ブラックスワン的事象への布石?
今日、以下のような記事を読みました。ヨーロッパで第二位の規模を誇る BNPパリバという銀行についてのものです。
株式取引は「停止」 BNPパリバ銀行
2025年10月20日(月)午前11時現在、BNPパリバの株式市場取引は、本日の取引で同行株価が 10%急落したため停止されている。BNPパリバは欧州で第2位の規模を誇る銀行だ。
銀行株に関する問題の兆候は欧州での取引開始早々に現れ、銀行株は寄り付き時に約 5%下落し、東部夏時間午前10時頃にはさらに 8.67%まで下落し、現在では 10%の下落となり、銀行株の取引の「サーキットブレーカー」停止を引き起こしている。
この突然の下落がなぜ起きたのかを調べていたところ、先週末のロンドンのファイナンシャル・タイムズ紙に掲載された問題点を説明した記事を見つけた。そこからの抜粋だ。
米国の陪審は金曜日 (10月17日)、BNPパリバに対し、米国の制裁に違反する銀行サービスを提供することでスーダン政府によるジェノサイドを助長したとして、歴史的な評決を下した。マンハッタンの連邦陪審は、BNPパリバに対し、オマル・アル・バシル前大統領の統治下で行われた人権侵害について証言したスーダン人原告 3名に対し、合計2,050万ドル (約 32億円)の支払いを命じた。
現在米国に居住する 3名の原告の弁護士は、この評決により、米国に居住する 2万人以上の難民が、同フランス銀行に対し数十億ドルの損害賠償を求める道が開かれたと述べた。
この記事の最後の段落を見てほしい。
何がすごいのか疑問に思う人もいるかもしれないが、BNPパリバはヨーロッパで第2位、世界で第8位の銀行だ。
世界は今や非常に密接につながっており、どこかで起きた問題が数時間であらゆる場所で問題になる可能性がある。つまり、これは最初のドミノ倒しを引き起こし、残りのドミノ倒しを引き起こす「ブラックスワン」となる可能性があるのだ。
この状況とその影響に十分注意してほしい。万の万の一の事態に備えて、自宅に現金を必ず用意しておいてほしい。万一の事態に見舞われた場合、1~ 2ヶ月は持ちこたえられるはずだ。これは請求書の支払いのためではなく、万一事態が悪化してシステムが再起動するまで、生き延びるため(食料、燃料、医薬品)の手段だ。
ここまでです。
このハル・ターナーさんという方は、いつも大げさに語る人ですので、そのあたりを差し引いたほうがいいですが、しかし、BNPパリバ株が急落したことは事実です。
この問題については、日本語版ブルームバーグでも報じられていますが、問題は、ハル・ターナーさんが書かれている「記事の終わりの部分」ですね。
> 現在米国に居住する 3名の原告の弁護士は、この評決により、米国に居住する 2万人以上の難民が、同フランス銀行に対し数十億ドルの損害賠償を求める道が開かれたと述べた。
その前の部分に「スーダン人原告 3名に対し、約 32億円の賠償金の支払いを命じた」とあり、これだと、
「 1人あたり約 10億円の支払い」
ということになります。
同じ立場のスーダン難民が、アメリカには 2万人以上いると。
10億円 × 2万人は……えーと、ちょっと計算する気にもならないですが、仮に本当にそういう動きが出てきた場合、BNPパリバのような巨大な銀行であっても、非常に危ない状態になる可能性があると。
銀行といえば、アメリカの地方銀行株も急落中なんです。昨日あたりはまた上げていましたけれど、以下は、ブルームバーグからの抜粋です。
記事「米地銀株急落、トレーダーの不安反映」より
16日の米株式市場では、地方銀行株が急落した。
地方銀行セレクト・インダストリー指数は6.3%安と、トランプ米政権の広範な関税措置を契機とした4月の大幅下落以来の下げを記録。2023年の地銀危機時に業界を揺るがせた急落を想起させる展開となった。
今回は、ザイオンズ・バンコープとウェスタン・アライアンス・バンコープが商業用不動産ローン投資ファンド向け融資で不正の被害を受けたと発表したことがきっかけとなった。両行の株価はいずれも10%余り急落した。
とにかく売ってから理由は後で考えるという、トレーダーの間に広がりつつある不安心理が浮き彫りとなった。
S&P500種株価指数が最高値近辺で推移する状況にあっても、投資家は16日の急落について、過去数週間にわたりウォール街を覆ってきた不安の根強さを示す最も明確な兆候となったと受け止めている。
その後、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が「 1つあれば、他にもあるはずだ」と発言し、火に油を注いでいました。
こういう、それぞれの個別の問題がないにしても、世界的に銀行は非常に不安定な状態にありまして、以下の 2023年の記事では、アメリカの資産管理系の企業の人が書いた「シリコンバレー銀行が破綻したのなら、他も同じだ」という記事をご紹介しています。
・「崩壊は一瞬で起こり得る」:迫るメルトダウンのメカニズムがようやく理解できました
In Deep 2023年3月14日
この記事からの 2年半は特に世界の銀行には問題は起きなかったわけですけれど、今再び、そのような不安定さが露出し始めているような感じもします。
上の当時でも、アメリカの銀行の「含み損(未実現損失)のすごさ」についてふれていますが、それは今でも進行中です。
米国の銀行の投資有価証券の含み損と利益の推移(2008〜2025年)

binance.com
色分けが見えにくいグラフなんですけれど、
■ 満期証券保有
■ 売却可能有価証券
となっています。
2025年第2四半期時点で、米国の銀行は有価証券の未実現損失を 3,950億ドル(約59兆円)抱えています。
損失の多くは、保有する国債によるものです。
先ほどリンクしました 2023年の記事で取り上げた文章は長いものですが、5つのセクションのセクション5を著者は以下のようにまとめています。
記事「シリコンバレー銀行が破綻したのなら、他も同じだ」より
何年もの間、私たちは、これらのトピックについて書いてきた – 銀行の破綻、迫り来る金融システムの不安定性など。
昨年末、私は、FRB がいかに急速に金利を引き上げて金融崩壊を引き起こしたかを説明した。
始まるのは金融の大惨事だが、まだ始まったばかりだ。2008年のリーマンブラザーズのように、シリコンバレー銀行は氷山の一角にすぎない。銀行だけでなく、マネーマーケットファンド、保険会社、さらには数々の企業からさえ、多くの犠牲者が出ることになる。
外国の銀行や金融機関も、米国の国債で損失を被っている…そして、それは米ドルの準備状況にマイナスの影響を与えている。
考えてみてほしい。米国の国家債務がとてつもなく高く、連邦政府が問題を解決する能力のない愚か者の集まりであり、インフレはひどい。何より、米国債を購入した外国人たちも大きな損失を被っている。
なぜこの狂気を続けたいと思う人たちがいるのだろうか?
外国人はすでに米国とドルに対する大きな信頼を失っている…そして彼らの債券保有による経済的損失はその傾向を加速させる可能性がある。
空気と握手をする高齢の男は、今朝、アメリカの銀行システムは安全だと主張した。ここには見るべきようなものは何もない。
この悲しいサーカスの首謀者である連邦準備制度も、何も理解していないようだ。
つまり、このドラマはまだ終わっていない。いや……始まってもいない。
北野武監督の名作映画『キッズ・リターン』のラストシーンでふたりの少年が語る
マサル「俺たち終わっちゃったのかな?」
シンジ「バカヤロー!まだ始まっちゃいねえよ」
を思い出させる締めとなっていますが、結局は「いつかは終わる」と。
ちなみに、記事中に出てくる「空気と握手をする高齢の男」というのは、アメリカの前大統領です。
ともかく、「終わり」がいつかわからないだけの話ですが、銀行に限ったことではなく、たとえば、以下の記事にありますように、今は、
「約80年周期の社会の激変サイクルの渦中にいる」
わけで(ストラウス・ハウ世代理論)、2030年頃までは、劇的に変化していく世の中になるとは考えています。
・約80年周期の社会の激変サイクルの渦中にいる私たち。そして、アメリカの実質的な国家負債が日本円で「2京円」を超えているという事実
In Deep 2025年8月4日
この記事でご紹介しました「アメリカ政府の実質的な負債が日本円で 2京円を超える」(正式な計算ではそうなります)という額はものすごいように響くかもしれないですが、今は何しろ狂乱時代。
最近、
「アメリカの株式の全体の時価総額が 67兆ドルとなり GDP の2.2倍を超える」
というような状態で、67兆ドルというのは、日本円にすれば…おそらく 1京円を超えると思うのですが、最近のアメリカというか、世界は、そういう大雑把な単位の額で動いているとはいえます。
そのグラフを見ますと、アメリカは 21世紀に入ってから常軌を逸した株価の上昇となっていて、それは経済規模の上昇度を伴わないものとなっています。
1980〜2025年までの米国、アジア、欧州の株時価総額の推移

狂気ですよ、狂気。
こういう狂気はやはりどこかでリセットされるものなのではないのかなとは思うのですが、国際投資家のニック・ジャンブルーノという人は、陰謀論的にいわれることのある「影のエリート」だとか「支配層」だとかいう存在は、「金融システムの崩壊を望んでいる」と書いています。
ニック・ジャンブルーノ氏の寄稿文より
…必要なのは、破産の波を引き起こす大きな危機だけであり、世界の中央銀行の背後にある隠れた勢力は、すべての人の株式、債券、および借金で賄われたあらゆる財産を奪うことができるようになるだろう。
証券口座、銀行口座、年金、その他の金融口座に保有していると考えている資産はすべて一夜にして消えてしまう可能性がある。
重要なのは、これには銀行口座の法定通貨も含まれるということだ。
覚えておいてほしいのは、不換紙幣(現金の紙幣)は破産した政府の裏付けのない負債だということだ。さらに、銀行に通貨を預けたら、それはもはやあなたのものではなくなる。技術的にも法的にも、それは銀行の財産であり、あなたが所有するものは銀行の無担保負債となる。
これは、今年5月の「次のアメリカの金融大リセットは、世界のリセットや「大奪取」につながるだろうか」という記事で取り上げています。
というか、「アメリカの現状のシステムが長く維持されることは不可能」だということは、実際には多くの人が理解していて、しかし、
「その兆候がいつ始まり、どのようなことになるのか」
は、やはりわからない。
今でも誰にもわからないと思います。
漠然とした話として、2030年頃までには、という感じでしょうか。
最初に書きました、ヨーロッパ第二位の銀行であるBNPパリバのことや、アメリカの地方銀行がどうなっていくのかも、やはり今はまだわからないですが、「金融システムの不安定さ」を十分に見せてくれた事象ではありました。
金融システムでのブラックスワンと共に、最近また新たなブラックスワンの脅威が露出しています。
世界的なインターネットの遮断
10月20日に、全世界的なインターネットサービスの障害が発生したという事案がありました。
この原因は、アマゾン・ウェブサービス(AWS)というデータセンターにトラブルが発生したことによるものでしたが、影響を受けたウェブサービスやウェブサイトの数があまりにも多いことに驚いていました。
その後知ったのですが、
「AWSがホストしているウェブサイトの数は 7600万に及ぶ」
のだそうで、そして、これは「全世界の3分の1のウェブサイトに相当する」のだそうです。
こんなに寡占された世界だとは知らなかったですが、サイバーセキュリティ専門家が以下のように述べていました。
「私たちはただそれとともに生きることを学ばなければならない」
今は何もかもがオンラインですから、もっと激しいインターネット障害が発生した場合、かなり多岐な分野に被害は及ぶ可能性があります。
オンラインの終末は、(今の)世界の終末でもあります。
このサイバーセキュリティ専門家の話を紹介していた英デイリーメールの記事から抜粋して締めさせていただきます。
世界的なインターネットのメルトダウンによって明らかになった驚くべき現実…そしてアマゾンの崩壊は始まりに過ぎない理由
The alarming reality EXPOSED by the global internet meltdown... and why Amazon's crash is only the beginning
dailymail.co.uk 2025/10/20

バージニア州にあるアマゾン ウェブ サービスのデータセンター。
英国政府のウェブサイトが点滅し、消え始めたのはロンドンで午前8時過ぎだった。
アメリカ人のほとんどは寝ていたが、東海岸の夜更かしする人たちはディズニーのストリーミングサービスが停止していることに気づいた。
日曜夜のパーティーから帰宅するために Lyft (配車アプリ)を呼んだ人たちは苦戦を強いられ、日常の活動は完全に停止した。
米国東部が目覚めるにつれ、問題の規模が明らかになった。
ユナイテッド航空とデルタ航空は、乗客がオンラインサービスを利用できないことに気づいた。ニューヨーク・タイムズの朝刊に目を通すことに慣れていた通勤客も利用できなくなった。スナップチャットユーザーは沈黙し、Redditのフォーラムも静まり返った。
ディープフィールド・ネットワーク社によると、世界中のオンラインユーザーの 3分の1が毎日アマゾン・ウェブサービス (AWS)を利用している。Venmo、Reddit、Ring など、あらゆる企業が AWS サーバーに依存している。そして月曜日の朝、システムがダウンし、インターネットの大部分がクラッシュした。
企業のオンライン脆弱性の特定と強化を支援するデジタル・ウォーフェアのシニアプリンシパルで、サイバーセキュリティ専門家のジェームズ・ナイト氏は、このような障害が起こり得るという事実自体が「驚くべきことだ」と述べた。これはまた、誰もが免れることのできない新たな混乱の兆候でもある。
ナイト氏はデイリー・メール紙にこう語った。
「最初に思ったのは、どうしてこんなことが起きたのかということでした。どうやら、何らかのデータベースがダウンしたようです」
「通常、バックアップや予備システムはすべて同時に稼働しているので、たった一つの事象がネットワークに影響を与えたというのは本当に驚くべきことです」
ナイト氏は、この障害によってアマゾンは数億ドルの損害を被っただろうと指摘し、困惑していることを認めた。
問題は東部標準時午前3時11分に発生した。東部標準時午前5時1分までに問題は特定され、20分以内に「修正プログラム」が展開された。
必然的に、サイバー攻撃の懸念が浮上したが、ナイト氏によれば、それはありそうにないという。
彼はこう説明した。「私のようなサイバー専門家、あるいは現在この件を調べている人なら誰でも、ハッキングかどうか見分けられるはずです。これはIOC(侵害の兆候)と呼ばれます」
「(サイバー攻撃の場合)マルウェアのシグネチャや何らかの不正アクセス、ログに何らかのアクセスがあったことを示すもの、あるいは異常なトラフィックが記録されていると思われます。しかし、ここにはそれを示すものは何もありません」
ナイト氏は、これは時代の兆候であり、私たちはただそれとともに生きることを学ばなければならないものだと語った。
「私たちの生活はオンライン化しており、これは必ず起こります」と彼は言った。
「 AWS は、グーグルやマイクロソフトと並んで、クラウドコンピューティングのゴールドスタンダードです。もちろん、ライバルも慢心しているわけではありません。明日、彼らにも同じことが起こるかもしれないからです。AWSを批判することはできません。彼らの対応は実に適切でした。AWSはそこから教訓を得て、改善していくと思います」
ナイト氏は、アマゾンは何が問題だったのかを詳しく調査し、今回の障害から教訓を学ぶだろうと述べた。
「彼らは根本原因を突き止め、その後、手順を改善するつもりです」と彼は言った。
「彼らはこの経験を乗り越えて強くなるでしょう。そして二度とこのようなことが起こらないよう、できる限りのことをするでしょう」と彼は言った。しかし、私たち全員が受け入れなければならない真実は、これは必ず起こるということだ。そして、次はもっとひどいことになるかもしれない。
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