アメリカ、イラン双方が「完全勝利」を宣言するが、どう見ても合衆国大統領の完全降伏
日本時間の 4月8日の午前に、イランとアメリカの停戦が合意されたと報じられました。米国は、基本的に以下のような提案に合意したとメディアは伝えています (実際には10項目)。
・イランへの侵略を行わないことの保証
・ホルムズ海峡に対するイランの管理継続
・ウラン濃縮の許可
・イランに対するあらゆる制裁の解除
・イランに対する賠償金の支払い
・中東からのアメリカ軍の撤退
・レバノンを含む、あらゆる戦線での戦闘停止
これをアメリカ側が同意したというのなら、
「この戦争はアメリカ側の無条件降伏に近い」
ものとなるでしょうし(イランに有利な条件しかない)、しかし、そもそも「こんなの、イスラエルが許すわけないじゃん」とは思います。
そして、「イランへの賠償金の支払い」とか「米軍の中東からの完全撤退」などはアメリカの政権自体がすんなり受け入れるわけがない。
「また、TACO 的な時間稼ぎか」と思うしかないのですが、当然、報道でも、アメリカから発せられる表現と、イラン側から発せられる表現はまるで異なります。
アメリカ…というより、トランプ氏の言葉を伝えていた報道のタイトルは、
「トランプ大統領、イランに対する「完全勝利」を宣言」 (RT 2026/04/08)
というようなもので、速報記事には、
> トランプ大統領は、イランとの2週間の停戦合意を受けて、米国は「完全な勝利」を収めたと主張した。
>
>「完全な勝利だ。100パーセントだ。疑いの余地はない」とトランプ氏はAFP通信との電話会見で語った。
とありますが、しかし、現実としては、まるでアメリカは勝っていません。
ホルムズ海峡は元には戻らない
あと、一般的な報道では、まるで、「 2週間のあいだ、どんな船舶でもホルムズ海峡を自由に通過することができる」ようなニュアンスで伝えられていますが、その条件は、
「イラン側に通行料を払った場合のみ」
です (翻訳記事)。
通行料は 200万ドル、日本円で約 3億円ですから、なかなかの額です。通行を許可される船舶数は 1日 20隻までらしいですが、イラン側にはかなりの収入になると見られます。イランはホルムズ海峡を収入源のひとつにすることに成功したようです。
「海峡が開放された後もこれは続く」として、以前のような船舶数の往来は望めません。
また、前回の「もはやホルムズ海峡が開かれたとしても、長期の見通しは絶望的」という記事で取りあげましたが、中東各国の石油施設などの損傷が激しく、数年は元の状態には戻らないとされています。ですので、以前のようなエネルギーの流通状態に戻ることは、少なくともしばらくはなさそうです。
それはともかく、トランプ氏の「完全勝利宣言」に対して、イラン側もまた、「完全勝利」を宣言しています。
イラン国営プレスTV の報道をご紹介します。
イランは米国に対する「歴史的勝利」を宣言し、敵国はイランの提案を受け入れざるを得なかったと述べた
Iran declares 'historic victory' over US, says enemy forced to accept its proposal
PRESS TV 2026/04/07
イランは、40日間の戦争を経て、「米国とイスラエル政権は歴史的かつ壊滅的な敗北を喫した」と宣言した。これにより、米国は恒久的停戦、すべての制裁解除、米軍の地域からの撤退を含む10項目のイラン提案を受け入れざるを得なくなったとイランは発表した。
イラン最高国家安全保障会議は、「高貴で偉大で英雄的なイラン国民」に向けた声明の中で、敵は紛れもない敗北を喫し、今や「偉大なイラン国民と名誉ある抵抗の枢軸の意思に服従する以外に道はない」と述べた。
この発表は、2月28日にイスラム革命最高指導者アヤトラ・セイエド・アリ・ハメネイ師と最高司令官らが暗殺されたことをきっかけに始まった、米国とイスラエルによるイランへの侵略戦争 40日目に行われた。
声明によると、米国は 10項目のイランの提案に合意した。
「イランは大きな勝利を収め、犯罪国家アメリカに自らの 10項目提案を受け入れさせた」と声明には記されている。
最高安全保障機関の声明は、過去 40日間を「歴史上最も激しい共同戦闘の一つ」と表現し、その中でイランとその同盟国はレバノン、イラク、イエメン、そして占領下のパレスチナにおいて、「世界の歴史に決して忘れられない」打撃を与えたと述べた。
「イランと抵抗勢力は、この地域におけるアメリカの軍事機構をほぼ完全に破壊した」と声明は述べている。「彼らは、敵がイランとの戦争のために長年にわたってこの地域に構築し展開してきた膨大なインフラと能力に、壊滅的かつ深刻な打撃を与えた。」
声明はさらに、占領地域において、抵抗勢力が「敵の部隊、インフラ、施設、資産に壊滅的かつ決定的な打撃を与えた」と付け加えた。
さらに、アメリカは開戦からわずか 10日後には、勝利の見込みがないことを理解していたと述べている。
「敵の主要な目的はどれも実現しなかっただけでなく、開戦から約 10日後には、敵はこの戦争に勝利する能力がないことを悟った」と声明は述べている。「そのため、敵は様々な経路と方法を通じて、イランとの接触を確立し、停戦を要請する努力を始めた。」
同最高安全保障機関はさらに、敵は当初、イランのミサイルとドローンの能力は「すぐに消滅する」と信じ、迅速な軍事的勝利を想像していたと述べ、また「卑劣なグローバル・シオニズム」が「無知な米国大統領」に、この戦争でイランは滅びると信じ込ませたと指摘した。
最高治安機関は勝利宣言を行う一方で、引き続き警戒を怠らないよう呼びかけた。
イランの発表は、トランプ大統領が、イランがホルムズ海峡を再開することを条件に、イランへの爆撃と攻撃を 2週間停止することに合意したと述べた数時間後に行われた。
最高安全保障機関は、この期間中は完全な国家統一を維持し、勝利の祝賀を力強く続けることが不可欠だと述べた。
「もし敵の戦場での降伏が交渉における決定的な政治的成果へと転換されるならば、我々は共にこの偉大な歴史的勝利を祝うだろう。そうでなければ、イラン国民のすべての要求が満たされるまで、我々は戦場で肩を並べて戦い続けるだろう」と声明は述べている。
「我々は引き金に手をかけており、敵が少しでもミスを犯せば、全力で反撃するだろう」
ここまでです。
他にも「イランはいかにして米国に反撃し、勝利を収めたのか」とか、「アメリカ大統領はイランに降伏した」とか、そういう記事が続々と掲載されています。
イランからの発信もアメリカ政権からの発信も、どちらにもプロパガンダ的要素が多く含まれますけれど、理論的な部分としては、イラン側の言うことの方がやや正しそうです。
いずれにしても、このままだと、アメリカの完全な敗北という形で戦争は終結するわけですが…そんなすんなり行くわけないよなあ、というのが正直なところではあります。
そして、この 40日間で、最も評価を落とした人物の代表格がトランプ氏であったとは言えます。最近の In Deep の記事でもふれましたが、確かに、すでに「職務不適格と宣言される」状態ではあります。
アメリカ議会では、停戦合意の発表後も「トランプ氏の罷免」の要求が続いています。
混乱はこれから、といった感じのほうが強そうです。
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