史上最悪の仮想通貨クラッシュの後
少し前の「怒濤の狂乱の中でカタストロフに向かう天井が垣間見え」という記事で、私は、
「何かが近いのだろうなあ」
というように書いていましたが、その後、まったく予想されていなかった「トランプ大統領による中国への 100%の追加関税」が発表されました。すでに適用されている 30%の関税と合わせると 130%の関税になります。
この発表に最も動揺したのは、株式市場ではなく「仮想通貨市場」でした。
クラッシュといってもかまわないような「史上最大の精算(強制決済)」が発生し、「24時間で2.9兆円が消失する」ということになりました。
世界の 160万人以上のトレーダーの口座が壊滅(消滅)し、世界中で相当数の投資家が大きなダメージを負ったと思われます。
ネットでは「仮想通貨が火葬通貨になってしまった」という不謹慎な書き込みも見られましたが、そういう歴史的なクラッシュが起きていました。
ビットコインは 10.2%の下げでした(中には 50%以上というようなとんでもない下げを記録した仮想通貨もありましたが)。
また、アメリカの株式も下げましたが、おおむね 3%程度の下げです。それでも、株式市場のほうでも、かなりの人たちが大きなダメージをくらったようです。
しかし、なぜ、たかだか 3%だとか 10%などの下げで、こんな壊滅的なことが起きるのかというと、投資熱が過熱している…というより、投資が完全な投機(ギャンブル)となっている中で、さまざまな投資の中で「レバレッジ」というものの存在が大きくなっているからです。
投機の過熱
レバレッジというのは、
「少ない元手で、それ以上の大きな金額の取引が可能となる」
もので、FX にも株式にも仮想通貨にもあるのですが、これは、たとえば…まあ、比較的小さい金額で説明すれば、10万円が自己資本だとします。
普通に考えれば、10万円だけ投資できるの状況であるならば、株でも仮想通貨でも FX でも 10万円分の取引しかできないわけですが、資本の 3倍とか 5倍とか 10倍の取引ができるのがレバレッジというシステムです(平たく言えば、借金で取引するということです)。
たとえば、10倍のレバレッジで取引するとします。そうすると、10万円だけの資金なのに、100万円分賭けることができる。
この場合、相場が上昇して、たとえば、その市場の価格が 10%上がったとした場合、10万円の元手で 100万円を賭けているので、その 10%の上昇で儲けは 10万円となり、あっという間に元金が 10万から 20倍に 2倍に増えると。
10万円だけで投資していた場合は、10%上昇したところで、11万円にしかならず、儲けは 1万円だけです。
レバレッジをかけていたために「大きな儲け」となったわけです。
しかし、
「市場価格が大きくマイナスにふれた場合」
が問題です。
先ほどと同じ賭け方をしていて、「 10%下がった場合」は、100万円賭けているので、マイナスは 10万円となり、つまり「元金自体が消え去る」のです。
多くの場合、ロスカットというシステムがあって、口座残高以上の損失が出ても、ゼロになった時点で強制決済となるので、マイナスを負うことはないことが普通ですが、マイナスにはならなくとも、資産がゼロになってしまったことには変わりません。
仮想通貨に関しては、日本では「個人なら 2倍まで」と定められているそうなのですが、海外ではそういう規制はなく、AI によれば、海外の業者では 100倍や 1000倍のレバレッジを利用できる業者があります。
つまり、10万円の元手で 1000万円とか 1億円の投機ができる。
先ほどの例えでいえば、儲かる時はすごいのでしょうが、瞬殺される時も、あっという間だという部分はありそうです。
そういうリスキーな取引をしている人たちもたくさんいると思われ、それで、昨日の株式市場にしても仮想通貨史上にしても、「たった数パーセント〜10パーセント下落した」だけで、多くの人が壊滅的なダメージを得てしまったのだと思われます。
まあ、私自身はレバレッジ取引などしない弱気人間ですので、上の説明にも間違っている部分はあるとは思いますが、いずれにしても、「かなりギャンブル的ではある」とは言えそうです。
今日、ウクライナの著名な仮想通貨のディーラーが、自死か他殺かは今のところ曖昧ですが、「瞬間的に 45億円を超える資産を失った」後に死亡しているのが発見されたという報道もありました。
・史上最大の仮想通貨の暴落後、ウクライナの著名な仮想通貨ディーラーが頭部に銃弾を受けて死亡
BDW 2025年10月12日
株価やその他もろもろの多くの投資が、ずっと上がり続けていたわけで、「いつまでも上がる幻想」が生じるのは仕方ないと思います。
すぐの暴落は考えられないにしても
この流れで、月曜日(10月13日)は、「ブラックマンデー」になるのではないかという話(大暴落になるという話)も出ていましたが、エドワード・ダウドさんは、
「その可能性は著しく低い」
と X に投稿していました(こちらに翻訳記事)。
アメリカの株価は先週、最高値を更新しましたが、最高値を更新して、すぐにクラッシュにつながった例は過去にないからです。
1987年のブラックマンデーの際には、以下のように、株価が過去最高値をつけた後、やや下落して、それから約 7週間後にブラックマンデーと呼ばれるクラッシュの発生が起きました。
もちろん、今回は 1987年のようなことにはならないかもしれません。ここからまた株価も仮想通貨も復活して、またもメルトアップ(熱狂的な上昇)していく可能性もあるとは思います。
しかし、それは結局、誰にもわからないことです。
今の状態の危うさは、数日前の「AIバブルは2001年に弾けたドットコムバブルの17倍…」という記事でもふれましたが、すでに、未知の領域のバブルに突き進んでいまして、それは日本も同じだと思われます。
結局、地味ではあっても、レバレッジなしで中長期などで投資を行うのが賢明なのかもしれません。
日本では、1989年に株価が最高値の 38,915円をつけた後に、バブル崩壊が起こり、その後は、大変な状況が続きましたが、それでも、今年 2025年1月頃だったか、1989年のバブル高値を更新したわけですから、たった 26年待っていれば元に戻ったのです。
26年くらいなら…(いや、長えよ)。
そんなわけで、いろいろと前振りが長くなってしまいましたが、今回は、QTR フリンジ・ファイナンスというメディアの
「カジノで泣いてはいけない」
という記事をご紹介したいと思います。
10月11日のアメリカの株価下落の後に書かれた記事のひとつです。
今はあまりにも多くの投資家が自意識過剰になっていて、それを諫めるような感じの記事です。
カジノで泣いてはいけない
No Crying In The Casino
QTR’s Fringe Finance 2025/10/11

「時々、誰でも破綻することはある」- 1998年の映画「ラウンダーズ」より
昨晩(10月11日)と今朝、ソーシャルメディアを閲覧していたところ、Reddit のトレーダーが言うところの「損失ポルノ」を投稿する人々の例が数多く見つかった。次々と巨額の損失を示すポートフォリオの損益が並んでいた。
一部のトレーダーたちは、仮想通貨口座の破綻、強制清算、巨額損失といった不吉な投稿をしていた。中には、自傷行為を考えているような投稿さえあった。
これらの投稿の半分は冗談で、しかし残りの半分は真剣なものだと仮定してみると、それは恐ろしいことだ。なので、今週末は、いくつかの重要な教訓を思い出すのに良い機会となる。
まず、市場では予告なしにいつでも状況が変化する可能性があるという事実だ。
過去 5年間、純利益がないにもかかわらず、10,000 倍の売値で取引されている暗号通貨や株式で大儲けしたため、自分は天才だと自画自賛してきたのであれば、公開フォーラムで、ある日の自分の資金管理方法について不満を表明することを再考したほうがよいかもしれない。
過去 10年間、ジム・チェイノス(アメリカのヘッジファンドマネージャー)やピーター・シフ(アメリカの経済評論家)のようなベテラン投資家の悪口をツイッターに投稿し続け、 自分は常に正しいのに、なぜ彼らが自分の考えに賛同できないのか理解できないのであれば、彼らの市場に対する懐疑論や警告が自分の血液脳関門を通過できるかどうか、今が確認する良い機会だ。
金曜日にひどい目に遭ったものの、全額損失にはならなかったなら、自分自身に正直な真実(自分はすべてのことを知っているわけではないし、誰もすべてを知っているわけではないこと)を言い聞かせることで、その最悪な一日を資産に変えよう。
これまで自分に言い聞かせてきた嘘(脳の自我の部分が幼児の頭蓋骨のようにまだ柔らかく発達しているうちに米ドルが消滅する可能性もある名目上のハイパーインフレ好況の終わりを偶然に捉えたから、ずっと優れた成績を残せるだろう、などという嘘)はやめるときだ。
「イェール大学で詐欺に関する授業を担当し、エンロン社 (粉飾決算により 2001年に破綻したアメリカの IT企業)の破綻を事前に予測していた人物が出した企業に関する詐欺警告を、私は軽々しく無視しているのだろうか?」と自問するのに最適な週末だ。
あるいは、「何十年もこの業界に携わり、莫大な個人資産を築き上げ、今日の金融界で誰よりも自由市場経済を最もよく理解している人の一人であるにもかかわらず、私はビットコインや金に対する誰かのスタンスをすぐに嘲笑しているのだろうか?」などもだ。
どちらかの答えが「はい」なら、ハイエナのように振る舞うのではなく、もう少し大人らしく振る舞うべき時かもしれない。気を引き締めて、以前経験したことがあるかのように振る舞うべきだ。痛みを受け入れ、痛みから学び、より良い状態で戻ってきてほしい。
結局のところ、株式市場は実際の勝ちと実際の負けがある大人のゲームだ。
第三に、先ほどのような投稿の半分が本物だと仮定すると、4月の市場の暴落以来、市場が止まることなく史上最高値を更新し続けてきた後に、市場でたった一度の 3%の下落があっただけで、このような結果になったのは驚くべきことだ。
これは、投資家がリスクと市場の仕組みについて、非現実的な期待に惑わされてきたことの明確な証拠だ。2月に私が書いた記事「次の市場暴落は私たちの脆弱な脳を破壊するだろう」のように。
これは、私が何年も言い続けているように、FRB が持つ 2つの使命とは関係なく、株価を史上最高値に保つことに基づいて設定された、狂った金融政策の産物だ。
数十年も市場に身を置いてきた人なら誰でも、これらの教訓を苦い経験を通して学んできた。傲慢で愚か者でいることが、その何倍もの報いを受けることを、私ほど身をもって知っている人はいないだろう。
ある時点で、市場はあなたを謙虚にさせる。そして、両手を上げて、自分よりも詳しい人がいること、そして市場とその外部要因は常に予測不可能なものなのだということに屈服するのだ。
今年の初めに古いポッドキャストのエピソードを整理していた時、もうポッドキャストはやらないと決めていたのだが、念のためいくつか残しておいた。
厳選したお気に入りのエピソードだ。その一つが、 友人のサン・ルッチと作ったポッドキャストだ。トレーディング口座を破綻させることについて、私たちがどれくらいの頻度で破綻させてきたか、そしてそれが人生の通過儀礼である理由について語っていた。 私たちと同じような経験をしている人が、このポッドキャストを聞いて少しでも慰めになればと思い、残しておいた。
最後に、オンラインでの自傷行為に関する投稿が深刻なものである限り、同じような気持ちを抱えているすべての人に直接語りかけ、誰もが同じような経験をしており、一人ではないことを伝えたい。
ツイッターでダイレクトメッセージを送ってくれたり、サブスタックでメッセージを送ってくれたり、その他の方法で連絡をくれたりすれば、私はできる限りのことをして、ジョーイ・クニッシュが映画『ラウンダーズ』(闇賭博のポーカーで生きる若者たちを描いたアメリカ映画)で言うように、世界の終わりではないことを伝えたい。「時には、誰でも破綻する」と。
これは私たちが選んだゲームだ。お金は世界の終わりではないし、決してそうであってはならない。世の中はがそうではないことは承知しているが、お金のために生きるか死ぬかを選ぶなんて。
そして、長年のフォロワーの皆さんへ、考えられない行動を取ろうとしている人たちに、たった 3%の下落でそうしないようにと促す投稿を私が書いているということは、何を意味するのだろうか。
これはまさに私が長年言い続けてきた状況だ。投資家が精神的に最も対応の準備が整っていない時期に、市場が予想外の下落に見舞われる可能性だ。皆さんが冷静さを保ち、今週も続くボラティリティをうまく乗り越えられることを願っている。
ここまでです。
ところで、日本はアメリカとは異なり、いわゆる政治的な混乱もないではないかもしれないですので、別の意味で市場は不安定になるかもしれません。
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