌年から日本では「飢饉」が始まっていることを知りました。
> 寛喜の飢饉とは、1230年から1231年に発生した大飢饉。鎌倉時代を通じて最大規模。 (寛喜の飢饉)
天候も異常だったようです。
> 1230年 7月20日に、現岐阜県大垣市および、現埼玉県入間市で、降雪が記録される異常気象に見舞われた。その後も長雨と冷夏に見まわれ、7月16日には、早くも霜降があり、ほぼ冬のような寒さに陥ったとある。 (寛喜の飢饉)
西暦 536年からの世界と似ています。
そして、最近また大規模な噴火が増えています。カムチャッカ半島のベズイミアニ火山が大噴火を起こして、最高度の航空警報が出ています。
また、コロンビアにある「西半球で最も致命的な火山」が、1985年以来の噴火を起こす可能性があることを同国地質局が発表しています。 1985年の噴火では、2万5000人が亡くなったそうです。
実際には、巨大噴火の最大の影響は、直接的な被害はあるにしても、その数ヶ月後から始まる日照不足等による寒冷化と、それによる農作への影響が大きいと思われます。
それはしばらく起きていないというだけで、歴史の中で繰り返されてきたことですので、いつかは必ず起きることでもあります。
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