ホルムズ海峡封鎖が日本の医療を停止させるメカニズム
最近、日本の医師の方の以下のような書き込みを見ました。
2026年3月7日のXへの投稿より
エチレンが止まると何が起きるか、
医師として具体的に言うと。点滴のバッグ→作れない
輸液チューブ→作れない
シリンジ→作れない
手袋→作れない
人工透析の回路→作れない
EOガス滅菌→できない使い捨て医療材料のほぼ全てが
ポリエチレン・ポリプロピレン・PVC。ホルムズが詰まると、
内視鏡もカテーテルも使えない。
手術室が止まる。石油化学が止まると、病院が止まる。
これは、日本経済新聞の「出光興産「ホルムズ封鎖長期化ならエチレン生産停止も」 取引先に通知」という報道を引用して書かれていたものです
エチレンというのは、たとえば、ゴミ袋などのポリエチレンという言葉からわかる通り、日常生活でも非常に多く使われている…というより、現代生活の基幹物質とも言えそうなものですが、医療の世界でも、エチレンが非常に多く使われていることを知りました。
エチレンの原料は「ナフサ」というもので、ナフサは原油から作られる石油製品です。このナフサが入ってこないと、エチレンも作ることができないということになります。
この「ナフサ」や「エチレン」という言葉がタイトルになった報道記事が今はたくさんあります。
・韓国の石油化学会社が中東危機でナフサの不可抗力を宣言 (2026年3月4日)
・シンガポールのエチレン企業が不可抗力宣言 (2026年3月5日)
・アジアへのナフサの主要輸出国であるクウェートが不可抗力を宣言 (2026年3月8日)
他にもいろいろとありますが、この韓国やシンガポールの企業の不可抗力宣言などは、ホルムズ海峡閉鎖から「たった 4日目や 5日目に出された」ものです。
ですので、今後、さらにナフサやエチレンに関しての企業の操業不能や不可抗力宣言は世界中から出てくると思いますが、エチレンが消えてしまうと、どうなるのか?
日常生活でエチレンが使われている代表的なものを挙げますと、以下のようになります。
エチレンが使われる日用品の一部
・ポリ袋、ゴミ袋、食品ラップ
・ペットボトル、洗剤やシャンプーなどの容器、他にさまざまなプラスチック容器のほぼすべて
・タッパー、バケツ、配管パイプ、チューブ
・バンパーなどの自動車部品、合成ゴム、粘着テープ
・消毒用エタノール、有機溶剤
他にいくらでもありますが、変わったところでは、「バナナやキウイの熟成」にもエチレンガスが使われているのだそう。スーパーなどで売られているバナナは黄色いですが、青いバナナを黄色く熟成させているのはエチレンガスなんだそうです。
まあ、バナナはともかくとして、ここで先ほどの医師の方の投稿にありましたような、
・点滴のバッグ、輸液チューブ、シリンジ(注射の筒)、医療用手袋、人工透析の回路、EOガス滅菌(エチレンガスを用いて微生物を殺滅)
などにエチレンが使われ、特に、使い捨ての医療材料のほぼすべてがエチレンから作られるもののようで、
「現代医療は、エチレンがないと稼働できない」
ということのようです。
エチレンがないと、手術も検査も難しくなる。場合によっては、できない。
ここに来て、現在のホルムズ海峡の封鎖が、石油や LNG というエネルギーの問題だけではなく、日常生活全体に波及する可能性を持つ問題だということがわかります。
現代生活は石油を根幹として成立している
エチレンと共に、現代医療は「電気」がないと成立しないですが、日本の火力発電の発電割合は、以下のようになっています。
・天然ガス(LNG) 32.9%
・石炭 28.3%
・石油等 7.4%
化石燃料の割合が 7割となっていて、天然ガスと石油が高騰すれば(もう高騰しています)、電力価格も当然高騰するわけで、これも医療には厳しい(というか、電気料金の高騰は誰にとっても厳しいですが)話となっていきそうです。
ともかく、現代の生活では、石油は単なるエネルギーではなく、必須の日常製品の根幹となっていることを改めて知りました。
あまり関係ないですけれど、ワクチンの添加剤として使われる脂質ナノ粒子のポリエチレングリコールにも、「エチレン」という文字が入っているように、エチレンから作られるものです(酸化エチレン)。やはり脂質ナノ粒子のポリソルベート80にも酸化エチレンが使われています。
もっといえば、薬剤や医療用の範囲では、薬の乳化剤、錠剤のコーティング剤、軟膏の基剤、薬の安定化剤、医薬品用フィルム、湿布など、広範囲の添加物や医療用品がエチレンを原料としています。
エチレンがなくなると、おそらく、いくつの種類の医薬品、医療品は、現在の状況では代替が効かないので、製造することができなくなることも予想できます。もちろん、これはホルムズ海峡封鎖の期間次第となりますが。
もちろん、在庫など、企業にはストック分があるのでしょうけれど、「ホルムズ海峡封鎖が長引いた場合」は、日常生活に相当な影響が出てくることは避けられなさそうです。
手術ができない、とか、日用品がスーパーの棚から消える、とか、そういう事態も一時的ではあるだろうにしても、ないとはいえないのかもしれません。
現在もホルムズ海峡を通る船はほとんどなく、「たまに中国の船舶」だけが通っているようです。3月4日に、イランは「中国とロシアの船舶にだけホルムズ海峡の通過を許可する」と発表しています。以下のマップで、たまに通っていくのは、中国船だと思われます。
2026年3月7日のホルムズ海峡の船舶通過の模様
Strait of Hormuz … empty, only Chinese ships pass … unbelievable pic.twitter.com/1YAlx5X1ho
— Jeff George ™ (@jhon_odey) March 7, 2026
ホルムズ海峡の封鎖がいつ解かれるのかは誰にもわかりません。
最悪の事態、つまり戦争が中長期的に続くようなことがあった場合、さすがに生活への影響が出てくると思われます。
ですので、どこまでの範囲かはわかりにくいですが、ある程度、そうなった場合の事態を想定しておくのがいいのかもしれません。
日本の報道は楽観的であり、遠い場所で起きている戦争というような認識しかなさそうですが、全然遠い場所での戦争ではありません。
むしろ、これほど日本とアジアの国への影響が直結している戦争は、自国が直接参加していた戦争を除けば、かつてなかったのではないかと思えるほどです。
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