アメリカの1億1000万人がカードの残高を完済できていない
アメリカ人の多くが「借金で生活を維持している状況」が次第に肥大していまして、2025年の第4四半期に米国のクレジットカード債務が過去最高の 1兆2800億ドル(約205兆円)に達したことが報じられています。
それについては、こちらの記事で翻訳しています。
クレジットカード債務は以下のような増加ぶりとなっています。
2021年頃からの増え方が著しいです。
このアメリカのクレジットカードの状況について、 アメリカのリベラル系シンクタンクであるセンチュリー・ファンデーション(財団)が、詳細な分析を出していました。
その中から抜粋すると、現在は以下のような状況で、アメリカ人の 40%が、毎月の残高を完済できていない状況だそうです。
センチュリー・ファンデーションの分析記事より
記録的な数のアメリカ人がクレジットカードの支払いができない状況に陥っている。アメリカの成人の40%以上(1億1100万人)が毎月の残高を完済できていない。2700万人以上のアメリカ人は毎月の最低支払額しか支払えず、慢性的な借金に陥る可能性が高い。
それなのに、クレジットカートの口座開設は増える一方です。
米国のクレジットカードの口座開設数の推移(2018〜2025年)

なお、アメリカ人の他の主なローンとしては、2025年第4四半期に以下のようになっています。
・住宅ローン残高が合計13兆1700億ドル (約2100兆円)
・自動車ローン残高が合計1兆6700億ドル (約266兆円)
いずれも、途方もない借金状況となっています。
あと、学生ローンの未払いの負債も 1兆6,000億ドル (250兆円)を超えています。
次に何が起きるのかは明白ではないですが、今は戦争時で、今後、アメリカでもインフレが進行していくと見られます (2月の卸売物価は 0.7%上昇し、予想の2倍以上)。
今でもカードでしか物を購入できない人たちが多いわけで、戦争などにより物価や生活費がさらに上昇すれば、カードに頼るアメリカ人の数はさらに増加する可能性もあり、こんな状態が持続可能なのかどうかというと、なかなか難しいと思います。経済全体への影響はともかく、苦境に陥る個人はさらに多くなっていきそうです。
ここから、センチュリー・ファンデーションの分析記事です。やや長いです。
利息国家:アメリカのクレジットカード債務危機の現状
Interest Nation: The State of America’s Credit Card Debt Crisis
THE CENTURY FOUNDATION
全国各地で生活費の高騰が深刻化する中、家計はやりくりに苦労しており、最後の頼みの綱として高金利の借金に頼るケースが増えている。その結果、アメリカ国民のクレジットカード債務は過去最高水準に達し、大不況後以来見られなかったほどのペースで返済が滞っている。
新たな消費者信用データ分析センチュリー財団とプロテクト・ボロワーズによる調査によると、約1億1100万人(クレジットカードを保有するアメリカ人の半数、アメリカの成人の40%以上)が毎月クレジットカードの請求額を支払うことができず、業界が誇張した記録的な高金利と略奪的な手数料のために、際限なく膨れ上がる慢性的な債務のサイクルに陥っている。
選挙運動中、当時候補者だったトランプ氏はクレジットカードの金利を 10%に制限すると公約した。
しかし、この約束を果たせなかったことで、ウォール街は勤労世帯を犠牲にして利益を得ている。トランプ大統領が 2025年1月に再選されて以来、アメリカ国民はクレジットカードの利息として合計 2407億ドル (約38兆円)を支払ってきた。
これは、食料品、医療、育児、その他トランプ政権下で高騰する費用を支払うために使うべきお金ではなく、クレジットカード会社に支払わなければならなかった約 2500億ドルに相当する。
トランプ大統領がクレジットカード金利の上限を 10%にするという公約を果たせない日が続くごとに、アメリカの家庭は 3億6800万ドル (約 588億円)の利息を余分に支払っている。
2025年初頭に大統領に就任して以来、アメリカ国民は約束された 10%の上限が適用されていれば支払う必要のなかった金額を 1345億 (約 215兆円)ドルも余分に支払っていることになる。
一方、トランプ政権の関税、減税、企業への優遇措置によって引き起こされた物価上昇により、家計は限界を超え、生活費の負担はますます深刻化している。トランプ政権は、クレジットカードの金利が高騰し、返済が滞った借り手への負担を軽減するどころか、銀行と密室で取引を行い、高額なクレジットカードの延滞手数料を維持したり、企業に恩赦を与えたり、クレジットカード市場の競争を弱めたりしながら、結局は高金利の抑制に失敗した。
プロジェクト・ボローワーズとセンチュリー財団の新たな分析で、以下のことが明らかになった。
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・約1億1100万人のアメリカ人(成人の40%以上、クレジットカード保有者の半数)は、毎月のクレジットカード残高を返済する余裕がなく、1兆ドル (約 160兆円)を超える負債を抱えている。
これらの借り手は、平均 22%を超える非常に高い金利にさらされており、これはわずか 10年ほど前の金利のほぼ2倍に相当する。金利の上昇は、借り手がすでにクレジットカードの借金で賄おうとしている支払えない支出にさらに負担をかけるだけだ。
・約 6800万人のアメリカ人、つまりカード保有者のほぼ 3人に1人が、利用可能なクレジット枠の 30%以上を利用しており、本報告書では「債務に苦しむ」カード保有者と定義されている。
こうしたカード保有者は、クレジットカード債務総額の 63%、つまり約 8000億ドル (約 127兆円)を抱えており、慢性的な債務のサイクルに陥る可能性が著しく高く、信用や財務状況の指標も悪い。
・2700万人以上のアメリカ人、つまりカード保有者の 9人に 1人以上、そして毎月の残高を全額返済できない人の約 4分の1は、最低支払額以上の金額を支払う余裕がない。
こうしたカード保有者は、最も高い利息負担に直面し、結果として何年も、あるいは何十年も借金に苦しむことになる可能性がある。平均未払い残高に基づくと、最低支払額のみを支払う平均的な債務に苦しむカード保有者は、毎月 251ドル (約 4万円)、年間 3,000ドル以上 (約 48万円)の支払いになり、残りの 98%の残高に対して利息が発生し、慢性的な債務に陥ると推定される。
・アメリカ人の月々のクレジットカード支払額は 2018年以降 40%近く増加しており、この傾向はトランプ大統領の下でも衰えることなく続いている。
2018年から2025年にかけて、月々の平均クレジットカード支払額は553ドル、つまり 38%増加した(1,441ドルから1,994ドル)。この増加率はインフレ率をはるかに上回っている。
トランプ大統領就任以降だけでも、アメリカ人がクレジットカードで支払う年間平均額はさらに 1,177ドル増加した(22,756ドルから23,933ドル)。この増加ペースは、主に金利の高騰により、今日のアメリカの家庭は歴史上かつてないほど多くの収入をクレジットカードの支払いに充てていることを示唆している。
・クレジットカードの限度額を使い切っているアメリカ人の割合が増加している。
債務に苦しむカード保有者の平均利用率(利用可能なクレジットのうち実際に利用した割合)は、2018年から 2025年にかけて 63.8%から 70.7%に上昇した。
特に信用スコアが最も低い借り手、いわゆる「ディープサブプライム」の借り手は、記録的な数の新規口座を開設しながらもクレジット限度額を使い切っており、トランプ政権発足 1年目の終わりには平均利用率が 99.2%に達した。
クレジットカード債務を抱える最も経済的に不安定なアメリカ人は、生活を維持するために、ペイデイローン (消費者金融が給料を担保に提供する、短期の小口のローンサービス。利息がきわめて高い)、給与前払い商品、後払いローン、後払いローンなどの他の高コスト金融商品を利用して、すでに過去最高水準の債務を抱えている。
これらの家族は、クレジットが底をつき、毎月の基本的な支出を支払えなくなる割合が増えているため、潜在的な転換点に近づいている。
・有色人種の借り手は、利用可能なクレジット枠をより多く使い果たしながら、クレジットカードの支払いを滞納する割合が著しく高くなっている。
その結果、有色人種の借り手は、非常に高い金利を支払わざるを得なくなり、より悪質な可能性のある代替の融資源を求める可能性が高くなる。債務に苦しむ黒人カード保有者の 4人に 1人以上が最低支払額しか支払っておらず、比較的低い残高であっても、利用可能なクレジット枠の 80%以上を使い果たしている。同様の傾向は、ラテン系およびネイティブアメリカンの借り手にも当てはまる。
・トランプ大統領は、クレジットカードの支払いが滞っている 3000万人のアメリカ人に対し、延滞料金を引き上げた。
クレジットカード保有者の 8人に1人以上が、少なくとも 1枚のカードの支払いを滞納しており、その延滞債務総額は 1634億ドル (約26兆円)に上る。トランプ政権がクレジットカードの延滞料金を 8ドルに制限する規則を放棄した結果、クレジットカードの支払いを滞納した借り手は通常、1回少なくとも月額 32ドル、過去の傾向が続くとすれば、アメリカ人は不必要な延滞料金として年間 100億ドル余分に支払うことになる。
・全体として、アメリカ人のクレジットカード債務は歴史上かつてないほど高額になっている。
約2億2700万人のアメリカ人(成人の 5人に4人以上)が、合計で約1兆2700億ドルのクレジットカード債務を抱えている。これは、アメリカの家庭が抱えるクレジットカード債務の総額としては過去最大規模である。
連邦準備制度理事会のデータをさらに分析した結果、以下のことが明らかになった。
・クレジットカード銀行は、金融危機以降、資金調達コストとカード会員に課す金利との差を拡大することで、利益率を 2倍以上に伸ばしてきた。
2007年初頭から 2025年末にかけて、銀行の利益率は 109%以上増加した。その結果、アメリカ人は現在、クレジットカードの利息と手数料として過去最高額を支払っている。
・アメリカ人は2010年以降、クレジットカードの利息として累計2兆1000億ドル (約 335兆円)を支払ってきた。
この莫大な利息収入は、 2025年末時点でのアメリカ人の未払い学生ローン総額と自動車ローン総額を大幅に上回る。これはまた、10%の金利上限の下でアメリカ人が支払うはずだった金額よりも 8659億ドル多く、連邦準備制度理事会の政策金利より 10%高い金利上限の下で支払うはずだった金額よりも 6446億ドル多い。
・トランプ大統領就任以来、アメリカ国民は金利上限が 10%に設定されていた場合よりも 1345億ドル多く支払ってきた。
トランプ大統領がクレジットカード金利の上限を 10%に設定するという公約を果たせない日が続くごとに、クレジットカード会社は各家庭に 3億6800万ドルの追加利息を請求していることになる。
アメリカ人は借金に溺れている
トランプ政権はクレジットカード金利の上限設定を実現できず、代わりにウォール街を潤すための数々の措置を講じた。
その例として、高額な延滞料金の維持、企業への恩赦、そしてキャピタル・ワンとディスカバーの合併承認などが挙げられる。働く家族にとって、これ以上ないほど最悪のタイミングだ。
クレジットカードはかつてないほど高額になり、不必要な手数料が山積みになり、働くアメリカ人が生活費をやりくりするために頼る度合いも高まっている。
過去最多となる 2億2700万人のアメリカ人(米国成人の5人に4人以上)が現在、クレジットカードまたは小売店のカード口座を保有しており、その負債総額は 1兆2700億ドルに達している。これはクレジットカード債務総額としては過去最高額である。
最近の研究によると、カード所有者の約半数がクレジットカードの請求額を全額支払うことができず、毎月未払い残高を抱えていることがわかっている。これらのカード保有者は、記録的な高金利にさらされており、それがさらに信用コストを押し上げている。これは、約1億1100万人が慢性的な債務の悪循環に陥っていることを意味する。
ここまでです。
ここからも非常に長くグラフなどを示しながら分析が続きますが、わりと繰り返しになっている部分が多く、上で書かれた同じことが何度も出てきますので、ここまでといたします。
このアメリカ人の過度な借金の状況が持続可能なものかどうかはわからないですが、それでも、クレジットカード債務の 1.28兆ドルは、アメリカのGDP(約30兆ドル)比で 4%程度ですので、社会全体への影響は限定的なのかもしれません。ただ、アメリカの借金で圧倒的なのは住宅ローンですが、このあたりにも波及し始めると、いよいよ「最後の金融危機」みたいなのも考えられなくもないのかもしれないですが。
最近アメリカの Google 検索で「家が売れない」という検索数が過去10年で最高レベルに達したことなどが話題になっていましたけれど、不動産はどんな状況なんですかね。ちなみに、ホルムズ海峡の封鎖が続くと、家を建てる資材でも入手が難しくなるものが出てきます。
ともかく、イランとの戦争が終わる頃にはいろいろとどうなっていますかね(終わらなかったりするかもしれないですが)。
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