アメリカがイランの発電所を攻撃した場合、未来はどうなる?
本題とは関係ないですが、株式市場やら商品市場がムチャクチャなことになっていますね。金価格なんて、過去に見たことのないような激しい下がりっぱなし状態が続いています。いつかは来るだろうと覚悟してはいた金の大暴落も、こう派手に来ますとねえ…。
さて、土曜日にトランプ米大統領が「ホルムズ海峡を 48時間以内に開放しなければイランの発電所を破壊する」と警告しまして、その 48時間後が今日(3月23日)ということになり、期限を迎えます。
これに対して、イラン軍は、
「アメリカによる発電所攻撃が行われた場合の対応策」
を発表しており、アルジャジーラ紙がこの概要を報じています。
以下のような対応をするとイラン軍は述べています。
イラン軍、米国による発電所攻撃への対応策を概説
Iranian military outlines potential response if US attacks power plants
イランは、トランプ大統領が月曜日までにホルムズ海峡を開放しなければ発電所を攻撃すると脅迫したことを受け、「テロリスト大統領」である米国に対し反論した。イラン軍報道官のイブラヒム・ゾルファガリ氏は国営テレビで、「ホルムズ海峡は敵と有害な船舶の航行に対してのみ閉鎖されていると我々は繰り返し述べてきた」と述べた。
「海峡はまだ完全に閉鎖されておらず、我々の情報管理下にあり、我々の安全と国益を確保するための特定の規則の下で、無害な船舶の航行は許可されている」
「しかし、米国がイランの発電所に対する脅迫を実行に移した場合、以下の懲罰措置が直ちに講じられるだろう。
・ホルムズ海峡は完全に閉鎖され、損傷した発電所が再建されるまで再開されない。
・イスラエルのすべての発電所、エネルギーおよび情報技術インフラが広範囲にわたって攻撃されるだろう。
・この地域にある、アメリカ人株主を持つ類似企業はすべて徹底的に破壊されるだろう。
・米軍基地が所在する地域諸国の発電所は、正当な攻撃目標とみなされるだろう。
イラン軍が出任せやハッタリを述べる集団ではないことは、これまでの行動で十分にわかっています。
そして、イラン軍は、2日前、自国から「4000キロ離れた」インド洋にある米英基地に弾道ミサイルを発射しており、遠距離への攻撃能力を保持していることも示しています。
米国大統領のほうは、もはや正気を失っているので、イランの発電所を攻撃するならするでしょうし、そうなった場合、イランは、上に述べたすべてを達成することは無理でも、
> ホルムズ海峡は完全に閉鎖され、損傷した発電所が再建されるまで再開されない。
は即座に行うと見られます。
そうなると、さらに状況が悪化する可能性があります(現状では、いくつかの国の船のホルムズ海峡通過は許可されていたのが、完全閉鎖されると、それもなくなる)。
実際には、現時点でも、国際エネルギー機関 (IEA)のトップであるビロル事務局長は、
「1970年代の 2度のオイルショックを合わせたものよりも深刻だ」
と述べているような状況ですが、さらに悪化するということにもなり得ます。
石油やガソリンなどエネルギーそのものの問題も大きいでしょうが、これまで何度かふれましたように、中東からの石油や天然ガスからは、ハイテク産業に必要なあらゆる素材や、医療品や医薬品に必要な、ほぼあらゆる素材や原料(医薬品のほぼ 99%は石油由来)、そして、何より「肥料」も多くがホルムズ海峡を渡ってきます。何より、肥料生産には天然ガスが不可欠です。
ハイテク産業に欠かせないヘリウム生産もカタールで停止しています。ヘリウムは、半導体やロケットの打ち上げにも使われるもので、あるいは医療の MRI にも不可欠なものだそう。それが日本に入ってこなくなっているらしいです。
しかし、宇宙ビジネスがこの世からなくなっても、それほど困る人はいないかもしれないですが「肥料」は違います。
今回は肥料に焦点を絞りますが、肥料が消えていくと、何が起きるか?
それは単に食料品の高騰というだけではないことを知ります。
それを示す興味深いグラフを見ました。
現代文明は肥料と共に繁栄した
以下のグラフは、1913年から 2024年の、おおむね 110年間の世界人口の推移 (青のライン)と、
・肥料の生産量(緑)
・アンモニアの生産量(紫の点線)
・LNG(液化天然ガス)の生産量(オレンジ)
の推移を比較したものです。
1913年〜2024年の4つの力の推移

naturalnews.com
100年ほど前に、10億人ほどだった世界人口が、合成肥料の登場と共に増加していき、ついには 80億人に達しています。
合成肥料は、20世紀初頭にドイツのフリッツ・ハーバー博士という方が、ハーバー・ボッシュ法という、窒素と水素から触媒を用いてアンモニア(肥料)を工業的に大量生産する方法を発明したことにより登場し、それから世界の食糧生産が大幅に増えたのです。
人類を食糧危機から救った20世紀最大の発明とされています。
…まあ、しかし。このフリッツ・ハーバー博士のハーバー・ボッシュ法というのは、以下のような副産物も生み出す技術でした。
> ハーバー・ボッシュ法は同時に爆薬の原料となる硝酸の大量生産を可能にしたことから、平時には肥料を、戦時には火薬を空気から作るとも形容された。硝石の鉱床が無い国でも国内で火薬の生産が可能となり、その後の戦争が長引く要因を作った。wikipedia.org
ハーバー・ボッシュ法は、食糧と戦争を同時に作り出したともいえるのですが、それはともかくとして、化学肥料の大量生産の発明により、食糧危機という概念が人類社会から少しずつ消えていき、人口は増える一方となったわけでした。
先ほどのグラフの人口増加の曲線を見てみますと、どれだけ大きな世界大戦があろうと、自然災害が続こうと、地球の人口は決して減らなかったことがわかります。
「結局、栄養と適度な衛生環境で人間は生かされているのだなあ…」と、つくづく思いますけれど、結局、今回のホルムズ海峡の閉鎖で、少なくとも「何割か」の肥料生産が一時的にしても減少しているわけです。永遠に今の状態が続くとは思わないですが、肥料生産を天然ガスに依存している現状では、戦争、あるいはホルムズ海峡の閉鎖が長引けば長引くほど、世に存在する肥料が通常よりかなり少ない状態となり得ます。
仮にトランプ氏が、イランの発電所を攻撃した場合、ホルムズ海峡は、今度は完全に閉鎖される可能性もあり、そうなると、どうなるのかは…まあ、具体的には今は不明ですが、極端な主張のひとつとして、米ナチュラルニュースのマイク・アダムスさんは以下のように X に投稿していました。
マイク・アダムス氏の投稿
イランは、トランプが自身の脅威を実行してイランの発電所を破壊する場合の報復について説明した。このすべてが起こった場合、西洋文明は崩壊し、米ドルとともに、現在の食料生産の最大50%が失われるだろう。
数十億人がそのシナリオで飢餓に苦しむ。私はトランプがそれを気にかけているとは思わない。彼は完全に狂ってしまった。25条改正を適用する時が来た。
ここにある「25条改正」というのは、「大統領が(死亡、負傷あるいは認知機能障害などで)職務遂行不能になった場合の継承や代行手続きを定めたアメリカ合衆国憲法の修正第25条の条項」です。
さらにもっと極端な主張としては、この中東の戦争が「核戦争」に発展して、「核の冬」により世界的に飢饉が広がるだろう、とアメリカの作家マイケル・スナイダーさんは述べていました。
現在の中東の戦争とは関係のない話ですが、2022年に米ラトガース大学が発表した、
「アメリカとロシアの全面核戦争の後、50億人が《餓死》する」
というシミュレーションを取りあげたことがあります。
以下の記事の後半にあります。
・大量死の時代に、アメリカのふたつの大学の「核戦争後のシミュレーション」を見直してみる
In Deep 2022年9月27日
核そのものでの死ではなく、「餓死」する人が 50億人に達するという内容です。これは、核兵器の爆発から「すす(煤)」が大気中に入ることにより、太陽光が遮られ、主要作物(トウモロコシ、コメ、小麦、大豆等)の生産性に大きな影響を与える度合いからのシミュレーションです。全面核戦争ではなく、部分的な核戦争でも、かなりの農作物の生産量減少が予測されています。
何というか…戦争は食糧危機を招きやすいものなのかもしれません。そして、それが迫っている可能性もそれなりにありそうです。
ちなみに、2023年1月の産経新聞によると、本来の地球の生態系で養える人口は 40億人なのだそう。現在の 80億人という数は、その倍です。
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